マイクロツーリズムとは自宅から1〜2時間で行ける範囲の近場の旅行を指します。コロナ禍で長距離の移動がしにくい中、安全・安心な旅行で地元の魅力を再発見する旅のスタイルが注目されています。
本記事では、ウィズコロナ時代に提唱され、そして注目されているるマイクロツーリズムについて、事業者、観光者へのメリットや取り組み事例などと共に解説します。
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マイクロツーリズムとは
マイクロツーリズムとは、地元を再発見できる滞在型旅行です。3密を避けながら地元の方が近場で過ごす旅のスタイルで、コロナ下の観光業界を救う手段として注目されています。
マイクロツーリズムは「地域の魅力を再発見」できる観光
マイクロツーリズムとは、遠方や海外への旅行に対し、3密を避けながら近場で過ごす旅のスタイルです。星野リゾートの代表、星野佳路氏が提唱しました。
主には、保養目的で旅館やホテルに行き、温泉や自然散策、料理を楽しみ、活力を取り戻せるような滞在旅行を指します。また体験型コンテンツなどによって地域との深いかかわりを持つ楽しみ方もあります。
自宅から1〜2時間程の距離で、安心、安全に過ごしながら地域の魅力を深く知るきっかけになり、地域経済にも貢献できると期待されています。
コロナ禍から誕生した新たな旅のあり方
観光業界は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって大きな打撃を受けました。そんな観光業界が採るべき手段の1つとして、星野佳路氏が2020年5月にマイクロツーリズムを提唱しました。
星野リゾートは今後の移動範囲の予測を発表しており、「近隣への外出=マイクロツーリズム」がウィズコロナ時代の観光におけるはじめの一歩になるとしています。

引用元:星野リゾートプレスリリース
感染拡大防止の観点から県境をまたぐ移動に制限がかかることの多い今日、マイクロツーリズムは観光を支えるキーワードとなっているといえます。
マイクロツーリズムの3つのポイント
マイクロツーリズムには3つのポイントがあります。
1つ目は、長距離移動を伴う観光ではないためウイルス感染拡大リスクを減らせることです。
星野リゾートによれば、ウィズコロナ時代には「観光が感染拡大に貢献しないこと」が重要視されるということです。
マイクロツーリズムは感染拡大防止の観点も加味して確立された観光形態であるため、このような時代においても観光需要創出とそれによる地域経済への貢献が可能とされています。
2つ目は地元の魅力を再発見できることです。
各地域についてこれまでにない気づきを得ることで、新たな施設の創出などにもつながります。
3つ目は地域の人とのつながりが強化されることです。
コロナ禍によって打撃を受けている地域の人と協力しさまざまな取り組みを進めることで、より価値の高い貢献と施設等の運営強化を期待できるとされています。
マイクロツーリズムのメリット 感染防止と持続的な観光を実現
ウィズコロナ期において、マイクロツーリズムは観光事業者にとっても旅行者にとってもさまざまなメリットがあります。マイクロツーリズムがそれぞれにもたらすメリットを以下で紹介します。
事業者へのメリット
観光事業者は、マイクロツーリズムを通じて収益の安定化を図れます。
マイクロツーリズムが普及し地元や近隣住民を固定客化できれば、今後何らかの要因で長距離移動が制限されることがあっても地元からの旅行者は確保できるでしょう。これにより、安定した事業継続が可能になるといえます。
また、コロナ下においては顧客や従業員のウイルス感染リスクを軽減できるという点もメリットの一つです。
コロナ下の観光においては、遠方からの来訪者がウイルスを持ち込む、もしくは事業者が感染していた場合に遠方に拡散させてしまうといったウイルスの移動可能性が懸念されています。
しかし、マイクロツーリズムでは地元や近隣地域の住民が主要な顧客となるため、広範囲へのウイルスの移動、それによる感染拡大を防ぐことができます。
旅行者へのメリット
旅行者に対しては旅の「手軽さ」と旅を通じた「地域との深いつながり」が魅力です。
マイクロツーリズムは長距離移動を伴う旅行に比べて小規模であるため、移動距離や日数が短くなる傾向にあります。そのため、大量の荷物のパッキング、持ち運びが不要になるほか、公共交通機関を用いる移動も減らせます。
また、短距離移動のため観光地に再訪しやすいといったメリットもあります。地域の魅力を再発見したり地域の人と繋がることで、その地域の人との深い地域交流が期待できます。
マイクロツーリズムの事例
コロナ禍が長期化する今日、さまざまなところでマイクロツーリズムが導入されています。マイクロツーリズムの発信者である星野リゾートが行った事例や各自治体による取り組みなどを紹介します。
1. 星のや京都
星野リゾートが運営する「星のや京都」はコロナ禍をきっかけにマイクロツーリズムの展開を進めました。
星野リゾートの報道発表資料によれば、「星のや京都」は、従来インバウンド観光客がホテル利用客の約半数を占めていたということです。コロナ前の2019年8月は、ホテル利用客の47.3%がインバウンド観光客でした。
そうした中で、コロナ下に突入しインバウンドによる収益が見込めなくなったことを境に、2020年から「奥嵐山で京文化に触れる1日」をテーマとして近畿エリアの顧客をターゲットとしたマイクロツーリズムのプランを導入しました。
コンテンツ内容は「プライベート空間での美味しい食事、京文化を楽しめる季節のアクティビティで京都を再発見できる」というものです。
これが功を奏し、2019年には1割以下だった近畿エリアのホテル利用客が3割となり、ホテル全体としても稼働率約80%を記録したということです。

2. 岐阜県下呂市馬瀬
岐阜県下呂市馬瀬もマイクロツーリズムを推進しています。農林水産省にも、「コロナ禍における農泊地域事例」の一つとして取り上げられています。
同市はコロナ禍を境として県民需要の開拓性に目を向け、2020年9月より馬瀬地域独自のイベント(火ぶり漁、あったか祭り)を実施しました。また地域ガイドや特産品、体験のPRも行い訴求を続けたということです。
この結果、近隣からの旅行者が増加しました。宿泊・食・体験が連携して受入れたことが好評だったとされており、特にあまご掴み体験などの野外体験などが人気を博しているということです。
2020年は、7月までは宿泊数、体験数ともに苦戦を強いられていたものの、8月以降は地域としてGoToトラベルに参加していたことも影響して回復を見せました。
ウィズコロナ時代の観光「マイクロツーリズム」
新型コロナウイルス感染症によって観光のあり方が問われる中、新たな観光形態としてマイクロツーリズムが注目されています。
観光事業者や旅行者に「ウィズコロナ時代に楽しめる観光」であると同時に、地域の魅力再発見や繋がり強化によって観光地の価値向上という面も期待でき、今後の発展にもつながると考えられます。
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<参照>
農林水産省:コロナ禍における農泊地域事例
星野リゾート:星野リゾートの「マイクロツーリズム」ご近所旅行のススメ
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