「ゴールデンルート近隣エリア」地の利を活かせない兵庫・滋賀の課題:人が増えても消費額減少、解決策は「宿泊地」としての魅力訴求

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

日本の名所を巡る広域観光周遊ルートとして、最も有名なルートが「ゴールデンルート」です。

ゴールデンルートとは、東京、富士山、名古屋、京都、大阪をそれぞれ観光する一連の周遊ルートのことを指します。

この中には日本の中でも日本を代表する観光地が数多く含まれており、はじめて日本を観光する訪日外国人にとっても分かりやすい観光ルートだと言えます。

実際、ゴールデンルートに沿って観光を楽しむ訪日外国人は数多く存在するため、ゴールデンルート沿線の区域には訪日外国人の流入が起こりやすく、沿線の各県では観光客の訪問者数が増加する傾向にあります。

しかし、ゴールデンルートに含まれている京都府や大阪府に隣接する兵庫県や滋賀県では、訪問者数が伸びている一方で消費金額は減少傾向となっています。

今回はこれらの2県に焦点を絞り、訪日ラボ著書『インバウンド調査報告書』のデータをもとに消費金額が伸び悩む理由と対策について解説します。

関連リンク
今更聞けない「ゴールデンルート」とは?
『ゴールデンルートなんて存在しない』地方インバウンド誘致はどうすればいい?
【愛知】外国人満足度、驚異の96%のワケ

サンプル版ダウンロードはこちら
調査報告書のご注文はこちらから

インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)

兵庫県のインバウンド動向

まずは京都府と大阪府に隣接している兵庫県インバウンド動向を解説します。

兵庫県は中華街外国人居留地など、古くから外国人の往来が見られた神戸市、国宝・重要文化財として知られる姫路城、平安時代以前からの歴史を持つ城崎温泉など、非常に多くの観光地を抱えています。

訪問者数と宿泊者数は共に増加

2019年上半期のデータを見てみると、兵庫県における訪日外国人の訪問者数102万8,517人を記録し、前年同期と比べて3.8%増加しました。また、訪日外国人の宿泊者数70万1,740人を記録し、前年同期と比べて19.2%増加しました。

兵庫県は上記のように豊富な観光資源を有するため、中国や欧米豪圏を中心に数多くの外国人観光客が来訪しているようです。

兵庫県のインバウンド事情!城崎温泉をフックにした豊岡市の成功事例と各地域のPR活動とは

兵庫県のインバウンド事情は訪日外国人観光客に人気の大阪や京都と比べ、訪問客数、宿泊日数とも後れを取っています。そんななか、城崎温泉を有する豊岡市が地域再生と結び付けた体験型観光でインバウンド需要を急速に伸ばしているほか、神戸市では近畿の他の観光地からの後れを取り戻すため、行政を上げての取り組みを加速させています。今回は兵庫県が行っているインバウンド対応、ひょうごツーリズム、フードツーリズム、体験型観光について紹介します。関連リンク兵庫県のインバウンド需要2年前より外国人消費2割減…インバウ...


しかし、消費額は大幅にダウン

一方、2019年上半期の一人当たり消費金額を見てみると20,813円となっており、前年同期と比べて29.9%も下落しています。また、消費総額は214億645万8,534円と、前年同期と比べて同じく27.3%も下落しています。

▲[兵庫県・費目別消費者単価]:インバウンド調査報告書2020
▲[兵庫県・費目別消費者単価]:インバウンド調査報告書2020

消費金額を費目別に見てみると、娯楽等サービス費と交通費の下落に注目できます。娯楽や交通に使われる金額が減るということは、兵庫県の中で移動、観光をしないで次の目的地へ行ってしまう人も少なくないということが考えられます。

また京都や大阪などのゴールデンルート地域からアクセスが良いにも関わらず、訪日観光客は兵庫へと周遊に来ていない可能性もあります。兵庫県にある多数の観光コンテンツは、こうした地域を訪れる訪日観光客にうまくアプローチできていないのかもしれません。

SAMURAI体験!SAKE鏡開き!?兵庫・丹波市、インバウンド向けPR動画公開・体験プログラムの販売開始!2月19日からKYOTOに行かな

兵庫県伊丹市は2月19日(月)より、Youtubeにて動画『伊丹で体験 伝統的な日本文化』を公開します。また動画の中で実際に体験しているプログラムを1月末よりAttractiveJAPANにて順次販売を開始しています。伊丹の特色である「清酒発祥の地」や「なぎなたの聖地」にちなみ「鏡開き体験」や「なぎなた体験」など様々な体験を取り揃えています。大阪から約15分という利便性から伊丹に少しでも多くの人が足を運んでもらえるようにPRしていきます。●動画「伊丹で体験 伝統的な日本文化」の公開なぎなた...


滋賀県のインバウンド動向

次に、ゴールデンルートに含まれる京都府に隣接する、滋賀県インバウンド動向も解説します。滋賀県は琵琶湖、彦根城、比叡山延暦寺などの歴史のある観光地を多く有しており、歴史好きの訪日外国人にとっては魅力的な目的地となっているようです。

訪問者数は増加も、宿泊者数は減少

2019年上半期のデータを見てみると、滋賀県における訪日外国人の訪問者数は10万8,854人を記録し、前年同期と比べて4.2%増加しました。しかし宿泊者数は減少しており、京都から日帰りで観光をしたり通り過ぎるだけにとどまる外国人観光客が増えつつあるという仮説が成り立ちます。

宿泊施設の中では旅館とリゾートホテルにおける宿泊者数の減少率が特に高くなっています。

インバウンド対応を強化。滋賀にキャンピングカーレンタルセンター、オープン

目次近畿および東海地方のインバウンド対応を強化日本最大級のキャンピングカーレンタルサービス京都府からのインバウンド観光客が増加近畿および東海地方のインバウンド対応を強化キャンピングカー株式会社は、2018年12月18日、同社が運営する『ジャパンキャンピングカーレンタルセンター(以下『ジャパンCRC』)』の新拠点を、滋賀県長浜市にてオープンしました。この新拠点の名称は、『滋賀キャンピングカーレンタルセンター(以下『滋賀CRC』)』。近畿および東海地方のインバウンド対応を強化すべく設立されたそ...


兵庫県と同じく、消費金額は大幅にダウン

滋賀県における2019年上半期の一人当たり消費金額を見てみると2万7,644円となっており、前年同期と比べて21.2%も下落しています。また、消費総額30億911万5,429円と、前年同期と比べて同じく17.9%も下落しています。

▲[滋賀県・費目別消費者単価]:インバウンド調査報告書2020
▲[滋賀県・費目別消費者単価]:インバウンド調査報告書2020

中でも特に宿泊費の下落が著しく、前年同期と比べて44.6%減少していることからも、滋賀に泊まらない観光客が増えていることがうかがい知れます。

一方、買物代は前年同期と比べて44.8%増加しているため、一定の買い物需要が存在することも同時に分かります。

滋賀県は今後宿泊者の獲得に力を入れていくことで、消費金額の減少にストップをかけることができるかもしれません。大阪や京都を観光する際の宿泊先としてのポジションを確立していく戦略や、すでにファンがいると考えられる商業施設の魅力を訴求することも有効でしょう。

▲[滋賀県・国籍別地域別一人あたりの消費金額]:インバウンド調査報告書2020
▲[滋賀県・国籍別地域別一人あたりの消費金額]:インバウンド調査報告書2020

国籍別に一人当たりの消費金額を見てみると、韓国、台湾、香港、タイなどアジア諸国からの観光客による消費金額が特に減少しています。東南アジアからは、ビザ緩和やLCCの就航増加により訪日旅行者が増えていますが、同時に欧米豪や中国ほどの消費力がない属性であるケースも多くなっています。

アジア諸国から日本はアクセスに優れており、近年リピーターも多くなっています。こうした属性に響く観光コンテンツの開発や情報発信によるさらなる訪日客数の増加、一人当たりの消費単価を上昇させるような取り組みが課題解決に有効でしょう。

【地方誘致】滋賀県の外国人特化農村体験ツアーTour du Lac Biwa(ツールドラック ビワ)とは?

滋賀県と言えば何を思い浮かべるでしょう?日本人にとっては琵琶湖、ゆるキャラのひこにゃんなどのイメージが強いですが、訪日外国人観光客にとっては琵琶湖付近の雄大な自然、棚田、古民家、鮒ずしなどの日本の田舎の暮らしを体験出来る場所として人気が高まっています。こうした流れを作り出しているのが、株式会社ビーエスシー・インターナショナル Tour du lac(ツールドラック ビワ)事業部が行っている農村体験ツアー Tour du Lac Biwa (ツールドラック ビワ)です。目次外国人特化農村体験...


ゴールデンルート近隣エリアの強みを最大限に、リピート層も意識

兵庫県や滋賀県は、京都府や大阪府などゴールデンルート上の人気観光地の近隣に位置するため、そこからのアクセスの良さを活かしたインバウンド対策により、巻き返しも期待できるでしょう。

今後インバウンド市場においては、リピーターが増加していくと考えられます。こうした層にアプローチできるようなコンテンツの開発により、新たな市場を開拓することも可能となるはずです。

一方、アクセスの良さは滞在時間の短さも引き起こしかねません。旅マエ観光客へのプロモーションによりこうした事態を防いだり、ゴールデンルート近隣の区域は訪日外国人に日本の日常風景を体感してもらえる機会にも恵まれています。

次に日本に来たときはここに泊まりたい、と思えるような宿泊ニーズを踏まえ、旅ナカでの消費を促せるようなインバウンド対策が実施できると良いでしょう。

インバウンド戦略の検討には、最新の動向が一目で分かるインバウンド調査報告書2020をご活用ください。

サンプル版ダウンロードはこちら
調査報告書のご注文はこちらから

本調査報告書について

本調査報告書は「訪日ラボ」が、2018年上期から2019年上期にかけてのインバウンド市場を徹底的に分析することで、2020年上期のインバウンド市場を展望する内容となっております。

本報告書の制作にあたり、観光庁JNTOなどが提供する公的なデータ、株式会社ナビタイムジャパンからのデータ協力、そして自社メディアにて集積した膨大なデータを基に分析しており、変化の激しいインバウンド業界の方にとって価値のある情報を提供することを目的としています。

構成・各章の概要は以下の通り。

  • 第1章「市場全体データから分析するインバウンドの現在」
    • 訪日者数や消費金額総額等のマクロデータに加え、業界を支える事業者へのアンケートも交え、インバウンドの現在の趨勢についてまとめています。
  • 第2章「都道府県別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
    • 全国47都道府県を9エリアに分け、県別に各種の公的データを集計。また、NAVITIME提供のインバウンドGPSデータによる宿泊者数や移動データも収録し、外国人訪問者の動向と消費の詳細が分かるデータとしてまとめています。
  • 第3章「国・地域別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
    • 政府の指定する重点市場20か国について各種データを集計し、各国の訪問動向と消費内訳をまとめています。どの月にどの県へ訪問、宿泊がなされ、なにを期待して訪日したのか。またどの品目により多くの消費がなされたのか。次にインバウンド対策として打つべき手についてデータを分析しています。
  • 第4章「業界別インバウンド市場ニュースと事例」
    • 2019年1月-6月期において訪日ラボの人気記事を業界ごとにリストアップし、それらをPVの大きかった順に並べ、キーワードを抽出しています。メーカー、交通、宿泊、小売、そして地方自治体のニュースの記事が注目を集め、話題となったのか。業界ごとに分析・解説しています。
  • 第5章「インバウンド対策ソリューション企業一覧」
    • インバウンド向けに受け入れ対応したい・プロモーションしたい事業者をサポートする、インバウンド対策サービスをまとめ、リストアップしています。

書籍情報

書名:インバウンド調査報告書2020[2019年上期のデータから2020年上期を展望する]

著者:訪日ラボ

発行所:株式会社インプレス

発売日:2019年12月24日(火)

価格:CD(PDF)版、ダウンロード版90,000円(税別)CD(PDF)+冊子版100,000円(税別)

訪日ラボ セミナー紹介&最新版インバウンド情報まとめ

4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜


4月から観光・インバウンドに関わる仕事に就いたり、関連部署へ異動となり、知識のインプットに追われていませんか?また、より一層事業を推進するために必要な学び直しの機会を設ける担当者も増えてきております。

このセミナーでは、

  • 新担当になって、インバウンドの何から始めたらいいか分からない
  • インバウンド推進が本格化し、改めて情報やノウハウを学び直したい
  • そもそもインバウンドに興味があるが、情報を収集できていない

方にとって必要な基礎情報と、知っておきたい新情報をお届けする機会となっております!

詳しくはこちらをご覧ください。

4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜

【インバウンド情報まとめ 2024年4月】3月訪日外国人数「300万人」突破 他


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。

この記事では、2024年4月版レポートから、3月〜4月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください!

本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。
3月訪日外国人数「300万人」突破 / 2月の世界航空需要、コロナ前から完全回復【インバウンド情報まとめ 2024年4月】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる4月から観光・インバウンドに関わる仕事に就いたり、関連部署へ異動となり、知識のインプットに追われていませんか? また、より一層事業を推進するために必要な学び直しの機会を設ける担当者も増えてきております。
このセミナーでは、
新担当になって、インバウンドの何から始めたらいいか分からない
インバウンド推進が本格化し、改めて情報やノウハウを学び直したい
そもそもインバウンドに興味があるが、情報を収集できていない
方にとって必要な基礎情報と、知っておきたい新情報をお届けする機会となっております!
詳しくはこちらをご覧ください。
→4月までに学んでおきたい!【基礎から始めるインバウンド対策】 〜ラーチーゴー & ジャパンガイドが教える市場別最新データ〜

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに