拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)は、中国で中間~低所得者層をメインターゲットとした新興ECプラットフォームです。現在、中国のEC市場ではマーケットシェア第3位とも言われています。
2015年の創業以来、新興ECプラットホームとしてシェアを年々拡大し、昨年にはナスダック株式市場にも上場しています。上場4か月後の時価総額は256.34億USD(約2兆9000億円)、2019年5月14日現在の時価総額は約241.19億円となっています。業界2位の京東(JD.com)の同日の時価総額は409.73億円であり、競争が激しいECの領域での急速な成長に注目が集まっています。
この記事では、中国の新興EC「拼多多」についてその基本情報と成長の理由を解説します。
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拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)とは
拼多多は、2015年9月にサービスをスタートさせ、現在ユーザー数は4億人を超えるといわれています。中国でのEC市場の競合争いが激化するなか、ユーザーの拡大に成功した理由は「共同購入」と「価格設定」にあります。・発音:拼多多(pīn duō duō:ピンドゥォドゥォ)
中国の新興ECプラットフォーム、共同購入が特徴
拼多多は、ECプラットフォームとして2015年9月にリリースされました。サービス開始から1年で登録ユーザー数は1億を突破し、3年後の2018年には4億に達します。
このように、ユーザー数ではEC市場トップを誇るアリババの淘宝(Taobao/タオバオ)の5億に迫る勢いを見せています。
タオバオや同じくアリババが運営する天猫(Tmall)、そしてアリババのライバルである京東(JD.com/ジンドン)など名立たるECプラットフォームは、実は設立からすでに20年近くの時がたっています。拼多多はこうした老舗ECと数年にして肩を並べることになった新興ECですが、その成長の背景にはこれらの競合と一線を画した価格設定とサービス設計が存在します。
そのもっとも大きな特徴は、共同購入ができるECであり、そのなかでオンラインショッピングとソーシャルメディアを融合させている点です。
拼多多の多くの商品が、グルーポン形式での購入ができます。グル―ポン形式とは、複数のユーザーによる共同購入により、一つ当たりの商品の値段を引き下げて販売することです。
共同購入のメンバーは、チャットアプリのWeChatで募ることができます。また友人にリンクを送り、共同購入を呼び掛けたり、送ったリンクをタップしてもらうだけでもバーゲン価格を取得できる商品もあります。友人とのコミュニケーションの一つとして、ユーザーにショッピングを体験させていると言えるでしょう。
以下の記事では、WeChatについて詳しく解説しています。
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低価格により、中国の中間所得層以下の消費者を取り込むことに成功
拼多多のターゲット層は、先に述べたように交通網や小売店が大都市・地方都市ほどに発展していない田舎に住む中間~低所得層です。競合の淘宝(Taobao)や京東(JD.com)といったECサービスのターゲットが、大都市である程度の収入を得ながら暮らしている人であるのに対し、拼多多はこうしたサービスとは異なるターゲットを設定しました。このことも、ユーザーの拡大につながった一因と言われています。
大都市ではインターネットの普及率が飽和状態にあり、利用率も高いECという領域で新たなサービスを広めていくことは極めて難しいでしょう。こういった点でも、都市部以外の中間・低所得の層は厚く、EC市場にしても伸びしろが大きくなっています。
共同購入を呼びかける楽しさも拼多多の魅力の一つですが、特価販売もまたユーザーを惹きつけています。
拼多多では多くの生活必需品をたったの1元(約16.5円)で提供しています。また、共同購入により、生活雑貨から消耗品、ファッション・アパレル関連製品といった様々なものが安価に購入できます。こうした共同購入により、定価の90%引きの価格になることもあります。
上海や北京といった大都市では、高級自動車に乗ったり移動はタクシーだったり、外食ではステーキを食べるといった豪勢な生活をする中国人も少なくありません。しかし、小さな都市や農村に住む中国人の多くは、物を安く買うことを重要視しています。こうした価格に敏感なユーザーたちが、拼多多の支持層であると言えます。
テンセントとの連携、WeChatミニプログラムの利用
拼多多がユーザーを拡大できた理由の一つに、WeChatのミニプログラムがあります。チャットアプリのWeChatには、内部で起動することのできるミニプログラムと呼ばれるアプリケーションが存在し、WeChatそのものが提供する以外の様々な機能を利用することができます。
WeChatのアプリの中で他社のサービスを利用するためのアプリです。上の図のように、SNS、EC、劇場チケットの予約や飲食系など様々な領域のサービスがWeChatの内部で利用できるようになっています。
ミニアプリを利用すれば、新たにアプリをダウンロードする手間がかからずユーザーにとって便利です。実際に、拼多多はアプリ経由よりもミニプログラム経由で利用するユーザーが多いとのデータもあります。拼多多は10億ユーザーを誇るWeChatを運営するテンセントとの提携によって、ユーザー獲得に成功したと言えるでしょう。
以下の記事では、WeChatのミニプログラムについて詳しく解説しています。
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拼多多はWeChatのアカウントを用いて会員登録が可能です。WeChatミニアプリの拼多多の支払いにはWeChat Payが利用できます。拼多多のスマートフォンアプリからは、WeChat PayだけでなくAlipayも利用可能です。また、WeChatの友人にお願いをして代金を代わりに支払ってもらうためのリンクもあります。
拼多多を利用するメリットとは?
ユーザーにとって、また出品者にとって、拼多多を利用するメリットとはどこにあるのでしょうか。ユーザーにとっては、共同購入者を募ることで、グルーポン同様に割引価格を適用され、より安く商品購入ができることがメリットです。販売側にとっては、値引きというインセンティブにより、大量購入が起きたり情報が拡散されることがメリットです。それぞれ具体的に見ていきます。
最低販売数とリンクした値引きで販売数を拡大
拼多多は、中国語で「社交電商」、つまり「ソーシャルコマース」を標榜しています。※社交…中国語でSNSを意味する商品をただ低価格で購入するだけでなく、魅力あるものを見つけ出し共有するというショッピングの醍醐味を共有することができるサービスになっています。またこうした「シェア」を通じて値下げが享受できる仕組みになっています。
そのほか、一定の時間内に規定の購入者が集まると大幅な割引が適用される共同購入型クーポンが存在します。この場合、商品を一時的に取り置きするカート機能はありません。そのため「自分だけ」「今だけ」に限定されたお得を手に入れたい、という心理が働きます。
拼多多はこうしてユーザーの購買意欲をかきたて、結果としてたくさんの商品が売れる仕組みを提供しています。
こうしたサービス設計は、 ユーザーにとっては商品が安く手に入るというメリット、販売側は大量の商品を売りさばけるというメリットがあり、人気を博しています。
SNSでの拡散
販売側にとっての拼多多のもう一点のメリットとして、SNSでの拡散力が挙げられます。上記のように共同購入が値下げを可能にするため、ユーザーは値下げを目的に積極的に商品情報を拡散します。販売側の視点に立つと、黙っていてもユーザーが広告してくれていると言えます。こうしたメリットは、拼多多がECとSNSとの融合「ソーシャルコマース」であるからこそもたらされるものです。
以下の記事では、拼多多が多くのユーザー数を獲得した理由について詳しく解説しています。
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拼多多を活用するには?
拼多多が値引きやSNSでの拡散により多くのユーザーを獲得していること、そして拼多多を活用することでその恩恵を受けられることがわかりました。
ここでは、拼多多で売れ行きの良い商品カテゴリや登録方法、さらに拼多多が抱える問題点を詳しく解説します。何を売るのが効果的か?
拼多多では食品から衣類、寝具、スマホ用品、化粧品まで様々な商品が販売されています。特に、生活の必需品ともいえる、食品、消耗品、日用品、化粧品等が多く見られます。またファッション関連でも比較的必需品に近い「靴」の取扱いが目につきます。
ここまでで紹介したように、拼多多のターゲット層は都市部以外の中間~低所得者です。そのため、より廉価な生活必需品に人気が集中する傾向があり、こうしたカテゴリの商品が出品に適しているといえます。
一つ一つは安価でも、拼多多には4億のユーザーが登録しています。こうした生活に欠かせない分野の商品の販売により、収益化を図ることも可能でしょう。
拼多多のユーザー登録方法
販売者としてのユーザー登録の場合はウェブブラウザから公式サイトにアクセスし、「商家入驻」から中国国内の携帯電話番号を登録します。携帯に送られてきた確認コードで認証し、画面の指示に従って手続きをします。審査にパスすると販売用のアカウントが開設されます。開設そのものには費用はかからないので、出店コストを抑えられるというメリットもあります。
拼多多に出店・出品する際の注意点
拼多多がターゲットとする層は、中間~低所得層です。販売側は安さを追求するあまり、低品質な商品を出品していることもあります。
こうした状況に対し、ユーザーの中には「偽物が多い」という不満を抱えることがあるようです。偽物とはブランド偽造されているものだけでなく、商品画像と大きく異なるものが届く場合も含みます。
ただし、製品のカテゴリによっては、ユーザーも「本物である必要はない」「偽物でも問題ない」という考えに基づき、品質よりも安さを重視して購入しています。品質と価格のバランスが天猫や京東とは異なるという点に留意するべきです。
拼多多自体は偽物を扱う店舗を取り締まる姿勢を見せており、昨年5,000以上の店舗を閉鎖する対策をとっています。また、中国国内の小売り大手を誘致することでイメージ回復を図っています。
しかし、いまだ安価な商品に対するニーズは根強く、すべての「偽物」が一掃されているというわけではないようです。初期のタオバオに似ているとの評価もあります。
こうした環境を踏まえ、販売者は偽物を販売していないことをアピールする必要があります。具体的には、SNSの「WeChat」や「Weibo」に公式アカウントを開設し、そのSNSの認証マークを取得することが有効な対策となるでしょう。
WeChatやWeiboは中国では知らない人のいないSNSであり、中国人はこうしたSNSの認証を信頼しています。公式アカウントを開設することで信頼感を与えることができるだけでなく、アカウントから定期的に情報発信をすれば、市場での認知も高まるでしょう。
日本でも拼多多を活用し、新たな市場獲得へ
ECプラットフォーム間の競争が激化するなかで、拼多多は淘宝(Taobao)や天猫(Tmall)、京東(JD.com)とは異なったサービス特性でそのユーザー数や売上を着実に伸ばしてきました。オンラインショッピングとソーシャルメディアを融合させた「ソーシャルコマース」は、販売側にとって広告費用を低くおさえながら宣伝を期待できます。さらに「共同購入」形式では大量販売で一度に利益を得られるというメリットもあります。
日本でも、こうした新たな市場への足掛かりとなる拼多多への進出が進んでいます。
2016年には越境ECプラットフォームであるBolomeが日本で初めて拼多多との提携を開始しました。また中国では「松下」として愛されている日本ブランドパナソニックも、拼多多に出店しています。
従来のECではアプローチできなかった新たな消費者層が拼多多の最大の特長と言えます。旅マエ、旅アトの新たな需要の掘り起こしや販売の拡大が期待できるでしょう。
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