日本政府観光局(JNTO)は、ポストコロナの観光を見据えて6月22日「SDGsへの貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に係る取組方針」を策定しました。
JNTOは、サステナブル・ツーリズムの推進に取り組む日本の地域や観光コンテンツの海外向け情報発信や、先進事例の情報提供、責任ある観光(レスポンシブル・ツーリズム)の奨励やユニバーサル・ツーリズムに関する情報発信に努めていくと発表しています。
JNTOは策定意義について、ポスト・コロナにおいて日本が「世界の旅行者から選ばれる観光地」となるためだと述べています。
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JNTO、サステナブル・ツーリズムの取り組み方針について発表
SDGsへの貢献と持続可能な観光の推進に係る取組方針が発表された背景には、旅行者においてサステナビリティへの意識が高まったことがあげられます。
Booking.com「旅行が及ぼすインパクトに関する意識の高まり:責任ある旅行の始まり」によると、世界の旅行者の68%が「旅行に使ったお金が現地コミュニティに還元されることを望んでいる」と回答しています。
また世界の旅行者の43%が「旅行に関する選択にさらに配慮することで現地のコミュニティや経済を支えたい」と考えていることが明らかになりました。
そこでJNTOはサステナブル・ツーリズムを地域の「環境」「文化」「経済」の保護と発展への貢献と定義づけ、それらに関する取り組みを推進することを決定しました。
また、関連するゴールについては、以下の項目をあげています。
- ゴール3:あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
- ゴール4:全ての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
- ゴール5:ジェンダー平等を達成し、全ての女性及び女児の能力強化を行う
- ゴール7:全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
- ゴール8:包括的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい(ディーセントワーク)を促進する
- ゴール10:各国内及び各国間の不平等を是正する
- ゴール11:包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を再現する
- ゴール12:持続可能な生産消費形態を確保する
- ゴール13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
JNTO、情報発信でSDGsに貢献へ
まずJNTOは組織として、プロモーション活動における環境保全への配慮や組織運営を行うと発表しました。
それらに加え、実施すべき取り組みとして観光コンテンツの情報発信などをあげています。
観光コンテンツの収集・発信
JNTOは観光コンテンツの収集、オウンドメディア等を通じた観光コンテンツの訴求によりSDGs目標を達成すると述べています。
具体的なコンテンツ例としては、以下のものがあげられます。
- 環境負荷の少ない自然共生型のアウトドアアクティビティや観光・宿泊施設
- 収益の一部が地元に寄付される旅行商品等・ガイドを利用し旅行先の文化等の理解を深める体験
- 旅行先の地元の人の暮らしぶりの体験
- (旅行者の参加により存続する)地元の祭りや行事等への参加型旅行商品
- 古民家等地域の有形文化資産を利活用した宿泊施設や商業施設
- 旅行者による体験や購入が継承につながる伝統工芸
- 地元ならではの食文化体験や地産地消の料理の提供・料理体験
- 古くからその地で育くまれてきた地域の有形無形の伝統・文化資産
- 生態系の保護に資する旅行者参加型の旅行商品
これらの発信ツールとして、FSC認証(森林認証制度)など環境に配慮した紙を使用したパンフレット、および特設ウェブページを制作して周知していくとしています。
訪日ラボでも、関連記事で先行事例についてまとめています。
関連記事:「サステナブル・ツーリズム」コロナ後の観光振興に必要不可欠なこと 先行事例を紹介
国内の観光事業者向けの情報提供、ガイドラインの周知
次に、国内事業者に向けて2020年6月にJNTOが作成した日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)の周知を行うと発表しています。
そして持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)に関する旅行者の動向や国内外問わず先進事例に関する情報の提供を行うとしています。
<参照>
観光庁:日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)
責任ある観光、観光客にもよびかけ
さらに責任ある観光(レスポンシブル・ツーリズム)の推進として、コロナ禍に対応した「新しい旅のエチケット」を多言語で海外向けに紹介すると述べています。
そして以下のような行動を呼びかけることにより、レスポンシブル・ツーリズムが一層促進されると指摘しています。
- その土地の環境や文化等に配慮した旅行商品の利用
- 自然環境への負荷軽減を意識した行動
- 地元産品の消費や購入
- ソーシャル・デイスタンスの実践と混雑の回避
- 訪問地の文化や慣習、マナー等の尊重
- ガイドの利用等による訪問地に関する深い知識の習得
- 旅行先でのポジティブな経験の発信
日本政府観光局に限らず、各自治体・DMO等の呼びかけでも十分に実施できる分野であるため、積極的に協力することが求められていると考えられます。
関連記事:レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)とは?コロナ禍で注目となった「新しい観光」
ユニバーサル・ツーリズムの推進
最後に人種や国籍、民族や宗教、ジェンダーや年齢、障害の有無等に関係なく全ての旅行者が、日本において快適で安全・安心な旅行ができるよう、ユニバーサル・ツーリズムを推進すると発表しました。
国内事業者向けに情報提供を行うことや、海外に向けてユニバーサル対応についての整備状況などを発信する方針です。
日本でも様々な事業者がムスリム、ベジタリアンに対応した観光コンテンツを発信しています。また安心・安全な旅行につながる防災観点からの発信も進められています。
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観光事業者・観光客ともにサステナブル・ツーリズムへの意識を
JNTOの取り組みでは、組織運営からSDGsに向けて取り組むのと共に、観光事業者・客双方にサステナビリティに関する意識を持つよう呼びかけています。
観光事業者としては、ワクチン接種も進みコロナ禍が収束に向かいつつある中で、積極的に事例を収集し実践することが求められると考えられます。
一方で、観光業界においてはSDGsへの取り組みが全業種で最も遅れており、人材不足のため対応できないという声も聞かれます。
サステナブル・ツーリズムに関する新たな観光資源を開発し、それが財源確保の道筋となるようSDGsに関する取り組みをビジネスにつなげる工夫が必要となるでしょう。
関連記事:観光産業のSDGsへの取り組み、「20.3%」と全業種で最も低く 人材・財源不足ネックに
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<参照>
Booking.com:旅行が及ぼすインパクトに関する意識の高まり:責任ある旅行の始まり
JNTO:SDGs への貢献と持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)の推進に向けて取組方針を策定しました!
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