先月末31日に行われた東京都知事選挙。結果は無所属の新人で元防衛大臣の小池ゆりこ氏が、次点候補に100万票余りの差をつけ、およそ291万票で圧勝しました。
東京都知事に初めて女性が就任することになります。
都知事の任期は地方自治法において任期は4年とされています。
とすると、任期を満了するとなると丁度東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年まで小池氏が東京知事に就任することになります。
今回は、現在のインバウンドにおいて最も重要な観光都市でもある東京の知事に当選した小池ゆりこ氏の政策や発言から、インバウンドに対してどれくらい注力していくのか、どのような影響をおよぼすかを見ていきたいと思います。
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小池ゆりこ氏、東京都知事選圧勝で当選
舛添前都知事の政治と金の問題による辞任で、急遽行われた東京都知事選。
小池氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏といった主要3候補があがったなか、鳥越氏がスキャンダルなどで自滅。
自民党の推薦の増田氏に対して、出馬にあたって起きた自民党との対立を利用し、ひとりで戦いを挑んでいる形を見せ、幅広く無党派層の指示を受けていた小池氏が圧勝する結果となりました。
小池氏のマニュフェストからインバウンド関連を抜粋
今回の都知事選にあたって、小池氏の掲げるマニュフェストはどのようなものだったのかおさらいすると、東京が抱える課題として
- 都政の透明化
- 五輪関連予算・運営の適正化
- 行財政改革の推進
- 都知事報酬の削減
- 特区制度の徹底活用
これらの5要素を掲げていました。
これらの課題解決のために3つの新しい東京として「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」を提言しています(小池ゆりこ公式HPより抜粋)。
これらの政策についてインバウンドに関係しうるものとしては、
- セーフ・シティ
- 都道の電柱ゼロ化、技術開発を支援する。
- スマート・シティ
- 東京ブランドを確立し、観光・インバウンド客をさらに増大させる。
があります。
小池氏は以前から電線地中化に取り組んでいた
スマート・シティにおける「東京ブランドを確立し、観光・インバウンド客をさらに増大させる。」については具体的な政策は、まだ公表されていません。
セーフ・シティの「都道の電柱ゼロ化、技術開発を支援する。」は、小池氏が発足人となって作られた無電柱化推進議員連盟の「無電柱化小委員会」の委員長に就任しており、同小委員会によって作成された「無電柱化推進法案」が2016年中にも成立する見通しです。
地上にある電線や電柱は
- 風景を台無しにする
- 災害時の救助活動を妨げる
- 通行を妨げる
などのデメリットがあり、電線地中化は、観光都市として景観の改善に効果があります。
小池氏のマニュフェストでは「セーフ・シティ」のカテゴリとして扱われているので、災害救助活動妨害や通行妨害の観点から進めているものと思われますが、副次的に観光へのメリットがある政策と言えます。
小池氏のインバウンド関連発言:カジノ構想には賛成
それでは、都知事選にさしあたって受けたメディアのインタビューからインバウンドに関連する小池氏の発言について見ていきましょう。
まずは、かつて東国原氏も都知事選マニュフェストとして取り上げたり、元大阪市長橋本市も政策として提言していたカジノ構想についてです。
カジノなどを含む統合型リゾート〔Integrated Resort(以下 IR)〕構想は「観光立国」のための起爆剤として位置づけられていましたが、近年では停滞ムードにあります。
そのカジノ構想については
<インタビュア>
なかなか進んでいないカジノ構想は賛成しているのか?<小池氏>
インバウンド(訪日外国人)を呼び込むためにはIR(カジノを含む統合型リゾート)はありだと思っています。依存症の問題というが、パチンコはどうなるのか。私は否定的ではありません。
2016年07月18日 【都知事選】小池氏「乱」の真意 新党は? カジノ賛成?:東スポ より抜粋・編集
と、否定的ではない立場をとり、概ね賛成の方向のようです。
もともと政府は、2020年の東京オリンピック対策としてIR開業に向けて動いていたため、小池氏の都知事就任後、どのような動きを見せるか注視していく必要がありそうです。
別のインタビューでは、インバウンドについて消極的な様子も見られる
また、別のインタビューにおいては、マニュフェストでの「東京ブランドを確立し、観光・インバウンド客をさらに増大させる」に関連した質問について
<インタビュア>
それから、都市としての魅力向上という問題がありますよね?<小池氏>
東京ブランディングというのは是非していきたいですね。そして東京はもうすでにブランドだけれども、何にもしないうちにすでに置いていかれちゃったところがあるので。ブランドっていうのは、伝統とか歴史とかそういうものがあって初めてブランドになりますから、だから私はもう一度そのインバウンドの観光客も含めてですね、東京のブランドというのは一体なんなのか。ずっと住んでると意外と分からないものなんですよね。ですから、軽井沢が宣教師によって、ここは素晴らしいといって今のあれになったり、ニセコはパウダースノーすごいじゃないかってオーストラリア人がもう殺到したり。今は中国人。わたしたちはずっといるとかえって分からなくなるので、出来ればブランディングですね。
とにかくオリンピック、パラリンピックですね。なによりも当面はね。私はむしろ、そこまでは色んなことやりますよ。
耐震化であったり。(略)
2016年7月8日 都知事選 小池氏インタビュー 議会のドンに牽制球:Japan In-depth より抜粋・編集
と回答。「東京ブランド」の確立へのイメージを語りながらも、後半ではオリンピックまでは別の政策に力を入れたいことを示唆しています。
地震の防衛大臣としてのキャリアから、災害対策に重点を置いた施策が先に行われる模様。
インバウンドやオリンピックに対しては、他の政策よりは後手に回りそうであると推察できます。
Twitterでは、ほぼインバウンド関連について触れず
また、小池氏のTwitter公式アカウントでのつぶやきを調査すると、ほぼインバウンドについて触れられていないことが分かります。
オリンピックについても、開催決定時に以下のツイートをした他、
Twitter:東京オリンピックの決定を喜ぶ小池百合子氏の投稿(https://twitter.com/ecoyuri/status/376468131796889601)
7月8日の日本外国特派員協会での公約発表会見について動画のシェアをしたのみにとどまります。
Twitter:日本外国特派員協会における公約発表会見についての小池百合子氏の投稿(https://twitter.com/ecoyuri/status/758150112723951616)
まとめ:小池氏就任によるインバウンド対策の強化はあまり見込めない模様
都知事選におけるマニュフェストや関連インタビュー、Twitterでのつぶやきをみたところ、小池氏はインバウンドに対して、そこまで重点を置いていないことが伺えます。
防災の観点から電線の地中化を推進したり、パラリンピックを機にバリアフリー化を進める政策を打ち出しているので、副次的に受け入れ環境の整備は進むことと思われます。
とはいえマニュフェストとして「東京ブランドを確立し、観光・インバウンド客をさらに増大させる」と打ち出しているので、後手に回る可能性は否定出来ないものの、ある程度東京のインバウンド対策の推進もなされるのではないかと思われます。
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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