個人情報の提供と引き換えに利便性を獲得することに躊躇がないと言われる中国インターネットの世界ですが、この夏、ある北京のインターネット関連企業で、非合法の個人情報の利用が行われていたことが明るみに出ました。
中国版Twitterと言われるWeiboや、アカウント数10億超となっているWeChatも含めた個人情報がなんと30億件も非合法に取得、悪用された当事件。いきさつとネットユーザーの反応についてまとめました。
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「北京瑞智華勝科技公司」による個人情報窃盗事件
この事件が発覚したのは8月20日ですが、紹興酒で有名な浙江省紹興市のネットユーザーはこの事件発覚前に、自分のスマホの中で普段とは違う何かが起きていることに気づいていました。自身のWeiboやWeChatのアカウントが、自分の知らないところで新たにユーザーをフォローしていたり、ショートメッセージにジャンクメールが届いたりするようになっていたのです。
澎湃新闻により報道があったのは20日で、北京瑞智華勝科技公司が窃盗容疑で逮捕されたこと、彼らにより盗まれたものは個人情報で、それが30億件にも上ること、その情報はバイドゥやテンセント、アリババといった主要なインターネットサービスを含む96会社から取り出されたものであること、そして同社から6名の容疑者を確保していることが報じられました。
本事件は6月頃から捜査が続けられており、7月には北京市の北京瑞智華勝科技公司での調査が行われています。事件の可能性が見えてきたころ、浙江省の公安分局はアリババグループのセキュリティ部門に協力を要請し、これによりあるユーザーアカウントが、知らないIPアドレスから頻繁にアクセスされていることが突き止められました。この不正なアクセスを行っていたIPアドレスは合計8つあることがわかり、これらをたどったところ北京瑞智華勝科技公司の存在が見えてきました。
北京瑞智華勝科技公司と同じ住所には、北京中科雲智公司と北京点智互動信息技術有限公司が存在しており、この三社は主要構成員、役員も同じメンバーが登記されていました。北京中科雲智公司と北京点智互動信息技術有限公司は運営を担っており、違法ソフトでユーザーのcookie情報を取得していたそうです。北京瑞智華勝科技公司はこれらの情報に基づき、利益を上げていたとみられています。
7月には北京瑞智華勝科技公司が入居するビルに踏み込み、容疑者6名を確保するも、主犯格の一人は海外に逃走したと言われています。
北京瑞智華勝科技公司とは? 新三板とは?
北京瑞智華勝科技公司は2013年5月に創業し、ウェブマーケティングのコンサルティング、運営を行う企業として、技術開発や技術移転等を行っていました。2016年、取扱サービスを自媒体(企業や組織がインターネットサービス上で更新を続けていくアカウント)に転換し、2017年12月には新三板に上場します。
新三板とは中国全土を対象とする、非上場株式を売買するための市場(第三市場)です。2001年の株式権利譲渡の代行システムに由来する市場でした。当時の市場は現在「旧三板」と呼ばれ、2006年に北京市の中関村のサイエンスパークの非上場企業が株式の代理譲渡に利用した際に「新三板」と呼ばれるようになりました。
2012年には国務院により、非上場の株式市場の拡大が決定され、上海、武漢、天津に試験区域が導入されます。2013年には新三板にリストインできる企業の地域の制限をなくし、中国全土すべての企業が登録可能となりました。新三板への登録企業は中小企業、零細企業です。中国政府は資本主義経済の拡大のため新三板の活動を支持しており、証券監理委員会でも内部制度の整備といった実務方面の規則を含めた文書を発表しています。
いったいいくらの収益を上げたのか? その手口とは? 目的は「自社管理のインフルエンサーアカウントのフォロワー数水増し」
北京瑞智華勝科技公司は2016年の業務転換から業績が飛躍的に向上します。2015年には営業利益187万元(3,179万円)、純利益2万元(34万円)でしたが、翌年2016年には営業利益3,028万元(5億1,476万円)、純利益1053万元(1億7901万円)で、営業利益ではなんと1年で4億7千万元も増収となっています(ただし、2017年にはそれぞれ2002.3万元、332.16万元と前年比マイナスです。)
この業務転換は、現在海外に逃亡した主犯格の男性の参加により成功したと言われています。彼は前職から多くの技術者を連れ、北京瑞智華勝科技公司と同じ住所にオフィスを構える北京点智互動信息技術有限公司に入社し、自媒体マーケティング事業を開始しました。
2016年の売上が彼のたくらみにより不正に実現したものという仮定に基づけば、約4億7千万円の増収が個人情報の不正な利用により売り上げられたものという見方もできそうです。
※上記日本円は1元=17円で換算
フォロワー数水増しのための手口
北京瑞智華勝科技公司はじめとする3社では、どのような不正が行われたのでしょうか? 今回の事件が明るみに出る前にユーザーが気づいていた「意図しないフォローが起きる」ことは、「インフルエンサーアカウントのフォロワー数の水増し」に関係しています。
北京瑞智華勝科技公司の公開している情報によれば、同社は20件のWeiboアカウント、55件のWeChatアカウントを主に運用していました。旅行やグルメ、フィットネスなど現在主流となっている領域を扱っており、合計フォロワー数は7,000万に上ります。
公式サイトによれば、管理しているアカウントには著名インフルエンサーのアカウントも含まれ、過去にはレノボやネスレ、キャノン、アリババグループのECサイト天猫、京東(ECサイト)、Ctrip、Meituといった名だたる企業のマーケティングに携わったとしています。
フォロワー数の大小はありますが、同社はこういったフォロワー数の多いアカウントを利用した広告から収益を上げていたと考えられます。こういった事業を手掛ける中で、入手した個人情報を利用し自社の運営するアカウントをフォローさせ、フォロー数を水増ししていたのです。特に今年の1月24日の同社によるフォロワー水増しと考えられる行動は顕著で、1日で109万人ものフォロワーを作り出しています。
こういったフォロワーの水増しは手動ではなくアプリケーションにより自動的に行われていたようです。同社では、さまざまなSNSプラットフォームに合わせ、異なるユーザーの情報を取り出し強制的に指定のアカウントをフォローさせるプログラムを開発していました。これにより、企業や組織(広告出稿者)はインフルエンサーの「不正に作られたフォロワー数」を信じ、高い広告費用を支払うことになります。
まとめ~インフルエンサーマーケティングの盛り上がりとネットユーザーの個人情報保護に対する意識
現在インフルエンサーを起用したマーケティング施策は非常に流行しており、今回事件となった北京瑞智華勝科技公司はWeiboの発信は1件2,000元~4,000元(34,000円~68,000円)、WeChatの発信は1件7,000元~20,000元(11万9,000円~34万円)で受注していたといいます。
昨今ウェブマーケティング業界では、フォロワー数の水増しについて認知は高まりつつあります。一般のネットユーザーは本事件をどうとらえたのでしょうか。今回の事件は悪用された個人情報が「30億件」と桁違いに大きく、多くのネットユーザーが注目をしたようです。8月21日にWeiboで配信されたニュースには9月4日23時現在、2000件のコメントがついています。
そのコメントの中には「中国はもともとプライバシーなんてないじゃない」「(個人情報を用いたマーケティングなんて)大手企業はみんなやっていることじゃないの? 会社は、巨大になったもの勝ちだよね」「国営企業はプライバシーを自由に販売しているのに、国家は犯罪者に対してはプライバシーを守る??なんだそれ」といった、今回明るみに出た企業だけが問題ではない、との見方を感じさせるものが見られます。
また「自分のWeiboは最近(自分が操作していないはずなのに)『いいね』をしまくっていた…パスワードを変更して、外部サービスも遮断して直ったけど。。。」というように、フォロワー数の増加や、フォロワーのエンゲージメント(閲覧数に対するリアクションの割合)を高めるための不正操作が実際に行われていることを感じさせるコメントも散見されました。
Weiboのコメントからは改めて、ネットの利便性にために個人情報を提供するリスクを負うこともやむを得ないという中国のネットユーザーの姿勢が見えてきました。今回のような情報の不正利用と規約に基づく個人情報の活用の線引きはどこにあるのか、その線引きをユーザーの納得のいくように説明することができるかどうかが、今後重要となっていくでしょう。
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<参考> - 新三板挂牌公司涉窃取30亿条个人信息 非法牟利超千万元 - 史上最大泄露案!瑞智华胜非法盗取30亿条用户数据 - Weiboでのニュース配信(投稿)
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