近年の日本国内の観光産業ではDMOを設立することによって 「稼げる観光地づくり」 が推進されています。日本国内ではすでに100を超えるDMOが存在しており、近年のインバウンド市場の好調ぶりから訪日外国人観光客誘致に乗り出すDMOも増加しています。こういったDMOでは、インバウンド誘致にどのような取り組みをしているのでしょうか。今回は、高山市ブランド・海外戦略部海外戦略課 の取り組みをご紹介します。
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高山市ブランド・海外戦略部海外戦略課とは?
高山市ブランド・海外戦略部海外戦略課とは、訪日外国人観光客誘致や高山市の商品の海外販売、海外との交流を進めることによって飛騨高山ブランドを広くPRするための組織です。 岐阜県高山市は人口8万9千人ほどの小さな市ですが、訪日外国人観光客誘致において大きな成功をおさめています。
インバウンド誘致において大きな成功をおさめる高山市:2016年には定住人口の5倍にあたる46万人の訪日客が訪問
年 | 高山市に宿泊した訪日客数 | 対前年比率 |
---|---|---|
2011年 | 95,000人 | - |
2012年 | 151,000人 | 159% |
2013年 | 225,000人 | 149% |
2014年 | 280,322人 | 125% |
2015年 | 364,471人 | 130% |
2016年 | 461,253人 | 127% |
2011年には岐阜県高山市に宿泊した訪日外国人観光客は、約9万5千人でしたが、2016年には 約46万人 まで増加。5年間で 約5倍の増加 となっています。また、約46万人という数字は高山市の定住人口の 約5倍にあたる数字 となっており、岐阜県高山市におけるインバウンド観光の規模の大きさが把握できるでしょう。
外国人宿泊客の出身地域 | 割合 |
---|---|
アジア | 59% |
ヨーロッパ | 20% |
北米 | 6% |
オセアニア | 5% |
中東 | 2% |
中南米 | 1% |
その他 | 7% |
2016年に岐阜県高山市に宿泊した訪日外国人観光客を出身地域別に表したのが上記の表です。2016年に岐阜県高山市に宿泊した訪日外国人観光客のうち、欧米豪圏が31% を占めており、これは全国平均よりも高い数字に。アジア圏のみならず、欧米豪圏出身の訪日外国人観光客の取り込みにも成功しているといえるでしょう。 多くの外国人観光客が訪れる岐阜県高山市。その中心となる役割を果たしている高山市ブランド・海外戦略部海外戦略化では、どのようなインバウンド対策に取り組んでいるのでしょうか。
①多言語対応の充実:パンフレットや観光マップは11言語で作成
岐阜県高山市では、インバウンド向けに多言語対応を充実させています。 例えば、高山市街地の観光スポットを記載した「飛騨高山 ぶらり散策マップ」を 11言語(日本語・英語・中国繁体字・中国簡体字・韓国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・イタリア語・タイ語・ヘブライ語)で作成しています。
加えて、高山市の基礎情報や観光スポット、イベント、ショッピング情報、宿泊施設情報などを紹介する公式観光サイトも同じく11言語で運営しています。動画や写真などを多用 することで岐阜県高山市の魅力を視覚的に発信している点がポイントです。
②ムスリム訪日客の受け入れを本格化:ハラール対応店 礼拝堂付きの観光施設を記載した「散策マップ」を作成
また、岐阜県高山市では ムスリムの訪日外国人観光客向けに市内散策マップを作成 しています。マップ上では、ハラール対応の飲食店 や 礼拝所 を設置している観光施設などが掲載してあります。
以前の訪日ラボの記事でもご紹介したように、ムスリムの訪日外国人観光客は今後増加 していくことが予測されています。こうした背景から、岐阜県高山市ではムスリム対応店舗数が増えています(2016年現在、15の飲食店 8つの宿泊施設で対応済み)。ムスリムの訪日外国人観光客に特化したインバウンド対策を重点的に行っている点も岐阜県高山市が多くのインバウンド誘致に成功している要因の一つでしょう。
「何故、今ムスリムなのか」を知るための7つのキーポイント
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③JNTO認定の観光案内所を設置:2016年の問い合わせ件数は9万件超え
岐阜県高山市では、JR高山駅前に「飛騨高山観光案内所」を設置しています。飛騨高山観光案内所は、JNTO(日本政府観光局)認定の訪日外国人観光客向け観光案内所 であり、平成25年に(*)カテゴリーⅡに認定されています。訪日外国人観光客は英語で高山の観光情報に関して問い合わせることができます。また、無料でインターネットも利用可能です。
飛騨高山観光案内所を利用する訪日外国人観光客は年々増加しており、平成23年に9,334件であった問い合わせ件数は平成28年には 90,719件 にまで増加しています。岐阜県高山市では観光案内所を設置することで、訪日外国人観光客に快適に高山観光をしてもらえるようにしています。
*JNTOでは、訪日外国人観光客向け観光案内所を、提供されているサービスの内容を基準にI~III(Ⅲが最高)までの3つのカテゴリーに分類し、JNTO認定観光案内所として認定している。詳しくは以下の記事へ。
鎌倉駅のインバウンド対策とは?:JR東日本が駅舎リニューアル、訪日外国人向け「観光案内所」拡充も
格安航空会社(LCC)の普及や、中国や東南アジア諸国などを対象にしたビザの条件緩和、また円安が進んだことなどを理由に、訪日外国人観光客の数が増え続けています。訪日外国人観光客に人気の観光地は、以前であればゴールデンルートに偏っていました。しかし、最近では今まで注目度の少なかった地方部にも訪日外国人観光客は増えています。そういった背景を踏まえ、地域の魅力をより多く発信するため、鉄道会社や自治体は、駅や訪日外国人観光客向け観光案内所のリニューアルを実施しています。 目次JR東日本株式会社「JR...
④全国初となる商店街単独の免税カウンターの設置:インバウンド消費を喚起
ショッピング好きで知られるアジア圏出身の訪日外国人観光客が60%を占めている岐阜県高山市では、訪日外国人観光客による市内での消費を喚起するために、官民が協力し 消費税免税一括カウンター を本町三丁目商店街に設置しています。商店街単独で消費税免税カウンターを設置するのは 全国初の取り組み だとのこと。訪日外国人観光客向けにどこに免税店が存在しているのかをわかりやすく紹介する免税店マップも作成しています。
免税制度改正
2018年度に、 訪日外国人を対象とした消費税の免税制度が拡大されました。政府は2020年に訪日外国人4,000万人、消費額8兆円という政府目標を達成するために煩雑な免税制度を簡素化し、免税店の増加、さらなる訪日客の消費の後押しを狙っています。ここでは、訪日客の消費トレンドなどの免税制度改正の背景を紹介し、今までの免税制度と今後の免税制度の違いを徹底解説します。また、政府主導の免税制度の周知についてだけでなく、直接訪日客と接する免税店の様々な取り組みについても紹介します。インバウンド対策な...
まとめ:年間46万人のインバウンド誘致に成功する高山市のインバウンド対策を参考に
人口8万9千人ほどの岐阜県高山市は、2016年に約46万人の訪日外国人観光客の誘致に成功しています。高山市ブランド・海外戦略部海外戦略課を中心に多岐にわたるインバウンド対策に取り組んできた結果といえそうです。ミシュラングリーンジャポンでも3つ星評価を獲得しており、岐阜県高山市が整備するインバウンド受け入れ環境は著名な旅行ガイドからも高く評価されています。 訪日外国人観光客の誘致を検討している観光協会などにとって、岐阜県高山市の取り組みは非常に参考になるものでしょう。
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<参照>
- 日本政策投資銀行:観光DMO等活動優良事例集 -なぜDMOが必要なのか-
- 岐阜県高山市:高山市におけるインバウンドの取り組み
- 岐阜県高山市:高山市海外戦 略
- 全国市町村国際文化研究所:インタビュー:高山市 ブランド・海外戦略部長 田中 明さん(下)
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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