2020年の東京オリンピックに向けて、サマータイム導入が検討されています。最近の日本の酷暑は五輪・パラリンピック選手への負担が大きいため、2時間を前倒しにすることで少しでも涼しい時間に競技してもらおうという考えです。一般的には観光業や飲食業というインバウンド業界にとって、サマータイムは好ましいものとされているようですが、イスラム諸国からの訪日ムスリム客は減るかも知れないという声もあります。
意外と知られていないのは、サマータイムの本場であるアメリカ・ヨーロッパでもその評価はまちまちで、サマータイムを採用却下したり、導入後廃止してしまった国もあります。世界のサマータイム事情と訪日外国人に与える影響をまとめました。
『この暑さでホントにオリンピックやるの?』酷暑の開催が予想される2020年東京五輪
日本全国で連日猛暑が続いていますが、7月17日には日本各地で35℃を超える猛暑日となりました。なお7月18日には岐阜県多治見市で40.7℃を記録。これは気象庁によると7月の中で歴代2番目に高い記録となります。同じく18日には岐阜県美濃市で40.6℃、愛知県豊田市で39.7℃など歴代でも非常に高い気温が2018年に記録されています。17日には愛知県豊田市で、小学生が校外学習の後に体調不良を訴え、熱中症が原因で亡くなるという痛ましい事故も発生しています。こうした連日の猛暑から、2020年に開催...
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戦時下に生まれ・エネルギー危機で定着したサマータイム
サマータイムの始まりは第一次世界大戦下のドイツで、石炭採掘の日中の労働強化のために始まったと言われます。ドイツを真似てヨーロッパ諸国が自国にも導入したのです。
大戦後はいったん廃止されたものの、第二次世界大戦でまた復活します。その後、サマータイムが欧米で本格的に定着したのは1970年代のエネルギー危機の時代でした。理由は石油不足による電力消費抑制のためです。
サマータイムには「損する人と得する人」がいるため、その誕生以来、賛成派と反対派による議論は尽きません。アメリカの例でいうと石炭採掘会社やコンビニ業界、外食業界はサマータイム導入を熱心に主導した経緯がありました。インバウンド業界にとっても、サマータイムは好ましいものとされています。
一方で、サマータイムに反対してきた業界としては農業や酪農などが挙げられます。農作物の収穫は朝露が乾いた後が好ましく、牛は搾乳時間を変えないほうが体調が良い。自然や生き物相手の業界では、人為的な時間の変更が必ずしも現実とうまくマッチしません。しかしそんな業界でも消費者とつながるための市場や店舗への流通は2時間前倒しになってしまうのです。
日本サマータイム導入で「損する人・得する人」インバウンド業界に与えるメリットとデメリットを検証
2020年の東京オリンピックに向けてサマータイム導入が本格的に検討され始めました。五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が二度にわたり官邸で安倍首相に直談判を行い、積極的な働きかけをしたのが功を奏した形です。しかし政権内の菅義偉官房長官は慎重論を表明しており、ネット世論でも賛否両論が繰り広げられています。なぜオリンピックのためのサマータイム導入に批判が相次いでいるのでしょうか?改めてサマータイム導入のメリット・デメリットを確認し、インバウンドに与える影響を考えてみましょう。インバウンド...
世界に見られるサマータイム見送り・廃止の流れ
1970年代から導入され、欧米中心に定着してきた感のあるサマータイムですが、最近では見直しの議論も盛んのようです。
①世界的観光地ハワイではサマータイムは「節約にならない」として却下
アメリカでは3月の第2日曜から11月の第1日曜までほぼ全土でサマータイムが実施されます。しかしアメリカの世界的な観光地ハワイ州・アメリカで最も気温が高いアリゾナ州はサマータイムを導入していないのをご存知でしょうか。
ハワイは常夏の国ですし、アリゾナは全米で最も暑いとされる地域です。省エネ効果を狙ったところで早朝からエアコンをかけるだけ無駄というのが理由とされています。
つい最近はオーストラリアでもサマータイム採用が見送りされました。東南アジアなどでもサマータイム採用国はほとんどありません。世界的に暑い地域ではサマータイムがあまり採用されていません。
海外事例に学ぶ、訪日米国人観光客のインバウンド対策:積極的なプロモーション、わかりやすい案内が不可欠
日本から離れた国であるアメリカはアジア圏の訪日外国人観光客と比較すると人数が少ないものの、訪日数は100万人を超え、市場シェアで5位になっています。訪日米国人観光客には特有の需要があり、可能性を秘めた市場だと言えます。インバウンド対策を講じるうえでどういった点に着目する必要があるのか、海外事例をもとにご紹介します。 目次観光の海外先進事例:ハワイの対策事例に学ぶ複合性を持つ観光地日本のインバウンド対策は観光資源のプロモーションにある訪日米国人観光客のインバウンド対策としての米Airbnbの...
②フィンランドではサマータイムを廃止、EUにも廃止を要望
北欧のフィンランドでは白夜にはサマータイムによるメリットがないとしてサマータイムを廃止しました。加入しているEUに対してもサマータイム廃止を要望する署名が7万件も寄せられるなどしています。
現実的な理由として、隣接したロシアなどが2011年にサマータイムを廃止したため、商取引に不便が生じていたことがあるそうです。
ところが、サマータイムを廃止すると、今度はサマータイムを採用しているEUとの取引に不便が生じます。サマータイムを導入している国同士の取引は問題が起きませんが、一方の国だけサマータイムを導入していると不都合が多いようです。
③ロシアでは2011年にサマータイム導入するも、わずか3年で廃止
ロシアでも2011~2014年まで実験的サマータイム導入が行われました。しかし不評のためわずか3年で廃止されました。
ロシアは東西に広大な国土を持っているため、もともと国内で大きな時差があります。もともと9つもあったロシアのタイムゾーンはサマータイム導入でさらに2つ増え、11もの異なるタイムゾーンを国内に抱えることになりました。この対応コストは膨大だったと言います。
また、国民の健康被害が増えた・導入1年後の2012年の交通事故数が増えたという理由からプーチン大統領が廃止を宣言しました。
サマータイム導入でイスラム教国からのムスリム訪日客が減る?
昨今、インバウンド業界で注目されているムスリム訪日客にも影響が出ます。もし仮に、日本のサマータイム時期がラマダンと重なると、ムスリム訪日客が減る可能性がありそうです。
「何故、今ムスリムなのか」を知るための7つのキーポイント
日本のインバウンド業界にとって訪日中国人観光客は長年主役といっても過言ではないポジションに位置していました。しかし近年では、一人当たりのインバウンド消費額が比較的大きく、訪日旅行時にディープな体験を求める欧米圏出身の訪日外国人観光客も大きなターゲットとされています。インバウンド業界のターゲットは近年になって多様化してきており、その中でも特に注目しされているのがムスリム(イスラム教徒)のインバウンド市場 です。インバウンド市場や各国の訪日外国人に関する調査やもっと詳しいインバウンドデータ知る...
ラマダンとは、イスラム教の戒律で毎年1か月間行われる日中食事をしてはいけない時期です。日没までは水すら口にしてはならないのです。ラマダンの時期は毎年少しづつずれるが、だいたい初夏~夏本番に重なるのです。
もしサマータイム導入でムスリム訪日客の活動時間が2時間前倒しになると、日没まで絶食することが求められるムスリム訪日客の日中絶食は2時間も長くなることになります。熱中症の危険も高まります。
「旅行中はラマダンを延期してよい」というルールもあるようですが、個人の判断によるため、敬虔なムスリムが旅行中でもラマダンを行う可能性は充分あります。
まとめ:サマータイム導入のインバウンド業界への影響は極めて大きい・各国の例をみて慎重な議論を
一般的にサマータイム導入で「得する業界」とされるインバウンド業界ですが、各国の事情をよく見るといろいろな問題もはらんでいるということがわかります。特に訪日外国人の中でもムスリム訪日客にとっては影響が出やすく、ラマダンとサマータイムが重なると日本への渡航を見合わせる人もでるかも知れません。慎重な議論が必要です。
<参考>
- サマータイムの歴史 Wikipediaより
- 米国のサマータイム事情 Wikipediaより
- フィンランドがEUにサマータイム終了を要請 economist.com
- ロシアはなぜサマータイムを廃止したのか bbc.com
- ブログ 旅するムスリム娘 Musim Travel Girl.comより
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この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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