5月25日、緊急事態宣言が全国で解除されました。全世界で550万を数える感染者を出した新型コロナウイルスの影響は、アジアだけではなく世界中に波及しています。
様々な観光施設や商業施設が、外出自粛の影響で集客や売り上げの減少の憂き目にあいました。感染拡大に効果を発揮するのは人と人の接触を減らすことだといわれており、感染の収束まで引き続き人込みを作り出さないような活動が求められます。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、外出自粛は段階的な緩和が予定されており、まだまだ在宅でできる娯楽や気分転換の需要が存在し続けるといえるでしょう。
外出自粛を呼びかける中で多く使われた表現の一つが「StayHome」です。世界でもこの言葉を合言葉に、在宅期間を充実させるアイデアを官民が提供しています。
今回は、新型コロナウイルス収束後の客足回復が期待できる取り組みについて、海外や日本の実例を紹介します。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
アムステルダム国立美術館が提案するアートな「StayHome」
オランダの首都アムステルダムには、オランダを代表する有名な国立美術館があります。その名も「Rijksmuseum(ライクスミュージアム)」です。
アムステルダム中央駅から徒歩30分ほどで到着するこの美術館には、レンブラント・ファン・レインの「夜警」や「自画像」、ヨハネス・フェルメールの「牛乳を注ぐ女」など17世紀に描かれたオランダ絵画が多く収蔵され、アムステルダムの観光名所としても有名です。

Twitter:geocappielloによる投稿(https://twitter.com/geocappiello/status/1180082289071607808)
そんなオランダを代表する美術館で、外出自粛が続く中でも家で楽しく過ごせるような”出血大サービス”の取り組みがされています。それが「Rijksmuseum At Home(ライクスミュージアムアットホーム)」です。
ライクスミュージアムは、美術館に足を運べない間にも少しでもアートを楽しんでもらおうと、Googleストリートビューを操作するように美術館を鑑賞するオンラインのサービスを提供しました。
70万点以上のデジタル化された作品たちを実際に美術館で鑑賞しているような感覚で観て回ることができます。音声ガイダンスが用意されている作品もあり、自宅に居ながら目と耳で傑作を楽しめるようになっています。
入場料も交通費もかからない、名画のぬり絵もダウンロードできる充実ぶり
この「ライクスミュージアムアットホーム」は、美術館の公式サイトからアクセスできるWebページで、美術館に収蔵されている名画たちを自宅にいながら様々な形で楽しむことができます。
デジタル化された作品をオンラインで鑑賞したり、学芸員たちによる作品の説明動画を観ることができます。
そしてなにより、これらのコンテンツは無料で楽しむことができます。
実際にライクスミュージアムへ足を運ぶとなると、入場料として19歳以上は20ユーロ(約2,300円、オンライン割で19ユーロ約2,200円)がかかります。
またそもそも、海外からアクセスしようと思えば航空券代や宿泊費も必要となります。パソコンやタブレットなどのモニター越しにはなりますが、収蔵された作品を無料で目にすることができるのは、新型コロナウイルスの流行がなければ得られなかった機会ともいえるでしょう。
11本ほどアップロードされている動画の中には、専門性が高くニッチな内容にも関わらず、投稿してから約1ヶ月半で再生回数が1万6,000回を越えているものもあり、「StayHome」の中でも多くの人がアートを楽しんでいるようです。
他にも収蔵の作品をアレンジしたコミックや、ゲーム、間違い探しや名画のぬり絵など、子供から大人まで楽しめる遊び心あふれるコンテンツを公開しています。
![▲[レンブラントのぬり絵]:Online Rijksmuseum voor families ▲[レンブラントのぬり絵]:Online Rijksmuseum voor families](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/6307/main_3939nachtwacht_kleurplaat.png?auto=format)

Twitter:Rijksmuseumによる投稿(https://twitter.com/rijksmuseum/status/1250414823839498240)
充実したコンテンツが無料で公開されている理由の一つに、自宅待機を強いられる毎日で、人々が感じるストレスを緩和させたいという思いがあるそうです。
自粛が続きストレスが溜まる日々を送る人も多い中、無料で傑作に触れられる機会を設けてくれたライクスミュージアムは、人々の記憶に残るはずです。「ライクスミュージアムアットホーム」利用者の中には、美術館が再びオープンした際には「実際に訪れよう」と考えている人もいるでしょう。
コロナ自粛後の集客につながる取り組みとは
国内での新型コロナウイルスが収束すると、人々はこれまでの自粛の反動で、積極的な消費に出るのではないかという意見もあります。中国国内では「リベンジ消費」と呼ばれる動きも見られています。
リベンジ消費とは/中国ではすでに消費拡大!インバウンド対策もアフターコロナに向けて始動
リベンジ消費とは、新型コロナウイルスの感染拡大を防止のための様々な自粛により、かえって消費意欲が高まり、活発な購入活動が見られる現象です。ECサイトの利用や国内旅行者の増加など、リベンジ消費を象徴する動きは中国や韓国で確認されており、消費活動がふたたび盛んになるのではないかと期待されています。「日本インバウンド・メディア・コンソーシアム」が中国のネットユーザーを対象に実施した調査では、新型コロナウイルスの収束後に訪れたい国として日本がトップになるなど、収束を見越したインバウンド対策も重要に...
日本国内でも、外出自粛の段階的緩和において、国内観光についても指標が示されています。またGo To キャンペーン事業では、特に大きな影響を受けた観光業、外食産業での需要喚起が図られます。こうした政府の後押しもあり、徐々に客足が戻ってくることが期待できるでしょう。
かつてない予算額1.3兆円、新型コロナ収束時の観光市場回復を後押し「Go To
新型コロナウイルスの感染拡大で深刻なダメージを受けた観光市場の回復を目指したGo To トラベルキャンペーンが7月22日に開始しました。除外されていた東京発着の旅行商品についても、10月1日から対象となります。 Go To トラベルキャンペーンは「Go To キャンペーン事業」の一つです。「Go To キャンペーン事業」は4つの事業と広報事業からなる経済復興政策です。 観光庁は4月7日、緊急事態宣言の発令にあわせ、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の施策に対する補正予算の概要を発...
一方で、入国制限の緩和についてはまずはビジネス目的から開始されるとみられており、インバウンド市場は厳しい状況が続きそうです。
訪日観光客の集客のために今できることには何があるのでしょうか。日本企業の取り組みから、対策のヒントを探っていきます。
日本企業のCSR 支援策例
「マチのほっとステーション」とスローガンを掲げるコンビニ大手のローソンでは、いち早くコロナ支援を打ち出し「おにぎりの無償提供」と販路を失っていた給食用の牛乳を活用した独自の取り組みを実施しました。
「マチカフェ」ブランドの「ホットミルク」を、税込130円のところ半額の65円で、「カフェラテ」は150円のところ30円引きの120円で販売し、消費拡大を狙うものです。初日の販売量は、給食用の200mlパック約11万本分となり、前週の平均販売数の10倍を上回る結果となったそうです。
また、いち早く大々的な支援をした例として株式会社ワタミが挙げられます。
ワタミ株式会社は2020年3月9日〜4月3日までの4週間にわたり、日替わり夕食宅配サービス「ワタミの宅食」を、平日限定で無料提供することを発表しています。配達代金として、利用には1食200円がかかりますが、商品代相当はワタミ負担となっているのが特徴です。新型コロナウイルス感染拡大に伴い休校となった幼稚園・小学校・中学校・高校などに通う3〜18歳を対象に、50万食を提供します。
大規模でかつ社会貢献の側面が大きい、こうした企業からの支援は、メディアで大きく取り上げられ、広く消費者からのイメージ向上につなげることができます。
他にも、小学館をはじめとする出版社のデジタルコンテンツの無料開放など、各社が自社リソースを使ってできる支援を打ち出しています。
「ピンチをチャンスに」コロナショックで際立つ日本企業のナイスプレー集5選
新型コロナウイルスの流行の阻止を目的に、外出やイベントの自粛が続き、日本経済の停滞を懸念する声も大きくなっています。多くの企業や組織にとってこの状況は厳しいものですが、こうしたピンチをチャンスに変え、社会的評価をあげている企業もあります。今回は、コロナショックの最中にも画期的な取り組みを行った日本企業の例を5つ紹介します。目次1.ワタミ、休校支援で4週間無料で夕食宅配!2. ローソンはおにぎりと牛乳で支援、なんと給食用の牛乳11万本分を販売3. 小学館「日本の歴史」学習漫画全24巻(電子版...
コロナ収束後に「思い出してもらえる」企業とは
社会支援策のための潤沢な予算がないという場合でも、消費者に対して細かなサービスを提供し、その存在を印象付けることもできます。
例えば、いつも訪日観光客による利用が多い小売店であれば「外出・渡航自粛中の海外への送料を無料にする」「提携している海外のお店を紹介する」動物園やレジャー施設などであれば「動画コンテンツを外国語でも配信する」など、海外の人々にとっても嬉しい支援は、たくさんあります。
誰かを喜ばせるサービスや面白いと感じられるコンテンツは、消費者の心に深い印象を残すだけではありません。SNSと親和性の高いコンテンツや、消費者がSNSをよく使う属性の場合、企業の名前やブランド名と共にどんどん情報拡散されることが期待できます。
まとめ:サービスの受け手目線で今できることを
ライクスミュージアムアットホームは、国立美術館だからこそ公的な支援のもと大きな予算を組んで取り組めているというのも事実です。予算などの関係で、規模の大きな支援策をとることが難しい場合も少なくないでしょう。こうした場合には、これまで訪日観光客が感じていた不便や不満を取り除けるような施策は何かを考えて発信してみるだけでも、この先のインバウンド市場の回復期に競合と差をつけることもできるかもしれません。
今回の新型コロナウイルスの発生地となった中国とは、観光だけでなく留学やビジネスなど、年々人の往来が増えています。互いの困難な局面を支えあう取り組みは両国のメディアに大きく取り上げられ、ネットユーザーからの反応を得ています。

Twitter:人民中国雑誌社による投稿(https://twitter.com/PeopleChina/status/1249972734601256961)
緊急事態宣言が明けてなお、対面でのサービス提供が難しい状況が続くとみられています。インバウンド市場の観光客の回復はもう少し先になるでしょう。引き続き、オンラインで届けることのできる価値について考え、実践していく必要がありそうです。
3月は7割減 「旅行商品取扱額」コロナショックで大打撃 、インバウンド向けも大幅減【観光庁:旅行業者取扱額2020年3月・2019年度総計】
5月22日、観光庁は「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」2020年3月分、2019年度総計のデータを発表しました。この調査は国内の旅行会社の商品取扱額を集計したもので、それぞれの取扱額を「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」「日本人の国内旅行」の3つのカテゴリーに分けて公表しています。2020年2月分にも総取扱額は減少していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月分はさらなる減少となりました。また、4月以降に日本国内への入国拒否対象国が増え、全世界に対する不要不急の渡航自粛が要請...
<参考>
https://www.rijksmuseum.nl/nl/thuis
https://www.rijksmuseum.nl/nl/online-rijksmuseum-voor-families
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<応募者特典>
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※口コミアカデミー内でのアーカイブ配信は予定しておりません -
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<本セミナーのポイント>
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→【Next Food Vision 2025】食の最新トレンドを発信〜大型オンラインイベント〜※好評につき再放送※【7/16開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
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