インフルエンザが流行する時期といえば、冬場の寒くて乾燥した時期のイメージが一般的です。
しかし、今年は例年より早い9月半ばから流行し始め、医療機関から注意喚起がなされています。
なぜ例年よりも早い時期にインフルエンザが流行しているのか、その原因をご紹介します。
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例年より早いインフルエンザ流行の原因はラグビーW杯?
インフルエンザは日本の冬場に北半球、夏場に南半球で流行しており、1年中双方向に行ったり来たりと循環しています。
また、地球の北と南を行き来するなかで、熱帯や亜熱帯はインフルエンザウィルス流行の途上に位置するため、年に2度も流行しているといいます。
近年、グローバル化の加速により、この状況に変化が生じているようです。
今年のインフルエンザは9月半ばから流行っていた
インフルエンザは日本の12月〜3月にかけて、だいたい11月の後半より流行り出すのが通例です。しかし今シーズンは、9月半ばに2週連続で、インフルエンザの流行開始の目安にされる週患者数の平均(週1.0)を超える事態となり、その後、患者数は落ち着いたものの例年と比較して患者数が多い結果となりました。
また、国立感染症研究所の発表では、今年の8月下旬から患者数が増加し、9月末時点で昨年同時期のおよそ6倍の約4,500人の報告数を受けたとしています。
インフルエンザ流行の原因はラグビーW杯で訪日した外国人観光客?
今年の早期インフルエンザ流行は、オーストラリアなど南半球からの訪日客が原因のインバウンド感染症ではないかと分析されています。実は、南半球のインフルエンザの流行は4月~9月であり、日本で開催されたラグビーワールドカップと同時期です。そのため、彼らによって日本のインフルエンザ流行が早められた可能性が高いと考えられています。
日本政府観光局によれば、今年の7~8月のオーストラリア訪日数は61,900人で、対前年比7.4%増でした。オーストラリア以外の南半球の国々には、南米やアフリカ、ニュージーランドなどもあり、日本との交流も盛んな地域です。
ラグビーはイギリス発祥のスポーツで、過去にイギリス植民地であった国々が南半球に数多く存在しています。競技人口や人気から考えてみても、今回の大会を目的に、これらの国から来日した観戦客も数多くいたことで、さらにインフルエンザ流行に拍車をかけた可能性があります。
インバウンド感染症はすでに深刻化している|日本政府の水際対策は?
近年、ますますグローバル化が進み、海外との交流が活発化することで、感染症の原因となるウイルスや細菌も国境を越えて移動しやすくなりました。
そこで、インバウンド感染症が国内に持ち込まれるリスクに対しての策も重要視され始めています。
特に、来年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が迫っており、国際的な感染症の流行を防ぐ対策に注目が高まります。
東京オリンピック2020目前に迫るインバウンド感染症の危険
前回のリオ大会では、ジカ熱感染が流行し、開催を不安視する世論が高まりから開催が危ぶまれる事態になりました。
日本では、2014年8月に約70年ぶりに海外渡航歴のない方々のデング熱感染が確認され、代々木公園(東京都渋谷区)利用者を中心に約160人が感染した感染例があります。
明確な原因は明らかになっていませんが、防衛医科大学校防衛医学研究センターの加來教授によると、ウイルスの伝播能力を得られるのは8〜10日間かかるため、最初の患者さんがデング熱を発症した日付(2014年8月9日)から逆算すると、代々木公園の土着蚊は7月23日〜25日にデングウイルスに感染したのではないかと話します。
その同タイミングに、代々木公園で多国籍の人々が集まるイベントが開催されていたため、ここで代々木公園の土着蚊が訪日客の感染者の血を吸って、国内感染へ拡大していったと推定しています。
このように国外から感染症のウイルスが持ち込まれたされていますが、東京大会は蚊の発生ピークシーズンの夏時期に開催されます。デング熱等の国内感染患者が発生し、拡大されてしまう可能性は否定できません。蚊が媒介するその他感染症のリスクを減らすために、蚊の発生抑制を含めた総合的な感染症対策が求められるでしょう。
政府が実施しているインバウンド感染症対策
国際化が進み、ヒトやモノの行き来が盛んになったことで、これまでよりもウイルスや細菌も国境を越える機会も増えました。海外からの旅行者、あるいは海外に出かけた日本人が感染し、国内に持ち込み拡散しているようです。
政府は、国際的な脅威である感染症への対策をさらに強化するとしています。
たとえば、羽田空港の国際線到着ロビーには、入国審査前に設置されている検疫ブースにサーモグラフィーを導入しました。カメラで入国者の姿を写すと、大抵の人影は平熱を示す灰色で表示されますが、入国者が高熱している場合は赤く反応し、発熱が感知できます。
また、入国者の中で体調が悪そうな人には直接声をかけるなど、感染症の侵入を防ぐ関門として、体制の充実が図られています。
ワクチンで予防可能な感染症に対しては接種を徹底し、未知のウイルスに対しても、基本的なマスクや手洗いなどの標準的な対策を忘れないように自己防衛が大切です。
また、1999年から感染症に対応できる人材育成に「実地疫学専門家養成コース(FETP)」が立ち上げられ、国立感染症研究所で2年間の実地指導を受けられる専門家コースが始められています。
感染症の封じ込めは1カ国では難しく、多国間での協調体制をいかに築くかが重要な鍵になります。
専門家らの話では、正しい情報の共有と備えが大切であると訴えています。政府や専門機関が対策を考えたとしても、しっかり国民や海外からの旅行者にも浸透しなければ意味がありません。
まとめ
2019年7月から東京オリンピックの開催を控えています。この国際的ビッグイベントでは、インフルエンザを含め、あらゆる感染症が海外から日本に持ち込まれる可能性があります。
麻疹や風疹などは子供よりも大人の方が重篤症状になりやすく、世代によっては子供の頃に予防接種を行っていない可能性もあります。予防接種は1回のみでなく、複数回接種を行わないと効果がないものも多く計画的に予防接種を受ける必要があるでしょう。
インバウンド感染症を防ぐためには個々人の対策として予防可能な感染症にはワクチン接種を行い、日本政府の対策として国際社会での互いの協力体制とリスク情報共有レベルを底上げすることが求められるでしょう。
<参照>
MBS:異例の早さ...インフルエンザ流行の背景に何が?"オフシーズン"にも警戒を
東洋経済オンライン:インフルエンザが9月なのに流行し始めた理由
Medical Note:代々木公園を中心としたデング熱感染報告の分析と教訓-流行を防ぐためにできること
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