「アフターコロナの観光の起爆剤」ATWS北海道日本キックオフシンポジウムの様子をレポート

9月20日~24日にかけて北海道で開催されたアドベンチャートラベル・ワールドサミット北海道/日本(ATWS北海道/日本)に先立って9日、ATWS北海道日本キックオフシンポジウムがオンラインで開かれました。

ATWSがアジアで開催されるのは今回が初めてです。アドベンチャートラベルは、コロナ後の観光業界の「起爆剤」として期待されています。

本稿では、そのシンポジウムの様子をレポートします。

アドベンチャートラベルとは

アドベンチャートラベル(AT)とは、「アクティビティ」「自然」「文化体験」の3つのうち、2つ以上の要素によって構成される旅行のことをいいます。

ATによって未知なるものと向き合い、旅行者は自らの心の豊かさや成長することを期待しています。ATは世界で72兆円の市場規模があるとされ、これは一般旅行者の消費額の約2倍にあたります。

また、一般的なマス・ツーリズムよりもATは3、4年、需要の回復が早いとされています。

こうしたことから、ATは北海道の観光資源、自然、文化を最大限に活かす起爆剤として期待されています。

ATWSを北海道で開く意味

ATWSは年に一度開催され、今年で17回目を迎えます。旅行会社や、メディア、世界の観光局、観光協会など約800名が一堂に会する大会で、開催地の魅力を世界に発信する絶好の機会です。

9月20日から24日までオンラインで開催されることとなったATWS北海道/日本には海外メディアも参加し、注目度も高まっています。

今回の開催のテーマは「共生」です。アイヌ文化や、縄文文化など、本土の歴史的、文化的特性とは違った魅力を持つ北海道を伝える予定です。アジェンダとしては、「カーボンフリー」や「サステナビリティ」など、タイムリーな内容を議論します。

北海道は、本州の歴史的、文化的特性とは対照的に、野性的でアウトドア向きの土地ですので、ATの理想の地と考えられています。

さらに食の選択肢も非常に幅広く、インフラもしっかりしているため、富裕層にも魅力的な場所となっています。

北海道の観光業界第一人者によるパネルディスカッション

AT市場を拡大するためにはなにが必要かについて、北海道でATに関わる人たちが議論を交わすパネルディスカッションも開催されました。ここからは事業者、ガイド、海外のそれぞれの視点からお伝えします。

事業者の視点:日本型ATをつくりあげるために

トップバッターは、国土交通省北海道運輸局の水口猛観光部長。

水口氏は、2014年にATと出会ったそうです。当時は北海道新幹線が開通する前で、主に欧米の旅行者に何が刺さるかを考えていました。そんな時、ナショナル・ジオグラフィックのクリス・レイニア氏という著名な写真家にアイヌ文化を見せて回りました。レイニア氏はアイヌ文化に大変感銘を受けたそうで、水口氏は、ATの可能性を感じたということです。

「北海道のこれからの観光は、自然環境と文化交流が密接に結びついたATだ、というところを見せたい」(水口氏)

国土交通省北海道運輸局の水口猛観光部長
▲国土交通省北海道運輸局の水口猛観光部長

これまでも、ATWSに参加してきた鶴雅リゾート株式会社アドベンチャー事業部の高田茂部長に、事業者目線から、今回のATWSのポイントについての説明がありました。

実はこれまでのATWSでは海外の事業者からの質問に対し、日本側DMC、DMOエージェント(ランドオペレーター)から即答しないばかりでなく、「何月何日までに回答します」といった予定も伝えないといったケースや、FAMトリップで招聘しておいて質問の電話を入れると、「うちでは回答できません、どこどこに聴いて下さい」と、たらい回しになり、結果無回答で終了というケースもあったということです。

だからこそ、誠実な対応を心掛け、信頼関係を築くことに心を砕くことが重要だと高田氏は話しました。

ATWSは今までのような商談会ではなく、自分(人)を売り込む場に近いと語ります。いかに自分を信用していただけるかが鍵だと、高田氏は強調します。

「今後の旅行形態はATに必ず向いてくると思います。北海道での開催が成功すれば、日本型ATをつくりあげるチャンスです」(高田氏)。

鶴雅リゾート株式会社アドベンチャー事業部の高田茂部長
▲鶴雅リゾート株式会社アドベンチャー事業部の高田茂部長

ガイドの視点:AT客は「本物志向」

ATのガイド育成に携わる北海道アドベンチャートラベル協議会の荒井一洋氏は、ATと持続可能な観光の親和性は非常に高い、と説明します。

「私はGlobal Sustainable Tourism Councilの公認トレーナーとしてこれまで研修に携わっており、ATには可能性を感じています。

ATの旅行者は、地域に対する関心が非常に高いですし、地域共生への責任感があります。

こうしたレスポンシブル・トラベラー(責任ある旅行者)は、持続可能ではない地域へは行かないでしょう。

なぜなら、そこを訪れお金を落とすことは、持続可能ではない地域に荷担することになるからです。

持続可能性とは特別なことではなく、取り組まないとお客は来られない。つまり、観光をする際の最低条件と考えられるでしょう。」(荒井氏)

北海道アドベンチャートラベル協議会の荒井一洋氏
▲北海道アドベンチャートラベル協議会の荒井一洋氏

通訳案内士、森林インストラクターとして訪日客を10年以上ガイドしている馬上千恵氏は、ATのガイディングの特徴は3つある、と分析しました。

1つ目は、お客さんとの関係性が深くなること。2つ目は幅広い知識や経験を伝える技量が求められること。3つ目は、地域との連携が重要だということ。

馬上氏は、ATの旅行客は「本物志向」が多い、といいます。

好奇心旺盛な彼らのニーズに応えるためには旅行地域の情報はもちろん、「日本人はなぜ正座をするのか」など、一般教養を外国語で分かりやすく伝えることができる能力が必須だからだと馬上氏は語ります。

馬上氏はまた、「本物志向」の彼らは表面的な観光だけでは満足せず、地域住民の生活に根差した生活を体験したがるといいます。だからこそガイドには地域住民との信頼関係を構築することが大切だと語りました。

通訳案内士の馬上千恵氏
▲通訳案内士の馬上千恵氏


海外の視点:北海道の強みを組み合わせて

北海道宝島旅行社のトラベルコンサルタントである池田かおり氏は、これまでに多くの欧米の旅行代理店と関わってきました。

現在も週に2~3回のペースで、北海道にどんなATを期待されているのか聞き取りを行っています。その中で池田氏は、欧米の旅行代理店から「ソフト・アドベンチャー」が求められていることに気付きました。

「例えば、以前スイスのバンジージャンプに特化した会社の方より、『美味しい食・温かい人・美しい自然を合わせたものが君たちの一番の強みだよ』と言われたことがあります。

またアメリカの旅行会社の方からは、『わざわざ北海道を訪れなくとも、アメリカ人はアラスカに行けば熊を見ることができる。

北海道に来るためは、文化と食を組み合わせた方がいい』と言われたことがあります。

北海道の強みを掛け合わせて、良い体験を提供することが大切だと思います。」(池田氏)。

北海道宝島旅行社のトラベルコンサルタント、池田かおり氏
▲北海道宝島旅行社のトラベルコンサルタント、池田かおり氏

ニュージーランド出身で、英語話者に向けた北海道のアウトドア情報を英語で発信している「Hokkaido Wilds」の代表、ロバート・トムソン氏も訪日客にとって、北海道の「日常」に価値を感じていると分析しています。

「例えば、おにぎりや自動販売機について私たちのメディアで発信したところ、とても反応が良いです。パウダースノーの積雪量が世界1位であることからも、北海道には海外からの注目が集まっています」(トムソン氏) 。

トムソン氏はまた、自身が自転車などを使い世界一周をした経験から、ATの旅行客の目的は「自己実現」にあるのではないか、と話します。

「例えば、海外の著名なインフルエンサーなどは、登山などある一定のリスクをとりたいのではないでしょうか。北海道でのATによって、未知なるものに挑戦する、そしてそれぞれの旅のストーリーを紡ぐ。そんな体験が求められているのではないでしょうか」(トムソン氏)。

「Hokkaido Wilds」の代表、ロバート・トムソン氏
▲「Hokkaido Wilds」の代表、ロバート・トムソン氏

ATWS北海道/日本の開催によって、北海道の観光業の新たな1ページが開かれることが期待されています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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