生成AIが観光の課題をどう変える?活用事例や注意点も解説

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近年の観光業界は、インバウンドを中心とした観光客増加という好機を迎える一方で、さまざまな課題にも直面しています。

とくに人手不足は、サービスの質を低下させたり、事業の成長を妨げたりする深刻な要因となっています。加えて、多様化する顧客ニーズへの対応や、データの有効活用が進まないといった課題を抱える事業者も少なくありません。

こうした中で、注目を集めているのが「生成AI」です。

本記事では、生成AIの基礎知識や活用の留意点、観光における具体的な活用事例に至るまで、詳しく解説します。

関連記事:AIによって旅行者の検索行動はどう変わり、我々はどう対応しなければならないのか【訪日ラボマーケティングトレンド話 vol.1】


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生成AIとは?

生成AIとは、大量のデータを学習することで、その知識をもとに新たな文章、画像、プログラムなどを自動的に生成する人工知能(AI)の一種です。

従来のAIは主にデータ分析やパターン認識といった業務に特化していましたが、生成AIはそれらに加え、「創造的なアウトプット」を生み出す能力を有している点が大きな特徴です。この特性により、従来は人間の創造力に依存していた業務においても、AIによる代替や支援が可能となりつつあります。

ただし、生成AIは必ずしも正確または適切な情報を提供するとは限らず、誤情報の生成や倫理的な問題を引き起こす可能性も指摘されています。そのため、現時点においては、生成AIを補助的なツールとして位置づけ、人間による最終的な判断や確認を必ず行うことが不可欠です。

さまざまな業界で活用が進むAI

近年、AIは飛躍的な進化を遂げ、あらゆる業界で注目を集めています。製造業ではロボットによる自動化が進み、生産効率の向上や人手不足の解消に貢献しています。

医療分野では画像診断や創薬にAIが活用され、診断の精度向上や研究の加速に役立っています。また、小売業では顧客の購買データを分析し、パーソナライズされた提案を行うことで売上アップを実現。金融業界では、不正取引の検出や投資判断のサポートにAIが導入され、安全性とスピードを両立しています。

さらに、教育、エンターテインメント、物流、農業などの分野でもAIの活用が進みつつあり、多方面での展開が見込まれます。こうした技術革新は、業務の効率化だけでなく、新たなビジネスモデルやサービスの創出にもつながっています。今後もAIは社会のあらゆる側面に影響を与える重要なテクノロジーとして、その存在感を増していくでしょう。

観光業界でAIが注目される背景とは?

さまざまな分野で注目を集めるAIですが、観光業界ではどのような背景から活用が期待されているのでしょうか。

人手不足の解消と業務効率化

観光業界における慢性的な人手不足という課題に対し、生成AIは有力な解決策として注目されています。

たとえば、予約管理や問い合わせ対応、データ入力、アンケート集計、事務手続きといった定型業務は、AIによって自動化できる可能性が高いでしょう。これにより、従業員の業務負荷が軽減され、より高度な顧客対応や付加価値の高いサービスに専念できる環境が整います。

また、生成AIは24時間体制で問い合わせ対応が可能であり、顧客満足度の向上にも寄与します。加えて、ヒューマンエラーの削減にもつながることから、サービス品質の安定的な維持にも貢献します。

インバウンド需要への対応強化

インバウンド需要の拡大が進むなか、外国語による案内やサービスの不足は、観光産業における深刻な課題となっています。

特に、地域の慣習や観光施設におけるルール・マナーに関する情報提供については、多言語化の対応が不十分なケースが多く見受けられます。こうした状況は、訪日外国人旅行者の満足度を損なうのみならず、トラブルの誘因となる可能性もあります。

このような課題に対し、AIを活用した翻訳ツールやデバイスは、有効なソリューションとして期待されています。リアルタイ翻訳機能を備えたツールなら、スタッフと訪問客との円滑なコミュニケーションが可能となり、業務効率の向上とサービス品質の均一化が図られます。

さらに、こうしたツールは従業員の語学力に依存せず、多様な言語ニーズに柔軟に対応できるため、言語の壁によるストレスを大幅に軽減します。結果として、インバウンド旅行者にとって分かりやすく快適な環境が整い、顧客体験の向上および地域の集客力強化につながることが期待されます。

関連記事:ガイド1人でも多言語対応ツアーが可能に AI同時通訳「ポケトーク for ツアー」販売

新たな価値創出と体験提供

AIが顧客の過去の行動データや趣味・嗜好を分析することで、それぞれに合わせた最適な旅行計画の提案や、新しい観光コンテンツの開発も期待できます。

また、混雑状況や天候なども踏まえ、その時、その場所、その人に応じたレコメンドを行うことで、満足度の高い旅行が実現されます。

このように、AIの活用は魅力的で記憶に残る体験の提供に貢献し、リピーターの獲得にも繋がる可能性があります。

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需要予測や価格の最適化

AIを活用することで、観光需要の変動を分析し価格を変動させる「ダイナミックプライシング」も可能になります。

ダイナミックプライシングは、過去の予約データや天候、イベント情報などを元に、混雑が予想される日は価格を上げ、閑散期は価格を下げることで収益の最大化につなげます。ホテル航空業界では広く導入されており、収益の安定化や在庫管理の効率化にも貢献しています。

AIを活用することで、データ分析を行う時間やノウハウがなくても、迅速かつ最適な意思決定が行うことができるでしょう。

関連記事:ダイナミックプライシングとは?導入事例やメリット・デメリットを解説

生成AIを活用する上で注意したい4つのポイント

観光分野において、生成AIの導入は大きなメリットをもたらしますが、活用する上ではいくつかの注意点があります。

1. 個人情報保護の観点

生成AIを活用する際には、顧客データ、特に個人情報の適切な管理および保護が不可欠です。

企業においては、利用目的の範囲を明確に定めたうえで、当該目的に則った運用を行うことが求められます。取り扱いに際しては、関係法令や社内規定などを遵守し、データ主体の権利を損なうことのないよう十分な配慮が必要です。

また、生成AIに内部情報を学習させることには、出力精度の向上という利点がある一方で、情報漏洩のリスクも伴います。そのため、個人情報や機密情報が大規模言語モデルに直接学習されることを防ぐ対策として、Retrieval-Augmented Generation(RAG)などの技術を活用し、生成AI本体とは切り離された安全な情報参照環境での運用が推奨されます。

今後、生成AIの導入が拡大する中で、企業や組織が信頼性を確保しつつ利便性を追求するためには、情報管理体制の強化と技術的・制度的な対応の両立が不可欠です。

2. 著作権保護の観点

生成AIによる生成物を利用して販促活動などを行う際には、既存の著作物に対して権利侵害が発生しないよう注意が必要です。

指示(プロンプト)を入力する際には、既存のものや実在する人物に類似する可能性のある指示は避けるようにしましょう。

また、生成物についても既存の著作物と類似していないかを必ず確認し、類似性がある場合は、加工する、もしくは著作権者に許可を得てから利用することが大切です。

3. ハルシネーションの観点

生成AIは、時に事実と異なった情報や、偏った意見を生成することがあります。これは「ハルシネーション」と呼ばれ、観光案内などで誤った情報を提供してしまうと、顧客の信頼を損ねる可能性があります。

もっともらしい口調で説明されたり、一部のみが間違っていたりするため、誤情報に気づくことは簡単ではありませんが、AIが生成した情報は、必ず人間の目で確認し、ファクトチェックを行う体制を整えることが不可欠です。

4. バイアスの観点

生成AIには、利用者自身に関心度が高い情報が優先的に表示される「フィルターバブル」が発生したり、偏見や差別をそのまま結果として出力してしまったりする可能性があります。

適切な意思決定に向けて、多様なデータを学習させつつ、その情報の信頼性を都度確認するようにしましょう。

また、過度に生成AIに依存することなく、バイアスに留意しながら人間が主体となって判断することが求められます。

観光分野における生成AIの活用事例

観光庁では、観光分野におけるDX推進の一環として「生成AIの適切かつ効果的な活用に関する調査」に取り組んでいます。ここからは、実際に生成AIが活用された事例についてご紹介します。

関連記事:じゃらん、生成AIを活用した実証実験を実施 インバウンド対応を効率化

【門司港】観光客の問い合わせ対応で生成AIを活用

門司港レトロの観光案内所では、スタッフの業務量増加や情報・ノウハウの共有不足といった課題に対処するため、生成AIを導入しました。

観光客から寄せられた問い合わせ内容をもとに、スタッフがAIに質問し、その回答をベースにして応対を行う運用体制を構築。中には担当エリア外の質問や、観光案内所が持つ情報だけでは回答できないものもあるため、外部データとの連携や、データを都度アップロードする環境も整えました。

これにより、観光客からの問い合わせの52%をAIが処理できる仕組みを実現しました。

▲「観光DX」成果報告会より
▲「観光DX」成果報告会より

【北海道】生成AIで多言語案内を平準化

ひがし北海道エリアにおいては、インバウンド増加に伴う多言語対応や、観光需要の変動が大きいことによる従業員の通年雇用の困難さ、並びにそれに伴うスタッフの生産性向上といった課題が存在していました。

このような状況を踏まえ、同エリアに所在する「お宿 欣喜湯(きんきゆ)」では、生成AIを活用した取り組みを実施しています。具体的には、チェックイン時の案内において、スマートフォンのボタン操作により英語翻訳が可能となる仕組みを構築し、英語案内の均質化を実現することで、多様な宿泊客への対応が実現しました。

加えて、宿泊人数などのデータを活用し、生成AIによるシフト案の作成を行うことで、スタッフの業務効率化および負担軽減に寄与しています。

▲「観光DX」成果報告会より
▲「観光DX」成果報告会より

【城崎】訪日客向けのレコメンドをAIが提案

兵庫県の城崎温泉にある旅館「西村屋」では、単価向上に向けた追加飲食の提案や、販売施策の立案に生成AIを活用しています。

インバウンド客の国籍別の傾向分析からレコメンド文章の生成まで生成AIが担うことで、業務時間を大幅に短縮しつつ、個人のノウハウに頼らない業務の平準化を実現しました。

また、戦略案の作成やリスク抽出といった属人化されていた業務を生成AIに代替させ、需要予測データと組み合わせることで、経営の高度化にも繋がっています。

関連記事:生成AIを「適切」かつ「効果的」に活用するには?【観光庁「観光DX」成果報告会レポート2日目】

▲「観光DX」成果報告会より
▲「観光DX」成果報告会より

適切なリスク管理で効果的なAI活用を

生成AIの導入には、個人情報の管理や著作権の侵害、ハルシネーションなどのリスクがありますが、適切に管理・対策することで、人手不足の解消や業務効率化、インバウンド対応強化、そして新たな価値創出などに大きく貢献する可能性があります。

本記事で紹介した活用事例も参考に、最適な生成AIの導入をご検討ください。

関連記事:観光地における生成AI活用のための手引書を公開:観光庁

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<参照>

国土交通省 観光庁 参事官(産業競争力強化):観光地・観光産業の生成AIの適切な活用に向けて(案)
個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起
文化庁:AIと著作権Ⅱ ー解説・「AIと著作権に関する考え方について」ー
総務省 経済産業省:AI事業者ガイドライン(第1.01版)

【7/23開催】育成だけではガイドは増えない!地域の魅力を最大化させる『ローカルガイド』を増やす打ち手とは

本セミナーでは、インバウンド観光における地方誘客や地域消費拡大の鍵として、「ローカルガイド」の可能性に焦点を当てます。

観光地では今なお、多言語で地域の歴史や文化を伝えられるガイドが不足しており、「訪日外国人の受け入れ体制が十分とはいえない」と感じている自治体も多いのではないでしょうか。

そこで注目されているのが、地域に根ざした人々が観光客を案内する「ローカルガイド」です。

2018年の法改正により、国家資格がなくても有償でガイドができるようになり、地域住民や移住者など、さまざまな人がローカルガイドとして活躍できる時代となりました

誰もがガイドになれる今だからこそ、地域の魅力を正しく伝え、訪日外国人に満足してもらえるガイド人材がこれまで以上に重要になっています。質の高いローカルガイドを増やせば、インバウンドの消費を促進し、地域経済への波及効果も大きく期待できます。

本セミナーでは、株式会社羅針盤と株式会社movが共催し、インバウンドを地域でどう受け入れ、地域の魅力をどう伝えるか。そのために欠かせないローカルガイドを増やすための具体的な打ち手や、現場での実践例を詳しくご紹介します。

<セミナーのポイント>

  • いま注目のローカルガイドについて学べる!
  • 地域としてインバウンドをどのように受け入れられるのかがわかる!
  • インバウンドの満足度や消費を高めるための地域の魅力の伝え方について学べる!

詳しくはこちらをご覧ください。

育成だけではガイドは増えない!地域の魅力を最大化させる『ローカルガイド』を増やす打ち手とは【7/23開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
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【インバウンド情報まとめ 2025年7月前編】「予言」の日7/5終了で訪日需要戻るか、6月の香港からの訪日客は33%減 ほか


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この記事では、主に7月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

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「予言」の日7/5終了で訪日需要戻るか、6月の香港からの訪日客は33%減 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年7月前編】

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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