インバウンドがもたらす経済効果について解説 アフターコロナに向けて再確認

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インバウンドが日本の経済に与える効果は非常に大きく、今や一大「輸出産業」となっています。

インバウンドの経済効果や2022年のインバウンド再開予想について解説します。

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インバウンドがもたらす経済効果は

インバウンドのもたらす経済効果について、消費額から地方への波及効果まで解説します。

インバウンドの消費額と消費用途

コロナ禍以前、インバウンドは大きな成長を見せていました。

2018年のインバウンドは年間3千万人にのぼり、2012年の1千万人を超えて6年で3倍にも急増しました。

日本の国内市場は人口減少により低迷が続く中、インバウンド観光市場は他の産業では例がないほどの規模の拡大を見せていました。

これほどまでにインバウンド市場が成長した要因としては、日本の自然文化や和食といった観光資源が評価されていることに加え、近隣のアジア諸国が経済発展により国民所得が向上し、訪日旅行需要が拡大したことなどが考えられます。

さらに政府によるビザ免除や免税措置、LCCの拡充などの規制緩和策のほか、円安や日中関係改善などさまざまな要因が寄与しました。

インバウンド消費額の国別内訳をみてみると、2017年は中国が1兆6,946億円、台湾が5,744億円・韓国が5,126億円・香港が3,415億円となっており、アジアの国・地域が上位を占め、インバウンド消費額の約7割をも占めています。

次いでアメリカが2,503億円、オーストラリアが1,117億円と続くものの、日本のインバウンド消費額は圧倒的にアジアからの流入が多い状況です。

経済効果は、消費額だけでなくそこに付随する効果も含まれます。

年間数兆円単位もの消費が発生するインバウンドが日本に与える経済効果は、非常に大きなものとなっています。

また官公庁のデータによれば、インバウンドの消費用途は「宿泊費」「交通費」「飲食費」「買い物」「娯楽・サービス費」の5つに大きく分類することができます。

観光などで日本を訪問するため、宿泊費と交通費、飲食費は当然発生するものですが、最も消費額が大きいのは「買い物」となっています。

2018年のデータでは「買い物」が1兆5,763億円、「宿泊費」が1兆3,212億円、「飲食費」が9,783億円、「交通費」が4,674億円、「娯楽・サービス費」が1,738億円となっています。

国際収支上の「貿易・サービス収支」の一部である「旅行収支」において、訪日外国人旅行者による日本国内での消費は「収入」に、日本人旅行者による海外での消費は「支出」にあたります。

この旅行収支は長年にわたり支出が収入を上回る赤字となっていましたが、訪日外国人旅行消費額の増加にともなって、2015年に黒字に転じました。

その後も黒字額は拡大し、2018年には約2.4兆円の黒字となりました。

現代日本において、少子高齢化や先行き不透明な経済状況を受けた貯蓄重視の動きにより、日本国民による消費量は今後どんどん低下していくと見られます。

このような状況のなか、訪日外国人客によるインバウンド消費は、今後の日本経済を支える可能性があるとして注目されています。

特に買い物にかける費用が消費額全体の4割近くを占めることから、訪日外国人観光客による日本での買い物がもたらす経済効果の大きさが期待されます。

経済効果の要因は「爆買い」から「コト消費」へ

訪日外国人のなかでも消費額がトップの中国人による大量消費行動は「爆買い」と呼ばれ、2015年には流行語大賞を受賞するなど社会現象にもなりました。

訪日中国人による総消費額は、2015年に世界1位となる14,174億円にのぼり話題を集めました。

その過剰ともいえる消費行動には、日本製品への信頼や円安なども影響していました。

JETROが2018年に発表した調査データによると、中国人へのアンケートで、中国・日本・米国・英国・イタリア・フランス・ドイツ・韓国・タイの9か国中、「安全・安心」のイメージで日本がトップとなりました。

「メイド・イン・ジャパン」の品質への信頼に加え、円安の影響で中国の人民元が高くなるいっぽう日本円は高くならず、中国人にとっては自国よりも日本の方がブランド品を安く購入できるというメリットもありました。

いっぽう訪日中国人一人あたりの旅行支出を比較すると、2015年の28万3,842円に対し、2019年は21万2,810円に減少しています。

旅行スタイルの変化により個人旅行が好まれる傾向が強くなっており、さらに個人旅行ではモノ消費よりもコト消費を重視する人が増えています。

欧米では以前よりコト消費が人気となっており、中華圏と欧米豪圏の「買い物」の消費差額は約6倍にものぼります。

中華圏では買い物を訪日旅行のメインととらえる人も多い一方、欧米豪圏では買い物での消費を押さえる傾向があります。

欧米豪圏は中華圏とは日本旅行で求めるものに違いがあり、お金をかけずとも街の雰囲気や食文化の違いを楽しむ傾向が見られます。

関連記事:「爆買い」は終わったのか?改めて見る中国人の消費傾向|背景、売れた商品、現状を解説

地方への波及効果も

訪日外国人旅行者の人数が増加するとともに、日本国内の訪問先も年々多様化しており、3大都市圏以外の地方部を訪問する訪日外国人旅行者の割合は年々増えています。

観光庁訪日外国人消費動向調査によれば、2012年に日本を訪れた訪日外国人旅行者のうち、54.2%は3大都市圏のみ訪問していましたが、その割合は2015年には48.2%に減少し、地方部を訪れる訪日外国人旅行者の割合が、3大都市圏のみを訪れる割合を上回りました。

さらに2018年には、地方部を訪問する割合がさらに高まり57.7%に達しました。

人数で比較してみると、2012年には都市部のみ訪問する人が453万人で、地方部を訪問する人が383万人だったのに対し、2015年にはそれぞれ950万人と1,020万人となり、地方部を訪問する人は3年間で2.7倍にも増えています。

地方部を訪問する人の人数は、2018年にはさらに1,800万人にまで大きく増え、3大都市圏のみ訪問する人数1,319万人の1.4倍にもなりました。

これに伴って地方部における訪日外国人旅行消費額も増加しており、2015年から2018年にかけて6,561億円から1兆362億円へと、3年間で1.6倍にも拡大しています。

また訪日外国人旅行消費額の都道府県合計に占める地方部のシェアは、同期間で23.6%から28.5%へと約5ポイント上昇しました。

観光庁によれば、2018年の調査で、コト消費が地方部への訪問率を大幅に引き上げていることも分かっています。

コト消費を体験した場合の訪問率が、体験の有無に関わらない全体平均の何倍になるかを算出すると、「スキー・スノーボード」では新潟が最も高い約12倍、「四季の体感(花見や紅葉、雪など)」では岩手県が約4倍、「自然体験ツアー・農山漁村体験」では愛媛県が約3倍などとなりました。

新型コロナウイルスのインバウンド経済への影響

観光業は今や一大「輸出産業」となっていますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インバウンド需要の蒸発が見られています。

インバウンド需要の蒸発は、日本経済に大きな打撃を与えることとなります。

インバウンド数・消費額共に激減

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にともなって、日本を訪れる外国人の数は激減しています。

2021年の訪日外客数は、コロナ禍の影響を大きく受け、2019年比99.2%減となる24万5,900人に落ち込み、JNTOが発足した1964年以来最低の人数を記録しました。

インバウンド需要が蒸発した状態が半年間続くと、日本の名目GDPは3.0兆円失われます。

これは年間の名目GDP約0.6%分の押し下げに相当し、それに伴って雇用も失われて55.7 万人の失業者が発生し、完全失業率は 0.8%ポイント上昇します。

インバウンド激減による直接的なインバウンド消費は、2.4兆円失われると考えられています。

その影響は特に小売や飲食サービス、宿泊業などの労働集約度の高い産業で顕著にあらわれ、特に国内需要の減少にも直面する宿泊業は大きな打撃を受ける可能性があります。

コロナ収束後に政府の掲げる「観光先進国」となる目標を達成するためには、まず観光産業が危機を乗り切るための支援が行われ、その後収束後に予定している需要喚起政策を実行性を伴う形で実施することが重要となるでしょう。

2022年インバウンド再開に向けて

UNWTO国連世界観光機関)が1月18日に発表した最新の見通しによれば、国際線旅客数は2022年後半から緩やかに戻り、2019年比の半分のレベルまで回復すると予測されています。

専門家のアンケートでは、2019年の水準まで回復する時期は2024年以降とする意見が6割を超えました。

また東京五輪を通じた日本への関心動向や態度変容などのアンケート調査を13か国・地域の8,034名の海外居住者に実施した結果、回答者の44.2%が日本への興味が強まったと回答しました。

パンデミックが落ち着いた後の訪日意欲は73.2%で、将来訪日したいと答えた人の38.6%が東京五輪を通じ関心が高まったとしています。

JNTO(日本政府観光局)は、2022年の方針として、インバウンド再開を見据え「高付加価値旅行」「サステナブルツーリズム」「アドベンチャートラベル」を推進するとしています。

「高付加価値旅行」では、富裕層をターゲットとした日本各地のコンテンツ収集強化のほか、DMOツアーオペレーターコンシェルジュなどのネットワーク化を図ります。

「サステナブルツーリズム」については、2021年度はサステナブルツーリズムの3要素である「観光・文化・経済」を体現する施設やアクティビティ50選を収集・選定してデジタルパンフレットを制作しました。

2022年度はこれを受けてJNTOのWebサイトに特設ページを開設し、情報発信を強化するほか、海外メディアでの記事化を促進し、商談会やセミナーなどでも積極的にアピールしていく方針です。

「アドベンチャートラベル」は、「アクティビティ」、「自然」、「文化体験」の3要素のうち2つ以上で構成される旅行のことです。

市場規模は欧米で約72億円となっており、1人あたりの消費額が高く、地域への還元・雇用効果も高いことも特徴です。

インバウンド経済効果を理解した上で今後を見据えて

アフターコロナに合わせ、各国地域の政策はゼロコロナからwithコロナに変化しています。

2022年には観光地を中心に外国人の入国規制が緩和されることが予測され、東京五輪の影響などもあり感染状況によっては日本でも徐々にインバウンドによる旅行が再開されると考えられます。

インバウンドの経済効果を今一度理解した上で、タイミングを逃さずインバウンドの受け入れを再開することが求められます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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