観光庁が平成28年(2016年)8月10日、「テーマ別観光による地方誘客事業」を発表しました。選定された7件の組織にはプロモーション、マーケティングなどの経費支援が行われ、観光振興が推進されます。
しかし、ここで気になるのが「テーマ別観光」というフレーズ。いったい、どういうものなのでしょうか。今回はテーマ別観光の特色について解説します。
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テーマ別観光とは
旅行者の趣味趣向にマッチした明確なコンセプト
テーマ別観光とは「共通の観光資源を目的に、全国各地に足を運ぶ観光」をさす表現。特定の都道府県ではなく、より広い地域を対象としているのが特徴です。全国各地の寺社仏閣、アニメ作品の舞台になった場所(いわゆる聖地)、酒蔵を巡る……など観光資源の種類に応じて、無数に考えることができます。
訪日外国人観光客の中には、日本というより日本が持っている特定の文化に興味関心を持っている人も少なくありません。たとえば、アニメ好きの訪日外国人観光客が好例でしょう。仮に彼らが「日本の伝統文化に関心がある」と言っても、それはおそらくアニメ作品に関連のある一部の伝統文化のことです。テーマ別観光とは、このようにはっきりとした趣味趣向を持っている人を対象とした観光スタイルのことなのです。
複数の地域間で協力できるメリット
冒頭でも説明した通り、観光庁は経費面での支援を行う「テーマ別観光による地方誘客事業」を行っています。国内の旅行業者、観光業者にとって、テーマ別観光はにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず言えるのは、特定のテーマに高い関心を持つ人に対して魅力的な旅行プランを提案できることです。これは訪日外国人観光客だけでなく、国内の観光客でも事情は変わりません。また、旅行する地域が複数にまたがるため、地域間で事例を共有しやすいのもテーマ別観光の特徴です。同じ課題を持つ地域間で連携し学び合うことで、より効率的に観光振興策を推進できる可能性があります。
地域連携協議会を設立する、周遊プランを作成する、共通マニュアルを作成するなどのコストはかかりますが、メリットは十二分にあるのではないでしょうか。
テーマ別観光の種類:観光資源に合わせて多種多様
テーマ別観光は、特定のテーマを持った観光の総称です。種類は無数に想定できますが、具体的にどのようなものがあるのか「テーマ別観光による地方誘客事業」から見てみましょう。選定されたのは以下の7種類です。
- エコツーリズム
- 街道観光
- 近代建築ツーリズム
- 酒蔵ツーリズム
- 社寺観光 巡礼の旅
- 明治日本の産業革命遺産
- ロケツーリズム
エコツーリズム
エコツーリズムの定義は国や組織によって異なりますが、おおまかには「環境保全に配慮しつつ、自然環境、伝統文化を見る、体験する観光」を指します。伝統文化に関しては農山漁村のように、自然との結びつきが強いものが対象です。
「テーマ別観光による地方誘客事業」では、北海道や群馬などの地域をエコツーリズム地域推進協議会がネットワーク化する予定です。
街道観光
「街道観光」は、あまり有名な表現ではありません。テーマ別観光のために作られた造語と思っても差し支えはないでしょう。ドイツには「ロマンチック街道」「メルヘン街道」などテーマ別にまとめた「ドイツ観光街道」があり、これと類似したコンセプトだと思われます。同国にはフランスのパリ、イギリスのロンドンのような代表的な都市がなく、そのために考案された観光の切り口でした。
「テーマ別観光による地方誘客事業」では、街道観光推進会議(日本歴史街道ネットワーク)が全国の街道地域を連携させ、街道に関係する城下町、宿場町などの歴史的風土を活かしたプロモーションなどを行う予定です。
近代建築ツーリズム
近代建築ツーリズムは、文化的な価値を持つ近代建築をテーマとするもの。まずは国立西洋美術館の基本設計を手掛けたル・コルビュジエの弟子、前川國男氏の建築にゆかりのある地域のネットワークから手掛けます。近代建築ツーリズムネットワークが協議会になる予定です。
酒蔵ツーリズム
酒蔵巡りは、日本酒、焼酎好きに人気があり、よく知られたテーマ別観光のひとつでしょう。酒蔵ツーリズム推進協議会が、全国各地の酒蔵のネットワーク化、共同プロモーションに向けた調査などを行う予定です。
社寺観光 巡礼の旅
社寺観光とは、寺社仏閣に焦点をしぼったテーマ別観光。協議会は、社寺観光地域連携協議会が務める予定です。
徳川家康没後400周年にあたる2016年は、同氏にゆかりの深い5県(静岡県、愛知県、埼玉県、栃木県、宮城県)の社寺をネットワーク化します。
明治日本の産業革命遺産
明治日本の産業革命遺産とは、端島(軍艦島)、三重津海軍所跡、高島炭鉱など日本の近代化に関わりの深い世界遺産群のこと。8県(山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、鹿児島県、岩手県、静岡県)に点在します。
明治日本の産業革命遺産世界遺産ルート推進協議会が各地域をネットワーク化し、周遊できる仕組みづくりなどを行う予定です。
ロケツーリズム
ロケツーリズムとは映画やドラマのロケ地、アニメの舞台(いわゆる聖地)を巡る観光のこと。ロケツーリズム協議会が各地域のネットワーク化を図り、ノウハウのマニュアル化、ロケ地ツアーの商品化などを行う予定。
ロケツーリズムに注力している自治体はすでに数多く存在し、観光スタイルとしても確立されています。「テーマ別観光による地方誘客事業」では、新たに参入する自治体向けの取り組みも行っていくようです。
まとめ:特定のテーマに高い関心を持つ旅行者に魅力を発信
テーマ別観光とは、共通の観光資源を目的に、全国各地に足を運ぶ観光のこと。特定のテーマに高い関心を持つ人に対して魅力的な旅行プランを提案でき、複数の地域間で事例共有しやすいことが特徴です。
観光庁が選定した「テーマ別観光による地方誘客事業」では、エコツーリズム、近代建築ツーリズム、ロケツーリズムなど7つが選定されました。
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