大規模なキャンペーンを伴うQR決済のシステム「PayPay」が全国的に導入され、昨年は日本もキャッシュレス社会の仲間入りを果たしました。こうした仕組みを数年前から作り上げ、社会に浸透させているのが中国です。
ご存知「WeChatPay」や「Alipay」のようなQRコードを使った決済は、小さな店舗はもちろん、ECサイトや鉄道の特急券のネット予約時の支払い、そして路上パフォーマーの投げ銭にいたるまで、様々な場面で採用されてきました。
こうした「キャッシュレス先進国」の中国では昨年から、世界最先端の「顔認証」が進んでいることが報道されてきました。その技術を用いた支払いの優位性、具体的な支払方法や、導入されているシーンを紹介します。
キャッシュレス比率 日本20%・中国60%・韓国96%/もはやキャッシュレス後進国の日本
2018年に入って、ここ日本でも、コンビニなどでのお支払いをスマートフォンで済ませる人の姿をよく見かけるようになりました。モバイルQRコード決済サービスも続々と誕生しています。そんな日本のキャッシュレス比率は、なんとまだ2割程度。ところが、訪日大国であるお隣の中国では、その比率は60%を超え、韓国は限りなく100%に近いと言われています。まだまだ現金のみでの支払いが必要なシーンが多い日本での旅行。海外からのお客様をお迎えし、いざお支払いの際に「現金がない!」…などというエピソードもよく聞き...
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顔認証での支払いメリットは「速い、手軽、不正がない」
顔認証を用いた支払いは、Alipay(支付宝)ですでに採用されています。QRコードでの支払いの場合は①スマホを取り出し②アプリを起動③読み取らせる④タッチIDかコード(数字)を入力し支払い完了、と4つの動作が必要であるため、数十秒かかりますが、顔認証には以下のようにQRコード支払い以上、他の支払い方法にまさる優位性があります。
1. 速い
顔の認証にかかる時間はほんの1秒で、支払い全体には10秒もかかりません。
2. スマホの持ち歩きが不要
コードを表示させる必要がないので、スマホを持ち歩く必要すらありません。IDと顔がひもづけられているため、顔を読み取らせればひもづけられたAlipayのアカウントから自動的に支払いが完了します。
3. 操作が簡単
顔認証は、カメラに自分の顔を映し出すだけです。スマホの画面からアプリ探しだし起動したり、アプリの中からメニューを探し出したりする必要がないため、スマホ操作の煩わしさが一切ありません。
4. もっと安全
Alipayによる顔識別システムは、読み取る3D情報からハード、ソフトともに99.9%の精度でIDを識別するので、他人によるなりすましはほぼ不可能と言われています。QRコードでの不正支払いについてのニュースは多くありませんが、先に説明したようにスマホと支払いのコード(数字)があれば支払いできてしまうシステムであるため、顔認証と異なり第三者によるなりすましのリスクは高いといえるでしょう。
顔認証支払いは、どんなシーンで使われている?
Alipayを運営するアントフィナンシャルの昨年8月の発表では、Alipayによる顔認証による支払いは2019年に全国的に普及するとしており、報道でもこの宣言通り今後顔認証の支払いが市場に広がっていくだろうと推測しています。
QRコードを用いた電子決済として、Alipayと二強と称されるのがWeChatPayです。AlipayがEC(ネット通販)から成長したサービスであるのに対し、WeChatPayはSNS的側面の強いメッセージングアプリ、WeChatの一機能として成長しました。Alipayには14年の歴史があるのに対し、WeChatPayはサービス提供からたったの4年しかたっておらず、こうした側面から顔決済もAlipayの優位が続くと見る向きもあります。
Alipay(アリペイ)の導入は訪日中国人集客に不可欠?旭川空港でもAlipay(アリペイ)導入を開始!
2003年から2016年の訪日中国人観光客数推移訪日外国人観光客を集客、もしくは誘致する際に、やはり大きなターゲットになってくるのは訪日中国人観光客。訪日外国人観光客数の中で、もっとも大きな割合を占めるのが訪日中国人観光客であり、右の表を見てみると、訪日中国人観光客数は東日本大震災のあった2011年を除いて、年々大きな伸び率を記録していることが確認できます。こうした背景から、訪日中国人観光客をインバウンド誘致するために、中国で広く普及している電子決済サービス「Alipay(アリペイ)」の導...
ただし、WeChatPayも遅れはとっていません。Alipayがこのシステムを正式に市場に展開し始めたのが昨年8月ですが、WeChatPayは昨年5月上海で、実店舗での顔認証支払いシステムの提供を正式にスタートしています。こちらのシステムでも、Alipayのシステムと同じく数秒で識別を完了し支払いまでを終えることができます。
WeChatPayとは?導入方法と使い方・できること・事例5つ【インバウンド集客】
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12月末には、北京に初めてAlipayの顔認証支払いのシステムが展開されました。採用先はチェーンのパン屋「味多美」で、北京市内の300余の店舗です。これにより、支払いにおける業務効率が60%アップすると伝えられています。この導入の前にもすでに、ケンタッキーや各種スーパーでの導入が始まっていました。
登録の方法は?
WeChatPay顔認証支払いシステムの利用には、まず実名と身分証の番号を登録し、顔の動画をアップロードし、機能の利用を承認して完了です。Alipayの場合もほぼ同じ手順でアクティベートします。
※これらの顔決済機能は中国での携帯番号、身分証をもってアクティベートできるようになっているため、日本人の場合基本的に利用できません。
まとめ:支払い以外にも次々応用される顔認証で、新たな市場がひらかれる
こうした中国の顔認証を行うソフトウェアのうち主流は「Face++」(フェイスプラスプラス)であり、この技術の研究開発を進めているのは「メグビー」(Megvii Technology Inc)という中国企業です。2011年に創業し北京に本社を構え、中国のスマホメーカーやフィンテック企業、銀行また政府が主な取引先となっており、同社は中国国内だけでなく世界で業界の注目を集めています。
昨年スーパーなど市場へ導入された顔認証の機能は、決済以外の場面にも応用され始めています。例えば、公共交通機関(市内の鉄道)の乗車に顔認証を用いてゲートを通過する試験が開始されていたり、横断歩道で信号無視をする人物の記録と警告を行ったりします。これらの様子が中国のSNSではシェアされ、注目を集めています。
顔認証によるATMの出金、医師の診察を受診、宅配ボックスを開錠するということも可能です。EC大手のアリババや京東は、すでに商品配達の無人化を進めており、自動運転する乗り物やドローンによる商品の配送が昨年から行われてきました。こうした品物の受け取りに顔認証が応用されることで、ECの利便性がより一層向上し、さらなるユーザーの増加につながることも考えられるでしょう。
日本と異なり、企業や政府の監視の目で得られるメリットを評価する中国では、今年顔認証を使ったサービスがますます発展していくと考えられます。このような便利さに慣れた中国人に対しどのようにサービスの魅力を打ち出すかが、インバウンド事業者の検討すべきポイントとなっていくはずです。
〈参考〉
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