「シンカンセン」は和製英語としても通じる、世界に誇る交通機関です。その快適さや安全性から利用者の満足度は高く、日本らしい体験のひとつでもあります。
訪日外国人旅行者の増加に伴い、新幹線の利用者も年々増加しています。先日、新幹線利用における新制度のスタートが報じられました。
来年5月以降、東海道・山陽・九州新幹線を利用する際に、一定の大きさを超える大きな荷物を持ち込む場合は、事前予約が必要となります。
こうした制度変更は、インバウンド市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。訪日外国人旅行者がこの変更を理解せず荷物を持ち込もうとする場合、説明には言葉の壁が立ちはだかることも予想されます。
訪日ラボから東海旅客鉄道(JR東海)へ電話インタビューを実施し、今後の方針について確認しました。
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新幹線への荷物持ち込み「予約制」が開始
東海道・山陽・九州新幹線に特大荷物を持ち込む際に、指定席と荷物置きセットで乗車するための事前予約が必要となる新制度が発表されました。来年の東京オリンピック開催に向けた措置の一環で、2020年5月中旬以降から開始されます。
事前予約が必要になるのは、荷物の縦、横、高さ3辺の合計が1.6メートル以上〜2.5メートル以下の荷物で、国際線の飛行機内に持ち込めるサイズに相当します。
特大荷物置場付き指定席の料金は、通常の指定席券と同額です。事前予約をしておけば、追加料金なく無料で最後尾の荷物スペースに収納できます。予約なしで特大荷物を持ち込んだ場合、持込手数料として税込1,000円の支払いが徴収されます。
また、JR東海・JR西日本・JR九州は、2023年度以降に新幹線デッキの洗面所一部を改修し、二重ロックの鍵付き荷物置き場を設置するとも発表しています。
背景にインバウンドの増加「ジャパンレールパス」人気
訪日外国人旅行者の増加に伴い、新幹線で大きな荷物を抱える旅行者をよく見かけるようになりました。JRグループは、訪日外国人向け優待乗車チケットとして「ジャパン・レール・パス」を販売しています。
日本国以外からの訪日外国人旅行を対象に、JRグループ各社が発行するJR各社の鉄道・路線バスが乗り降り自由で利用できる特別企画乗車券です。この乗車券は、訪日外国人旅行者が日本中を鉄道で周遊する際の最も経済的な方法の一つとして知られています。
以前は海外での事前購入による発売のみでしたが、現在は日本国内の一部箇所でも発売を行なっており、更なる人気を博しています。
ジャパン・レール・パスは、東海道・山陽・九州新幹線の「のぞみ」号・「みずほ」号は対象外となるため、インバウンド客の利用者は、東京と京都、大阪、広島を結ぶ「ひかり」号に集中しています。
そのため、今回の新制度はひかり号を利用する訪日外国人からの利用増加が見込まれています。JR東海の広報によれば、特大荷物持ち込みについては、十分なスペースを確保しているとし、今後はのぞみ号についても状況を見て、インバウンド対応を考えていくとしています。
また、今回の新制度導入は訪日外国人の増加に対応した策で、さらにキュリティ向上を狙ったものとしています。これまで乗務員が持ち主不明な荷物を見つけた場合、所有者を特定することが難しく、一人ひとり尋ねる必要がありましたが、今後は適切な対処ができるようになるとも話しています。
インバウンドにわかりづらい?「まず周知」でトラブル防ぐ
新制度の開始で、今後は特大荷物サイズよりも小さい荷物であっても、最後尾の荷物置き場を利用したい場合には事前予約が必要となります。多くの訪日外国人旅行者は、ある程度の大きさの荷物と移動していることが考えられます。制度を知らずに、事前予約を行っていない乗客が空いているスペースに置いてしまうことも考えられます。
荷物置き場の事前予約は、ネット予約サービスや券売機、切符売り場で指定席予約・購入の際に、荷物置き場を指定することで利用可能とする予定です。
乗客がスムーズにこの機能を利用できるよう、新制度の周知が重要になってきます。どのような経路でこうした新制度の情報を案内する予定なのかを、JR東海の広報担当者に質問しました。
日本国内向けには、ホームページやFacebookなどのSNS、EX予約サービスサイトで案内していく予定しており、インバウンド向けには多言語対応した公式サイトや英語版スマートフォンアプリ、ジャパン・レール・パスのWebサイトおよびパンフレット、インバウンドが利用しているOTAなども最大限に活用して、周知していくつもりとの回答を得ています。
現場での多言語対応は?ポケトークが導入済
JR東海側は、平時から駅構内には案内係を配置しており、万が一のことがあればこうした人員が対応に当たるのではないかとの見方を示しています。
万が一予約なく荷物の持ち込みを希望する乗客がいた場合には、指定席に振替案内をする方針です。この際、外国語対応が必要な場合には、すでに採用しているAI翻訳機器の「ポケトーク」が活用されると見られています。
まとめ:セキュリティ向上でより快適な日本体験を
今回JR東海が発表した、新幹線への特大荷物持ち込みが事前予約制になる新制度は、増え続ける訪日外国人対応とセキュリティ向上のために実施されます。広報担当者によれば、トラブルは未然に防ぐ前提でさまざまな準備に取り組み、まずは事前周知を図っていくとしています。
事前の周知方法として活用予定のウェブサイトでは、現在日本語のほか、英語・中国語・ハングル・フランス語・ドイツ語・タイ語に対応しています。外国語での予約に対応するものとしてスマートフォンアプリの「スマートEX」では英語版も展開しています。また、今回の制度変更に伴う仕様変更については現時点では確定情報はないとのことでした。
すでにJR各駅の現場には、翻訳ツールとしてポケトークが導入されています。ツールの能力と蓄積されたノウハウにより、訪日外国人への対応も比較的円滑に進められると考えられるでしょう。観光立国を実現する体制づくりは、日本を代表する交通機関の一つである新幹線の現場でも着々と進められています。
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