春節とは中国のお正月で、伝統的に祝われてきた節句です。中国だけではなく、台湾・香港・マカオや、世界各地の中国ルーツを持つ華人にとって最も大切な祝日とされています。
中国において、春節は国民の祝日で多くの人は一週間の連休になります。長期休暇となるため、中国国内外への旅行者が増える期間でもあります。
2020年の春節では4.5億人の中国人が海外に出かけるとのデータも出ていましたが、新型コロナウイルスの影響で減少の動きが見られました。
この記事では、2020年1月24日に始まった春節の休暇について、同期間中の中国人の過ごし方の傾向や、旅行トレンド、訪日旅行のニーズについて紹介します。
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春節:伝統的中国人の過ごし方、地域ごとの共通点・相違点
春節には文化的な行事が多くあります。爆竹はその代表例ですが、都市化したエリアでは騒音や煙の害、引火のリスクを理由に禁止するところもあります。地方や小さな町では引き続き爆竹を鳴らす伝統が続いているようです。また、色彩豊かな人形を複数人で操作しながら練り歩く、龍の舞や獅子舞も春節を祝う習慣です。
祖先を祀るために一族が集まり、食事を共にする習慣もあります。地域により、異なる習慣が見られます。
中国での祝い事に欠かせない「赤」は、春節でもメインカラーとなります。家屋や商業施設、オフィスビルの外側や内側のいたるところに、赤い装飾品を設置します。
建物の入り口には、縦長の赤い紙に対となる言葉を書き付けた「対聯」を飾ります。
現代中国でも、日本同様、日常的に十二支が意識されています。2020年はねずみ年であり、干支のねずみの形にちなんだ飾り付けや、商業施設ではねずみの描かれた商品が販売され、正月の季節感を盛り上げます。
春節にも「お年玉」が存在します。中国のお年玉は「紅包」と呼ばれ、目上の人から目下の者や子供に対し、赤い紙で包んだお金を渡します。最近では、WeChat PayやAlipayといった電子決済を通じて渡す方法も流行しています。邪気を追い払い、一年の安泰をもたらすと信じられています。
子供に対するお年玉は「圧歳銭」とも呼ばれます。年始に大人が子供に金銭などを与えることで、子供を不幸から守る効果があるという民間信仰が起源です。
「春節」2020年は大晦日1月24日から休暇スタート!
中国の旧暦は「農暦」とも呼ばれており、太陰太陽暦と呼ばれる方法で日付を計算しています。そのため、一年には12か月に閏月を加えた13か月となっており、同じ日でも新暦とは基本的に異なる日付が充てられます。
例えば、新暦の2020年1月1日は旧暦の2019年12月7日にあたります。2020年の春節(旧正月)は1月25日であり、大晦日であるその前日1月24日から、7日間の連休が予定されています。法定休日だけでなく、この前後に休暇を取る人も少なくありません。
※2020年2月26日追記:春節の期間は、コロナウイルスの影響により2月2日まで延長されました。また、上海市政府は2月9日まで同市内企業の営業を禁止しました。
家族と過ごす・旅行・そして「転職」
中国では家族を大切にする文化があるため、多くの中国人は実家に帰り、親族一同で顔を合わせて年越しを迎えます。
ただし、たまの長期休暇とあって、この期間を旅行に充てたいと考える人も少なくありません。2020年の春節に旅行をする中国人は約4.5億人に達するという計算もあり、国内・海外を問わず非常に多くの中国人が移動すると予想されています。
同時に、この期間を利用して「転職」を成功させようと考える90後(90年代生まれ)が増えていることも指摘されています。背景には残業のプレッシャーがあるようです。
また春節版「紅白歌合戦」である「春晩」も、この時期中国人の大きな関心事です。日本ではテレビは高齢者の視聴するものとなりつつありますが、中国では90後(90年代生まれ)でも44%の人が関心を抱いているとのデータが出ています。
春節まであと10日!イマドキ中国人の日本旅行事情とは?「日本文化体験」「フィギュア」「追っかけ」
中国では間もなく春節を迎えます。旧暦に基づく春節は毎年日取りが異なり、今年は1月25日が旧暦の元旦「初一」となります。前日の「除夕」も大みそかとして食事や参拝など古くからの習わしがあり、大切にされています。春節の休暇は最大で10日程度にもおよび、この期間は家族で過ごすだけでなく、旅行に出かける人も少なくありません。同じく中国の大型連休には、建国記念日にあたる国慶節がある10月1日から始まるものがありますが、2019年は香港の情勢悪化も影響してか、例年以上に旅行先として日本の人気が高まりまし...
旅行の傾向「南下避寒、北上玩雪」高速道路・春運・海外ニッチ目的地への需要も
中国の国土は広いため、春節の時期でも南側の海南島では27度前後、北のハルビンでは氷点下10度前後と、気候に大きな差があります。
春節の旅行は「南下避寒、北上玩雪(南で寒さを避ける、北で雪あそび)」がトレンドとなっており、海外旅行においても、南の暑い国に行くか北の寒い国に行くかという視点で行先を選ぶ人もいるようです。
春節の時期には都市部から帰省する人々と旅行に向かう人々により高速道路が非常に混雑します。毎年、混雑状況に関する報道があるのは日本と変わらない光景でしょう。飛行機の国内線や高速鉄道も利用されていますが、こちらに関してはチケット入手の困難さが定番のニュースです。
こうした「春節」の大移動を「春運」と呼びます。
またこれだけ多くの中国人が旅行に出かけているため、近隣諸国の都市圏は既に多くの中国人観光客で溢れています。そのため、特にリピーターではメジャーな旅行地を避けたいと考える中国人も少なくありません。訪日旅行でも「雪」を目的にしたいが、二回目は北海道以外を、と考えるようなケースです。
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人気旅行地トップに「日本」東京・大阪が人気
中国のオンライン旅行会社である携程旅行網(Ctrip)は2020年1月17日、今年の春節のトレンド予測を発表しています。またそのほか各旅行関連企業のデータに基づき、短期旅行で最も人気のある目的地は日本であることが報道されています。
携程旅行網(Ctrip)により発表された今年の春節におけるビザ手続き件数のランキングによると、最も件数が多かったのは日本で、次いでシンガポール、マレーシア、タイ、韓国、オーストラリア、アメリカ、ベトナム、ニュージーランド、イギリスの順に並びました。手続き件数を昨年と比較すると、日本は50%以上、マレーシアとベトナムは2倍以上に増加しているそうです。
同じく現地報道によれば、2~3家庭でグループを作り旅行するスタイルが流行しています。都市別では「東京」「バンコク」「シンガポール」「大阪」「フィジー」等が人気となっています。
なぜ日本?ビザの発給条件緩和も影響
中国人の短期旅行の目的地として日本が最も人気を集めている理由について現地メディアやSNSをチェックしてみると、観光資源の魅力は当然ながら、ビザの発給条件の緩和に対する評価も見られます。
2017年、外務省は中国人に対するビザの発行条件を緩和し、十分な経済力を有する中国人に対して数次ビザ(繰り返し入国可能なビザ)の発行を開始したほか、以前から岩手県、宮城県、福島県を訪問する中国人に対して発行されていた東北三県数次ビザを東北六県数次ビザとし、新たに青森県、秋田県、山形県を追加しました。
また、高所得者が数次ビザを取得した場合は旅行会社を経由せずとも航空券や宿泊先を手配できるものとし、クレジットカードを有する中国人に対しては個人観光一次ビザの提出書類を簡素化するなど、大幅な条件緩和も実施されています。
こうした施策がとられ始めた2017年から現在に至るまで、訪日中国人ののべ人数は増加を続けています。2020年4月からはビザのオンライン申請が可能になるほか、電子ビザを導入するなど、さらに利便性の向上がはかられます。こうした施策は、訪日中国人の増加をもたらすとみられています。
ビザ緩和によるインバウンド効果は?個人観光ビザの発給で増える訪日中国人向けの対策とは
2018年における日本のビザ発給数は過去最高を記録し、訪日観光客がますます増加傾向にあります。また、2019年には中国を含む複数の国・地域でビザ緩和が行われました。その中でも中国の個人ビザの伸びが顕著であり、日本の観光業における中国市場の活性化や消費拡大が期待されています。さらには、インバウンド事業におけるライバル国「タイ」の動きもあり、今後はよりビザ申請手続の簡素化が進められる予定です。このように、日本が力を入れる観光産業を促進するために、近年さまざまなビザ緩和が行われています。インバウ...
旅行ブログサイト「Mafengwo」北海道コンテンツがピックアップ、「SNS映え」意識
先に触れたように、中国人の旅先の選定では「北上玩雪(北で雪あそび)」がトレンドとなっています。
旅行ブログサイト「Mafengwo」でも、北海道旅行に関するコンテンツが春節直前のタイミングでピックアップ記事として紹介されています。
中国と異なる質の日本の雪でのスノースポーツを評価する声だけでなく、雪景色で撮った写真や動画は「インスタ映え」ならぬ「WeChat映え」「Weibo映え」「TikTok映え」すると感じられるようです。
コンテンツを確認してみると、映画作品から旅行先を選定していることがわかります。中国人に定番人気のラーメンはもとより、ノンアルコールビールを味わう姿も見られ、食に関する関心の高さもうかがえます。
北海道は中国の移民地となるのか?「北海道人口1,000万人計画」と森林の外資買収状況
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马蜂窝(MaFengWo)とは
马蜂窝(MaFengWo)は、中国最大級の旅行サイトのひとつです。日本では「ヒトサラ」と马蜂窝(マーファンウォー)が提携し、両社のユーザーを連携するサービスの提供を開始しています。近年、訪日中国人の個人旅行化がすすみ、訪日旅行を計画するのに马蜂窝の口コミや旅行ブログを参考にする中国人が増加しています。このような傾向から、日本でも马蜂窝での集客やPRを行っている企業があります。今回の記事では、马蜂窝(MaFengWo)の特徴や、インバウンド集客に马蜂窝を活用した事例を紹介します。Google...
「地方」に関心、「洗肺」+民泊で伝統文化体験&のんびり滞在
中国では急速な経済発展に伴い、一部都市では公害の程度のひどさが指摘されています。こうした地域で生活する人々の間で、郊外の農村へ行って新鮮な空気を身体に取り入れる「洗肺」がブームとなっています。
「洗肺」の目的地は中国国内に限らず、訪日旅行でも「洗肺」を目的に田舎に足を運ぶ中国人観光客が少しずつ増えています。今回の春節期間にはこうした地方の民泊滞在の熱が引き続き確認できることを、中国の口コミサイトを運営するMeituanが指摘しています。
また旅行者を迎え入れる農村部では、年越しにあたり季節感あふれる伝統文化を取り行うといった演出を用意しているそうです。こうした旅行を選ぶ中国人の目的の一つに、古き良き時代を感じさせる農村部の生活リズムを感じ取ることがあると考えられます。
特に近年の都市部では残業の多さをはじめ、中国人には以前から指摘されているように進学、仕事、結婚のプレッシャーも大きくのしかかってきます。のんびりとした気分にさせられることも旅行を決定する重要な要因となっているはずです。
日本の地方でもこうしたニーズを満たせる可能性が高いのではないでしょうか。
また中国では各地の観光スポットに、どのくらいの価値があるのかを示す指標が「A」の数で示されていますが、この数字が大きいものを好むというデータも発表されています。日本人からすると、観光資源に限らず価値を大々的にアピールするのは気恥ずかしいところがあるかもしれませんが、中国ではそのようなアピールが日常的であること、声の大きなところに注目するということはしっかり踏まえて施策を練るべきでしょう。
【中国】日本の地方に「洗肺(シーフェイ)」しにくる中国人急増
2015年、訪日中国人による「爆買い」ブームの到来で、テレビでは春節特集一色になりました。中国春節では、爆竹を鳴らす風習があり、環境汚染などの問題により爆竹規制が設けられましたが、現在、PM2.5の数値が発表され驚きの結果が明らかになりました。 一方で2016年下半期頃から、訪日中国人のFIT(個人旅行)が徐々に増加し、日本の地方でしか味わえない「あるコト」が話題になりました。 今回は、訪日中国人のFIT(個人旅行)の地方インバウンドと中国PM2.5との関係性をひもといていきます。 ...
訪日客に人気の「インスタ映え」スポットベスト5が意外!超有名観光地でなくとも「写真」を通じて訪日客を呼び込める時代に
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春節期間の旅行を断念した層だけでなく、今回人気旅先として1位となった日本には引き続き多くの中国人が旅行に来ると予想されます。中国市場でも、当然ながらオリンピック需要も発生するでしょう。春節期間の様子も参考に、より良いオペレーション体制等を構築していくことが重要です。
また春節期間には年始の挨拶の品だけでなく、新しい服を買うといった習慣もあり、この期間の中国人観光客の消費意欲は普段に増して旺盛であることも考えられます。こうした需要を取りこぼさないような環境整備にも努めるとよいかもしれません。
<参照>
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