ここ近年、首都圏をはじめ地方でも、観光を楽しむ海外旅行客をよく見かけるようになりました。日本では、アベノミクス以降、金融政策での量的緩和が進んだことに伴い、為替水準が円安に。こうした背景から、日本を訪れる外国人観光客が爆発的に増えています。
また、多くの中国人観光客による「爆買い」は日本に多大な経済効果をもたらしました。2020年開催の東京オリンピック開催に向け、ますます旅行客は増えるものとされています。そこで重要となるのが、インバウンド需要をきちんと把握しておくことです。
とはいえ、施策を打とうにも、インバウンド需要がなんなのかイマイチ分からないという方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、今さら聞けないインバウンド需要の意味について詳しくご紹介します。
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インバウンド需要とは?注目される背景・都道府県地方別に解説
インバウンドとは
「インバウンド(Inbound)」とは、直訳すると内向きに入ってくるという意味で、外国人が日本を訪れるということ「本国行きの」という意味の「inbound」と「旅行・観光」を意味する「tourism(ツーリズム)」で「インバウンド・ツーリズム」が元々の意味でしたが、それが省略され「インバウンド」という言葉で使われています。
観光業界での意味
「インバウンド」の意味として、観光業界においてはインバウンドツーリズムとして使われ、日本に入ってくる旅行「訪日外国人旅行」のことをインバウンドと略して呼んでいます。
市場のことを「インバウンド市場」「訪日外国人旅行市場」「訪日外客市場」と言うもおり、呼び方はさまざまです。今では、インバウンド、インバウンド市場、インバウンド消費という呼ばれ方が一般的になりましたが、全て同じことを指しています。
インバウンド需要とは
インバウンド需要に期待が集まる最大の理由は、内需の減退です。世界的に見ても高齢化が進む日本は、2025年には2人に1人が65歳以上の高齢者になると言われているほど深刻な社会問題となっています。
さらに、外国人観光客は時期をずらし繁忙期の合間を埋めるように訪問します。日本人のみに焦点を当てると宿泊施設は繁忙期と非繁忙期で収益の差が激ありますが、世界的に見ると国によって休暇の時期や長さは少しずつ違うものです。
春節や2〜3週間の長い休みを利用して、日本を訪れる旅行客は多くいます。海外旅行者による日本での消費額が増えることによって、日本国民だけでは補うことのできない収益の隙間を埋めてくれます・
そこで重要となるのが、日本を訪れた外国人観光客のニーズを汲み取ったサービスや付加価値を提供すること。そうしたニーズのことを「インバウンド需要」と呼んでいます。
インバウンド需要が注目される4つの背景
インバウンドが注目される背景として、2003年に小泉純一郎元首相が「訪日外国人旅行者を1,000万人に倍増させる」という目標を掲げ、国を挙げて観光に力を入れることを宣言。以来、日本では、訪日外国人旅行者を増やすための「ビジット・ジャパン」キャンペーンをしてきました。
海外で日本を紹介するイベントを開催するなどのプロモーション活動のほか、外国人への観光ビザの発給要件緩和や免除、免税対象品拡大や免税条件緩和などの施策も少しずつ効果が見えはじめています。
1. 訪日外国人観光客の急増
一方、訪日外国人旅行者は急増します。2013年には初めて1,000万人を超え、2015年には約1,974万人と前年比47.1%も増加してアウトバウンドを超えました。2016年には約2,404万人に達しました。わずか3年で2.3倍となっています。
2. 日本文化に関心ある外国人の増加
訪日観光客の中には、日本の商品に魅力を感じている方がたくさんいます。アニメやゲームはもちろん、コスメやファッショングッズも大人気で、近頃は日本の「カワイイ」文化が海外で多くの若者にウケています。
さらに、2013年には「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され、日本の食文化への関心が高まっているのも追い風の1つとなります。
3. 流行語にもなった爆買い
日本は中国人への観光ビザ発給について、2000年に団体旅行者へのビザ発給を解禁。2009年には、年収制限を設けて富裕層への個人観光客へのビザを発給し始めました。2015年には中国人が伸びて韓国人を上回る約499万人になりました。
日本の電化製品は中国で非常に人気があり、富裕層を中心にバスツアーが組まれるなど「爆買い」は連日話題となりました。
4. SNSの普及
今、日本の観光案内webサイトの多数は英語、中国語、韓国語、日本語の4か国語で作成されています。そして動画コンテンツを配信し地域の魅力をわかりやすく伝える手法を取り入れています。
また、SNSの大手であるFacebookに英語のページを作成し、写真やテキストを交えて地域の魅力を伝えることで外国人の目によりとまるようになりました。鉄道の周辺や主要観光施設にもフリーWi-Fiを設置しSNSなどでの観光体験の共有を積極的に推奨する所も増え、観光客増加に与えた影響が大きいと言えます。
エリア別のインバウンド需要
主要都市を始め日本全国に広まる外国人観光客の増加ですが、各エリアにインバウンド事情や需要は大きく異なります。地域・地方・都道府県によって変わるインバウンド需要を抑えて施策に活かしていきましょう。
【北海道地方】
北海道地方はインバウンド数値が高くインバウンド需要を誇るエリアです。様々なサイトにてニセコなどのスキー場の雪質についての口コミがあり、欧米圏の観光客にとって日本でも有数の観光名所となっています。また、北海道のインバウンド消費金額も全国1位でインバウンド最重要エリアのひとつと言えます。
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北海道地方のインバウンド需要
北海道地方は北海道が所属しており、スキー・スノーボードを中心に冬のアクティビティが人気の観光エリアです。2016年の訪問率が7.8%と国内で8番目の人気となっています。母国では雪の降らない地域の東南アジアからの訪日外国人やスノーアクティビティの好きな欧米圏の人たちに人気のエリアです。
【東北地方】
東北地方の各県は訪問率が全体的に低く、人気の観光エリア「宮城(仙台)」エリアでも0.9%となっていて、その背景には2011年3月の東日本大震災の影響もあり、今後インバウンドで課題のある地方となっています。現在は、各自治体が東北エリアへの観光を盛り上げるため、プロモーションに力を入れています。
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東北地方のインバウンド需要
東北地方は青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島が所属しています。各県の訪問率は0.3%〜0.9%と全体的に低くなっており、日本人に人気の観光エリア「宮城」エリアでも0.9%となっています。その背景には2011年の「東日本大震災」の影響もあり、今後インバウンドで課題のある地方となっています。現在は、各自治体が東北エリアへの観光を盛り上げるため、プロモーション動画を作成したりとインバウンド施策にも力を入れ始めてきています。
【関東地方】
関東地方は日本への玄関口である成田空港を有する千葉県をはじめ訪日外国人の訪問率も高く、TOPの東京を筆頭に、千葉、神奈川と続きあらゆる面でインバウンド需要を後押ししています。特に東京都は買物、飲食、宿泊などにおいて他県よりも高いインバウンド需要で、今後もインバウンドのメインとなるエリアです。
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関東地方のインバウンド需要
関東地方は日本への玄関口である成田を有する千葉県をはじめ、東京、神奈川、埼玉、栃木、茨城、群馬などが所属しています。訪日外国人の訪問率も高く、TOPの東京(48.2%)を筆頭に、2位の千葉(39.7%)、6位の神奈川(9.6%)と続いています。日光東照宮を始めとする日本人に馴染みのある観光地、栃木県の那須エリアは認知度がまだ低いためか1.5%となっています。
【甲信越地方】
甲信越地方は富士山観光として目的とした山梨、スキー需要の多い長野となっています。山梨はワイナリーも充実している為、外国人観光客にも人気です。新潟は北陸新幹線の開通により、訪日外国人に人気の日本酒や越後三大花火大会など観光資源のプロモーションによって今後盛り上がりを見せそうなエリアです。
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甲信越地方のインバウンド需要
甲信越地方は新潟、長野、山形が所属しており、富士山観光として目的とした山梨県(5.5%)、スキー需要の多い長野県(2.8%)となっています。新潟は0.6%と低いものの、北陸新幹線の開通により、訪日外国人に人気の日本酒(SAKE)や越後三大花火大会など観光資源のプロモーションによって今後盛り上がりを見せそうなエリアとなっています。
【北陸地方】
北陸地方は石川、富山、福井の順で人気です。北陸エリアは古い町並みを残す石川県など観光資源は多いため、北陸新幹線のより観光客が見込まれるエリアです。京都に似た金沢の雰囲気も人気の理由でしょう。
ただ、外国人観光案内所の整備は進んでいるものの現状ではフリーWi-Fiの推進があまり進んでいない様子が見られ、インバウンド受け入れインフラを今後整える必要があります。
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北陸地方のインバウンド需要
北陸地方は石川、富山、福井が所属しており、訪問率は石川(2.0%)、富山(1.1%)、福井(0.2%)となっています。北陸エリアは古い町並みを残す石川県など観光資源は多いため、北陸新幹線のより観光客が見込まれるエリアです。
【東海地方】
東海地方は、愛知県を筆頭に「ゴールデンルート」と呼ばれる訪日外国人のメインの観光ルートの影響のため全体的に数値は高く、宿泊者が増えてきているエリアです。外国人案内所の施設数は多くなく受け入れ体制に改善の余地があるものの、そのインバウンド需要は国内でもトップクラスといえます。
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東海地方のインバウンド需要
東海地方は愛知県、静岡県、三重県、岐阜県などが所属しており、訪問率は全国7位の愛知県(9.5%)を筆頭に、静岡県(5.4%)、三重県(0.7%)、岐阜県(2.8%)となっています。ゴールデンルートと呼ばれる訪日外国人のメインの観光ルートの影響のため全体的に数値は高く、宿泊者が増えてきているエリアです。
【関西地方】
関西地方は、大阪京都などのメジャーな観光都市が集中しているため、全体的な訪問率が高いのが特徴です。また、関西国際空港の旅客数が伸びている関係で、新幹線の利用なしで気軽に東京方面からも観光ができます。
京都は訪問率で全国第4位にランクインしていますが、訪日外国人1人あたりの消費金額は低いのが特徴です。これは買い物需要ではなく、寺社仏閣などの見物需要が大きいこと、さらには買い物意欲があまり高くない欧米圏訪日外国人からの人気が高いことが影響していると考えられます。
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関西地方のインバウンド需要
関西地方は大阪、京都、兵庫、和歌山、奈良、滋賀の6府県で構成され、大阪、京都などのメジャーな観光都市が集中しているため、全体的な訪問率が高いのが特徴です。全国3位の大阪(39.1%)、4位の京都(27.5%)、兵庫(6.2%)、奈良(6.9%)、和歌山(1.2%)、滋賀(0.6%)となっています。また、関西国際空港の旅客数が609万人(2015年→2016年で21.54%)と伸びており、成田の682万人に迫る勢いです。
【中国・四国地方】
中国・四国地方でいうと広島がTOPです。特に広島県は外国人観光案内所の整備も進んでおり、訪問率、訪問数、宿泊人泊数ともに高い数値を示しています。陸路からの訪問はさることながら、広島空港を利用した空路からの直接訪問が多いことも特徴となります。また、広島は負の遺産である原爆ドームもあり、資料館は多くの外国人観光客で今も溢れています。
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中国・四国地方のインバウンド需要
中国、四国地方は広島、山口、岡山、鳥取、島根、愛媛、高知、香川、徳島が所属しており、訪問率でいうと広島がTOPで3.5%、山口(0.9%)、岡山(0.8%)、鳥取(0.3%)、島根(0.2%)、愛媛(0.3%)、高知(0.2%)、香川(0.7%)、徳島(0.1%)となっています。瀬戸内エリアのDMOとして「せとうちDMO」の動きが活発で今後の動きや動向に注目の集まるエリアです。
【九州・沖縄地方】
九州・沖縄地方は福岡・沖縄を筆頭に人気を集めています。九州エリアは地理的に韓国と近いため船便なども多く、観光人観光客の比率が高いのが特徴です。
特に福岡は訪日外国人の訪問数は全国第5位、インバウンド宿泊人も第7位につけるなど、全国的に見てもインバウンド需要がトップクラスとなっており、インバウンドビジネスにおける最重要エリアのひとつです。
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九州・沖縄地方のインバウンド需要
九州・沖縄地方は福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄で構成されており、全国5位の福岡(9.9%)を筆頭に、沖縄(6.7%)、佐賀(0.8%)、長崎(2.4%)、熊本(1.6%)、大分(3.7%)、宮崎(0.3%)、鹿児島(0.9%)となっています。九州エリアは地理的に韓国と近いため船便なども多く観光人観光客の比率が高いのが特徴です。
インバウンド需要を理解して対策しよう
日本では今後、インバウンド需要が高まる一方となります。訪日外国人へ向けたビジネス展開にも力を入れていかなければなりません。インバウンド関連の試験やセミナーの受験者・受講者も年々増加しています。
インバウンド関連の試験やセミナーを通して、インバウンドの現状と動向、インバウンドビジネスの実際と対策、インバウンドの集客、訪日外国人の理解と対応、ニューツーリズムや観光街づくりについての知識を学べます。
まとめ:インバウンド需要を理解して対策を
インバウンド市場において、文化の違いによるマナーや礼儀作法、言葉の壁、宿泊施設が不足していること、地方都市の交通機関の問題など課題はまだまだだくさんあります。訪日外国人観光客に日本に来てよかったと思ってもらうためにも、まずはニーズを理解・把握することが先決です。
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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