「爆買い」とは、主に訪日中国人による一度に大量の商品を購入する行為をいう俗語です。2015年には流行語大賞を受賞するほどの社会現象となりましたが、昨今は以前と比べ下火になったとの論調もあり「爆買いは終わった」といわれることもあります。
一方で最近でも、ドラッグストアや小売店に足を運べば、そこにはやはり日用品や医薬品を購入する訪日中国人の姿があります。しかし、広く訪日外国人観光客の消費傾向が「モノ消費」から「コト消費」へと変化していることも事実です。
この記事では、果たして爆買いは本当に終わったといえるのかどうかを考察します。また、爆買いの意味や爆買いが行われてきた理由などの基本情報をおさらいしながら、訪日外国人観光客の消費傾向の変化にともない誕生した「爆滑り」「爆学」といった新たなトレンドについて解説します。
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爆買いとは?
「爆買い」という言葉は、大量にまとめ買いをすることを指し、主に来日した中国人による「猛烈な」購買行動を意味する俗語として定着しています。2015年に流行語大賞を受賞するなど、業界関係者にとどまらない広まりを見せ、インバウンド用語の中ではかなり浸透した言葉であると言えます。
改めて「爆買い」の意味を確認するとともに、それが生じた理由と、「爆買い」された商品について解説します。
爆買いの意味
爆買いとは、訪日中国人による大量消費行動です。訪日中国人観光客が急激に増加した2014年から2015年頃に注目を集めました。
当時は主に家電量販店などで電化製品を大量に買い求める中国人観光客の姿が多く見られ、テレビのニュースなどでも取り上げられるほどでした。
爆買いが行われてきた理由
中国では日本の製品に対する信頼が厚く、「日本人も使っているので質が高そう/効果がありそう」といった心理も働いて人気が高まりました。
爆買いが流行した頃の特徴として初訪日する中国人の多さが挙げられます。こうした訪日中国人は団体ツアーに参加しており、ツアーの行程には必ずショッピングの時間が設けられていました。2015年2月の春節(旧正月)には、のべ36万人の中国人が日本を訪れていますが、観光バスが銀座の免税店などに乗り付けひっきりなしに出入りする様子も報道されました。
またこの時期、大量購入した商品を中国に持ち帰って売る「ソーシャルバイヤー」が増加しました。
このような理由にさらに、円安の影響により人民元換算で安く購入できることが後押しする形で、経済的な理由も加わったことによってさらに爆買いをする訪日中国人観光客が増えていきました。2014年春の税制改正によって食品・薬品・化粧品など日用品も免税対象となったことも爆買いの傾向を強める要因となったと言われています。
爆買いされる商品
爆買いをする訪日中国人に特に人気があった日本製品は、家電、化粧品、菓子類などです。
爆買いが目立つようになった2014~2015年頃は円安で、それによりお得感が強まる家電などの高額商品が中心に買われていました。近年では高額商品の爆買いは落ち着きを見せ、食品や医薬品、ベビー用品など日常的に使われる物が購入されています。
このように時代の流れとともに、購入される商品も変わってきています。
爆買いは終わったのか?
爆買い全盛期だった2014年から2015年頃は電化製品などの高額商品が多く買われていたこともあり、派手な印象を日本人の中に残しました。
ところが、最近では高額商品の爆買いが落ち着いてきたため、爆買いが終わってしまったという印象も強まってきたようです。
続いて爆買いが本当に終わったのかについて解説していきます。
2016年、爆買いに変化が
2016年、円高により円での消費が相対的に高くなりました。加えて中国政府の爆買い防止措置により持ち込み商品にかかる関税が高くなったことや外貨引き出し額の制限も影響し、爆買いと呼ばれる訪日中国人による購入は落ち着きを見せました。
ただし、こうした際に言われる「爆買いの落ち着き」は実は日本円での消費額の減少を表現したものです。当時、訪日中国人の日本円での購入額は確かに数万円減少しましたが、現地通貨(中国人民元)ベースではたったの数パーセントの減少でしかありません。
また爆買いが相対的に目立たなくなった理由の一つとして、旅行スタイルの変化が挙げられます。
爆買いの失速がささやかれるようになった頃、それまで目立っていた団体旅行だけでなく、個人旅行で日本を訪れる中国人が増えています。こうした個人旅行の訪日中国人は、高額商品を大量に買い込むことよりも体験を重視する傾向があり、モノ消費からコト消費というトレンドの変化をもたらしました。
一方で、2019年1月には中国で電子商取引法が成立し、ソーシャルバイヤーが撤退したことでさらに爆買いに歯止めがかかるとみられます。実際に、百貨店の2019年1月の売上高は前年同月比で軒並み減少となりました。
日用品など少額商品の爆買いは続いている
高額商品の爆買いは減少しましたが、医薬品や化粧品、日用品の人気は衰えていません。
その理由には、(1)日本製の医薬品や化粧品が高品質だと中国国内で周知されていること、(2)日用品類は高額商品類と比較して小額であるため円高による割高感が少ないこと、(3)持ち込み商品にかかる関税税率も高額商品類より低率であることなどが挙げられます。
爆買いの動向とその理由について、詳しくは以下のレポートを参照してください。
訪日中国人の爆買いは本当は終わっていない
2016年の約2404万人のうち637万人でおよそ27%、インバウンド消費額3兆7476億円のうち1兆4755億円でおよそ39%を占めているのが訪日中国人です。2016年、「爆買いは終わった」とメディアで喧伝されたのは記憶に新しいですが、その訪日中国人の消費行動について『爆買いは本当に終わったのか?』という視点で、解説
爆買いに替わる訪日中国人の新たな流行とは?
日用品の大量購入「爆買い」は続いているものの、訪日中国人の客層の変化や円高による購買意欲の減退が影響し、相対的に爆買いが減ってきたのは事実です。
では、爆買いに替わる中国人観光客の間の新たな流行には具体的にどういったものがあるのでしょうか。
モノ消費からコト消費へ
2014年から2015年頃の中国人による爆買いはまさに「モノ消費」の全盛期でした。
しかし現在では、訪日旅行に関しては日本でしかできない体験を重視した「コト消費」が重視されるようになってきています。
団体旅行の場合、あらかじめ旅行のコースが決められており自由に体験をすることができませんが、以前は訪日中国人にはこのような形式の旅行者が多くいました。
ところが、最近の訪日中国人には、個人旅行の形式での旅行者も多くいます。さらにこうした個人旅行の訪日中国人には、リピーターも少なくありません。こうした人々は、個々人の好みで様々な「日本体験」を選び、楽しんでいます。
「爆買い」から「爆滑り」へ
2022年の北京冬季オリンピックを目前に、政府の方針もあり中国ではウィンタースポーツを含む「雪」を目的とした旅行がブームとなっています。訪日旅行においてもこの傾向は変わりません。
こうした訪日中国人の流行から、新たに「爆滑り」という言葉も誕生しています。
2019年2月と3月の訪日中国人スキー客は、前年比1.5倍との予想値が出ています(中国メディアによる)。
日本の雪はスキーに最適なパウダースノーであり、こうした理由から日本のスキー場が中国のスキー愛好家の間で徐々にその人気を高めています。
特に、北海道・長野・岩手など首都圏以外の地方に大きなスキー場が多いため、こうした流行が日本の地方創生にもつながると考えられます。
そして、中国におけるスキーの普及率は低く、スキー人口はまだまだ増加の途中です。今後さらに加速してこの傾向が強まる可能性も十分にあるでしょう。
2020年の冬には、東京オリンピックに向けたインバウンド対策と合わせて「爆滑り」対策をしていくことで、さらなる訪日中国人の誘致が見込めるはずです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
爆買いの次は【爆滑り】 前年比1.5倍で高まる中国旅行者の「雪・スキー需要」を2019年Ctrip最新レポートから解説
こんにちは、クロスシー編集部です。春節期間も終わりましたが、引き続き日本各所を訪れる中国人の姿が見られます。この数年、中国人旅行者にブームなのがウィンタースポーツを含む「雪」を目的とした旅行です。今では「爆買い」にならって「爆滑り」という用語が登場したほど。なぜ、中国の中でこれほどまで雪鑑賞が人気になったのでしょうか?また雪鑑賞や冬季アクティビティの旅行先にはどういった地域があるのでしょうか。今年の傾向を、中国旅行研究院とCtripのレポートから紹介します。目次2019年「中国氷雪旅行消費...
「爆学」とは?
「爆滑り」に加え、中国人ビジネスマンによる「爆学」が増えています。
爆学とは、日本企業の文化や取り組みを学ぶために、中国人ビジネスマンが日本を訪れて企業の視察などを行うことを指します。
中国人ビジネスマンは学ぶことに対する意識が高く、日本の良いところを取り入れ、自社の企業をよくしていこうと取り組む傾向にあります。
爆滑りや爆学といった新たなトレンドからは、大量に日本の商品を購入するという消費行動「爆買い」から、現在ではその消費の対象を体験に変え、訪日中国人は今でも通常では考えられないほどの消費を続けていると理解することができます。
爆学について、詳しくはこちらの記事で解説しています。
爆買いに続く新トレンド『爆学』とは?:モノ消費からコト消費に移る訪日中国人 日本のビジネスや文化を学びに訪日する中国人が増加中
あなたは「爆学」という言葉を知っていますか?近年、訪日中国人が、百貨店やドラックストアで化粧品やブランド品を大量に買うことは「爆買い」としてインバウンド業界のみならず一世を風靡しました。2015年には流行語大賞にノミネートされるなど、世間的にも認知された「爆買い」の次のブームになるであろう「爆学」という言葉も登場してきました。今回は、その訪日中国人の新消費トレンド「爆学」について解説していきます。インバウンド最大の中国市場は「旅マエ」にアプローチするが重要!おすすめのインバウンド対策の資料...
「爆買い」「コト消費」両方を押さえ、効果的なインバウンド対策を
電化製品やブランド品などの高額商品を大量消費する爆買いは2014年から2015年頃に全盛期を迎えましたが、個人旅行の広まりや為替の影響で現在では落ち着きを見せています。
こうしたトレンドの変化はありつつも、ドラッグストアなどで医薬品や日用品、お菓子を大量に買い込む爆買いは今も続いており、決して日本製品の人気低下を意味してはいません。ただし、2019年1月に成立した電子商取引法という法律が影響し、今後はソーシャルバイヤーによる購入が減少していくことも考えられます。
一方で、モノ消費からコト消費へと消費傾向が変化しています。こうしたトレンドにより、それぞれの観光地ならではの体験や「爆滑り」、「爆学」など、今までとは形を変えての大量消費も登場しました。
このように訪日中国人の消費トレンドは年々変化しており、その変化は季節ごと、月ごとの傾向から読み取ることができます。こうした時々のトレンドを踏まえたインバウンド対策こそ、訪日中国人の集客に対し効果を発揮するはずです。
今年は「爆買い」だけでなく、爆滑りや爆学などの「コト消費」も押さえることでより効果的なインバウンド対策を行うことができるでしょう。
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<参照>
- 訪日ラボ:中国人観光客が爆買いする人気の市販頭痛薬ランキング【2018年保存版】
- 訪日ラボ:訪日ラボ:【中国】新「爆買い規制法」で転売屋の7割が撤退 | 「電子商取引法」施行のソーシャルバイヤーへの影響調査
- 訪日ラボ:モノ消費から「コト消費」に変化するインバウンド/理由と対策は?
- 訪日ラボ:爆買いの次は【爆滑り】 前年比1.5倍で高まる中国旅行者の「雪・スキー需要」を2019年Ctrip最新レポートから解説
- 訪日ラボ:爆買いに続く新トレンド『爆学』とは?:モノ消費からコト消費に移る訪日中国人 日本のビジネスや文化を学びに訪日する中国人が増加中
- 訪日コム:訪日中国人の爆買いは本当は終わっていない
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