74%の自治体が「インバウンド施策を実施」、現場の職員が感じる課題とは?

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JTBコミュニケーションデザインは2024年9月、「全国の地方自治体インバウンド施策の現状と課題―外国人観光客をめぐる自治体職員の期待と悩み―」と題した調査結果を発表しました。

この調査は、地方自治体インバウンド業務に携わる全国の公務員515人を対象としたアンケート結果をまとめたものです。地方自治体におけるインバウンド施策の現状や、自治体職員の本音が明らかになっています。

この記事では、同調査の結果を紹介します。

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回答者のうち74%がインバウンド施策を実施

インバウンド施策の実施有無については、74%が実施していると回答しました。都市圏では70.9%、都市圏以外では76.7%と、都市圏以外のほうが実施しているとの回答が多くなりました。

▲インバウンド施策実施有無
実施されているインバウンド施策としては次のものが多く挙げられています。

  • オンライン広告やSNSを活用した情報発信(51.0%)
  • 地域の観光パンフレットやガイドブックの制作・配布(49.4%)
  • 外国語対応のウェブサイトや観光案内所の設置(48.6%)

なかでも、実際に効果があった施策として多く挙げられたのは下記です。

  • 外国語対応のウェブサイトや観光案内所の設置(75.5%)
  • オンライン広告やSNSを活用した情報発信(73.5%)
  • 外国人旅行者向けのキャンペーンや割引サービスの提供(70.9%)

オンライン・オフラインともに積極的な情報発信と、外国語対応をすることが肝となりそうです。

インバウンド施策で期待できるのは「経済的なメリット」

続いてインバウンド施策によって得られるメリットを聞いたところ、「観光名所における経済的メリット」が54.6%、「地元飲食店における経済的メリット」が50.1%、「宿泊施設における経済的メリット」が48.2%でした。

経済的メリットを期待してインバウンド施策を実施していることが明らかになりました。

▲インバウンド施策成功時の自治体のメリット

とくに都市圏以外で経済的メリットへの期待感が強く、なかでも「地元飲食店における経済的メリット」は都市圏が40.8%だったのに対し、都市圏以外では56.3%にものぼりました。

経済的メリット以外には、既存事業や新規事業における雇用増加、若者のUターン増加や住民の増加などが挙げられています。

インバウンドにアピールしている観光スポットは「歴史的名所」

インバウンドにアピールしている観光スポットとしては「歴史的な名所や史跡(43.1%)」が最も多く挙げられました。続いて、都市圏では「街並みや商店街(36.9%)」、都市圏以外では「イベント・祭り(40.1%)」が多く、日本ならではの歴史や伝統文化を感じられるスポットが多く推されているようです。

▲インバウンド向け観光スポット(複数回答)

訪日ラボが独自に調査した2024年版の『インバウンド人気観光地ランキング』でも、歴史的名所が上位に多くランクインしています。たとえば、三重県では1位が「伊勢神宮 内宮」、鹿児島県では1位が「仙巌園」、宮城県では2位が「瑞鳳殿」など。日本ならではの魅力を感じられる観光スポットを訪れたいと考える外国人観光客が多いようです。

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インバウンド施策の課題、都市圏以外でとくに顕著

    調査によると、インバウンド施策の実施にあたって、下記のような点が課題として挙げられていました。

    • 地域のインフラや交通アクセスの改善(28.2%)
    • インバウンド旅行者の増加とそれを受け入れる体制のバランス(27.4%)
    • 費用対効果(プロモーションや施策に対する効果)がわからない(24.3%)
    • 成果をどのように測定すればいいかわからない(21.7%)

    割合を比較すると、都市圏以外で全体的に顕著な傾向がみられます。

    ▲インバウンド施策を実施するうえでの課題

    事例として、インバウンド旅行者を受け入れる体制の構築、効果測定といった課題に対応する、戦略的な取り組みを行う地域をご紹介します:

    兵庫県豊岡市では、DMOと事業者が連携してインバウンド客の受け入れ環境を整備しています。具体的には、地域の宿泊施設やアクティビティのプロモーション・予約受付を行う「地域OTA」の施策や、そのサイトから得られたデータを事業者に提供し、地域全体のマーケティングを強力に推進しています。

    地域との対話を続けながら施策を行っており、地域の事業者もその成果を実感しているようです。

    関連記事:「地域を巻き込む観光DX」豊岡の事例に学ぶ、インバウンド地方誘客のヒント

      実際に効果測定している項目、最多は「訪日外客数」

      インバウンド施策を実施するにあたって課題として上がっていた「インバウンド施策の効果測定」。実際に施策の効果を測定していると回答したのは全体で56%でした。

      測定の項目としては、下記のようなものが挙げられています。 

      • 訪日外客の数(48.8%)
      • SNSのインバウンド専用アカウントのフォロワー数(35.3%)
      • サイトへの海外からのアクセス数(34.9%)
      ▲インバウンド施策の効果測定方法(複数回答)

      92%が観光DXについて課題を実感

      観光庁では、観光分野におけるDXを推進することにより、インバウンド客の利便性向上および周遊促進、観光産業の生産性向上などを図るとしています。そんななか、インバウンド施策をするうえでDXに課題を感じると回答した割合は全体で92%でした。多くの自治体担当者がDXを課題ととらえていることがわかります。

      具体的には、下記のような点において、DXに課題を感じているようです。

      • DXの知識や経験がある人材がいないこと(40.7%)
      • DXによって何を達成するかが明確になっていないこと(38.3%)
      • DXの理解度が高くないこと(33.7%)
      ▲DXに関する課題感の内容(複数回答)
      さまざまな地域でDXの課題がありますが、観光DXの成功事例も生まれはじめています。一例として、前述の兵庫県豊岡市の例があります。

      ほかにも、広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶサイクリングロード「しまなみ海道」でもDXが推進されてきました。しまなみ海道では長らく紙やExcelを使用した手作業の予約管理に、現金のみの対応というアナログな体制だったところを、現在はレンタサイクル利用者向けアプリの開発やキャッシュレス化などを進行させ、業務の効率化やさらなるインバウンド誘致につなげているそうです。

      関連記事:

      インバウンド施策検討に必要なデータ

      インバウンド施策検討において必要なデータとしては、「どのSNSインバウンド訪日につながったかの解析(50.3%)」がもっとも多く挙げられました。都市圏では43.2%だったのに対し、都市圏以外では55.0%にのぼるなど、とくに都市圏以外の地域での割合が高い結果となりました。

      また、「実施した販売促進施策別のインバウンド訪日客の数(44.7%)」や「訪日客の年代や男女別の行き先や滞在日数(44.5%)」を知りたいといった回答も多くありました。

      ▲インバウンド施策検討に必要なデータ(複数回答)


        「インバウンド業務は難しい」約6割を占める

        インバウンド業務へのモチベーションについては概ねポジティブな回答が目立ちました。たとえば「インバウンドは意義のあるテーマだと思う(62.5%)」「新しい知識や考え方が身についた(59.2%)」など。業務の意義を感じ、新たな知識獲得にも意欲的な様子がうかがえます。

        一方で、「インバウンド業務は難しい」と回答した人も6割近くにおよびました。やりがいを感じる反面、課題やプレッシャーを感じている人も多いようです。

        ▲インバウンド事業に取り組む際のモチベーション(複数回答)

        今後の課題と展望について

        これらの調査結果から、インバウンド市場に大きな期待感を持って施策を実行している自治体が多くあることがわかります。

        同時に、課題も数多くあります。インフラ整備や外国語対応が可能な人材育成、さらにはメディア活用やデータ活用などを含む観光DXなど、さまざまな視点からの改善が必要です。

        また、費用対効果や施策の効果を計測し、各自治体がより前向きにインバウンド施策に取り組めるようにすることも重要といえそうです。

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        <参照>
        • 株式会社JTBコミュニケーションズ:全国の地方自治体のインバウンド施策の現状と課題
        • 一般社団法人 日本旅行業協会:インバウンド旅行客受入拡大に向けた意識調査 第3回アンケート分析結果報告

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        この記事の筆者

        訪日ラボ編集部

        訪日ラボ編集部

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