インバウンド向けの多言語対応を進めるにあたり、地震などの災害時における非常時対応の整備は、インバウンドの受け入れ体制を強化する上で特に重要なポイントです。
今回は、非常時のインバウンド対応として重要な英語のアナウンスについて、商業施設や公共交通機関、宿泊施設などで使える英語フレーズを20個紹介します。
また、多言語アナウンスで使える3つのツールや非常時の外国人対応で意識すべき点についてもあわせて解説します。
関連記事
災害時の外国人対応、どうすべき?
【無料相談】USEN「インバウンド対策推進相談窓口」開設
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
非常時のアナウンスで使える英語フレーズ20選
インバウンドを受け入れる上で、非常時に訪日外国人観光客が落ち着いて行動できるような体制を整えておくことは非常に重要です。
例えば、英語アナウンスに備えたフレーズを事前にまとめておくなどの対応が最低限求められます。
ここでは、東京外国語大学の「災害関係用語集・表現集 在日外国人問題参考資料」に沿って、非常時のアナウンスで使える英語フレーズを20個紹介します。
非常時のアナウンスで必須の単語
災害が発生した際に、最低限知っておきたい英単語を紹介します。
災害の種類によっては、自国では経験したことがなく状況がすぐに掴めない訪日外国人観光客もいることをふまえ、状況説明をする際に下記の単語を活用すると良いでしょう。
- 地震:Earthquake
- 津波:Tidal Wave, Tsunami, a very large wave that may follow an earthquake
- 火事:Fire
- 台風:Typhoon
- 暴風:Storm
- 高潮:Flood tide
- 避難:Evacuate
- 避難所:Shelter
注意喚起の英語フレーズ
緊急事態が発生し現場で注意喚起をする際には、逃げる方向などをジェスチャーで示しながら、シンプルな英語フレーズではっきりと伝えることが大切です。
- 危ない!: Look Out!
- 逃げろ!: Run Away!
- 気をつけて!: Watch Out!
避難時の英語フレーズ
地震などが発生し避難が必要な場合、怪我などをしていないかを確認した上で、訪日外国人観光客を避難所へ誘導する必要があります。
その際に、自国で経験したことのない災害に不安を抱く訪日外国人観光客も多いため、「どのような災害が発生しているのか」「次に何をすべきなのか」をあわせて冷静に説明できると良いでしょう。
- 避難所はここです。 Shelter is located here. / Shelter is here.
- 一緒に行きましょう。 Let's go together.
- 怪我をしていますか。 Are you injured?
- どこが痛いですか。 Where does it hurt?
- 身体の調子はどうですか。 How are you feeling?
イギリスの国際文化交流機関British Council(英国文化振興会)は、災害時に役立つ英語フレーズを公式サイトで紹介しています。以下はその抜粋です。
- 建物からすぐに避難してください。Please evacuate the building immediately.
- 余震に気を付けてください。Please watch out for the aftershock.
- 津波の危険があります。すぐに高台に避難してください。There’s a risk of a tsunami. Please evacuate to higher ground immediately.
- 地震の影響により停電しています。Power is down due to the earthquake.
- 全員、避難所に避難する必要があります。Everyone has to go to the emergency shelter.
その他の英語フレーズ
最後に、避難所の設備の説明や駅で電車の運行状況を説明する際に便利なフレーズを紹介します。
インバウンドも多く利用する主要駅では、災害時だけでなく、電車のダイヤが大幅に乱れたり運行が停止したりした際にも、正確な最新情報を英語でアナウンスすることが重要です。
特に4つ目と5つ目のフレーズは便利なので、覚えておくと良いでしょう。
- この水は飲めません。 This water is bad to drink. / This water is undrinkable.
- このトイレは使えます。 This toilet is usable.
- このトイレは使えません。 This toilet is unusable.
- ○○線は○○駅から○○駅まで不通です。The ... line is not running between ... station and ... station. / The ... line is not in service between ... station and ... station.
- ○○線の○○駅から○○駅までは動いています。The ... line is running between ... station and ... station. / The ... line is in service between ... station and ... station.
- まだ分かりません。 There is no information yet.
非常時の英語・多言語アナウンスで使えるツール3選
これまでに紹介した英語フレーズを覚えても、非常時にはとっさに出てこない場合もあります。そのようなケースに備えて、多言語アナウンスで使えるツールも用意しておくと安心です。ここでは、多言語アナウンスに便利な3つのツールを紹介します。
1. 多言語非常用放送
多言語非常用放送とは、駅や空港・競技場・宿泊施設・商業施設などを利用する訪日外国人観光客に向けて、災害情報の伝達や避難誘導を多言語で促す放送設備を指します。
日本語の放送を事前に英語・中国語・韓国語などに訳し、録音した音声を放送することが一般的です。施設内の一斉放送だけでなく、専用アプリをダウンロードしたユーザーのスマートフォンにユーザーの母国語でアナウンス内容を表示するサービスもあります。
2. 多言語メガホン
多言語メガホンとは、非常時にも電源や通信環境を必要としない多言語拡声装置です。
地震や火事などの非常時に訪日外国人観光客に対する案内や呼びかけ・誘導をする際に、メガホンから多言語の自動音声メッセージを繰り返し放送します。操作者は誘導しながら現場から避難できます。
3. 小型自動翻訳機
小型自動翻訳機とは、相手の言語が話せなくても、現場に通訳がいるかのように会話内容をその場で翻訳できるツールです。ポケトークやili(イリー)などの機種が業界のトップシェアを誇っており、多言語非常用放送や多言語メガホンと比べて翻訳言語が豊富なのが特徴です。
小型自動翻訳機は不特定多数へのアナウンスではなく個人間のやりとりに特化しているため、災害時に怪我をした訪日外国人観光客との会話や、避難や電車の運行状況などに関する個別の質問に対応する際に活用できます。
普段の接客時から利用できるツールですが、非常時の個別対応にも便利です。
非常時の外国人対応で重要なこと
インバウンドの非常時対応では、英語フレーズや多言語ツールの活用はもちろん、外国人の立場に立った説明や情報発信などの対応も求められます。ここでは、非常時の外国人対応で意識すべき点と事前に準備すべき点について解説します。
「災害に慣れていない」という文化的背景に配慮する
地震や津波などの特に大きな自然災害については、自国では経験したことがない訪日外国人観光客も少なくありません。
そのような場合は、ただ「地震」「津波」「台風」などの単語を翻訳し伝えたところで「これから何が起きるのか」「どうしなければいけないのか」が理解できず、さらなる混乱を招く可能性があります。
訪日外国人観光客に向けて非常時のアナウンスをする際は、災害自体の説明や「今後余震や津波・建物の倒壊の恐れがあるため、避難所に向かう必要がある」などといった具体的な情報提供を意識する必要があります。
「どこで情報が得られるのか」を伝える
外国人向けの災害情報アプリや掲示板などがある一方で、そもそもその存在を知らない訪日外国人観光客も多いのが現状です。
特に宿泊施設などでは、それらの情報に触れてもらうために「こういうツールがある」「こうすれば情報が得られる」といった情報を日頃から提供することが求められます。
一方、停電時はツールなどに頼らない現場の人から得る情報も重宝されます。サーベイリサーチセンターの調査によると、北海道胆振東部地震の際「避難や旅行行程などで役立った情報」として最も多くの訪日外国人観光客が「宿泊先の従業員」を挙げたということです。
特に訪日外国人観光客の滞在拠点となる宿泊施設では、外国人向けの災害情報アプリの周知はもちろん、英語フレーズや多言語ツールを活用した避難指示や、次に取るべき行動の具体的な説明などが求められます。
「BCP(事業継続計画)」を立てておく
BCPとは、企業が災害などにより非常事態に陥った際、被害を最小限に留め、円滑に事業の復旧や継続をするための手段や日頃の準備等について取り決めた計画を指します。
地震や台風などが頻繁に発生する災害大国日本では、災害時の外国人対応を想定した「インバウンド版BCP」を事前に策定しておくことは非常に大切です。
訪日外国人観光客に向けた災害情報の伝達や避難誘導の具体的な流れ、小型翻訳機だけでは対応できないケースなどをシミュレーションし、企業ごとにインバウンド版BCPを定めておく必要があります。
英語アナウンス実施で非常時の外国人対応を
非常時の外国人対応として、英語フレーズや多言語アナウンスツールの活用が求められます。災害に慣れていない訪日外国人観光客もいることをふまえ、多言語ツールを活用する際は、災害自体の説明や避難などの次に取るべき行動の具体的な情報を提供することが大切です。
災害大国である日本では、地震や台風などのあらゆるケースを想定したインバウンド版BCPの策定や、多言語アナウンスの導入が求められますが、すべて自社で対応するのは難しいこともあります。
USEN-NEXT GROUPの株式会社USENでは、「BCP(事業継続計画)」や「多言語アナウンス」など施設運営の中での災害対策に関する相談を無料で承る「インバウンド対策推進相談窓口」をご用意しています。
詳細は、下記URLからご確認ください。
【無料】相談お申し込みはこちらから<参照>
株式会社サーベイリサーチセンター:自主調査レポート
東京外国語大学:災害関係用語集・表現集 在日外国人問題参考資料
BRITISH COUNCIL:非常時の際に使える英語フレーズ(防災英語)
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国、タイの2025年祝日発表 ほか:インバウンド情報まとめ【2024年11月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!