訪日外国人観光客の中では、近年「モノ消費」よりも「コト消費」に重点を置く傾向が強まっています。
なかでも、日本でしかできない伝統文化に関する体験やアクティビティに関心を持つ人が多く、観光コンテンツとして注目されています。
今回の記事では、日本の代表的な伝統文化としてのイメージが強い「茶道」に焦点を当て、訪日外国人観光客に人気の理由、インバウンド事例などを紹介します。
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茶道とはなにか?
昨今「抹茶味」のお菓子が海外に普及していったこともあり、「茶道」=日本文化として海外でも認識が高まっています。
ここでは、茶道の定義と歴史、茶道の精神である「わび・さび」について紹介します。
茶道の定義と歴史
日本の伝統文化である「茶道」は、お茶を介して行われる一連の礼儀作法全般のことを指します。
「茶道」の作法の中には、お茶をおいしく点てるための方法だけでなく、相手に敬意を払ってお茶を用意するための振る舞いも含まれています。
またこの作法には、座り方、歩き方など、それぞれの動作の意味と決まりがあります。
茶道の歴史は古く、現代茶道の源流とされている「わび茶」という作法は、15世紀に村田珠光(1423年〜1502年)によって成立しました。簡素な日本製の茶道具を使用し、禅などの精神性を取り入れたのが特徴的です。
その後、武野紹鷗(1502年~1555年)に受け継がれ、その弟子の千利休(1522年〜1591年)によって、「わび茶」が完成されました。この「わび茶」が、今日にまで続く「茶道」や「茶の湯」の素地となっているといわれています。
茶道で重んじられる「わび・さび」とは
茶道の精神というと、「わび・さび」という言葉を思い浮かぶ人が多いかもしれません。
茶道をはじめとする日本文化を語るにあたってしばしば言及される「わび・さび」は、日本独自の美意識であり、質素で静かなものを表しています。
現在では、一般的に「わび・さび」は一つの単語として使用されていますが、本来は「わび(侘び)」と「さび(寂び)」の2つの単語に分かれており、それぞれ異なる意味を持っています。
「わび」は、簡素・質素を肯定し、その不足の状況から美しさを見出す、という精神的な豊かさを表現している言葉です。
一方「さび」は、静けさや古さ、枯れたものの中から趣や美しさを感じれることです。
こうした古びたものの美しさ、またそれを美しいと思う心を表す「わび・さび」は日本の伝統文化によく見られ、日本特有の精神として海外でも知られています。
茶道に外国人からの人気が集まる理由
日本の伝統的な価値観を感じることのできる「茶道」に注目する外国人観光客が増えています。外国人の目から見て「茶道」が人気な理由を紹介していきます。
インバウンド需要は「モノ消費」から「コト消費」へ
昨今のインバウンド業界における外国人観光客の支出傾向に表れているのが、「コト消費」への消費が増えていることです。
特に訪日外国人にとっては、日本に来たからこそできるような「体験」をしたいと考える人が増加しており、着物の着付け体験や歌舞伎の観賞、温泉の入浴など、伝統文化に関するアクティビティに対する関心が高まっています。
様々な伝統芸能体験がある中でも、「茶道」は見るだけではなく、実際に自分でお茶を点て、他の人にもてなすことができる参加型アクティビティとして訪日外国人観光客を魅了しています。
「モノ消費からコト消費」の意味や種類とは?変化の理由とインバウンド対策方法を解説
世界的な消費行動の変化として、商品を購入する「モノ消費」から体験型の「コト消費」へと変化しています。 この変化は国内消費だけでなく、訪日外国人観光客のために酒造見学や田舎暮らしの体験ツアーなどが提供されている事からも変化を感じ取ることができます。 この記事ではモノ消費からコト消費へシフトしている理由とインバウンド誘致における対策方法について解説します。 インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応...
モノ消費からコト消費へ|定義と最新傾向「トキ消費」「エモ消費」「イミ消費」
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茶道に対する海外の反応
世界各国で展開されている料理動画メディア「Tasty」の日本版「Tasty Japan」はYoutubeの公式アカウントで、「茶道 - Japanese Tea Ceremony -」という茶道の作法を紹介する動画を公開しています。
この動画には、日本人のみならず、海外からも多くのコメントが寄せられており、それらのコメントから外国人が茶道に対する反応や考え方がうかがえます。
以下、一部のコメントを抜粋します。
・How elegant, if only there were english subtitles so i could understand(訳:とっても上品!英語の字幕があればよりよい)
・It's impossible to describe the feelings and/or emotions that surround this magical ritual! everyone need to enjoy it!!! <3(訳:茶道の儀式にまつわる雰囲気や精神を言葉で説明するのは不可能だ!みんな一回試してみて!)
・I just loved the video. The Japanese are all about skill and precision. And I'd be delighted to taste that tea it looks just perfect😍 .(訳:この動画が大好き。茶道などの日本の文化には技と精密さが詰まっている。動画のお茶はおいしそうで試してみたい。)
茶道を活用したインバウンド事例を紹介
茶道をインバウンドに活用する一つの例として、訪日外国人観光客向けの「茶道教室」が挙げられます。
実際どのような体験内容を提供しているか、以下、2つの事例を通じて紹介します。
「駒場・和楽庵」:外国人向け茶道教室も開催
東京の駒場にある「駒場・和楽庵」では、お茶の作法をはじめ、茶室に入るまでのマナー、床の間や道具の見方など、本格的な茶道の一連の所作を初心者でも楽しめるプランを提供しています。
また、「駒場・和楽庵」では、訪日外国人観光客により気軽に茶道体験を利用できるよう、様々な受け入れ体制を整えています。
たとえば、茶道の世界を訪日外国人観光客に詳しく説明するために、英語、中国語、韓国語の通訳のオプションサービスを用意しています。
また、体験している間、いつでも写真撮影ができ、歴史ある貴重な茶具などを撮影することもできます。
茶道体験の教室の最寄り駅まで、無料の送迎サービスも提供しており、初めて日本を訪れる人でも不安なく利用できます。
「YANESEN」:着物レンタルも可能、書道や生花体験も提供
東京の谷中にある外国人向け文化体験・観光案内施設「YANESEN」では、茶道や生け花、書道など様々な日本の伝統文化が体験できます。
茶道の体験プログラムは、1名から利用できる貸切形態となっているため、家族や友人とプライベートな空間で伝統的な茶道を体験することができます。
そして、英語通訳を交えながら茶道の作法をレクチャーします。途中で質問や写真撮影も自由にできます。
希望者には着物レンタルも用意しており、着物を着て本格的な茶道体験を味わえます。また、正座が苦手な訪日外国人でも問題なく体験できると紹介されています。
茶道体験だけでなく「YANESEN」は所在地である谷根千地区の街散策の情報も提供しています。訪日外国人観光客はこの施設を訪問することで、谷根千エリアの文化にも理解を深められます。
外国人の注目を集める「茶道」
茶道は、お茶の味を楽しむだけでなく、「わび・さび」に代表されるような日本独自の文化を実感することができるため、外国人から人気を集めています。
また前述した事例のように、この伝統文化を外国人でも気軽に楽しめるには、本格的な茶道体験プログラムの提供に加え、多言語対応や写真撮影、送迎サービス、着物レンタルなど、訪日外国人観光客の様々なニーズを読み解き、受け入れ環境の整備も進めてきました。
茶道の魅力を訪日外国人観光客にも伝えるためには、このような取り組みが今後も進められていく必要があるでしょう。
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