観光需要の増大による地域経済の振興は、日本の社会が直面する課題を解決する一つの手段として注目されています。ところが、観光客の来訪や増加は、オーバーツーリズムや近隣住民の反感などの問題も生み出しています。
こうした問題点を解決するための取り組みが福岡の宿泊施設ですすめられています。
福岡県福岡市で平成28年(2016年)12月1日、改正旅館業法施行条例が施行され、民泊が解禁されました。早くも営業許可の申請を行う事業者が現れています。
北九州に位置する福岡県は、韓国をはじめとするアジア圏からの訪日外国人観光客に人気のある地域です。
宿泊施設は申告な部屋不足に陥っており、そこに目をつけて違法な民泊サービスが横行。10月には、営業許可を取らずに運営されている物件が約1,500件あると報道されています。
東京都、大阪府、京都府に次ぐ4番目の多さであり、これを背景に福岡では民泊に対して反発する市民が少なくないと言われています。
そのような状況下で行われた今回の民泊解禁は、いったいどのような内容になっているのでしょうか。
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福岡は観光客を受け入れる民泊事業者と市民の双方に配慮
福岡市の取り組みの特徴として、まず挙げられるのは民泊事業者、近隣住民の両者に対して配慮を行っていることです。
事業者向けには、営業開始までの流れを掲載した「『民泊サービス』をお考えの方へ」というポスターを製作し、民泊を始めるうえで必要な知識、申請方法などについて分かりやすくまとめています。
その一方で、民泊サービスを開始する前に近隣住民に周知するよう求め、トラブル回避に努めています。対象となる期間は民泊の営業許可申請を行う1~3週間前で、物件、オーナーの連絡先などを対面もしくはポスティングで伝えなければならないとしています。
民泊事業者向けのWebページ内で、「市民の皆様へ」と表題を設け、
「近隣で違法と思われる施設がありましたら,その施設がある区の保健福祉センター(保健所)衛生課にご連絡ください。なお通報にあたっては,施設の場所(所在地や部屋番号等)や建物の外観が分かる写真など、調査に役立つ情報を添えていただけると助かります」
と、違法な民泊サービスの通報先を紹介している点からも、安全、安心な暮らしと民泊サービスを両立させたいという考えの強さがうかがえます。
福岡市は民泊事業者に問題解決を期待?規制緩和で支援
福岡市で民泊の許可申請を最初に行った企業・シェアリングホテルによると、同市は「日本で最も(民泊に関する法令が)緩和された場所」。どのような特徴があるのか見てみましょう。
フロントの設置義務を撤廃:その代わりに24時間対応できる管理事務所を部屋の近くに
福岡市ではフロントの代わりに、24時間対応する「管理事務所」を設置するよう定められています。
専用の施設を用意する必要はないものの、施設から「速やかに駆けつけることができる範囲」内に設置する必要があります。
具体的には、管理事務所から徒歩や自動車などの移動手段を使って、10分以内に行ける範囲を指します。
- 徒歩:80m/分
- 自転車:180m/分(目安)
- バイク・自動車:250m/分(目安)
各移動手段の速度は、上のように想定されています。徒歩で向かうならば半径800メートル以内、バイクや自動車なら半径2.5キロ以内に管理事務所を設置しなければなりません。これらの規則によって、民泊オーナーの義務を緩和するとしつつも、スピーディーに近隣住民からの苦情に対応できる体制づくりを求めた形になります。
また、民泊に利用される部屋の前には、出入りを確認するためのカメラ、事務所に連絡が取れる通信機器を設置する必要があります。
郵便受けや玄関前などで、近隣住民が苦情などを伝えられる緊急連絡先を記載
民泊サービスの提供開始前に、該当の物件は郵便受け、玄関の扉付近など最低2か所に、旅館業の営業施設である旨や「施設名」「緊急連絡先」「責任者名」を掲示する必要があります。
マンションのような共同住宅の場合、郵便受けは外部の人間が見られる場所で、反対に玄関は同じ建物の住民が確認しやすい場所になります。
福岡市の民泊は観光需要のとりこみとトラブル回避を成功させるか?
福岡県福岡市で平成28年(2016年)12月1日、改正旅館業法施行条例が施行され、民泊が解禁されました。
最速で営業許可申請を行った企業・シェアリングホテルによると、同市は「日本で最も(民泊に関する法令が)緩和された場所」とのこと。フロント設置義務が撤廃され、その代わりに24時間対応する「管理事務所」を設置するよう求めています。
福岡県はアジア圏からの訪日外国人観光客に人気のある地域であり、ホテルの部屋不足から違法な民泊が横行していました。民泊に対して反発する市民が多いと同時に、民泊が強く求められている地域でもあります。
民泊事業者に対して求めている規則の内容を見てみると、民泊の提供しやすい環境を可能な範囲で実現しようとしている意図がうかがえます。
同時に、違法な民泊を見つけたときに通報しやすい仕組みを敷くことで、トラブルを回避し、近隣住民の不安解消に向けた体制も整えているようです。
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