2019年3月27日、厚生労働省は「医療機関における外国人患者の受け入れに係る実態調査」の結果を発表しました。2018年の訪日外国人観光客数は約3,119万人となった現状を受け、訪日客に対し適切な医療等の確保に向けた対策が急がれています。外国人患者の受け入れ実態から医療機関における多言語・通訳対策・未収金の現状をふまえ、医療現場での外国人対応の最新情報を見ていきましょう。
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外国人患者の"受け入れ経験あり"の病院が約半数

厚生労働省が各都道府県を通じ全ての病院に調査依頼をした結果、約47%にあたる3,980病院より、外国人患者の受け入れ実績について回答が得られました。
2018年10月1日〜31日の外国人患者数を調査したところ、約49%の1,965病院で外国人患者の受け入れがあったとの結果が出ています。1ヶ月間で受け入れ人数は10人以下であった病院が1,062病院と圧倒的多数でしたが、1,000以上受け入れた病院も7箇所ありました。
受け入れた訪日外国人患者の国籍は、中国人が76.7%と圧倒的多数を占めており、次いでベトナム・インドネシア・フィリピンなど、東南アジアからの患者の割合も多いことが明らかになっています。
医療機関における医療通訳などの多言語対応は発展途上
全国の全ての病院に調査を依頼した結果、全体の約67%である5,611病院から「多言語化(医療通訳・電話通訳・自動翻訳デバイス等)の整備状況」についての調査結果が得られました。
医療通訳を「配置している」と回答したのはわずか4.3%、「配置していない」と回答したのが94.9%となっています。病院部門別では、救急医療機関で「配置している」が6.8%、「配置していない」が92.7%、外国人患者受入医療機関でも「配置している」が30.9%、「配置していない」が半数以上の68%でした。
電話通訳(遠隔通訳)の利用状況も「配置している」と回答した全体ならびに救急医療機関は約8〜15%となっていますが、外国人患者受入医療機関では56.4%が「配置している」といった結果になっています。電話通訳の対応言語は中国語が98.2%と最も多く、続いて英語が98%、韓国語が94.3%です。
医療機関の多言語対応について、医療通訳や電話通訳以外の取り組みでは、携帯のアプリを使用・多言語対応可能な医療機関の紹介・必要な場合は県観光連盟の通訳サービスを活用予定との回答が寄せられました。
外国人患者受け入れ医療機関の95%はキャッシュレス決済を導入

クレジットカードやデビットカードを利用した決済の導入は、約半数の医療機関が実施しています。外国人患者受け入れ医療機関では95.6%が導入しており、キャッシュレス決済への取り組みは活発化してきていると言えるでしょう。
非接触カードやQRコードを利用した決済の導入は、医療機関の種類を問わず「導入していない」と回答した医療機関が90%以上となりました。対応している電子マネーは「Suica」が68%と最も多く、その他の対応サービスの中では中国の決済サービス「Alipay」と「WeChat Pay」が、それぞれ18.2%という結果になっています。
医療機関における外国人の未収金の現状

未収金があった医療機関の未収金件数を見てみると、平均で月8.5件となりました。未収金額は1万円以下が58件ともっとも多い一方で、次いで11〜50万円も54件となり、平均額は423,019円とかなり高額になっていることが見受けられます。
未収金等への対策としては、「パスポート等、身分証のコピーを保存」が44.2%と最も高く、次いで「パスポート等、身分証の確認」が42.5%となりました。価格や診療内容の事前説明をしている施設は20%前後で、同意書の取得を実施している施設はわずか14%に留っています。外国人患者に同意書の取得を実施している医療機関の同意内容は、「請求された金額を支払う」が66.8%となりました。
まとめ:医療機関の多言語対応と未収金対策の向上が急務
外国人患者の受け入れ対策の1つである多言語対応において、救急医療機関や外国人患者受入医療機関でも、医療通訳を導入していない施設が半数を超えていることなどから、緊急時の対応に課題があると言えるでしょう。未収金対策では、価格や診療内容の事前説明、同意書の取得を実施している施設が少数となっていることも明らかになりました。
外国人患者の8割弱が中国人で、電話通訳の対応言語も中国語が約98%、中国の決済サービスを利用する施設もあるなど、現状として中国人対応に取り組む施設が目立ちます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、さらなる訪日外国人観光客の多国籍化を見据え、医療機関の多言語対応と未収金対策の向上が急務と言えるでしょう。
<参考>
・厚生労働省:「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果
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