観光税(国際観光旅客税)とは、日本を出国する際に支払う税金で、船舶または航空会社などの特別徴収義務者が旅行客から徴収します。以前からいわゆる「観光税」として宿泊税や富裕層向けの出国税が課されていましたが、2019年1月から新たな「観光税」が整備されました。
長崎や北海道、沖縄といった主要観光地での導入が検討されています。
この記事では、観光税の定義・観光関連の税・観光税の用途について詳しく解説していきます。
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観光税(国際観光旅客税)とは?
今回整備された観光税は日本を出国する際にかかる税金で、「出国税」とも言われています。「国際観光旅客税」が正式名称です。
「国際観光旅客税」とは、日本から出国する旅客から徴収する税金です。特別徴収義務者である船舶会社・航空会社が出国1回につき1,000円をチケット代に加算し、国に納付するというものです。
簡潔に説明すると、「出国税」によりチケット代が1,000円上がるということになります。また上乗せされた税金は、船舶や航空会社などの特別徴収義務者が旅行客から徴収し国に納めています。
誰に課税される?
「国際観光旅客税」は日本を出国するすべての人に課税されます。日本人だけでなく、訪日外国人も含まれます。課税されるのは日本を出国する際ですので、入国時や、トランジットでの一時的な立ち寄りの際には徴収されません。
加えて徴収対象外となる場合もあります。船舶や航空機の乗員、2歳未満の幼児、天候などの理由により日本に緊急着陸した場合、一度出国したが天候等の理由によってまた日本に戻ってきた人などには課税されません。
デメリットは?
「観光税」は1,000円という少額であるため、利用者の負担は少ないであろうというのが政府の見解でした。しかし、旅行業界からは反発の声が上がっています。
元々日本では「空港使用料」が各地域にあり、例えば成田空港では2,540円、羽田空港では2,000円かかります。
新たな「出国税」の課税によって約3,000円の税金がかかることになるため、「旅行費値上がりのイメージを持たれてしまう」というのが旅行業界の主張です。観光客の減少につながるのではないかと懸念されています。
他に観光関連でかかる税は?
「観光税」の他にかかる観光関連の税金にはどのようなものがあるのでしょうか?宿泊税や富裕層向けの出国税について解説していきます。
宿泊税
「宿泊税」とは、旅館やホテルに泊まる際に1人一泊の宿泊料金に課税される税金で、地方自治体(都道府県、市町村)に納める税金です。
2019年6月現在では、東京・大阪・京都・金沢で導入されています。現在長崎でも導入が検討されているといい、今後導入する地方自治体は増えてくるでしょう。
1人1泊当たり100円から300円程度の徴収となっています。
地方における観光税導入の理由としてオーバーツーリズムなども挙げられます。地方の取り組みについては以下の記事で解説しています。
条例規制・観光税導入で訪日外国人と「共生」地域活性化への3つのキーワードとは【日銀レポート】
日本銀行は6月10日、日本のインバウンドの現状について、企業・自治体等の取り組みや地域活性化に向けた課題を中心に実施した調査の結果を公表しました。2018年のインバウンド需要の動向をふまえ、さらなるインバウンド需要の獲得に向けた企業や自治体等の取り組みと今後の課題について見ていきましょう。目次2018年のインバウンド動向:東アジアのインバウンド客とFITの増加が顕著に地域活性化を目指し、企業や自治体がインバウンド需要の獲得へ企業が取り組む、3つのインバウンド対策インバウンド需要を地域活性化...
富裕層向けの「出国税」
2015年7月以降、国外転出する一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有している場合には、所得税及び復興特別所得税が課税されるようになっています。
そして、1億円以上の対象資産を所有している一定の居住者から、国外に居住する親族等に対する贈与・相続・遺贈の対象となる資産にも所得税及び復興特別所得税が課税されるようになっています。
対象資産に対する所得税としての扱いですが、国外に転出する富裕層に課税される「出国税」ととらえることもできるでしょう。
観光税の用途
「出国税」等の観光関連税はどのような目的で、どのようなものに対して使われるのでしょうか?
観光立国を目指し日本の経済力を上げていこうと考えている日本政府は、インバウンド施策に注力しています。2020年の東京オリンピックが迫る中、観光税は何に使われる予定なのか見てみましょう。
インバウンド政策の財源
2016年3月30日に政府が発表した「明日の日本を支えるビジョン」では、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人の訪日外国人客数を目標としています。
2020年の東京オリンピックの開催を起爆剤とするべく大規模なインバウンド政策が必要であり、そのための安定的な財源として観光税が使われる予定です。
今後必要なインバウンド政策
訪日外国人観光客に今人気の日本の観光エリアは、東京から京都大阪にかけてのゴールデンルート、北海道、沖縄などが人気の観光エリアとなっていますが、日本にはまだまだたくさんの魅力に溢れた観光地があります。
しかし地方の魅力的な観光エリアの多くは、海外へ向けて十分な情報発信ができていません。
どのような観光地があるのか、そこに行くまでのルートはどうなっているのか、その観光地の魅力はどういった点にあり、そしてイベントにはどのようなものがあるのかなどを発信していく必要があります。
例えば、スマホ等で簡単に訪日外国人旅行客が情報を入手できるアプリの開発が求められているといいます。宿泊先施設情報や両替ができる施設情報等とリンクしていけば、簡単に情報を得られるようになります。
さらに訪日外国人観光客による消費額を増やしつつ満足度を高めるにはより長い滞在をしてもらう必要があるため、そのための基盤整備も必要です。
訪日外国人観光客は見知らぬ日本の土地で不安を感じることもあるでしょう。Wi-Fiでいつでも情報を得られるということは安心感に繋がるので、フリーWi-Fiスポットの整備も必要です。また、観光地の遺跡や文化財などの歴史・文化を紹介する動画コンテンツの作成や、外国語ができる日本人ガイドを増やすための研修制度を作る必要もあります。
このようにインバウンド政策としては通信・情報発信・多言語対応などの対策が急がれます。
財源不足のため、観光税で年間400億円の財源確保へ
現在日本では訪日外国人観光客関連予算として観光庁などの各省庁で年間700億円程使われていますが、インバウンド政策の強化のため、さらなる予算が必要になっています。
しかし、国の財政は大幅な赤字の状況であり新たな財源の確保が必要であり、観光税の導入により年間約400億円の税収増を見込んでいます。観光税の導入目的は新たな財源の確保です。
観光税により、インバウンド政策を行うための財源を確保
政府は今後の成長戦略の重点課題としてインバウンド政策を上げていて、来年2020年には東京オリンピックが開催されます。このオリンピックを起爆剤として、さらなるインバウンド需要の拡大を目指すためには、インバウンド向けの施設基盤整備が必要です。
施設基盤整備は急務となっています。訪日外国人観光客向けの観光地情報はまだまだ情報発信が足りません。情報発信方法も利用者の利便性を第一に考えた情報提供ツールを提供する必要があります。
出国税等の観光税で安定した財源を確保し、インバウンド政策の基盤整備を推進することが観光税導入の目的の一つです。 導入に際しては、訪日外国人観光客に満足度高く、長期間く滞在してもらうためのWi-Fiの設置エリアの拡大や、多言語対応の拡充が期待されます。
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