先週、都内でバケーションレンタルEXPOが開催されました。Airbnb、ホームアウェイ、楽天、途家(トゥージア)や、民泊を扱うブッキング・ドットコムなども勢揃いしていました。昨年から開催されているこのイベントですが、今年は、6月15日から施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)もあり、大変な盛り上がりでした。
さて、今回は、その民泊新法で、日本の民泊市場がこれからどう変わるのか?を見ていきます。
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住宅宿泊事業法(民泊新法)はメリットなし?
2017年6月「住宅宿泊事業法」、通称「民泊新法」が2017年6月に国会を通過して成立しました。民泊新法とは、簡単な届出で住宅地でも1泊から住居を使って宿泊事業を行うことができる法律のことです。ホテルや旅館など、これまでも存在した旅館業法に基づく宿泊施設ではなく、住宅で宿泊事業を可能にするための新しい法律です。
詳しく見ていきましょう。
住宅宿泊事業法(民泊新法)では、営業日数は180日に制限される
今回の法律改正では、申請・許可をもらえれば、比較的容易に民泊運営ができるという事ではありますが、営業日数180日という大きな制限があります。(下記赤線を参照ください)
そのため、民泊提供者にとって、旅館業法を取得しない限り、提供しようとする施設を単に投資運用としての民泊活用は不可能という事です。ここで、家主同居型と家主居住型とがありますが、投資運用目的の家主居住型について、この180日以外、一体どのような運営方法が考えられるでしょうか?
投資運用目的の民泊 180日規制に対応するにはどのような手段が?
おそらく
- レンタルスペース(時間貸し等)として活用する
- 賃貸業をメインとし、それ以外を民泊活用する
といった事になると考えられます。
元々賃貸業を営んでいる方は、空室状況になるときに民泊運営を行う事で、収益補完をすることができるので、この法案は有効しやすいものになっていると言えると思います。しかし、民泊運営を考えている個人にとっては、それなりにハードルが高いものになっています。
個人にとっては、レンタルスペースとして貸し出すか、賃貸業を始めるか、または簡易宿所や旅館業の許可を取得し運営する、のいずれかになるわけです。
更に、下記 法案に記載されている通り、
民泊新法(住宅宿泊事業法)法案第3条
都道府県(第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。
都道府県や保健所が設置されている市や区は『必要に応じて条例を定め180日の上限をさらに制限することができる』となっており、すでにいくつかの地域では禁止になっているところも。
例えば、東京都であれば、中央区、台東区、荒川区、大田区等は全面禁止になっています。
という事で、180日以内の運営という制限がある事、そして運営できない地域があるという事で、メリットを受けない方も多いというのが実情です。
これらの要因があり、今回の民泊新法が施行される事で、市場が急成長していくか?というと、このインバウンド業界内でも懐疑的に見る人も多い気がしています。
多面的に分析すれば、民泊市場はやはり面白い:実は世界でも随一の伸びを見せている日本の民泊市場
今後の民泊について懐疑的に見る人も多いですが、一方で、日本の観光業を見ても、その他業界を見ても、民泊はやはり、引続き特に注目すべき対象であることは言うまでもありません。
前述で、180日以内の運営制限をあげましたが、海外を例にとると、世界屈指の民泊市場である英ロンドンでは年90日以内、Booking Holdingsの本拠地であり観光大国の一つでもあるオランダ・アムステルダムでは年60日以内の運営制限があり、それらを踏まえた上で日本では180日以内へ変更した経緯を踏まえれば、ある程度、”攻めの法改正”とも捉えることはできるはずです。
また、市場成長の期待もやはり大きいです。日本のホテル市場の規模はおよそ1.7兆円(15年見込み:矢野経済研究所)とみられていますが、民泊の市場規模は470億円(2016年)から2020年には2,000億円まで成長するともいわれております。なお、内閣府の試算によると、民泊などスペースシェアで将来の潜在市場規模は1.3兆円です。
それに加え、Airbnb社の2018年上半期予約数ランキングにおいて、全世界で東京が1位、大阪が3位にランクインする等、世界的にみても、日本の民泊は大きな盛り上がりを見せています。ちなみに、2位はフランス・パリ、4位はアメリカ・ニューヨークです。
なお、余談になりますが、Airbnbによると、同社のTrip『体験』コンテンツも、2017年末時点の予約数世界一は東京です。1週間あたりの参加人数は2017年1月から15倍以上に増加というとんでもない伸び率になっています。
さらに、日本政府としては、2030年までに6000万人の訪日観光客を迎える目標を掲げていますが、中でも宿泊施設数の枯渇をどう解決していくかが、今も今後も重要課題です。そのため、今後の法案改正も可能性としてあるかもしれません。
大手企業も続々と民泊市場に進出:これからはAirbnb一強から多様化にすすむ?
そして、今回の民泊新法施行が決まった後、楽天や、その他賃貸業など約40社が民泊への本格参入をはじめています。下記を参照ください。
こうした観点から考えれば、民泊業者側は、民泊新法ができても引続きハードルはありますが、市場全体の盛り上り・長期視点から考えれば、この市場は必ずしも曇りでもないと筆者は考えています。
むしろ、既に市場として盛り上がりを見せており、かつ企業参入が激しい事を踏まえると、より激戦になり、Airbnbがこれまで一強であったのに対し、各社がそれぞれの魅力を出し、ユーザーはそのシチュエーションやニーズに沿ってそれぞれのサイトを使い分ける、そんな市場の拡大・多様化がこれから出てくると筆者は楽しみにしています。
ユーザー側から考えてみても、可能性を感じます。Airbnbなどを見れば、東京中心に既に様々な民泊物件がありますが、埋もれている物件もあります。画像などの見せ方がよくなく、本来の魅力を出せていないだろうと思わせる物件も多数ありますし、まだまだ多様なニーズに沿った物件があってほしいとも思いますし、特に地方エリアだと物件が急激に少なくなるので、まだまだ伸び代はあると感じています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、民泊新法が施行される中、全体概要やよく言われる懸念点も踏まえ、筆者としての推測を述べさせていただきました。
確かに、今回の民泊新法によってメリットを享受する方は限定的であり、それが市場の成長スピードを落としているということもあるかもしれません。実際、今回ご紹介した課題点はそのうちの一部です。課題は沢山あります。
しかし、それだけでこの民泊市場を評価するのはよくありません。世界と日本とを比較した市場全体の盛り上り・長期視点・ユーザー視点から考えれば、民泊市場は引続き注目すべき市場であることはお分かりになるかと思います。弊社リーゴとしても、現状ツアー・アクティビティサイトを展開していますが、これから民泊カテゴリも追加し、観光客の探す手間をなくすサポートを行って参ります。
<参考>
- 国土交通省 観光庁 住宅宿泊事業法
- SPIKE 国内民泊市場規模 成長予測
- 世界1位に東京、民泊Airbnbの旅行トレンド調査で 2018年
- 民泊大学 民泊業界マップ2018
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