近年、あらゆる分野で活用が進んでいる最先端テクノロジー。AIやVR、AR などがその例にあたります。観光分野に目を当てても地域の魅力を新しいかたちで伝えるためにこれらの技術の活用がすでに始まっています。実際に 海外旅行者の間でこういったテクノロジーの利用意向はどの程度のものなのでしょうか。 スペインのIT企業Amadeusの資料をもとに説明していきます。
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旅行中の最先端技術を利用したアクティビティの体験意向 実際はどれくらいなのだろうか
スペイン・マドリードに本社を置くIT企業Amadeusでは「Amadeus Journey of Me Insights」を作成しています。これは、Amadeus社がイギリス・ロンドンのリサーチ会社YouGovと共同で 2017年5月に実施 した調査をもとに作成された アジア太平洋地域の海外旅行者に関する調査レポート です。アジア・オセアニア14か国(オーストラリア・中国・香港・インド・インドネシア・日本・韓国・マレーシア・ニュージーランド・フィリピン・シンガポール・台湾・タイ・ベトナム)出身かつ過去1年間に飛行機で旅行した人6,870人が調査対象となりました。
上記の表は同レポートをもとに アジア・オセアニア各国の海外旅行者が旅行をする際にどのような最先端のテクノロジーを利用したアクティビティを体験してみたいと思うのかに関してまとまたもの です。この表から把握できることについて解説していきます。
この図からわかる最新技術×インバウンドに関する2つのポイントとは?
①意外にも最も利用意向が高いものはARという結果に:ポケモンGOの流行が背景に?
アジア・オセアニアの海外旅行客の間でもっとも旅行中に利用してみたいと答えた人が多かった選択肢は 「ARを利用したもの」 でした。利用意向度は3を最高値として1.4となりました。AR(現実拡張技術)とは、コンピュータ-を用いて現実の環境に情報を付加する技術のことです。
ARの利用意向度の高さには「ポケモンGO」の流行が関係しているかもしれません。 世界的に知名度の高い「ポケットモンスター」の世界観を採用した位置情報ゲームであるポケモンGOはAR(現実拡張技術)を採用しており、スマートフォン上に映しだされる現実世界と対応したマップにはポケモンが表示され、戦闘したりゲットしたりすることが可能となっています。世界的に流行した「ポケモンGO」は、同時にAR技術の認知度向上にも貢献したといわれています。
世界中でブームを起こしている「ポケモンGO」 インバウンドビジネスへの影響は?
執筆時(2016年7月22日)の約2週間前、7月6日にリリースされたばかりにもかかわらず、国内外で大きな話題になっているスマートフォン用ゲームアプリ「ポケモンGO」。世界規模で膨大な経済効果が発生することが見込まれており、ゲームメディアのみならず、新聞各社もこのブームを報じています。「ポケモンGO」の特徴は室内でプレイする通常のゲームとは異なり、プレイヤーが屋外に出歩く必要があること。熱心なプレイヤーは遠くまで足を運ぶことも少なくなく、観光業への相性も良いと思われます。しかし、国内の旅行者...
②オセアニア圏+インド・シンガポールでは360度動画の需要が大きい
2番目に利用意向が高かった選択肢は 「360度動画」 です。360度動画とは上記の動画のように、視聴者が視点を上下左右360度全ての角度に動かしながら対象物を見ることが可能な動画のことです。PC/ラップトップの場合マウスやタッチパネルを操作することで対象物を様々なアングルから視聴することができます。スマートフォンの場合、端末の向きや傾きを変えることで対象物を他の角度から視聴することができます。近年話題のGoProなどのカメラで360度動画は撮影することができ、最近では一般旅行客の利用も目立っています。
Amadeusの同レポートによると、旅行中の360度動画の利用意向は、特にオーストラリア、インド、ニュージーランド・シンガポールからの旅行客の間で高くなっている とのこと。これらの外国人観光客をターゲットにする場合、旅ナカのみならず旅マエのプロモーション時にも360度動画の活用は有効な施策となってくるかも しれません。
アジア・オセアニアの観光客の間でARやVR・360度動画といった最先端テクノロジーの旅行中の利用意向は、最高でもAR技術の1.4/3.0となっており、突出して高いとは言えない状況です。しかし、他の旅マエ・旅ナカにおいて他のコンテンツとの差異化を図る場合、活用も一つの手かもしれません。 これらのテクノロジーは近年の日本のインバウンド市場にどのように組み込まれているのでしょうか。いくつかの例を確認してみましょう。
ちなみに日本ではこんな風に最先端テクノロジーがインバウンド観光に組み込まれている!
凸版印刷では体験型VR観光アプリ「ストリートミュージアムアプリ」を開発
凸版印刷では全地球測位システム(GPS)とVRコンテンツを組み合わせた観光アプリ「ストリートミュージアムアプリ」を開発しています。同アプリの特徴は、現存しない城郭などの史跡を再現した映像を、スマホやタブレット端末で位置情報と連動して視聴できるという点。VRコンテンツや音声付き映像解説が閲覧できるできるだけでなく、実際の地図と連動した古地図を表示することも可能となっています。
インバウンドビジネスにもVRコンテンツを活用! プロモーションなどに役立つ製品事例
「Oculus Rift」「PlayStation VR」「Gear VR」「HTC Vive」などのヘッドマウントディスプレイの登場により、盛り上がりを見せているVR市場。よく話題になるのはゲームをはじめとしたエンターテイメント分野での活用ですが、インバウンド分野での利用を模索する動きも現れています。これまでの映像よりも没入感が強いと言われており、各種業界から注目を集めているVR技術はインバウンドビジネスでどのように役立てられるのでしょうか。今回は、その各種事例をご紹介しましょう。 目次...
シャープ製「RoBoHoN」や日立製「EMIEW3」など ロボットが訪日客をおもてなしするケースも
シャープ株式会社が開発した「RoBoHoN(ロボホン)」と呼ばれるモバイル型ロボット電話が、明治座で行われるインバウンド向け公演「SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」に訪れる訪日外国人観光客に外国語で同公演の内容紹介や、明治座の歴史、明治座館内で販売されるお土産や館内設備の案内を実施していました。また、日立製作所ではJR東日本と共同で対話型のヒューマノイドロボット「EMIEW3」を活用し、訪日外国人観光客との質問応答の実証実験を実施。ロボットを通じて訪日外国人観光客をおもてなしするケースが国内では徐々に増加 してきています。
ロボットやAIが訪日客をおもてなし?明治座・訪日客向け公演SAKURA
2016年の訪日外国人観光客数は史上初めて2,000万人を突破しました。訪日外国人観光客数は異例のペースで増えており、JNTOは2020年の訪日外国人観光客数4,000万人誘致を目指して、これからもインバウンド誘致に向けた取り組みを加速させていくとしています。国内では訪日外国人観光客受け入れ環境の整備を目的に、日本の持つ技術力を生かし、ロボットやAIなど最先端技術を活用したインバウンド対策が始まっています。演劇興行を主に行う「株式会社 明治座」でも新たな試みを開始します。 目次明治座 コミ...
東京駅でロボットが訪日外国人観光客をおもてなし:JRと日立が対話型ヒューマノイドロボット導入へ 「AI」×「インバウンド」の可能性とは
年々増え続ける訪日外国人観光客に伴い、2020年の東京オリンピックに向け政府は、観光ビジョンの中で訪日外国人観光客数の目標を、4000 万人まで引き上げました。しかし、訪日外国人観光客の受け入れにおいて、最も大きな問題になっているのが「外国語対応」。訪日外国人観光客が旅行中に困ったこと:観光庁より引用観光庁により発表された「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」では、訪日外国人観光客が、旅行中に困ったことや、受け入れ環境のニーズに関して紹介されています。「旅行中に困っ...
まとめ:他のコンテンツと差異化を図るツールとしてこれからは最先端テクノロジーには着目すべきかも
Amadeusのレポートによると、アジア・オセアニアの観光客の間で もっとも注目度が高かった最先端テクノロジーはAR という結果になりました。また、360度動画もオセアニア圏では関心度の高いコンテンツとなっている ようです。しかし、アジア・オセアニアの観光客の間でARやVRなどの最新技術の利用意向度は未だに高いとは言えないため、旅マエ・旅ナカにおいて他のコンテンツとの差異化を図る1つの手段としてとらえておくのがちょうど良いかもしれません。
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<参照>
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