「秋葉原オタクツアー」が欧米豪から大反響:欧米豪市場がツアーガイドに望むものとは?

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インバウンド市場の盛り上がりのなかで、その重要性が指摘されているのがFIT(海外個人旅行)の集客です。個別のニーズに応える、高単価のサービスを利用してもらえるため、政府が目標とする訪日外国人旅行消費額の向上に欠かせないと考えられています。

実際にFITは、個人でツアーガイドを手配し、興味のある地域を観光しています。私が提供する「秋葉原オタクツアー」の参加ゲストは、国籍・属性ともにはっきりとした傾向が見られます。

2018年の改正通訳案内士法導入によるツアーガイド数増加から、コロナショックによる観光客の大幅減により、ツアーガイドの競争は激化しています。こうした中で、私がツアーガイドとして収益を上げるために気を付けていることを、今回ご紹介します。



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データに見る国籍別支出動向の実情

日本全体でのデータを見てみましょう。観光庁が発表した2019年度の訪日外国人消費動向調査によれば、訪日外国人旅行消費額の36.8%は中国人観光客が占めています。(図1参照)

図1:訪日外国人旅行消費額円グラフ(2019年)
図1:訪日外国人旅行消費額円グラフ(2019年)

訪日外国人は、一人当たり日本でいくら使っているのか

観光客1人あたりの費目別旅行支出についてはどうでしょうか?国籍によって明らかな違いが確認できます。中国等一部を除き、欧米圏の消費が比較的高くなっています。(図2)

国籍・地域別にみる訪日外国人旅行者1人当たり費目別旅行支出(2019年)
▲[国籍・地域別にみる訪日外国人旅行者1人当たり費目別旅行支出(2019年)]:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

その中でも旅行者一人あたり平均支出総額上位4ヵ国に注目すると、買物代が総額の半分以上を占める中国に対し、オーストラリアイギリスフランスでは宿泊費・飲食費・娯楽費等への出費が大きくなる傾向があります。(図3)

海外からの旅行者1人あたりの支出総額について、国籍地域別に上位4ヵ国を示した図
▲[旅行者1人あたりの支出総額上位4ヵ国]:観光庁「訪日外国人消費動向調査」


したがって、娯楽・サービス業の主なメインターゲットはオーストラリアや欧米国です。対照的に、中国が代表するアジア圏観光客の多くは買物代へ支出していることも明らかです。

アキバツアーのメインゲスト:欧米豪市場

秋葉原ツアーの開催頻度は、繁忙期は週4~5組、閑散期は週1~2組と、シーズンにより大きく上下しています。

ゲストの属性は大まかに以下の様な分布を見せています。

ゲストの年齢層を、10代、20代、30代、それ以外に分けて円グラフで示したもの
▲[ゲストの年齢層は、10代:20代:30代以上=3:4:3 となっている]:筆者作成
ゲストの参加人数を、1人、2人、3人、それ以上に分けて円グラフで示したもの
▲[グループの人数は、1人:2人:3人以上=5:2:3 となっている]:筆者作成

前述の消費動向調査データを裏付ける様に、私のアキバツアーでもメインのゲストはアメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアといった国々からの参加です。中でもカリフォルニア州からのゲストは群を抜いて多く、彼らの大半が大手IT企業で働くエンジニアだったことが印象的でした。

対照的に、今まで私の体験に参加した中国ゲストは全体でも4-5人のみです。秋葉原の街を歩く中国人観光客の数は飛び抜けて多いにも関わらず、です。

彼らの多くはAirbnbを始めとしたプラットフォームを利用せず、パッケージツアーやで観光・ショッピングを楽しんでいます。「爆買い」という現象からも明らかな様に、いかに安くお得にショッピングできるかが旅行時の行動を決める際の判断基準になっているようです。

中国人観光客が誇る旅行消費は圧倒的ですが、ここを狙っての個人ツアー展開は得策といえないのが私の結論です。

なぜならば、中国の様にお得にショッピングを楽しみたい層にとっては体験ツアーへの出費自体がナンセンスとなってしまうからです。もちろん、彼らの常識を覆す様な低コストで集客をすることも可能ではあります。しかし、個人レベルで安さの追求をすればジリ貧になることも目に見えています。

また、コロナウイルスの影響が緩和〜収束する今後において旅行者はより一層「密を避けての観光」を行っていくものと予想されます。

以上の理由から、この先はサービス業への出費傾向が強いオーストラリアイギリスといったエリアがターゲット市場となり、かつ「団体ではなくFIT」のツアーへの需要が高まるものと私は考えます。

これからのオンラインツアーガイドに、欧米豪市場が望むもの

個人ツアーガイドの生き残りのためにも、また市場ニーズを鑑みても、個人ツアーガイドが取るべき方向性は「高級路線への移行」です。

今回は、高価格であっても参加者が満足するツアーのエッセンスについて、旅マエの情報収集や、実際のツアー内容に焦点を合わせて、3つの点を整理します。

1. Instagramを使い、ツアー内容を分かりやすく伝える

極端な話、「価格に見合わなかった」とゲストからの低評価を食らう理由は「顧客の期待と提供サービスのミスマッチ」です。

「(悪い意味で)思っていたのと違った」と思われないためにも、得られる価値の紹介やオススメのターゲット層、ツアー風景の写真・動画など少しでも多くの情報を提供することでミスマッチを防ぎましょう。私が思うに、体験ツアーは参加前の準備で全体満足度の8割は確定します。

ツアーガイド自身がどれだけサービスに自信を持っていたとしても、消費者目線からすれば難なく内容が理解出来て参加しやすいツアーを選ぶものです。

私のツアーでは、参加検討段階のゲストのために「予約→アンケート記入→事前メッセージやりとり→当日実施する内容紹介→その後のサービス」までが把握できる様に画像・動画をInstagram等のSNSで共有しています。

海外からのゲストの、予約から集合までの流れをInstagramのストーリー機能で紹介
▲[予約→集合までの流れを紹介したInstagramストーリーの例]:筆者作成

2. 参加者は「自分の趣味・興味分野におけるエキスパート」ガイドを探している

2つ目のポイントは、ニッチ路線を追求し、その業界での第一人者を目指すことです。

「自分以外のガイドでもできること」について、顧客はさほど価値を感じてくれないのが常識です。単なるスポット廻りや食べ歩きではなく、「〇〇で働いた経験を持つ一流△△が送る食べ歩きツアー」といった具合に自分の経歴・スキルを掛け合わせた体験を提供するのがベターです。

参加者からしてみれば「観光地を卒なく案内できるガイド」よりも、「自分の趣味・興味分野におけるエキスパート」のガイドを受けてみたいという思いがあります。ニッチな路線のツアーは、これまでニーズはあってもガイドまでたどり着けなかった旅行者の参加を期待できます。

私の体験でいえば、自分自身が秋葉原で過ごしてきた経験からオタクがより楽しめる場所を率先して案内するようにしています。
自作の秋葉原の地図
▲[自作の秋葉原マップ。勧めたい場所は山ほどありますが「本当に楽しめる」と個人的に思う場所をまとめて時間節約の手助けを狙います。]:筆者作成

3. 差別化を極め「この人にしか出来ない体験」を追求

パッケージツアーと大別して、対FITのガイドで出せる強みは、それはガイド=ゲスト間の繋がりをより強く密に構築できることです。

参加者目線からすれば、FITに参加したのに機械的なガイドをされてしまっては「これならパッケージツアーと大して変わらなかったな」と思われても仕方ありません。

他の誰でもないゲスト一人のために体験をカスタマイズし、その人だけの体験を提供することでより良い体験提供につながります。ゲストの名前や出身地を覚えるのはもちろんのことですが、彼らの求めているものや日本滞在の中での目的を聞き出し、それらを達成するために少しでも歩み寄ることで満足値は底上げされます。

私がガイドを行う際に目指すゴールは観光地やご当地の要素ではなく、ツアーガイドである私自信について高評価をもらうことです。実際、これまでのツアーを通してみても「Yukiに案内してもらえてよかった」「ガイドのYukiがとても良かった」というレビューが大半を占めるだけでなく、中には私のツアーを強く気に入り、後日彼らの国に無料で招待してくれたゲストさえいました。

無論ゲストとの関係はその場で終わらせず、今でもやりとりを続けているゲストも多いです。

たとえばツアーガイド提供後の評価では、以下のようなレビューをいただいています。

事前のメッセージやりとりからツアー後のケアに至るまで素晴らしかった。交通機関や宿泊施設についても手助けしてくれて終始辛抱強く対応してくれた。まるで前から友達だったかのようにフレンドリーに接してくれたおかげで楽しい時間を過ごせました!

ツアーガイドに対し、英語でつけられた評価
▲[レビューの一例]:筆者キャプチャ

とはいえ、どんな人でも最初は素人からのスタートになってしまうのは否めません。ガイドは自信をつけるためにも試行回数を重ねることが必須といえます。「そもそもコロナ禍ではその場数が踏めないから困っている」という方へオススメなのがオンライン体験です。リアルの体験と比べて移動時間や諸々のリソースを必要としない分、PDCAが回しやすいといえるでしょう。

まとめ

コロナショックにより観光客が激減した今、できることは少ないと嘆かれがちです。それでも、今だからこそできること・すべきことは多いと思います。

訪日観光客の流れが戻ってくるタイミングに向け、個人ツアーガイドの方々は、自分が狙うべきターゲット層と取るべき戦略の方向性を明らかにすべきです。コロナ禍が明けたタイミングで頭ひとつ抜きん出るためにも、提供するサービスの高級路線化を目指すことを強くおすすめします。

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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

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この記事の筆者

市原佑樹

市原佑樹

“サブカル特化型”個人ツアーガイド。カナダ留学後、広告代理店勤務を経て個人ツアーガイドとして独立。「Private Otaku Tour in Akihabara」をAirbnb上で実施。約1年半のガイドで500人以上のアニメファンをホスト。2019年「Community Contributor」としてAirbnbから受賞。2020年4月に開始した新サービス「オンライン体験」において「Get Inside Tokyo Anime & Subcultures」を実施。5月22日現在の予約件数は100件を超え、平均レビュー4.98/5.00を記録。

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