外国人観光客が増加傾向にある日本では、地方における外国人観光客誘致は、地方創生の大きなポイントの一つともなっています。
しかしながら、多言語対応の遅れや観光情報の発信不足などの問題により、なかなか外国人観光客の誘致に繋がらないという悩みを抱える自治体もあるのではないでしょうか。
そういった中で、愛知県名古屋市にある大須商店街では、外国人観光客誘致に向けて先進的な取り組みが行われています。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
大須商店街とは?
名古屋市内にある大須は、近年外国人観光客から注目を集める人気スポットとなっています。特に、メインともいえる大須商店街について詳しく解説します。
大須商店街の魅力
大須商店街は、愛知県名古屋市中区中心部の代表的な繁華街です。
古くは日本三大電気街として知られていましたが、現在では老若男女問わず多くの人でにぎわう繁華街となっています。地方の多くの商店街がシャッター街化してしまっている日本において、このように活気に溢れ観光地としても人気を集める商店街は珍しい例ともいえます。
大須商店街の魅力は、「ごった煮」とも呼ばれる、文化面、芸術面を問わず様々な文化を受け入れ、取り入れてきたことにあります。
メジャーからアンダーグラウンド的なカルチャーまで取り込んだ「ごった煮」な雰囲気を年齢、国籍を問わず楽しむことができるのが、大須商店街の人気の理由といえます。
名古屋市のインバウンド事情
大須商店街のある名古屋市は、日本三大都市にも数えられることでも有名ですが、インバウンド需要も年々成長を遂げています。
2018年12月に発表された「名古屋市観光客・宿泊客動向調査」によれば、外国人の施設延べ宿泊者数は毎年増加を続けており、2018年には200万人を突破しています。
外国人宿泊者数を国別に見ると、上位から中国、台湾、香港、韓国と、全体の7割以上をアジア諸国が多くを占めていることがわかります。
そのほか、名古屋市の名物である「名古屋めし」という独自に成熟した食文化を持っており、国内・海外問わず観光客の舌を喜ばせています。
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外国人観光客が日本滞在中に困ることとは?
名古屋市の大須商店街のように、日本各地で外国人観光客が増加傾向にあります。
こうした傾向にあるにもかかわらず、日本の外国人観光客の受け入れ体制には課題がいくつも残されているともいえます。ここでは、外国人観光客が日本滞在中に困ったこととして挙げている事柄を確認し、日本全体としてかかえるインバウンドの課題について振り返ります。
「多言語対応」「フリーWi-Fi」「決済」に不満
「JTB訪日旅行重点15カ国調査2019」によると、外国人観光客が日本滞在中に困ったこととして特に指摘されているものの一例が、「多言語対応の遅れ」「フリーWi-Fiの整備不足」「決済端末の少なさ」であることがわかります。
多言語対応の遅れに関しては、都心部や、一部の外国人観光客に向けた大きな観光施設を除き、日本語以外の表記がないことが改善点として挙げられます。外国人観光客が公共交通機関での乗り換えをする際には、駅構内の看板が日本語表記になっていて理解できなかったり、チケットの買い方の説明がなかったりすることで困ってしまう状況が考えられます。
フリーWi-Fi環境の整備はここ数年で改善がなされているものの、外国人観光客が困っている内容として上位に挙がっていることから、今もなお課題を残している現状といえます。
決済手段の少なさは、外国人観光客にとってストレスになりうる問題と言えます。中国では現金を見る機会はほとんどないというほどキャッシュレス決済化が進んでいたり、欧米諸国でも個人商店や公共交通機関でカード決済が可能なことが当たり前の時代となっています。そうした環境に慣れている外国人観光客は、日本旅行時に不便さを感じることが多いようです。
大須商店街のインバウンド対策
外国人観光客が日本滞在中に困ることについて紹介しましたが、上記のような課題にいち早く対応したのが大須商店街です。
大須商店街は外国人観光客の受け入れ体制に対して着実かつ丁寧な取り組みを行ってきました。ここでは、その取り組みについて紹介します。
1. 多言語対応
観光情報や表示の多言語対応について、大須商店街ではすでに具体的な取り組みが行われています。大須商店街の情報を掲載したWebサイトや大須周辺エリアの地図は英語、中文簡体字、中文繁体字、ハングル語に多言語対応しており、外国人観光客でも情報にアクセスできるようにしています。
こうした取り組みにより、訪れてくれた人が確実に目的の場所にたどり着けるようにすることはもちろん、大須商店街のマップから新たな商店街の魅力に気づいてもらえるような工夫もなされています。
2. フリーWi-Fi環境の整備
大須商店街では、「OSU WIFI」と呼ばれる無料Wi-Fiの整備にもいち早く取り組みました。
地元企業やNTT西日本‐東海などの回線の協賛を得て、大須商店街のほぼ全域で無線LANが使用可能となっています。
ネットで観光情報を集めたい外国人観光客にとっては、観光先でネット接続できることは心強く、快適な観光体験を支えることになります。
3. キャッシュレス決済への対応
そのほか、大須では決済手段の選択肢を増やすことにも取り組んでいます。
キャッシュレス決済に慣れている外国人観光客にとって、日本現地で通貨を引き出す際にかかる時間と手間、手数料はできれば避けたいものです。
特に、名古屋市における外国人観光客数の中でも大きなウエイトを占めている中国人観光客は、アリペイなどのキャッシュレス決済を日頃利用している人も多いといいます。
大須商店街では、商店街連盟が主導して約1,200店舗にアリペイ(Alipay)とPayPayの導入を呼びかけました。こうした働きかけにより、外国人観光客が快適に決済ができる環境作りを進めています。
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積極的なインバウンド対策に取り組む大須商店街
大須商店街は様々な文化を柔軟に受け入れ、メジャーなカルチャーからアンダーグラウンド系カルチャーまで「ごった煮」された雰囲気が魅力の街です。
しかし、大須商店街が外国人観光客に人気な理由はそれだけではありません。外国人観光客の受け入れ体制の課題についていち早く取り組み、快適な観光体験の実現のために注力してきた結果が、今日の人気を支えているともいえます。
大須商店街のインバウンド対策の事例を参考に、地域の外国人観光客の誘致や受け入れ体制の整備に役立てていきましょう。
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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