歌舞伎は日本を代表する伝統文化の一つであり、訪日外国人観光客の中にも歌舞伎に興味をもつ人が多いようです。
今回は訪日外国人観光客に歌舞伎を楽しんでもらうための施策を紹介します。
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歌舞伎の素晴らしさを海外に伝える工夫
訪日外国人観光客の中には日本の伝統芸能の一つである歌舞伎に興味を持っている人もおり、訪日旅行の際に実際に観劇してみたいというニーズがあります。
そこで、訪日外国人観光客に歌舞伎を楽しんでもらうために、歌舞伎の世界でどのような工夫・活動が行われているかを紹介します。
多言語対応
歌舞伎の世界では、旅行の際に「歌舞伎」を楽しみたいと考えている訪日外国人観光客に対して必要な情報を伝えるため、多言語対応が進められています。
日本の歌舞伎興行の多くを担う松竹株式会社は、歌舞伎の公演情報や歴史を英語で発信するWebサイト「KABUKI WEB」をオープンしました。松竹株式会社はこのWebサイトを通じて、チケットの買い方や観劇のヒント、ルールなど幅広い情報を発信しています。
このWebサイトからはチケット購入用のWebサイト「チケットWEB松竹」の英語版に移動できるようになっており、チケットの予約・購入がすべて英語で完結します。そのため、日本語のわからない訪日外国人観光客であっても、気軽に歌舞伎の劇場に足を運べるような仕組みになっています。
他にも歌舞伎の劇場では、歌舞伎の舞台中に話の内容がわかるよう、多言語音声ガイドを用意する、英語解説付きの公演を増やすなど、訪日外国人観光客に歌舞伎を楽しんでもらえるような工夫が進められています。
増える海外公演
歌舞伎の舞台が行わていれるのは、日本国内だけではありません。昨今では、海外での歌舞伎への注目が高まっていることから、海外での公演数も増えています。
実は歌舞伎は、以前から多くの国や地域で公演が行われており、初めての海外公演は1928年のソ連(現ロシア)でした。それ以来、36か国110都市での公演が行われ、現在も世界各地で活動が続けられています。
例としては、日中国交正常化を記念した2017年の北京公演や、国内では2000年から上演されている『平成中村座』のアメリカ・ニューヨークなどでの公演が挙げられます。
歌舞伎独特の美意識や構成は海外から高い評価を受けており、それをきっかけに近年、日本国内においても歌舞伎が再評価されつつあります。
現代風歌舞伎「スーパー歌舞伎」
歌舞伎と言えば、伝統的なストーリーを扱ったものを想像する人も多いでしょう。また、劇中では昔の言葉で話しているため、何を言っているかわからないと感じ、敬遠されてしまうこともありました。
しかし昨今では、若い人や訪日外国人観光客にも歌舞伎に興味を持ってもらおうと、現代風の歌舞伎「スーパー歌舞伎」という新しい取り組みが進められています。
スーパー歌舞伎とは、1986年に三代目市川猿之助が始めた、現代人にもわかりやすいテーマ性やエンターテインメント性を兼ね備えた現代風の歌舞伎です。
例としては、人気少年漫画の『ONE PIECE』と歌舞伎をミックスさせた演目『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』があります。2015年に初めて上演され、それまで歌舞伎とあまり縁のなかった若年層や訪日外国人観光客を取り込むことに成功しました。
言葉がわかりづらいという問題も、誰でも理解できる現代語を用いてストーリーを展開させることで解消しました。
また『スーパー歌舞伎Ⅱ ワンピース』は、「シネマ歌舞伎」として国内のみならずアメリカ・インド・スリランカなどの海外各地でも上映されました。歌舞伎界はこのように、海外にもファンの多い『ONE PIECE』を筆頭にした漫画・アニメ文化を歌舞伎に取り入れることで、新しい客層の獲得を目指しています。
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訪日外国人が歌舞伎を体験できるイベント
一般的に「歌舞伎」といえば、客席に座って舞台を観劇することが多いですが、2017年2月に歌舞伎を訪日外国人観光客が自ら「体験」できるイベントが開催されました。
このイベントは単発のものでしたが、モノ消費よりコト消費が重視されるようになってきた昨今のインバウンド市場において、「体験できる歌舞伎」は訪日外国人観光客の集客に効果的であるといえます。
1. 歌舞伎の基本を学ぶ
実際に歌舞伎をより身近に感じられるイベントの一つとして、2017年に歌舞伎座において、訪日外国人観光客向け伝統文化体験プログラムの一環として歌舞伎体験のイベントが行われました。
このイベントは、専門家による解説や「見得」体験、着付け体験などのさまざまな体験を通して歌舞伎について学ぶというものです。イベントには英語の通訳が付き、参加者には日本語のほか英語・中国語・韓国語で書かれた簡単なパンフレットが配布されました。
参加者はイベントが始まる前に、まず歌舞伎座ギャラリーの常設コーナーでもある「体験空間 歌舞伎にタッチ!」という展示で、実際に使う舞台装置や小道具などを見学しました。
プログラムの最初では、歌舞伎のストーリーがどのように展開していくか、配役にはどのような意味があるのかなど、歌舞伎を楽しく見るために必要な情報を、動画を通して学びました。
2. 「見得」を体験
次に参加者は、歌舞伎の見せ場の一つでもある「見得」を体験しました。
見得とは、役者が首をぐるっと回した後に停止し、そこでポーズを取るものですが、歌舞伎の中ではもっとも有名なポイントです。
その際に、歌舞伎における専門職の一つである「ツケ打ち」と呼ばれる人が樫の木の板に拍子木を打ち付けて音を出します。この「ツケ」と呼ばれる音は、見得の迫力をさらに増す効果があります。
イベントの参加者は、現役の歌舞伎俳優やツケ打ちに教わりながら、この2つの歌舞伎の役割を体験しました。
3. 衣装を着付け
プログラムの最後には、衣装の着付けについての説明がありました。
本番では、歌舞伎俳優は3分で着付けを終えて舞台に上がるといわれています。着付けは、汗をかいたり動いたりしても着崩れしにくいよう、様々なポイントに注意して行われます。
イベントでは、職人技ともいえるその着付けをまずは俳優が実際に行っているところを見た上で、参加者の中から選ばれた1人が実際に着付け体験を行いました。
訪日外国人観光客に向け歌舞伎を英語で説明
訪日外国人観光客に歌舞伎の魅力を伝えるためには、どのように説明すればよいのでしょうか。松竹株式会社は公式サイトで、英語で歌舞伎について解説しています。
Kabuki is a traditional Japanese performing art designated as an Intangible Cultural Heritage by UNESCO.
▲[Shochiku’s Kabuki and other theatrical productions]:松竹株式会社公式サイト英語版
また、女性の役を男性が担う点も、歌舞伎の大きな特徴です。前述した「KABUKI WEB」では、こうした「女形」について以下のように説明しています。
There are many remarkable features of kabuki, and the existence of onnagata, the specialists in female roles is one of them. In order to preserve itself, kabuki had to adapt throughout its long history, and since a law was passed in 1629 no real women have appeared on stage. In their place have been specialists in female roles called onnagata, and many people from Japan and abroad marvel at the skill of these actors who have trained for many years to perfect this art. They are not just imitating real women! The onnagata is a special theatrical creation based on artistic convention that has developed over hundreds of years.
(歌舞伎には注目に値する特徴がたくさんありますが、女形、つまり女性役のプロもその一つです。歌舞伎は保存のため、長い歴史を通して適応していく必要があり、1629年に法律が制定されて以降、舞台には本物の女性は登場していません。女性の役は女形と呼ばれる女性役のプロが担い、長年この技術を修得するために稽古をしてきた俳優たちの技には、国内外の多くの人から驚きの声が上がっています。俳優たちはただ本物の女性を真似ているのではないのです!女形は、何百年にもわたって発展してきた芸術的な慣習に基づく、特別な舞台用演技なのです。)
▲[About Kabuki]:KABUKI official website - KABUKI WEB(松竹株式会社)
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歌舞伎の魅力を訪日外国人観光客に伝える
歌舞伎は日本の伝統芸能でありながら、昨今では芸術として海外からの注目を集めています。
独特の衣装や化粧に身を包み、ダイナミックな演技が行われる歌舞伎は、日本文化を体験したいと考えている訪日外国人観光客にとって興味深く感じられるでしょう。
歌舞伎では長年、日本人でも理解するのが困難な古語が用いられていましたが、近年では漫画を題材にしたり、訪日外国人観光客への配慮として英語での解説をつけたりと、様々な挑戦が行われています。
歌舞伎の魅力を訪日外国人観光客にも伝えるためには、このような新しい取り組みが今後も進められていく必要があるでしょう。
現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、外国人が日本を訪れることは難しい状況になっています。
しかしこのような状況でも、歌舞伎の映像に多言語の字幕を設定して配信するなど、感染症収束後の訪日外国人観光客誘客に向けてできることはあるでしょう。先を見据え「今できること」を着実に行っていくことが重要です。
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