訪日客が増加傾向にあるなかで、ホテルにおけるインバウンド対策も重要性を増しています。しかし、具体的にどのような施策を行えばいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ホテル・旅館のインバウンド対策について解説するほか、実際に訪日客が日本のホテルで感じる「不満」についても紹介します。
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ホテルのインバウンド対策はなぜ重要?
インバウンド需要の増加に伴い、宿泊施設におけるインバウンド対策の重要性はますます高まっています。ここではその理由について、具体的なデータとともに解説します。
訪日外国人数は過去最高に 今後も増加の見通し
2024年の訪日外客数は3,687万人で、コロナ前2019年(3,188万人)を約500万人上回って過去最高を記録しました。2025年も、1〜3月の累計が過去最速で1,000万人を突破するなど、訪日客数の拡大傾向が続いています。

また、2024年の外国人延べ宿泊者数は1億6,360万人泊で、こちらも過去最高を記録しました。
全体の客室稼働率は60.5%で、なかでもシティホテルの稼働率は72.4%に達しています。

政府は、2030年に訪日客数6,000万人を目指しており、今後も日本に訪れる外国人旅行者はさらに増えることが予想されます。
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1人あたりの宿泊費も増加傾向
次に、訪日外国人1人当たりの旅行支出を見てみます。
2024年の実績では、1人当たりの旅行支出(22万6,851円)のうち宿泊費は7万6,743円で、全ての項目のなかで最も多くなっています。2019年(4万7,336円)からは3万円近く増加しました。
特に、長期滞在が多い欧米圏で、宿泊費が高額となる傾向にあります。

また、3月に発表された帝国データバンクの調査によると、2024年度の国内旅館・ホテル市場は事業者売上高ペースで5.5兆円に達し、過去最高を更新する見通しです。インバウンド需要の回復が追い風となり、前年度から増収となった旅館・ホテルが目立ったといいます。
このようにインバウンド需要は拡大を続けており、事業者にはその動きを踏まえた対応強化と、受け入れ体制の整備が必要とされています。
関連記事:旅館・ホテル市場規模、過去最高「5.5兆円」の見通し インバウンド増が追い風に
ホテルのインバウンド対策6選
ここでは、ホテルのインバウンド対策として6つの項目を紹介します。
1. ホームページ・宿泊予約サイトの見直し
公式サイトや予約サイトを多言語に対応することで、外国人利用者が施設や周辺観光地の情報を得やすくなり、予約率の向上が期待できます。
多言語対応のチャットボット(AIによる自動会話プログラム)の導入も有効です。チャットボットは24時間・365日対応が可能なため、ユーザーとの接点も増加します。またユーザーデータが蓄積されるため、サービスの改善やプロモーション設計を考える際に参考になります。
ほかにも、ExpediaやBooking.com、Trip.comなどの海外OTAに情報を掲載するのも効果的です。民泊施設では、Airbnbを活用するのもよいでしょう。
*OTA…Online Travel Agentの略。インターネット上で旅行の予約や手配を行う旅行代理店のこと
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2. スタッフの外国語対応
株式会社BRIDGE MULTILINGUAL SOLUTIONSが実施した、旅館・宿泊業の従業員への意識調査では、インバウンド需要が高まるなかでの悩みとして、63.1%が「外国語が話せないこと」を挙げています。
解決方法の一つとして、外国語対応が可能なスタッフの確保が挙げられますが、地方や小規模の宿泊施設ではそうした対応が難しい場合もあります。
そのような場合は、スタッフに対して外国語の基礎的な研修を実施することで、チェックインやチェックアウトといった基本的なやり取りをカバーできます。
また詳細な案内が必要な場合には、ポケトークをはじめとする翻訳ツールの活用や、会話をしなくてもコミュニケーションできる「指差し会話シート」の活用なども有効です。
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3. 案内表示などの多言語対応
観光庁が実施した調査では、訪日客が多言語表示に関して困った理由として、「多言語対応されていない / 表示言語数が不足している」が最も高くなっています。
インバウンド対策として、多言語対応のシステムやツールの導入は必須といえるでしょう。
たとえば、ロビーに多言語対応の自動チェックイン機を設置することで、外国人ゲストがスムーズに手続きを行えるようになります。客室内に、館内設備やサービス案内を多言語で表示できるタブレットを設置することも効果的です。
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4. キャッシュレス決済の導入
訪日観光客が多い国では、キャッシュレス決済が非常に浸透しています。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会の2022年調査によると、各国のキャッシュレス決済比率は、韓国が99.0%、中国が83.5%となっています。
特にコロナ禍以降、非接触の決済を求めるニーズが高まっており、日本の決済サービスと海外のキャッシュレス決済サービスとの連携も進みつつあります。
キャッシュレス決済を導入する際は、国・地域ごとに普及している決済ツールを知っておく必要があります。韓国ではクレジットカードやデビットカード、中国ではWeChat PayやAlipayといったQRコード決済や、デビットカード(銀聯カード)決済が浸透しています。
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5. 無料Wi-Fiの導入
訪日客の多くは、滞在中にスマートフォンを使いながら情報収集やSNS発信などを行なっています。そのためホテルや旅館でも、Wi-Fi環境を整備することが望まれます。
観光庁の調査によると、訪日旅行中の困ったこととして「無料公衆無線LAN(フリーWi-Fi)環境」を挙げた人は6.1%で、前年度から3.5ポイント減少しました。近年は整備が進んでおり、訪日客の不満は少なくなっているといえそうです。
しかし言い換えれば、Wi-Fiはすでに「あるのが当たり前」の設備となっているため、ホテルや旅館において安定したWi-Fi環境を提供することが必須といえます。
6. SNSによる情報発信
ホテルにインバウンド客を呼び込むためには、適切な情報発信が欠かせません。特に近年ではSNSで情報収集する旅行者が多いため、SNSの活用が重要になります。
SNSについては、国や地域ごとに利用されているツールが異なります。多くの国ではInstagramやFacebookなどが利用されている一方で、中国ではWeChatや小紅書(RED)、韓国ではNAVERの利用者が多くなっています。
最近はSNSが検索エンジン的に利用されることも増えており、市場ごとにどの媒体が使われているのかを把握しておく必要があります。
関連記事:【初心者向け】インバウンドの基礎から最新の動向まで徹底解説!
インバウンドが感じる「不満」とは?
ここでは、訪日客が実際に日本のホテルで感じている「不満」を紹介します。インバウンドを受け入れる際のヒントが見つかるかもしれません。
1. 客室・トイレ・浴室が狭い
訪日時の不満点として、ホテルの客室・トイレ・浴室が狭いことが挙げられています。日本人には当たり前でも、体格が大きく荷物が多い外国人の場合は窮屈に感じるようです。
ベッドとシャワールームだけでスペースの余裕がほとんどない場合もあり、実際に宿泊してその狭さに驚く声も聞かれます。
2. 食事の選択肢が少ない
訪日客にとって和食は人気である一方、普段食べている食事を選べることが、安心感につながります。
たとえばフランス人は、朝食にパンやシリアル、コーヒーをとるのが一般的で、焼き魚やご飯といった和食には抵抗を感じることがあるようです。
また、ベジタリアンやヴィーガン、ハラールなど、多様な食文化への対応が不十分なことも、訪日客の不満の原因となっています。
関連記事:宗教別の食べてはいけないものを一覧で紹介!押さえておきたいタブーと飲食店での対策とは
3. 金額表示がわかりづらい
日本のホテルでは、宿泊料金が「1人当たり」で表示されることが多いですが、海外では「1室当たり」が一般的な国もあるようです。たとえばスペインでは、「1人当たり」の料金設定は珍しく、明記されていないと混乱を招く可能性があります。
事前にわかりやすく表記しておくことで、訪日客の不満やトラブルの発生を防ぐことにつながるかもしれません。
ホテルのインバウンド対策で宿泊需要を取り込もう
訪日外国人旅行者が増加するなかで、ホテルのインバウンド対策は喫緊の課題です。多言語対応やキャッシュレス決済、SNSを活用した情報発信などを行うことで、外国人ゲストが利用しやすい環境づくりにつながります。
またインバウンドを積極的に集客する場合は、文化や習慣の違いなどに留意して、柔軟な対応を心がけることも求められるでしょう。小さな改善の積み重ねが、旅行者の満足度向上やリピーターの獲得につながります。
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- 日本政府観光局(JNTO):
- 観光庁:
- 帝国データバンク:全国「旅館・ホテル市場」動向調査(2024年度見通し)
- 株式会社BRIDGE MULTILINGUAL SOLUTIONS:【必要性が高まる旅館・宿泊業のインバウンド対策】従業員の6割強が「外国語が話せないこと」に苦悩!「外国人宿泊客への対応に時間がかかり過ぎる」「旅館設備の説明ができない」など困った場面多数
- 一般社団法人キャッシュレス推進協議会:2022年の世界主要国におけるキャッシュレス決済比率を算出しました
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
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- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
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【インバウンド情報まとめ 2025年5月後編】2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に5月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→2025年の訪日客数「4,500万人」へ、観光庁長官の見解は? / 2025年訪米旅行者支出「125億ドルの損失」予想 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年5月後編】
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