【ポストコロナのインバウンド戦略】コロナ後のプロモーションとオリンピックの落とし穴について:アウンコンサルティング株式会社 菊池明

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緊急企画『ポストコロナインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。

今回は、国内における多言語マーケティングや海外に向けたWebマーケティング事業に取り組む、アウンコンサルティング株式会社 菊池明氏に寄稿いただきました。


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インバウンドWebプロモーションの最新トレンド

ここでは、インバウンドWebプロモーションの最新トレンドについて解説します。

アジア圏ではインフルエンサーだけではなくマイクロインフルエンサーを活用したプロモーションもトレンドに

インバウンドプロモーションの手法として「リスティング(PPC)広告」「SEO」「動画広告」「SNS広告」等が上げられます。今回は、トレンドが変化しつつあるインフルエンサーKOL)施策について紹介いたします。

インバウンドプロモーションの考え方
▲インバウンドプロモーションの考え方

従来のインフルエンサーKOL)施策は、フォロワー数の多い有名人などを活用して、特定の商品やサービス、体験をSNSやブログを通して発信し、フォロワーやファンが情報を受け取るという構図でした。

近年は、インフルエンサー施策の裾野が広がってきており、数万や数千のファンを持つ、「Power User」「Industry Experts」「Peer to Peer Influence」などと呼ばれるマイクロインフルエンサーが商品を発信する形態に変わってきています。

これはECサイトでいうロングテールの考え方に近く、裾野のマイクロインフルエンサーを積み上げることによって、インフルエンサーに負けないくらいの影響力をトータル的に出していくという手法が、特にアジア圏において進んできています。

インフルエンサーとマイクロインフルエンサーについて
▲インフルエンサーとマイクロインフルエンサーについて

巣ごもりによりライブストリーミングEコマース市場に脚光が

次にご紹介したいのがライブストリーミングEコマースです。これは日本のテレビショッピングに近く、SNSのプラットフォーム上にライブ形式で配信して、それを見ながらリアルタイムに購買することができるプロモーション方法です。

この手法は2016年ごろから始まり、マーケットの中では一過性のものとして捉えられていましたが、昨今のコロナウイルスの影響で巣ごもりをするユーザーが増え、ライブストリーミングEコマース市場が伸びてきている傾向にあります。

日本の観光情報に特化したYouTubeチャンネルも

YouTubeを活用した観光情報特化型のプロモーションが今まで以上に伸びてきています。コロナウイルスにより、今までオフラインの媒体で得てきた情報がデジタルに切り替わり、それに伴い、各国の動画視聴時間が伸びてきています。

国によっては、日本の観光情報の配信に特化したYouTubeのチャンネルが多くのファンを抱えているため、例えばVRを活用した旅行プレ体験プロモーションなど、訪日意欲を高めるための施策も考えていく必要があります。

アフターコロナに向けてプロモーションを始める適切な時期は?

プロモーションを始める適切な時期について、コロナウイルス流行中のプロモーション例や意識調査を元に考察します。

コロナウイルス流行中のプロモーション例

まず、コロナウイルス流行中にどのようなプロモーションがなされていたか紹介していきます。

ニューヨーク市の観光局が行っていたのは「バーチャルツーリズム」(以下の写真左)で、Web上でニューヨークを探索できるようになっています。右側の例はフェロー諸島の観光局のものです。

この地域はGoogleのストリートビューに対応していない地域で、地元の方がカメラを持って撮影したものを利用しています。ユーザーはコントローラーを使って観光をすることができます。

このように、現地にいなくても旅行に行った気分になれる、実際に行きたいと思わせるようなコンテンツが各国で流行していました。

リモートツーリズムの例
▲リモートツーリズムの例

コロナウイルス収束後の意識調査

以下のアンケートは、当社で行ったコロナウイルスに関する意識調査の結果です。

まず、中国について、日本に行きたいと回答した方は80%を超えており、訪日意欲は高いことがわかります。

韓国では85%以上の方が「行きたい」と回答しており、訪日時期は2020年10~12月と2021年10月以降に二極化しており、台湾では、中国と韓国と比較して2020年7~9月と比較的早めの傾向であることがわかりました。

全体的な傾向として、これらの訪日のタイミングは各国の出国許可や日本の入国許可のタイミングで大きく変動します。また、コロナウイルスの封じ込みに早期に成功している国は訪日のタイミングが早く、そうでない国は遅くなる傾向にあります。

日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか(中国)?
▲日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか?(中国)
日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか?(韓国)
▲日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか?(韓国)

日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか?(台湾)
▲日本に行きたいですか?またいつ頃行きたいですか?(台湾)

※N数100以上

併せて、コロナウイルス流行前後の日本への印象に関する意識調査も行いましたのでご紹介いたします。

以下のグラフの通り、調査したすべての国で「変わらない」の回答が半数以上を占めていますが、全体的に日本に対する印象は悪くなった結果となりました。

「良くなった」の回答がもっとも多い中国に関しては、コロナウイルス流行初期段階における日本の受け入れ状況や支援などが好意的に受け止められたことが影響していると考えられます。

対して、「悪くなった」の回答がもっとも多い国は韓国という結果となりました。印象が悪くなった国は、日本と比較して新型コロナウイルスの抑え込み・収束が早かったため、日本に対する印象が悪く映ったことが推測できます。

この状況を踏まえ、アウターコロナのインバウンドプロモーションは、国によっては日本の信頼を勝ち取るようなプロモーションを行わざるを得ないと考えます。例えば、感染者が少なかった地方圏に関しては安全性をうたうプロモーション等を行うなどの工夫が必要です。

コロナウイルス流行前と後で日本に対する印象は変化しましたか?
▲コロナウイルス流行前と後で日本に対する印象は変化しましたか?

※N数100以上

Withオリンピック「クラウディングアウト」に注意

オリンピック期間中、観光客が減少する「クラウディングアウト」という現象が発生すると考えられます。

「クラウディングアウト」とはなんなのか、以下で詳しく解説します。

ロンドンオリンピックから予測する東京オリンピックの訪日傾向

コロナウイルスの影響により、東京オリンピックの延期が決定し、2020年10月に最終的に実施の可否が決定します。

実施が確定した場合、改めてオリンピックがインバウンド市場に与える影響も考えていかければなりません。

以下のグラフは、ロンドンオリンピックの例です。オリンピックの期間中にイギリスに訪れた観光客は例年と比較してマイナスに転じています。これを「クラウディングアウト」と呼び、オリンピック以外の目的の観光客がオリンピックによる混雑を避けるため、国全体の観光者数が減る現象が起きます。

日本でも同様の現象が起きると推測いたします。開催期間中は東京を避けて地方圏に旅行先を変更したり、そもそも訪日しない観光客が増加するということを考慮する必要があります。

また、オリンピック開催期間中はオリンピック参加国の訪日客が増える傾向にあるので、アジア圏よりも欧米欧州の訪日客が増加すると予測できます。

訪英外国人旅行者の増減率
▲訪英外国人旅行者の増減率:Visitbritain データを参照の上、アウンコンサルティングが作成

オリンピック時期の検索傾向について

以下のグラフは、ロンドンオリンピック時の「flight(s) to london(ロンドン行きのチケット)」の検索数をまとめたものです。

情報収集の波はオリンピック開催時期よりも早く訪れます。一番のピークは、チケットの一次抽選時期で、その後は二次抽選と、開催時期の数か月前となっています。

オリンピック時の検索傾向
▲オリンピック時の検索傾向:Google Trends よりデータ抽出

以下は東京オリンピック時の検索傾向を、アメリカとイギリスを対象にまとめたグラフです。

こちらも一次抽選時に1度目のピークが来ており、ロンドンオリンピック開催時と同じ動きがあります。

今後もロンドンオリンピックと同じ動きをするのであれば、日本の開催時期が2021年7月の場合、遅くても情報収取のピークは2021年5月に再びやってきます。

東京オリンピックの検索傾向
▲東京オリンピックの検索傾向:Google Trends よりデータ抽出

東京オリンピックの特徴/開催場所について

東京オリンピックの開催地は首都圏集中型になります。

そのため、オリンピック参加国の多い欧米欧州からの訪日客も首都圏に集中することが予測できます。そのため、関西地域や地方圏の観光地は、オリンピック目的とせず、日ごろから訪日の多いアジア圏をターゲットにプロモーションをするなどの工夫が必要です。

東京オリンピック開催場所
▲東京オリンピック開催場所

※変更の可能性有り

オリンピック後のプロモーションも忘れずに

オリンピック時に訪日数が増えるとされる欧米欧州圏は一度目の訪日の割合が多いです。そのため、オリンピックへのプロモーションに加えて、オリンピックによる訪日を機に、リピーターを獲得する取り組みが必要となります。

アフターコロナに向けたアプローチ方法

コロナウイルスの収束後、インバウンドに向けてどのようにアプローチすべきなのでしょうか。以下で解説します。

アプローチすべき領域について

インバウンドプロモーションを再開するにあたって、アプローチすべき領域としては以下の図の【認知】【比較/検討】段階となります。

ステージ/ターゲット別アプローチ手法
▲ステージ/ターゲット別アプローチ手法

プランニングシートを作成しましょう!

コロナウイルスの影響により、接触したいフェーズやターゲットによってやるべきことが変わってきています。プロモーションを再開するにあたって、まずは改めて以下のようなプランニングシートを作成してみましょう。

プランニングシート例
▲プランニングシートの例

まとめ

以上から、私の考えをまとめます。

2020年10月以降を見据えた準備が必要(サービス/コンテンツ/プロモーション)

各国の出国許可や日本側の入国許可の影響も大きいですが、コロナウイルス収束後にむけて準備を進めていきましょう。最後の旅前接触チャンスを逃さず、認知系のプロモーションは事前に行っておく必要があります。

また、それよりも前を見据えるのであれば収束後行きたいと思うコンテンツやメッセージの発信が必要です。

オリンピックを意識するのであれば、クラウディングアウトの影響も忘れずに

-東京(関東)→参加国の多い国(欧米/欧州等)

-地方圏→アジア圏をターゲットに情報発信

情報発信は比較検討時期よりももっと前(認知段階)にアプローチを

アフターコロナに向けたアプローチは2020年8月から、オリンピック向けは2021年3~4月には遅くても始める必要があります。

また、アフターコロナにおけるプロモーションについては、信頼性を取り戻すコンテンツで(コロナへの取り組みや安全性を謳う)アプローチするとより効果的だと考えます。

著者プロフィール:アウンコンサルティング株式会社 菊池明

アウンコンサルティング株式会社 取締役副社長 菊池明
アウンコンサルティング株式会社 取締役副社長 菊池明

2005年アウンコンサルティング入社。

大手、上場企業クライアントを中心にSEMコンサルティングに従事。

2010年よりタイ法人責任者、2011年、タイ・シンガポール法人担当執行役員、2014年海外法人(台湾、香港、タイ、シンガポール)担当執行役員等を経て、現在はマーケティング事業担当取締役として、 国内および海外拠点の売上拡大における販売戦略の立案と実行から顧客支援など既存事業全般の業務を推進。

特に国内事業においては多言語マーケティングに注力し推進。(インバウンドアウトバウンド両方)

緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』寄稿募集

訪日ラボでは、現在のコロナ禍をどうやって乗り越えていくべきなのか?ポストコロナをどのようにとらえ、今対策をしていくべきなのかなどを、インバウンド業界の「中の人」に寄稿いただく特別企画を実施しております。本企画において寄稿を募集しておりますので、ぜひご応募ください。

ご応募の際には、まずは問い合わせフォーム( https://honichi.com/contact/ )より、

1.お名前

2.所属・役職

3.寄稿したい記事内容の草案(タイトルやどんな内容になりそうかが見えれば問題ございません)

をご連絡くださいませ。ご連絡の際には完成した原稿は必要ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。

なお、ご応募頂いたすべての方の掲載を保証するものではございませんのでご了承ください。ご応募受付の際には、お問い合わせの返信を持ってお知らせいたします。

<参照>

ニューヨーク市観光局:ヴァーチャル NYC

The Drum:フェロー諸島キャンペーンの立役者

フェロー諸島観光局:リモート・ツーリズム

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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