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先日JNTO(日本政府観光局)が2016年の訪日外客数年間値を発表し、昨年のインバウンドは2400万以上の訪日外国人観光客が日本に来たことがわかりました。前年比21.8%増で、20%以上増をキープし、初の年間値2000万超えを果たしました。

さて、訪日外国人観光客が日本に来た時にはじめて受ける「おもてなし」とは何でしょうか。そう、国際空港や港での入国審査手続きです。その出入国手続きの総称を「CIQ」といい、訪日外国人観光客が急増する現在では、その整備が急務とされています。

 

CIQ体制とは税関・出入国管理・検疫の略称

CIQとは、国境を超える人の移動や荷物の移動において必要とされる手続きのことです。すなわち

  • 税関(Customs)
  • 出入国管理(Immigration)
  • 検疫(Quarantine)

の、それぞれの頭文字を用いた略称で、これを行う機関や施設を指す場合もあります。海外旅行に行った経験のある方であれば、チェックイン後から搭乗ゲートまでの間の手続きを思い出していただければCIQのイメージがわくと思います。

日本へ入国する場合は検疫→入国管理→検疫(QIC)の順で、日本から出国する場合は逆の税関→出国管理→検疫(CIQ)の順で進むことになります。

税関とは→CIQの「C(ustoms)」

税関とは、国境を超える荷物の移動を管理する機関ないし手続きのことをいいます。税関の役割は、関税、国内消費税などの税金の徴収、輸出入貨物の通関、密輸の取締り、保税地域の管理などをしています。

  • キーポイント
    • CIQの「C(ustoms)」
    • 物の出入国を管理
    • 管轄:財務省・税関職員

出入国管理とは→CIQの「I(mmigration)」

出入国管理とは、国境を超える人の移動を管理する手続きです。出入国管理の役割は、出入り口となる国ないし政府が、その出入国を管理し、情報把握することにあります。管轄は財務省で、実際の業務を執り行うのは税関職員です。

出入国管理での重要キーワードが旅券(パスポート)、査証(ビザ)です。旅券(パスポート)は、その旅行者の国籍・身分を証明し、査証(ビザ)は、渡航先の国への入国許可証です。入国審査においては、この2つの証明書をもとに、入国を許可するか拒否するかを判断しています。

  • キーポイント
    • CIQの「I(mmigration)」
    • 人の出入国を管理
    • 管轄:法務省・入国審査官

検疫とは→CIQの「Q(uarantine)」

検疫とは、国境を超える人や物の移動に伴う、病原菌や有害物質の出入りを管理する手続きです。検疫の役割は、出入国する人や輸出入される動物や植物、食品などが、伝染病の病原体などに汚染されていないかをチェックし、それらの出入りを防止することにあります。

  • キーポイント
    • CIQの「I(mmigration)」
    • 病原菌などの出入国を管理
    • 管轄:厚生労働省(人や食品の場合)および農林水産省(動植物の場合)・検疫官

 

手順毎に管轄が異なるのは普通?

以上のように、CIQのそれぞれの手順毎に、管理しているものと目的が異なっているがために、管轄省がバラバラになっていますが、世界各国ではどうなっているのでしょうか。例として中国とアメリカを見てみましょう。

中国の場合、CIQについては

  • CIQの「C(ustoms)」→中華人民共和国海関総署(中华人民共和国海关总署)
  • CIQの「I(mmigration)」→中華人民共和国公安部出入境管理局(中华人民共和国公安部出入境管理局)
  • CIQの「Q(uarantine)」→国家質量監督検験検疫総局(国家质量监督检验检疫总局)

といった割り振りになっています。

一方アメリカは、CIQの全てをアメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP/United States Customs and Border Protection)が担当しています。元来、

  • CIQの「C(ustoms)」→司法省 国境警備隊
  • CIQの「I(mmigration)」→財務省 税関
  • CIQの「Q(uarantine)」→農務省 動植物検疫局

といった割り振りだったものの、2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件を契機に、これらの分散を統合して、現在のアメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)となりました。

そのため、CIQそれぞれの手順によって管轄が異なるのは、他国の場合を見てもスタンダードであると言えます。

 

多省庁が関与する「CIQ体制の強化」

しかしながら、このような縦割りの構造は、それぞれの専門分野に特化出来る反面、なにかしらの対応をする際には密な連携が必要になってきます。冒頭で触れたとおり、CIQは訪日外国人観光客が初めにうける「おもてなし」であり、昨今のインバウンド需要の急速な高まりにより、スムーズなCIQ対応が課題となっています。

「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」をうけ、2015年6月にCIQ要員を緊急増員

CIQ体制の連携に成功した例として、2015年のCIQ対応職員を緊急増員があります。2015年は、円安などの影響により、訪日中国人観光客を中心にインバウンド需要がいまだかつて無いほどに急速に拡大した年です。

この急増を背景に、2015年6月5日、「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」観光立国推進閣僚会議決定し、同月30日には、

  • CIQの「C(ustoms)」
    • 財務省
      • 税関要員を25人を新規、内部振替により9人を増員し、合計34人増員
  • CIQの「I(mmigration)」
    • 法務省
      • 審査待ち時間が長時間化していた地方空港に入国審査官15人を配置、派遣要員として20人増員し、合計35人増員
  • CIQの「I(mmigration)」
    • 厚生労働省
      • 深夜便が増加している主要空港やクルーズ船の寄港地を中心に、検疫官を新規21人、内部振替により7人を増員し、合計28人増員
    • 農林水産省(動植物の場合)・検疫官
      • クルーズ船の寄港地や地方空港に検疫官を新規6人、内部振替により15人増員し、合計21人増員

と、短期間でCIQ職員合計118人を緊急増員し、CIQ手続きの待ち時間短縮に尽力しました。

 

まとめ:CIQ体制の強化は、ストレスのない訪日旅行をしてもらうための基礎

先日の観光庁長官 田村明比古氏の年頭所感でも、

そして、すべての人に快適な旅行を楽しんでもらうため、CIQ、通信、交通、キャッシュレスなど、入国から出国までのあらゆる場面における受入環境を関係省庁と連携し、整えて参ります。

とCIQ体制の強化について触れられています。また、2017年度の航空局予算では、羽田空港の予算が111億円増の609億円で、CIQ施設の整備などの出入国に関わる快適な国際空港の整備に予算が割り振られています。

CIQは訪日旅行において日本が提供する最初の「おもてなし」でもあり、また帰国の際の最後の「おもてなし」でもあります。始まりと終わりにストレスフルであれば、訪日旅行全体の満足度が下がりかねません。リピーターの獲得、そして今後拡大が見込まれるインバウンド需要への対応のためにも、CIQ体制の強化は軽視できないものと言えるでしょう。

<参考>

 

 

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