【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
ソーシャルコマースとは、InstagramやFacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)にEC(電子商取引)の機能を融合させ、SNS上で商品の発見から購入までを完結させる新しい販売手法です。
従来のECサイトへの遷移を不要にし、ユーザーは日常的に利用するSNSのタイムラインや投稿から直接商品を購入できるため、これまでにない高い利便性とスムーズな購買体験を提供します。
日本を含む世界各国で急速に拡大するソーシャルコマース市場は、事業者にとって新たな販売チャネルの開拓、顧客エンゲージメントの強化、そして売上向上の大きな可能性を秘めています。
とくに、若年層を中心としたSNS利用者の増加と、コロナ禍におけるオンラインショッピングの習慣化がその成長を加速させています。
本記事では、ソーシャルコマースの基本的な概念から、その種類、Eコマースとの違い、事業者にとっての具体的なメリットとデメリット、そして実際に活用されている主要プラットフォームまでを詳しく解説します。
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ソーシャルコマースとは
ソーシャルコマースは、SNSとEコマース(EC)を掛け合わせて、商品の販促や販売をする手法です。
単にSNSを広告宣伝の手段として利用するだけでなく、SNS自体を商品販売のプラットフォームとして活用することで、ユーザーは気になる商品を見つけた瞬間に、SNSアプリ内で購入手続きまで進めることができます。
この「シームレスな購買体験」こそがソーシャルコマースの最大の強みであり、ユーザーの購買意欲を損なうことなく、そのまま購買行動へ結びつけることが可能です。これにより、従来のECサイトで発生しがちな「カゴ落ち」などの離脱を防ぎ、販売機会の損失を最小限に抑えることが期待できます。
ソーシャルコマースの主な種類
ソーシャルコマースには、以下のような多様な形態があります。- SNS型(インフィード購入型):InstagramショッピングやFacebookショップのように、SNSの投稿やストーリーズから直接商品を購入できる最も一般的な形式
- ライブコマース型:ライブ配信中に商品を紹介し、視聴者がリアルタイムで質問したり購入したりできる形式。中国のTaobao Liveなどが有名
- レコメンド型:他のユーザーのレビューや購入履歴に基づいて商品が推薦され、そこから購入へと繋がる形式。Amazonのレビュー機能なども広い意味でこれに含まれる
- 共同購入・グループ購入型:特定の人数が集まることで割引が適用される形式。中国のPinduoduoなどが代表的
- CtoC型:個人間で商品の売買が行われるフリマアプリなども、SNS的な要素を持つことからソーシャルコマースの一種とみなされることがある
これらの多様な形態が、ユーザーの購買行動をより社交的でインタラクティブなものに変え、新しいビジネスチャンスを生み出しています。
SNSでの商品販売
ソーシャルコマースとはInstagramやFacebookに代表されるSNSにECサイトの機能を組み込んで商品を販売する手法です。
インターネットとスマートフォンの普及に伴って若い世代を中心にSNSが急速に利用されており、ビジネスにおいてはSNSを集客ツールとして活用するのがトレンドになっていました。
現在ではそのトレンドが進化し、SNSとECサイトを融合させ、SNSを商品販売のプラットフォームとして利用する流れが生まれています。
SNSのECサイトの機能を組み込むことでSNS上の広告を見たユーザーがそのままSNSから商品を買えるようになり、スムーズな導線が確保できます。
拡大するソーシャルコマース市場 コロナが追い風に
市場調査会社「Research and Markets」は、2021年8月に「Social Commerce - Global Market Trajectory & Analytics」を発表しています。
これによると、世界のソーシャルコマース市場は2020年に推定5,597億ドル(約62兆4,821億円)に達するとしています。
さらに、中国では2020年から2027年にかけて年平均成長率30.5%が見込まれており、カナダは27%、日本も28.1%と、それぞれ高い成長が予測されています。
市場の拡大はコロナ禍の影響を強く受けており、外出が難しい時勢からウェブ上での買い物が増えている傾向と世界各国で国内外問わず旅行が難しい環境がソーシャルコマース市場拡大の追い風になりました。
また経済産業省の調査によれば、2023年の日本国内のEC市場はBtoC-EC(消費者向け電子商取引)で24.8兆円(前年22.7兆円、前年比0.25ポイント増)、CtoC-ECで2兆4,817億円(前年比5.0%増)との結果が出ています。
同調査ではスマートフォンの普及とSNSの社会生活への定着についても報告されており、SNSを利用した購買行動への心理的ハードルが下がっていることも推察されます。
関連記事:ソーシャルコマースとは:強み、種類、代表的なプラットフォーム3選
<参照>
令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました(METI/経済産業省)
Social Commerce - Global Market Trajectory & Analytics
ソーシャルコマースの強み
ソーシャルコマースの魅力は主に企業が新しい販路を見出せることにあります。
ソーシャルコマースを活用することで、SNSをよく使用する若年層の市場を開拓しやすくなります。
これによってブランドの購買層の若返りを図ったり、若者との関係性を深化できたりします。
また、ECサイトを始めたいという事業者の場合、ソーシャルコマースを利用しすれば、小規模でEC事業をスタートできます。SNSでの売れ行きを見ながら、EC事業拡大する戦略が取れます。
既にECサイトを利用している事業者であっても、これまでのSNSマーケティングなどが効果を発揮していない、ECサイトに依存しないインターネット販売を進めたい場合などではソーシャルコマース進出が躍進のきっかけになる可能性があります。
ソーシャルコマースとECサイトの違い
ソーシャルコマースとECサイトは、それぞれ異なる特徴とメリットを持っています。企業は自社の商品やサービス、ターゲットとする顧客層に応じて、最適な販売手法を選択することが重要です。
ソーシャルコマース | ECサイト |
|
販売チャネル | SNS上 | 自社サイトやECモール |
顧客との関係性 | インタラクティブでリアルタイム | 一方向的な情報提供 |
購買プロセス | SNS上で完結 | ウェブサイトへの遷移が必要 |
顧客の購買行動 | 衝動買いが起こりやすい | 計画的な購入が多い |
ソーシャルコマースは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して、商品やサービスの紹介から販売、顧客とのコミュニケーションまでを一貫して行う方法です。
ユーザーはSNS上で商品を発見し、そのまま購入手続きに進むことができます。このプロセスは、ユーザーの購買意欲を高め、購入までのハードルを下げる効果があります。
一方、ECサイトは、企業が自社のオンラインショップやECモールを通じて商品やサービスを販売する方法です。顧客はウェブサイトにアクセスし、商品を検索・比較・購入するというプロセスを経ます。
この手法では、企業が商品の詳細情報やレビューを一方的に提供し、顧客が自ら情報を収集して購入判断を行います。
ECサイトは、商品ラインナップの豊富さや詳細な商品情報の提供が可能であり、顧客がじっくりと比較検討できる点が特徴です。また、企業は自社のブランディングやマーケティング戦略を自由に展開できるメリットがあります。
ソーシャルコマースのメリット
近年注目されているソーシャルコマースを導入することで、ECサイトに代わるウェブ上の新たな販売手段として活用できます。
ここでは、ソーシャルコマースを活用するメリットについて紹介します。
1. ユーザーの利便性が向上
ソーシャルコマースのメリットはSNSアカウントのみで商品が買えることです。ユーザーはECサイトごとの面倒な会員登録の手続きなどを踏まなくてよく、利便性が向上します。
この利便性の向上は買いたい商品がある時に会員登録で購買意欲を失ってしまう事態を避けることになり、購買意欲をそのまま購買行動につなげられます。
また、ユーザーはSNSで見かけた欲しい商品をそのまま購入できるため、ECサイトの複雑な購入手続きを通さずに購入できます。
購入手続きの煩雑さからECサイトの買い物かごに入った商品が買われない「カゴ落ち」を防げます。
2. ショップの開設・運営が簡単
ECサイトを一から立ち上げるためには、サーバーを契約したりウェブサイトをデザインしたりといった準備が必要になります。こうしたウェブサイトの立ち上げは慣れない人にとっては労力がかかり、また金銭的コストもかかります。
ソーシャルコマースの場合は使い慣れたSNSの機能からショップを開設し始めることができるだけでなく、多くの場合無料で使えます。
また販促についても、ウェブサイトの場合は検索エンジンを意識した対策が必要になってきますが、ソーシャルコマースの場合はショップを展開するSNSでの広告配信など、ターゲットを絞った施策になります。こうした点でも運営の負担が軽減できます。
3. 顧客の囲い込みが可能
SNSではユーザーはアカウントをフォローできます。商品を販売するSNSアカウントをフォローしてもらえれば、顧客に継続的に情報を配信できます。
既存顧客に繰り返し購入してもらえる可能性も高まるでしょう。
商品の仕様や価格といった情報だけでなく、ブランドの世界観や、商品の活用方法を発信すれば、ブランドへの愛着を強めたり、関心が高まったりという効果も期待できます。
ソーシャルコマースのデメリット
ソーシャルコマースは多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、活用する上で理解しておくべきデメリットについて紹介します。
1. SNSコンテンツの更新にコストがかかる
ソーシャルコマースのデメリットとしては、SNSのコンテンツ更新にかかる負担の大きさがあります。
SNSで商品を買ってもらうためには、定期的に商品の情報などを投稿してユーザーの興味や関心を引き付けなければなりません。
質の高い写真や動画、センスのある説明文などが求められるため、撮影や画像動画編集などで投稿までに手間がかかります。
これらの作業を通常業務とは別に行う必要があるため、技術的なハードルを超えられるか、時間や人手の確保ができるかなどを検討した上で取り組むことが必要です。
また、ソーシャルコマースで成果を得るには、SNS上でのフォロワーの獲得やブランドの信頼構築が不可欠です。これらは一朝一夕で達成できるものではなく、継続的な努力と時間が必要です。短期間での売上向上を期待する場合、ソーシャルコマースは適さない可能性があります。
2. SNSに依存する
ソーシャルコマースは、SNSのアルゴリズムや規約変更に大きく影響を受けます。たとえば、アルゴリズムの変更により投稿の表示頻度が減少すると、商品の露出が減り、売上に影響を及ぼす可能性があります。
また、プラットフォームの規約変更により、これまでの運用方法が通用しなくなるリスクもあります。
ソーシャルコマースのプラットフォーム
ソーシャルコマースとして多くのSNSがEC機能を搭載しはじめ、サービスを提供しています。
ここでは、ソーシャルコマースとして運用できるプラットフォームの中から代表的なものを3つ紹介します。
1. Facebook
Facebookは2020年5月から「Facebookショップ」の機能をユーザーに提供しました。
日本向けには同年6月からサービスが提供されており、コマースマネージャーという管理ツールから無料でオンラインストアを開設し、ユーザーに商品を販売できるようになりました。
FacebookショップではFacebookのストーリーズやユーザーごとに合わせて表示される広告から商品の購入が可能となっています。
関連記事:Facebookショップとは|機能、開設方法、今後の動向を解説
2. Instagram
InstagramはFacebookが運営する写真の投稿をメインとしたSNSで、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が本格化した2020年5月ごろにソーシャルコマース機能が追加されました。
Instagramでのソーシャルコマース機能は「Instagramショップ」と呼ばれ、基本的な機能はFacebookと大差はありません。
Instagramショップでも事業者はストーリーズなどに商品の広告などを掲載でき、ユーザーはビジネスプロフィールや広告からECショップを訪問し、そのまま商品の購入が可能です。
3. RED(小紅書)
REDは中国最大規模のソーシャルコマースプラットフォームです。
REDのメインユーザーは中国の都市部に住む女性で、Statista社によれば2019年時点でユーザー数は約3億人とされています。
InstagramとAmazonを掛け合わせたようなSNSで、コスメやファッション、旅行などの投稿が多いのが特徴です。
KOLと呼ばれる中国のインフルエンサーの起用で、より効果的な集客が見込めます。
中国市場のユーザーにも商品を買ってもらいたい場合は利用を検討すべきプラットフォームと言えるでしょう。
関連記事:小紅書(RED)とは | 中国発ソーシャルECアプリ・PRのカギはKOL/インバウンドに有効な活用方法を紹介
拡大するソーシャルコマース市場
ソーシャルコマース市場は日本のみならず全世界規模で拡大傾向にあり、新しい販売プラットフォームとして期待されています。近年ではInstagramなどのSNSのほかに、中国ではソーシャルコマース専用のアプリが登場するなど盛り上がりが見られます。
SNSにEC機能を追加することで、ユーザーは商品を再度検索するといったステップが不要になります。購買意欲の高い状態でスムーズに購入手続きに移ることができるため、販売機会の損失も防ぐことができるでしょう。
このようにソーシャルコマースにはメリットも多くあります。ただし、一般のECショップ運営と異なり、各SNSのコンテンツ形式やユーザー層の特徴を把握してコンテンツを更新していくことが重要となります。
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