中国人に人気『ラブライブ!』沼津が聖地になれる理由:中国の検索数・旅行口コミサイトで検証するオタクコンテンツへの期待と課題

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インバウンド市場への世間の認識が高まるにつれ、中国人をはじめとする訪日外国人にも「聖地巡礼」と呼ばれる旅行スタイルが広く知られるところとなってきました。映画やアニメ作品への情熱を、旅行や購買といった行動に結びつけるファンの熱心さは目を見張るものがあります。

静岡県沼津市は、人気アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の舞台となっています。5月7日、同市役所は、上海在住の同アニメのファンを名乗る人物から、段ボール3箱分のマスク1万枚が届けられたことを発表しています。

沼津といえば、東京から気軽に行ける魚がおいしい港町であり、富士山や伊豆旅行の玄関口でもあり、沼津まで行くなら、ついでに御殿場アウトレットへ買い物や、熱海で温泉などに行きたくなる人もいるのではないでしょうか。

今回は、人気アニメの舞台である沼津を例に、訪日中国人による聖地巡礼の実態と、認知拡大の可能性を考えてみます。


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沼津といえば中国人にとって『ラブライブ!』の地

『ラブライブ!サンシャイン!!』は『ラブライブ!』に続く2作目で、1作目も2作目も簡単に言えば女子生徒9人が立ち上がってスクールアイドルとなり成長する話です。2作目の舞台が沼津となっています

『ラブライブ!』シリーズは、メディアミックス作品であり、漫画、テレビアニメ、ボイスドラマと様々なメディア形態で作品が展開されています。1作目は2010年から、2作目は2016年から漫画が公開されています。

沼津は町興しの一環として、市内の商店にラブライブコーナーを設けたり、商店街のアーケードに登場人物のイラストを飾ったり、ホテルに声優の色紙を飾ったり、ラッピング電車やラッピングバスを用意したり、イベントを行ったりしています。

▲[沼津商店街。ラブライブだらけだ]:筆者撮影
▲[沼津商店街。ラブライブだらけだ]:筆者撮影

『ラブライブ!』シリーズは、中国ではオンラインで配信され、人気を集めました。

中国では『ラブライブ!』はどう表記される?

作品名である『ラブライブ!』は、中国語では『LoveLive!』と表記します。

『ラブライブ!サンシャイン!!』の表記は『Lovelive!sunshine!!』になりますが、その口コミを検索するにはシリーズ名でもある『LoveLive!』で検索したほうがいいでしょう。

『ラブライブ!』の聖地巡礼需要を検索

中国の定番検索サイト百度(Baidu)で「沼津」と入れて検索すると、アニメ聖地巡礼のレポートが多数出てきます。新型コロナウイルスが蔓延する前の2019年末のレポートも出てきます。

ジャンル的に似たコンテンツとして、ゲームから始まりメディアミックス作品を展開している『アイドルマスター(偶像大師)』や、テレビアニメののちに小説やゲームが展開された『ガールズアンドパンツァー(少女与戦車)』があります。

前者は東京の中野、後者は茨城の大洗が舞台となっています。それぞれファンにとっての「聖地」であり、ゆかりの地として実際に自分の目で見てみたい、街を歩きたいという需要が存在すると考えられます。

そこで百度指数で、ラブライブとアイドルマスターとガールズアンドパンツァーの注目度を見てみます。

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▲[百度指数で3作品の注目度を比較]:筆者キャプチャ
▲[百度指数で3作品の注目度を比較]:筆者キャプチャ

グラフから見ると、2014年より盛り上がりを見せているのがわかります。2016年は2作目が公開された年であり、1作目以上にファンの熱量が高まったことが見て取れます。

2018年以降指数は減少し、ピークは過ぎていますが、それでも聖地巡礼旅行をする人はいることは、後述する旅行記サイトの投稿から確認できます。

およそ25年前に放映されたアニメ・スラムダンクの映像をリアルで見たくて鎌倉高校前の踏切を聖地巡礼する中国人観光客がいることを考えれば、ブームのピークを過ぎたアニメでも、いったん大きな注目を集めロイヤリティの高いファンをつかめるような作品であれば、聖地巡礼のムーブメントは続くのかもしれません

掲示板サイト「百度貼吧」からも作品の人気比較ができる

また掲示板サイト「百度貼吧」は、全てのファンが見るわけではないですが、ユーザー登録不要でスレッド数やフォロワー数が見られるので複数の作品を比較して、その話題性の高さ、ファン層の厚さを推し量る指標にはなります。

これまで挙げたタイトルのフォロワー数とスレッド数を見ると、以下のような数字となります。

アイドルマスター、ガールズアンドパンツァーと比較した場合には、同じメディアミックス作品でもとびぬけて支持を集めている様子がうかがえます。

シリーズについてのフォロワー数は45万8,700と、スラムダンクの48万1,600に迫る勢いです。スレッド数は925万超ですが、スラムダンクは2,281万とこちらはまだ差が大きくなっています。 

作品名

フォロワー数(百度貼吧)

スレッド数(百度貼吧)

ラブライブ!サンシャイン!!

5万3,000

217万6,800

ラブライブ!シリーズ(『ラブライブ!サンシャイン!!』を含む)

45万8,700

925万1,000

アイドルマスター

3万6,000

46万6,300

ガールズアンドパンツァー

8万

286万6,700

スラムダンク

48万1,600

2,281万1,600




▲[百度貼吧のラブライブ!聖地巡礼スレッド]:筆者キャプチャ

聖地巡礼は旅行消費額拡大に寄与するか?『ラブライブ!』シリーズの場合

中国の主要SNS、掲示板である微博Weibo)、微信WeChat)、百度(Tieba)それぞれで「沼津」を検索すると、ほとんどが聖地巡礼旅行です。

SNS以外の旅行先の情報収集には、旅行サイトが活用されています。中国の旅行サイトでは、「旅行記」と呼ばれるブログ形式のコンテンツが掲載されており、中国人はこうしたコンテンツを参考に旅程を決めたり、あるいはそのままのルートをなぞって旅行したりしています。

こうした「旅行記」コンテンツで沼津を紹介しているものを探すと、旅行サイトの「螞蜂窩(马蜂窝)」に掲載されている旅行記が最も多く、続いて「窮遊網(穷游网)」にも沼津を紹介する旅行記が見つけられます。旅行サイトでは大手である「途牛網(途牛网)」には情報が載っていませんでした。

「窮遊網」はローコストな個人旅行者が集まるだけあってか、沼津の旅行記はあるものの、聖地巡礼としての紹介はありませんでした。「窮遊網」の旅行記には、ラブライブ!要素のない沼津情報に加え、富士山や伊豆や御殿場をセットにした旅行が紹介されています。

投稿されている旅行記の本数は、周辺都市と比べて少なくなっています。窮遊網では地図上の都市を旅行記の数でランク付けする機能があります。この機能を使えば、日本のどの都市が人気の都市なのかがわかるヒントとなるでしょう。 

▲[窮遊網(穷游网)の地図。富士山に近い印象のある富士市を訪れる観光客は多い]:筆者キャプチャ
▲[窮遊網(穷游网)の地図。富士山に近い印象のある富士市を訪れる観光客は多い]:筆者キャプチャ

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『ラブライブ!』ファンがたどる、実際のルートは?

『ラブライブ!』の聖地巡礼を目的に沼津を訪れている旅行者の旅行記を見てみました。

ほとんどの観光客が、新幹線で東京から三島へ、三島から沼津へ東海道線で移動するか、中国から富士山静岡空港に行き、そこからバスと電車で沼津に移動しています。

記事で紹介されている移動手段や移動経路からは、周辺の街や観光地を見ることなく、アニメで出た場所のみを辿っていっている旅行者の姿が見えてきます。

旅慣れた感じで日本に降り立ち、アニメで出てきた駅前や、駅前のアーケードや、その中の書店から、市内から離れた離島の神社まで行っては、写真を上述の旅行サイトやSNSにアップしています

また駅の中にある観光案内所での『ラブライブ!サンシャイン!!』グッズ販売や、ラッピング電車やラッピングバスの写真もアップしています。

観光案内所でヒアリングしてみると、中国人は時々やってくるとのことで、だいたい中国人グループのリーダー格のような人が日本語が話せるので、観光案内所サイドが多言語対応していなくてもそれほど困ってないそうです。

見逃されている観光コンテンツ

沼津といえば海の幸ですが、魚市場を通る聖地巡礼者は写真を撮るようですが、食事に行くというレポートはあまり見ません。沼津港の海鮮食堂で店員に話を聞いてみるとすると、明確な回答はなかったものの、中国人はそれほど来ていなさそうな回答がありました。

また多くの商店が町興しのために、様々な店でラブライブ!サンシャイン!!とコラボしているのですが、旅行記ではそれを撮影したものはほぼありませんでした。

聖地のポイントにだけ移動して観光しているか、スマートフォンや同行者に目が行って周囲が見えていないかは定かではないですが、アニメで登場した場所以外には中国のファンは行っていないことがうかがえました。

▲[螞蜂窩(马蜂窝)の沼津旅行ページ]:筆者キャプチャ
▲[螞蜂窩(马蜂窝)の沼津旅行ページ]:筆者キャプチャ

オンラインでもファンの消費意欲は満たせる

『ラブライブ!サンシャイン!!』での町興しと中国人旅行者で聖地巡礼を目的とする場合だけみると、中国人観光客はアニメに関係するスポットにのみ足を運んでいるようです。

では多くの商店が参加した町興しは意味がないかというとそんなことはないようで、実際に話を聞いてみると日本人の客は多数来るようになっているといいます

▲[ECモールのタオバオでは、沼津限定の『ラブライブ!』グッズが売られている]:筆者キャプチャ
▲[ECモールのタオバオでは、沼津限定の『ラブライブ!』グッズが売られている]:筆者キャプチャ

日本のアニメは中国の学生層に人気の動画サイト「ビリビリ」の主力コンテンツのひとつで、その中でもラブライブ!は視聴回数が多いコンテンツです。中国人のファンは多くいますが、聖地巡礼までできる人は、全体としてはそれほど多くなさそうです。

しかし実際に旅行記が投稿され、アニメに出た場所に出向き、グッズを買い、タオバオでグッズが出品されていることから、聖地巡礼の需要があることは確認できます。

『ラブライブ!』シリーズに関連付けてインバウンド需要の喚起や取り込みを狙う場合には、まずは作品中に実際取り上げられている場所から重点的に取り組んでいく必要があるでしょう。


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この記事の筆者

山谷剛史

山谷剛史

76年東京生まれ。東京池袋近辺、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。36kr日本語版のお手伝い。前職NNA。2002年より中国アジアのITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に連載。著書に「中国S級B級論(共著)」「中国のインターネット史」など。

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