日本が「観光立国」を進めて以降、新型コロナウイルス感染拡大以前までは、インバウンド消費が増加を続けていました。
本記事では、ウィズ/アフターコロナのインバウンドを考える上で、知っておくべきポイントを解説します。
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「インバウンド消費」とは?
訪日外国人旅行者によって生み出される国内消費のことを「インバウンド消費」と呼び、日本経済に大きな影響をもたらす要素となっています。
従来インバウンド消費は経済へ大きく寄与してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって苦境に立たされているという実態もあります。
インバウンド消費は日本経済の柱として、改めてその存在感を示しています。
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「インバウンド」の用語説明
インバウンド消費は訪日旅行で生まれる国内消費のこと
インバウンド消費とは、訪日外国人による日本国内での消費のことを指します。2002年以降、国が「ビジット・ジャパン・キャンペーン」として外国人観光客の誘致を推進してきたことで、インバウンド消費も促進されてきました。
2014年頃から訪日外国人が急増し、インバウンド消費も大きく押し上げられました。
2011年から2019年までのデータをご紹介します。
消費額はアジアが大きく、観光庁が発表した「「訪日外国人の消費動向」2019年 年次報告書」によれば、1~4位は中国、台湾、韓国、香港であることが分かっています。
新型コロナウイルス感染拡大前最後のインバウンド消費額(2019)は、その36・8%を中国が占めています。
インバウンド消費がもたらす日本経済への影響
経済産業省は、2020年8月4日に更新した「経済解析室ひと言解説集」のなかで、2019年の訪日外国人旅行消費額について、生産波及効果の付加価値誘発額は4兆230億円、GDPの0.7%相当とのデータを発表しています。
さらに「一次の生産波及効果と二次波及効果を合わせた総効果の付加価値誘発額は、5兆円となり、GDPの0.9%に相当する」とも示しています。
またインバウンド消費によって、地方の人口減少に伴う経済縮小を補うことも期待されます。
国土交通省は、2018年3月に発表した「地域のモビリティ確保の知恵袋2017~訪日外国人旅行客の誘客を支える交通施策~」の「(巻末資料1)インバウンド観光の現状と動向と課題」のなかで、「訪日外国人旅行者 8人分の消費額は、定住人口1人当たりの年間消費額(125万円)に相当する。」と示しています。
2020年はコロナ禍でインバウンド消費激減、調査も中止
新型コロナウイルス感染拡大の影響により訪日旅行が激減し、インバウンド消費も大きく落ち込みました。
観光庁が2021年3月に発表した「訪日外国人消費動向調査」の「2020年の訪日外国人旅行消費額」では、2020年暦年の訪日外国人旅行消費額は7,446億円と試算され、前年比で-84.5%と示されています。
2020年は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大に伴って3月以降訪日客が激減したことから、訪日外国人の消費額や1人当たりの旅行支出は発表されませんでした。
インバウンド消費のトレンド
インバウンド消費においては、モノ消費からコト消費への消費潮流の変遷がありました。
各消費潮流について、以下でご紹介します。
モノ消費:中国人観光客の「爆買い」など
「モノ消費」とは、目に見える製品(モノ)に価値を見出す消費傾向のことです。インバウンドで言えば、例えば日本のお土産物などを買う行動も「モノ消費」の1つといえます。
モノ消費である買い物の消費額は、2015年に急増しています。
2014~2015年の中国人観光客による「爆買い」もその典型的な例であり、家電や化粧品、菓子類などが多く購入されていました。
ドン・キホーテグループの訪日事業部門「ジャパンインバウンドソリューションズ」の中村好明社長は、2015年10月7日、「観光立国フォーラム」にて2014年からの爆買い状態を「インバウンド2.0」としました。
なお、モノ消費の中ではシフトが見られており、JNTOが2016年4月~8月に実施した調査をまとめた「訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-」では以下のように示されています。
- 買物をする傾向が強い中国、タイ、インドネシアの旅行者においては、購入品目の変化が見られる。
- 越境 ECの拡大や前回旅行時に既に購入しているリピーターの増加等を背景に、時計・カメラ等の高級品から生活用品や食品等の日用品へのシフトが見られる。
コト消費:欧米からの訪日客に人気
コト消費とは、商品やサービスなどを通して得られる体験(コト)を重視した消費傾向のことです。
JNTOが2016年4月~8月に実施した調査をまとめた「訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-」では、以下のように述べられています。
- 自然景観鑑賞、歴史建造物への訪問、アクティビティ体験等のコト消費は訪日外国人の消費として定着している
- 米国人、フランス人等は買物を訪日旅行の主な要素とは考えておらず、日本の文化や歴史を理解できるような体験を好んでいる
具体的には、旅行会社がツアーにイチゴ狩りなどの体験型アクティビティを組み込むことや、小売事業者が花見や花火等のイベントを販売促進のきっかけにすることなどが挙げられています。
なお前述の中村好明社長は2015年10月7日の「観光立国フォーラム」にて、「コト・体験消費」を今後あるべき姿=「インバウンド3.0」と表現しています。
インバウンド消費の課題とは?
インバウンド消費はこれまで増加傾向が続いてきましたが、一方では課題も生じています。
どんな課題があるのか、現状と共に2つご紹介します。
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受け入れ態勢の強化
一つ目の課題は、今後のインバウンドの受け入れ態勢です。
JNTOは、2016年4月~8月に実施した調査をまとめた「訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-」の中で、以下のような点を指摘しています。
- 各機関の連携不足
- 二次交通の整備の不足
- 多言語対応の不足
- 営業時間の短さ
- 多様な決済方法への対応不足
さらにムスリム対応も問われており、百貨店やスーパーでは、ムスリムに配慮した商品を開発し販売しているところもあるものの、今後もさらに対応が必要となります。
地域間のインバウンド消費の差
日本国内では、観光客がゴールデンルートに集中するなど、地域間でインバウンド消費に差があることが問題となっています。
国土交通省が2018年3月に発表した「地域のモビリティ確保の知恵袋2017~訪日外国人旅行客の誘客を支える交通施策~」の「(巻末資料1)インバウンド観光の現状と動向と課題」では、訪日外国人旅行者が訪れるだけで「地域にお金が落ちない」、「特定の事業者のみが儲かっている」という問題を抱える観光地があると指摘されています。
また同資料の中で、国土交通省は「特色ある地域資源を活かし、訪日外国人旅行者を取り込むことで、地域内の経済循環を創出することが重要 」としています。
アフターコロナに向けたインバウンド対策を
インバウンド消費は「モノ」や「コト」など、各消費形態で日本経済に大きな利益をもたらしてきました。
一方で2020年に入り、訪日観光客の入国が事実上ストップしたことから、インバウンド消費に依存していた産業は大きな打撃を受けています。
今後はアフターコロナを見据えたインバウンド対策が欠かせません。
今後の観光業は富裕層から回復していくと予想されているため、富裕層向けのコンテンツを充実させることも重要となるでしょう。
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<参照>
観光庁:訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書
観光庁:平成30年版観光白書について(概要版)
JNTO:2014年訪日旅行市場の総括と今後の展望
観光庁:2020年の訪日外国人旅行消費額(試算値)
JNTO:訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-
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