政府は2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」と題し、2020年インバウンドに関連する目標を作成しました。当初、訪日外国人旅行者数は2020年に4,000万人、2030年には6,000万人と大きな目標値を掲げていました。
2019年度はラグビーW杯が開催され成功を収めましたが、新型コロナウイルスの世界的な流行により、入国制限が行われ2020東京オリンピック・パラリンピックは2021年に延期されるなど大きな影響を受けています。
3月19日に開かれた田端観光庁長官の政府目標に関する記者会見の内容と、作成されていたインバウンド関連の目標を振り返りつつ目標値とその達成率を紹介します。
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- 2020年3月19日 田端観光庁長官の政府目標に関する見解
- 政府が目指す「観光立国」とは?2020年目標振り返り
- 1. 2020年の訪日旅行者数目標は「4,000万人」達成率77.9%
- 2. 2020年の訪日旅行消費額の目標は「8兆円」達成率56.4%
- 3. 2020年のリピーター数目標は「2,400万人」達成率73.3%
- 4. 2020年の地方部における延べ宿泊者数の目標は「7,000万人泊」達成率51.9%
- 5. 2020年のアジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合「3割以上」
- 6. 2020年までに世界水準DMO形成目標「100組織」
- 7.2020年までに東北6県の外国人延べ宿泊者数「150万人泊」達成率96%
- 8. 2020年までに羽田、成田の空港処理能力をそれぞれ「約4万回拡大」
- 9. 2020年までに訪日クルーズ旅客を「500万人」達成率46%
- 10. 2019年までに無料Wi-Fi環境の公的拠点「約3万箇所」
- 「観光立国の目標値」は机上の空論なのか?「現状の達成率」からどう読み解くか
目次
2020年3月19日 田端観光庁長官の政府目標に関する見解
田端観光庁長官は2020年3月19日に記者会見を開き、記者からの政府目標に関する政府の見解を次のように述べました。
今般の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、日本のみならず世界各国が大きな旅行需要や経済活動が失われ蒸発しているといった非常に厳しい状況であるが、我が国の観光の素材である自然、食、伝統文化、芸術、風俗習慣、歴史など、こういったものの魅力が失われたものではない。
我々としては、このビジョンで高みを目指して色々設定した政策的取組は非常に意義があるものと考えており、政府一丸、官民一体となって、全力で取り組んでいきたいと考えている。
また、観光白書は、観光立国推進基本法に基づき、毎年の観光の状況、政府が観光立国の実現に関して講じた施策、観光の状況を考慮して講じようとする施策について、白書として整理し国会に対して報告するものであり、直接政策目標を設定していくものではない。
いずれにしても、2016年に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」で設定した中身の方向性については、現状においても極めて妥当、あるいは適切なものであると考えており、このビジョンの達成に向けて、コロナの危機で世界各国が苦労しているが、これを乗り越え、克服して、次のステップに向けて進めていきたいと考えている。
※観光庁 報道資料抜粋
政府はインバウンド業界は厳しい状況に立たされていると認識しつつも、目標を変更せず最善を尽くすとのことでした。新型コロナウイルスの猛威が続く中、インバウンド業界への影響は見通しが難しいようです。
政府が目指す「観光立国」とは?2020年目標振り返り
観光立国とは、国内の特色ある自然景観、歴史的遺産、風土、都市、レジャー施設、食などさまざまな観光資源を整備して国内外の旅行者を誘致し、それによる経済効果を国の経済を支える基盤にすることです。
今回紹介する「観光立国」の目標値は、2007年に施行された観光立国推進基本法を基にしています。簡単に説明すると、観光立国に関する、基本理念、国および地方公共団体の責務、施策の基本事項などを定めた法律で、具体的な計画を「観光立国推進基本計画」にまとめています。それが、「観光立国」の目標値です。
インバウンド担当者なら知らなきゃマズイ!観光立国推進基本計画が閣議決定 その改定内容を解説
先日3月28日、日本の「観光立国」の実現に関する基本的な計画 「観光立国推進基本計画」の改定案が閣議決定 されました。「観光立国推進基本計画」とは、 「観光立国推進基本法」にもとづき、インバウンドを含めた日本の観光に関する基本的な方針・目標を定めたもの で、日本のインバウンドに関わる政策や取り組みの方向性を左右する重要なものとなります。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談し...
1. 2020年の訪日旅行者数目標は「4,000万人」達成率77.9%
政府が掲げた観光立国推進基本計画によると、2020年の訪日旅行者数目標は4,000万人。去年2018年の訪日旅行者数は3,119万人と初めて3,000万人を超えました。達成率は77.9%でした。
政府は、旅行客の増加のため、ビザの緩和やLCCの増便、クルーズ船の受入れ拡大、空港滑走路の増設など受入れ体制を整えています。今年2019年には、ラグビーW杯が開催され、また来年の2020東京オリンピック・パラリンピックも開催される為、訪日旅行者数は目標を達成できると見られています。
2. 2020年の訪日旅行消費額の目標は「8兆円」達成率56.4%
政府が掲げた観光立国推進基本計画によると、2020年の訪日旅行消費額目標は8兆円。去年2018年の旅行消費額(総額)は4兆5,189億円、達成率は56.4%でした。
2017年の旅行消費額は、4兆4,162億円であり、2017-2018の伸び率は2.3%と高くありません。このままの伸び率では、2020年の目標に達成できないでしょう。
3. 2020年のリピーター数目標は「2,400万人」達成率73.3%
2020年のリピーター数目標は2,400万人。2017年のリピーター数の推計は1,761万人で、達成率は73.3%でした。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、2017に日本を訪れた訪日外国人観光客のうち、初めて日本に来るという人は38.6%という結果がでています。つまり、2回以上来ているリピーターは61.4%にのぼります。このうち、10回以上訪れていると答えた人が13.1%にもとなっており、ヘビーリピーターは少なくない数値であることがわかります。このリピーター率は年々増加しており、2020年の目標の2,400万人は達成できると見られています。
4. 2020年の地方部における延べ宿泊者数の目標は「7,000万人泊」達成率51.9%
2020年の地方部における延べ宿泊者数は7,000万人泊。去年2018年の地方部における延べ宿泊者数は3,636万人で、達成率は51.9%でした。
観光庁の2018年の「宿泊旅行統計調査」によると、外国人延べ宿泊者数は8,859万人泊(前年比+11.2%)と、調査開始以来の最高値でした。このうち、三大都市圏にて宿泊する割合が59%で、地方部にて宿泊する割合が41%でした。この地方部の割合を増やす何らかの動きをしなければ、目標達成は難しいでしょう。
5. 2020年のアジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合「3割以上」
JNTOの「ICCAによる2017年の国際会議開催統計の発表」によると、日本で開催された国際会議の開催件数は414件で、アジア主要国における国際会議の開催件数に占める割合は2割でした。割合はまだ達成していないが、日本はアジア最大の開催国です。
ここまでは、観光立国の2020年目標値と去年2018年の実数値の比較を行なってきましたが、ここからは日本政府がこの目標値を達成するために掲げた各分野の目標の「数字」を紹介します。
6. 2020年までに世界水準DMO形成目標「100組織」
国内外から選好される魅力ある観光地域づくりのために掲げた目標です。
DMOとは、「Destination Management Organization」の略で、行政と民間が連携しながら地元の観光地を盛り上げる施策・組織のことを指します。DMOには規模によって「広域連携DMO」と「地域連携DMO」と「地域DMO」に分かれます。
国土交通省観光庁によると、平成30年12月21日時点で広域連携DMO2件、地域連携DMO42件、地域DMO77件を合わせて合計121件が登録しているとしています。しかし、現在も「世界水準のDMO」のあり方が議論されており、「世界水準のDMO」の基準が明確でないことが問題になっています。
有名なDMOを3つあげると、広域連携DMOの「せとうちDMO」、地域連携DMOの「ふらの観光協会」、地域DMOの「NPO法人 阿寒観光協会まちづくり推進機構」があります。DMO関連の記事では、必ずと言って良いほど出てくるので、名前だけでも覚えておくといいかもしれません。
7.2020年までに東北6県の外国人延べ宿泊者数「150万人泊」達成率96%
政府が掲げた観光立国推進基本計画によると、2020年までに東北6県の外国人延べ宿泊者数を150万人泊。2018年の東北6県の国人延べ宿泊者数は144万人泊で、達成率は96%でした。
東北地方太平洋沖地震から8年が経過し、活気を取り戻しつつある東北のさらなる復興のために、政府が力を入れている目標は叶いつつあります。
8. 2020年までに羽田、成田の空港処理能力をそれぞれ「約4万回拡大」
政府はLCCの増便やビザの緩和を進めており、それに伴い、国際拠点空港等の整備を進めています。
空港の処理能力とは、年間の離着陸回数や時間当たり離着陸回数、搭乗率などの一定の時間における空港の処理能力を示すものです。この処理能力を約4万回拡大させるためには、単に滑走路を増設したり、早朝・深夜の時間帯の受入れを拡大するだけでは、達成できないと見られています。滑走路利用の効率化や羽田・成田間の連携など改善しなければならないと言われています。
9. 2020年までに訪日クルーズ旅客を「500万人」達成率46%
空港からの受入れの整備を進める一方、クルーズ船の受入れの拡充も行なっています。政府が掲げた観光立国推進基本計画によると、2020年までに訪日クルーズ旅客を500万人まで増やすとしています。
去年2018年の訪日クルーズ旅客は234万人と、達成率で見ると46%でした。2020年の目標には程遠く、よりクルーズ船の受入れを進める必要がありそうです。
10. 2019年までに無料Wi-Fi環境の公的拠点「約3万箇所」
災害時のために、防災拠点や被災場所として想定される公的拠点の約3万箇所に拡大することを目標にしています。
観光庁は、毎年、成田国際空港・東京国際空港・関西国際空港・福岡空港の4箇所にて受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を実施しています。その結果を見ると、2018年の無料公衆無線LAN環境に対して困ったと思う観光客は全体の18.7%で、2016年の28.7%より10%も減りました。これは、政府が無料Wi-Fi環境の公的拠点を増やした結果であると思われます。
「観光立国の目標値」は机上の空論なのか?「現状の達成率」からどう読み解くか
今回の記事はインバウンド関連部署に新配属になった方向けに「今おさえたい10個のインバウンド関連「目標数値」と最新版「実績数値」を徹底比較!」と題して、「観光立国の目標値」と「現状の達成率」を紹介しました。
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