英国に本拠を置くコンサルティング企業大手 EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、AIがツーリズム業界にもたらす影響についてまとめたレポートを発表しました。
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AIの市場規模は約276兆円
Statista(スタティスタ)の統計によると、AI市場は2024年から30年にかけての年平均成長率(CAGR)が35.5%と予測されており、その規模は1兆8,400億米ドル(約276兆円)を超えるとされています。
またゴールドマンサックスのレポートでは、生成AIが産業全体で使われるようになった場合、今後10年間で世界のGDPを7%(約7兆米ドル)増加させる可能性があると指摘されています。
パーソナル化には豊富なデータが不可欠
ツーリズム産業においてもAIの活用は進んでおり、その領域は、個人にあわせた旅行を提案する「パーソナル化」、業務効率化や生産性の向上を目指す「自動化」、チャット形式のやりとりなどの「コミュニケーションの深化」の3つが挙げられています。
レポートでは、特にパーソナル化された情報提供に力を入れる企業が多いものの、AI活用には個人の嗜好や行動履歴といったデータが豊富に必要とされるため、頻度の高くない旅行に関するデータを収集するだけでは、そうしたサービスの提供は難しいと指摘しています。
事業者間のデータ連携がカギに
そのため、旅行以外の行動データも収集できれば、より旅行者の嗜好が明らかになり、パーソナライズされた体験の提供につながるのではないかと、レポートでは述べられています。
これまでの企業は、ロイヤリティプログラムによる会員化や、クレジットカード発行による消費データの収集など、自らがさまざまなサービスを提供することで旅行者の情報を蓄積していました。
しかし中小企業が多いツーリズム産業においては、同様の戦略を行うことは難しいため、地域全体で旅行者のデータを収集する取り組みが始まりつつあります。例えば、兵庫県の城崎温泉における、地域の宿泊情報を集約してDMOで活用する事例や、宮城県気仙沼市における、地域でポイントカードを導入しIDを統合化して観光客のデータを一元管理する事例が挙げられます。
こうしたケースは、事業者が個人からデータを収集し、そのデータを基に個人の嗜好に合う情報を発信するCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)と呼ばれています。
一方で、企業同士の情報を明かすことへの抵抗から、CRMの取り組みがなかなか進まないという現状もあります。そこでレポートでは、今後、顧客から直接データを提供してもらうVRM(Vendor Relationship Management:企業関係管理)が進むのではないかと述べています。
VRMの背景には、レシートの購入履歴など、個人で蓄積しているデータを事業者に共有することで最適なサービスを提供してもらうという考えがあります。これにより、一事業者では断片的にしか把握できなかった顧客像が立体的になるとされています。
これから求められるのは「データを読み解く力」
またレポートでは、生産性向上や経営の高度化につながるAI活用についても、きちんと取り組むべきだと述べています。
これまではデータの分析に個人のスキルが必要でしたが、生成AIの登場により、そうした作業を肩代わりしてくれるようになりました。これからは、AIが分析した結果をどう捉えるか、データを読み解く力を養うことが求められるということです。
AIの登場でビジネスモデルに変化
またレポートでは、生成AIによってツーリズム業界のビジネスモデルにも変化が起こると述べています。
これまでの旅行者に対するレコメンドは、旅行代理店がニーズをヒアリングしたり、OTAが提供するリストから旅行者が好みに近いものを選択するという形がとられてきました。そのため、小売店や飲食店、宿泊施設といったサプライヤーは、在庫を旅行会社、代理店、OTAに提供して送客を待つことが多く、自らが顧客獲得に動くことは厳しい状況にありました。
しかし今後、AIの活用によって旅行者のニーズが可視化されるようになれば、サプライヤーは、提供できる価値を旅行者に直接提案することが可能になるとされています。
レポートの最後では、パーソナル化による旅行者のサービス体験向上において、地域内の事業者や他社のサービスと連携することがますます重要になっていくと述べています。加えて、AIを自社で活用し、AIが分析したデータを読み解く力を養うことで、生産性の向上や経営の高度化につながるとしています。
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EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社:生成AIがツーリズム産業にもたらす影響とは?
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