宮城県大崎市鳴子温泉で、温泉旅館などに地元ならではの手料理を届けるケータリング事業が話題となっています。世界的に評価が高い和食をキーワードにした訪日客需要への対応や、温泉街や地域を活性化させる新たなサービスとしての期待が高まります。観光庁が提言している「泊食分離」の仕組みと鳴子温泉と提携しているケータリングサービス「農ドブル」の事業内容・コンセプトをふまえ、新たなインバウンドの地方誘客のあり方を見ていきましょう。
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観光庁が提言する「泊食分離」の取り組み状況と効果
「泊食分離」とは、宿泊サービスと料理提供を分ける仕組みで、旅館と飲食店などの連携によって地域活性化を目指すことが期待されています。観光庁が実施した「平成29年度宿泊施設の地域連携に関する調査事業」の観光協会・温泉組合等の団体へのアンケート調査によると、泊食分離を実施している割合は20.2%、実施していないが今後取り組みたい意向は24.0%となりました。さらにインバウンドに積極的に取り組んでいると回答した施設の中で、泊食分離を実施している割合が40.7%と高く、インバウンド対策に取り組んでいる施設ほど泊食分離を実施している傾向にあると言えます。
泊食分離にあたって宿泊施設と外部の飲食店との連携については「宿泊施設と宿泊施設外の飲食店との連携」が43.5%と比較的高い傾向にあります。泊食分離の実施による効果として「顧客満足度が向上した」が34.8%、「地域が活性化した」が32.6%、「連泊宿泊者が増加した」が21.7%となっており、一定の効果を上げていることがわかりました。
以上の結果より、泊食分離は地域活性の1つの手段として効果的と言えます。インバウンドに力を入れている施設ほど取り入れているということもあり、訪日客のニーズにあったサービスとの見方もできるでしょう。
地元ならではの食体験とおもてなしを提供する「農ドブル」
農ドブルとは「農家がつくるオードブル」といった意味で、鳴子温泉の旅館と提携し地元の里山料理を提供するケータリングサービスです。「旬」「採れたて」「宮城県産」の3つの要素から厳選された食材と使用し、食材と生産者の魅力を発信します。料理を堪能した後には、地元農家とゲストの交流の場も設けられます。おいしい食材の見極め方や食べ方、調理した料理の説明はもちろん、地域の魅力がわかる観光スポットの案内もしているのが農ドブルならではの特徴です。
料金は1人5000円でディナーのみの提供となっており、サービスの利用には事前予約と相談が必要です。2018年7月にサービスを開始して以来、月3回程度を目安に20名以上の団体客に地元ならではの手料理を振る舞っています。
これまでは温泉旅館といえば1泊2食付きが主流でしたが、近年は個人旅行やインバウンドなどから低価格帯の需要の高まりを受け、旅館業界の間では泊食分離のような新たなサービスの提供が求められています。農ドブルはまさに湯治客への新たなサービスの1つとして、あらゆる旅行形態のニーズも満たし地方の魅力発信への効果も期待されるでしょう。
一流の田舎体験をコンセプトに訪日客の地方誘客へ
「鳴子温泉を訪れた人を地元産の新鮮な食でもてなしたい」といった思いから生まれた農ドブルは、農家自らが採れたての旬の食材を調理し提供します。農家とゲストが交流する機会も設けているため、顔の見える生産者が育てた食材で作った料理を堪能し、地元でしか味わえない唯一無二の体験ができることこそ最大の魅力です。プロの料理人による調理でなくても、食材を知り尽くした農家だからこそ誰よりもおいしく調理し一流のおもてなしを提供できると、農ドブルは考えています。日本の田舎での一流体験は、訪日客のリピーターも満足させ、より多くの日本ファンを生み出すきっかけとなるでしょう。農ドブルの未来として、国内だけではなく海外にもリアルな和食の文化として発信していきたいとのことで、2019年には外国人向けプランの提供を開始します。
まとめ:地元ならではの食体験で訪日客の満足度向上へ
インバウンドの地方誘客の1つの手段として、日本の旅館だけでなく地元の食体験も満喫できる泊食分離は、訪日客の満足度向上にも効果を発揮すると言えるでしょう。温泉旅館と地元の農家や民間事業会社が連携することで、農家の収益アップはもちろん地域活性化も期待されます。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、泊食分離の取り組みをはじめとする地元の食体験をテーマにした新たなインバウンド対策に、今後も目が離せません。
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国土交通省観光庁:「宿泊施設の地域連携に関する調査」結果
河北新報:<鳴子温泉>「泊食分離」で地域活性化:地元手料理届けるケータリング事業が話題
ブルーファーム株式会社:農ドブル公式ウェブサイト
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