コロナ禍でホテル業界はどうなる?海外のユニークな事例と「今ある需要」読み解くヒント

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や移動制限の影響を受けて、ホテルなど多くの宿泊施設では、稼働率が大きく低下するなど厳しい状況に直面しています。

そのような逆境でも、新たな需要を掘り起こして集客に成功している宿泊施設があります。

コロナ禍でも人気を集める宿泊施設の取り組みについて、国内外の事例を紹介します。

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複数のホテルがテレワーク向けの滞在プランを販売

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ホテルでは以前ほどの稼働率を取り戻すことが難しい状態が続いています。

そんな中、ホテルの空室を活用できる、テレワーク向けプランへの取り組みが広がっています。

アパホテルが4月2日から打ち出した「テレワーク応援 5日連続プラン」は、チェックインは午前8時から、チェックアウトは午後7時までという設定になっており、週5日出社していた人が、出社時と似たサイクルで仕事に向かうことができるようになっています。

価格は4泊5日1万5,000円と破格で、全国のアパホテルで、4月末までに2万室以上の予約を集めました。

自治体による取り組み、補助金支給も

東京都も、テレワーク推進のため、テレワークができる宿泊施設を紹介するウェブサイト「HOTEL WORK TOKYO」を6月11日にオープンしました。

テレワークの場を提供する宿泊施設と、自宅でのテレワークが困難な社員などをマッチングする狙いがあり、公開時に約350施設が掲載され随時更新されるほか、ウェブサイト上から直接、宿泊施設あてに利用に関する問い合わせや申し込みを行うこともできます。

さらにテレワーク利用で補助金を出す自治体も増えており、北九市では、市内の宿泊施設をテレワークとして利用した際に1人1日3,000円を上限として補助する「テレワーク推進北九州応援プラン」を開設しました。

木更津市でも、「テレワーク通勤@木更津」推進の一環として、ホテル1部屋につき3,000円を上限に割引し、最安1,000円の負担でホテルを利用できる割引補助を行っています。

多拠点コリビング(co-living)サービス

ウィズコロナアフターコロナの新しい住まいとして、ホテルなどの宿泊施設の個室を活用する動きも出てきています。

日本各地の住居に、登録者が居住するサービスを展開する企業アドレスは、新型コロナウイルスの流行を受け、ホテル・旅館・ゲストハウスなどの宿泊施設との連携を強化しています。同社の提供する多拠点コリビング(co-living)サービス「ADDress(アドレス)」の会員は、定額で全国の家(登録拠点)に自由に住むことができ、こうした動きのさきがけといえるでしょう。

サービスでは、住まいと働き方をシフトしたいリモートワーカーを主な対象として、北海道・小樽の無人型ホテル、京都や長野のゲストハウス、沖縄の民泊など全国各地の拠点と連携し、職住融合型の滞在個室の提供を進めています。

アフターコロナウィズコロナ時代の新しい働き方としてリゾート地や温泉地などで余暇を楽しみながらテレワークで仕事をする「ワーケーション」に注目が集まっています。また海外との往来の制限が解除されるに従い、比較的長期に滞在する旅行者「ロングステイヤー」の存在感も増していくと考えられます。

ADDress(アドレス)のような、長期滞在を前提にしたサービスには今後も成長の可能性がありそうです。

エストニアのデジタルノマドビザやチェンマイ「観光×仕事」のロングステイヤーがアフターコロナの観光市場を盛り上げる?

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、収束のめどが立たない中、観光業は大きな打撃を受けています。アフターコロナ、ウィズコロナでは、観光業が旅行者に提供できるサービスに制約が生じてしまいます。そのような状況下、比較的長期に滞在する旅行者「ロングステイヤー」が、観光業の現状を打破するためのキーワードとなるかもしれません。目次ロングステイヤーとは?ロングステイヤーの事例「ワーケーション」を実践していたデジタルノマドデジタルノマドのメッカ、タイ・チェンマイエストニア「デジタルノマドビザ」、ジョージア...

新規需要を開拓「ホテル×子供」

さらに「子供」に着目し、ファミリー向けの新たなニーズを掘り起こす動きも出てきています。

埼玉県幸手市のビジネスホテル「ホテルグリーンコア」は、7月から、宴会場や会議室を開放し、子供が電動ゴーカートや輪ゴム射的、お絵描きなどで遊べる場を提供する「プチアトラクション」と称するサービスを新たに開始しました。

「プチアトラクション」は、宿泊客以外にも、ホテルを地域に開放することで身近に感じてほしいという狙いから、1時間500円で一般客も利用することができます。

利用者のマスク着用や人数制限を設けて、感染防止にも配慮しています。

この他にも、東京都文京区の老舗旅館「鳳明館 森川別館」で即日完売した、誰でも文豪になった気分が味わえる「文豪缶詰プラン」、京都・二条城近くの「スズキゲストハウス」による、近所の人が1,500円で2時間ベッドを利用できる「お昼寝プラン」など、全国で趣向を凝らしたユニークなサービスが展開されています。

クラウドファンディングによる支援獲得

新型コロナウイルスの影響で営業不振にあえぐホテルや旅館が再起するための手段として、クラウドファンディングも注目されています。

岐阜県の奥飛騨温泉郷にある温泉旅館「奥飛騨ガーデンホテル焼岳」は、営業を続けるためクラウドファンディングで支援を募集したところ、目標の60万円を大幅に上回る、310万円の支援を116人から集めることに成功しました。

支援へのお礼として、温泉、食、美、宿泊など様々なテーマでの支援へのお礼(リターン)が用意されており、3万5,000円の支援に対するリターンである「ペア宿泊券(1泊2食)」は、最も多く26人の支援者から選択されました。また、自宅で楽しめる食品が、様々な価格帯で複数用意されているのも成功の一因となったと考えられます。

クラウドファンディングサイトの応援コメント欄には、「温泉が好きなので利用したい」という人や、「リターンチケットをプレゼントとして利用する」という声などが寄せられており、支援者以外でもリターンを共有できるという点も重要だったと考えられます。

海外での事例は?

海外のホテルでも、新型コロナウイルスの流行という窮地を逆手に取り、新たなサービスが打ち出されています。

1. スイス:家族との一時別居ニーズに対応

スイスのチューリヒを拠点として、長期滞在者向け宿泊施設を展開する「ル ビジュー」は、「COVID-19サービス」と銘打ち、新たな危機対応型の宿泊プランを開始しました。

14日間の滞在プランを基本として、オプションで買い物や、看護師や医師による1日2回の体調チェックなどの医療サービスを受けることができます。

高齢者や持病がある人など、重症化のリスクが高い人や、仕事柄感染リスクがあり、家族と一時的に別居したい人からのニーズに応える形で利用者の支持を獲得したようです。

料金は中規模サイズのアパートメントが1泊500ドル(約5万3,000円)、広いペントハウスが800~2,000ドル(約8万5,000円~約21万2,000円)などとなっています。

2. スウェーデン:客室で食事「ポップアップ・レストラン」

厳格なロックダウンを行わず、独自の新型コロナウイルスの感染対策を取っていることで世界的に注目されているスウェーデンでも、ユニークな取り組みを行っているホテルがあります。

リードヒェーピングにあるホテル「スタッドホテル・リードヒェーピング」では、客室をレストランの個室のように利用してもらう「ポップアップ・レストラン」のサービスを開始しました。

ホテル内のレストランが夕食を提供している時間内で、客室での食事を予約することができるのもので、料金は食事代のみで、1室あたり2~12人が利用できます。

混雑した店内で感染を気にしながら食事するよりも安心できるとして、主な利用者であるリードヒェーピング周辺の住民たちから、高く評価されているということです。

利用時間は2時間半が設定されており、1組が帰るごとに念入りに掃除をします。同日に2組が同じ部屋を利用することはないので、ホテル側は問題なく対応できているということです。ホテルでは、そのまま宿泊できるパッケージプランも用意しています。

3. アメリカ:ゴーストレストランとの提携

UberEatsなどフード配達アプリ上でメニューを展開し、実店舗を持たない飲食店を「ゴーストレストラン」と呼びます。2015年に創業したアメリカのスタートアップ「Butler Hospitality」は、ホテルのルームサービスに特化したゴーストレストランを運営しており、現在では、休眠状態にあるホテルのレストランのキッチンを活用して、ヒルトンやマリオットなど大手ホテルを含む119のホテルに料理を届けています。

同社は、新型コロナウイルスの流行の中で、ニューヨーク市内で働くエッセンシャルワーカーを積極的に支援しています。医療従事者や、隔離された高齢者、新型コロナウイルスの患者、提携するホテルに滞在する軍人などに17万5,000食以上を届けました。

ホテルはこれまで主に宿泊の場として、あるいは会議の会場としてサービスを提供してきました。ゴーストレストランとの提携では「食」を提供するインフラとして、あるいは食事の場として、新たな収益の可能性があるといえるでしょう。

新型コロナで変わる新たな需要、取り込めるかが勝負

新型コロナウイルスの影響により宿泊施設の稼働率が低下する一方で、生活には新たな需要が生まれています。

ホテルなどの宿泊施設は、すでにある設備を利用し、新たな需要に応えるサービスを提供できる可能性を秘めています。変化する需要をタイムリーに見極めサービスを考案できれば、これまでにない収益を生み出すこともできるはずです。

<参照>

東京都:テレワークができる宿泊施設を紹介するウェブサイト「HOTEL WORK TOKYO」開設のお知らせ(第468報)

LIFULL HOME'S PRESS:新型コロナウイルスで打撃を受けたホテルや民泊。テレワーク応援プランの需要は?

東京新聞:<新型コロナ>「ホテルでテレワーク」応援 木更津市が割引補助 最安1000円で利用OK

PR Times:ホテル・旅館などの空き室を「職住融合」個室に〜Withコロナ/Afterコロナ社会の連携宿泊施設募集します〜

埼玉新聞:V字回復ホテル、次はコロナ打撃 新たに「子どもアトラクション」サービスで勝負【#コロナとどう暮らす】

Ready For:コロナウィルスで存続の窮地に。奥飛騨旅館を未来につなぐ応援を

ニューズウィーク日本版:一泊2000ドルも。危機でも成長する高級ホテルの未来型「おもてなし」モデル

Forbes:スウェーデン経済も新型コロナで打撃、苦慮するホテルが新サービス

BRIDGE:ホテル業界で始まるUberEats化、注目すべき「バーチャル・ルームサービス」モデルとは

Forbes:NYのホテル専用「ゴーストキッチン」が16億円調達で成長加速

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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