国内外で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、インバウンドの減少が化粧品業界にも大きな打撃を与えています。
一方で中国では日本製の化粧品への人気が根強く、ECでの新たな消費スタイル「ライブコマース」も注目されています。
本記事では、インバウンドの減少が化粧品業界に与える影響と、中国における日本製化粧品の人気、今後の展望について考察します。
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インバウンド大幅減、化粧品業界への影響は?
2020年の訪日外国人客数は約411万人で、前年比87.1%減となりました。
旅行中の化粧品への消費額が大きい訪日中国人の数も、約100万人にとどまりました。
2019年の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人全体における化粧品・香水の購入率は42.2%で、菓子類に次いで2番目に高くなっています。
また一人あたりの単価は34,176円と、時計や宝石に次いで3番目に位置しており、特に中国では購入率は80%を超え、一人あたりの単価は52,142円と平均を上回っていました。
これらの消費がなくなったことによる化粧品業界へのダメージは大きく、資生堂の2020年1月~9月の決算は、136億円余りの最終赤字となりました。
11月時点で、2020年の年間業績予想も下方修正し、300億円の最終赤字となる見通しを示していました。
中国ECでの日本製化粧品の人気
インバウンドの減少が化粧品業界に大きな影響を与える中、中国のEC市場では日本製化粧品の高い人気が健在となっています。
資生堂が中国ECで売り上げ回復
2月1日、資生堂は2020年12月期の連結営業損益が、前期比87%減の150億円になったと発表しました。
2020年11月時点で予想していた100億円の赤字から一転黒字となったもので、国内での商品販売が想定より復調したほか、中国でECが伸びたとのことです。
アリババが昨年の「独身の日」に開催した大規模オンラインセール「ダブルイレブン」での販売も好調で、アリババは例年11月11日の当日のみだったセールの対象期間を、1〜11日に延長しました。
渡航制限により訪日中国人からの需要は減少しているものの、資生堂は同イベントで販売を補うことができたとみられます。
2020年11月、資生堂は大手越境ECサイト「天猫国際」でのダブルイレブンのセール期間中に、日本からライブ配信を行いました。
資生堂のライブ配信では、従来インフルエンサーが起用されていましたが、今回はブランドや会社への理解を深めてもらうため、社員が消費者へ自ら商品紹介を行いました。
百貨店の免税売り上げ:国籍別では中国が1位
2020年の年間免税総売上高は約686.2 億円で、前年比80.2%減となりました。
年間を通して、品目別の売り上げ1位は化粧品で、免税手続きカウンターの来店国別順位の1位は中国でした。
背景には、中国にいる消費者の代わりに海外の商品を購入して転売する「ソーシャルバイヤー」が動いている可能性も考えられます。
コロナ禍でも、ECを通して日本製の化粧品を求める中国人は多いことがうかがえます。
【日本百貨店協会】11月の免税売上26億まで回復:一人あたりの購入単価は500%増加
12月22日、日本百貨店協会・インバウンド推進委員会は、2020年11月免税売上高・来店動向の速報を発表しました。11月の訪日外客数は56,700人と前年同月比では97.7%減となりましたが、実数としては前月の27,400人から2倍以上増加し、大幅に回復しました。背景には11月より全世界を対象にした、中長期の在留資格を持つ外国人の入国再開をはじめ、韓国や中国とのビジネス目的の往来再開などがあると考えられます。これにともない、百貨店の免税売上高と購買客数は前月より微増しましたが、10か月連続...
中国で主流となりつつある「ライブコマース」とは
中国最大のEC商戦であるダブルイレブンにおいて、2020年の最終的なGMV(流通総額)は、前年比26%増で過去最高となる4,982億元(約7兆7,200億円)を達成しました。
中国向け越境ECにおける国・地域別のGMV(流通総額)ランキングでは、日本が2016年から5年連続で1位を獲得しています。
また、中国の消費者が購入した輸入ブランドランキングで、資生堂は5位にランクインしています。
売り上げ増加の背景には、中国での「ライブコマース」という新しい消費スタイルがあります。
ライブコマースとは「ライブ動画」と「Eコマース」を融合させたもので、視聴者はリアルタイムで商品について質問するなど、コミュニケーションを自由に取りながら商品を購入できます。
8時間で1100億円動く「ライブコマース」とはなにか?大規模ECデー"独身の日"の主戦場に:参入前に考慮すべき3つのポイ
中国の11月11日は「独身の日」であり、中国でもっとも大規模なECセールイベントが行われる日です。その桁違いの総取引額に商機を見出し、独身の日商戦に参画する日本企業も年々増加しています。今年は新型コロナウイルスの影響で巣ごもり需要が活発化し、ECの利用が増加しています。特に自宅でも買い物体験がより楽しめる「ライブコマース」という新しい消費スタイルが注目され、去年の盛況ぶりをさらに上回ることが予想されています。この記事では、今年の独身の日のセールの様子と、そして近年日本企業の参入も増加するラ...
ライブコマースと親和性の高いコスメ関連商品
2020年のダブルイレブンセール期間中、3億人近くがアリババの運営するライブコマースプラットフォーム「タオバオライブ」を視聴し、タオバオライブ経由のGMVは前年同期比100%増を記録しました。
その中でも、コスメ関連商品は最も売れたカテゴリとなっています。
消費者がライブコマースを利用するメリットには、商品をより詳細に確認できることや、インフルエンサーなどの配信者と視聴者間で双方向のコミュニケーションが取れること、商品を割安で購入できることなどがあげられます。
取引総額7兆円超え、過去最高に 中国「独身の日」日本ブランド人気最多、「ライブコマース」も加熱
2020年11月1日〜3日と11月11日にかけて、中国最大のECセールイベント「独身の日」が行われました。中国では11月11日が独身を祝う日として認識されており、「光棍節」や「ダブルイレブン」とも呼ばれます。従来は「独身の日」には独身者が集まってパーティーが催されていたもので、現在では独身者に限らず多くの人がネットでセール品など買い物をする一大イベントとなっています。その筆頭となるのがアリババグループによるECセールイベント、「2020 天猫ダブルイレブンショッピングフェスティバル」(以下...
トップライバーへの人気集中・薄利多売となるリスクも
一方でライブコマースには課題もあり、多くの企業や店舗がライブコマースに参画するなか、トップライバーの直播間(スタジオ)にしか人が集まらないという傾向があります。
その背景には、トップライバーの認知度や集客力の高さに加え、トップライバーによる販売商品は基本的に最安値が保証されており、トップライバーを起用しないと競争できないという事情があります。
さらに、人気が集中するトップライバーへの契約金と歩合制の報酬は高額で、多く売ってもそれほど利益が残らず、結果的に儲からない「薄利多売」となるリスクもはらんでいます。
中国最大のECセール日「独身の日」の光と影 「総流通取引額7兆円」のカラクリ、薄利にあえぐ企業
中国で「独身の日」として知られる11月11日は「W11(ダブルイレブン)」とも呼ばれ、毎年、中国最大のEC商戦として注目されています。今年のW11にはこれまでで最大となる25万以上のブランドが参加し、昨年から5万も増加しました。2020年のW11のGMV(流通取引総額)は、11月11日午前0時30分までの注文分で3,723億人民元(日本円で約5兆8,078億円)、20時過ぎには4,600億人民元を超えました。最終的なGMVは4,982億元を記録し、過去最高だった昨年と比べて26%増と大きく...
インバウンド減でもECを通した中国市場への訴求を
新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ収束のめどが立たず、厳しい渡航制限が続いています。
インバウンド需要の減少が続くなかでも、中国にいる消費者からの日本製化粧品に対する需要は高く、ECでの販売は好調となっています。
新しい消費スタイルであるライブコマースをうまく活用するなど、ECを通した中国市場への訴求に今後も商機はありますが、前述の「リスク」も考慮しなければなりません。
化粧品業界に限らず、今後の越境EC戦略には中国市場以外も視野に入れた販路の構築やPRが求められるでしょう。
越境ECは「売れなくてもいい」コロナ禍の今、海外に向けて出品すべき本当の理由:BEENOSグループ代表取締役 インタビュー
コロナ禍によって世界的にヒトの動きが制限されている中で、「モノの動き」が活発になっています。インターネット通販プラットフォームを通して行われる国際的な電子商取引「越境EC」は、今年は巣篭もり消費などの追い風もあり、市場が急激に拡大しています。その一方で、海外に商品を売ったことがない自治体や事業者は、法律や言語の壁を前に及び腰になっているケースも多いのではないでしょうか。今回訪日ラボではEC事業周辺のサービスを手掛け、20年あまりのノウハウを持つBEENOSグループの代表取締役兼グループCE...
<参照>
日本政府観光局(JNTO):2020年訪日外客数(総数)
観光庁:訪日外国人の消費動向
JETRO:地場ブランドが存在感を増す中国の化粧品市場
日本百貨店協会:2020年12月 免税売上高・来店動向【速報】
Alibaba Japan:アリババグループ、天猫ダブルイレブンで過去最高の流通総額7兆円超を達成
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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