日本政府観光局(JNTO)は8月16日、2023年7月の訪日外客数推計値を発表しました。7月の訪日外客数は、2019年同月比77.6%の232万600人となりました。また、2023年1月~7月の累計では1,303万2,900人となっています。中国を除く総数では2019年同月比103.4%と、「コロナ前」の実績を上回りました。
足元では8月10日付で中国の訪日団体旅行が解禁され、いよいよ中国インバウンドの本格回復も迫っています。インバウンド全体、そして中国市場の今後の動向が気になるところです。
そこで本記事では、今後のインバウンド動向を、これまでのデータをもとに予測します。
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7月の訪日外客数は232万人
7月の訪日外客数は232万600人でした。コロナ禍前の2019年同月と比較して、8割に迫る勢いで回復しています。なお、中国を除く総数では2019年同月比103.4%と、「コロナ前」の実績を上回りました。韓国をはじめとしたアジア地域や、北米地域などで訪⽇外客数が増加したことが要因となっています。韓国、米国、カナダ、フィリピン、インドネシア、シンガポールなどでは、コロナ前を大きく上回っているということです。

中国は他の国に比べインバウンドの回復が遅れていましたが、今年1月に3万1,291人だったところ7月は31万3,300人と「約10倍」になっており、少しずつ戻ってきています。8月10日には日本への団体旅行が解禁されており、今後は中国市場を中心に回復が進むと予想されます。
今後の予測:2023年年間は2,500万人ペースか
2023年の訪日外客数累計は6月の時点で1,000万人を突破していますが、今後はどのように推移していくのでしょうか。ここからは訪日ラボ独自の試算をお伝えします。このままのペースでインバウンドが回復すれば、月別の訪日外客数が2019年とほぼ同水準まで回復するのは「2023年9月頃」。2022年10月のインバウンド再開後、約1年でコロナ前の水準に追いつく見通しです。
"思っていた以上に"早いタイミングだと感じる方もいるかと思いますが、比較対象となる2019年は韓国における不買運動の影響で、7月以降訪日外客数が減っていることも考慮しておくべきでしょう。

※試算方法:中国とその他の国に分けて予測。月によっても訪日外客数が多い月・少ない月があるため、コロナ前の月別訪日外客数推移を考慮し、各月の増加率を決定した
この試算が正しければ、2023年年間では「2,500万人ペース」となり、2016年並みの水準にまで回復する見込みです。2016年といえば、いわゆる「爆買い」が落ち着きつつも、インバウンド市場が成長を続けていた時期。かなり早いペースで回復していることがわかります。
一方、2024年以降の訪日外客数について、今後も2023年と同様の増加率で増え続け、コロナ前の数値を大きく引き離すのかというと、そうはならないと考えています。航空便の数に限りがあるためです。
JNTOによれば2023年夏ダイヤは未だコロナ前6割であり、今後も増便・復便が期待できるのは事実です。ですが空港側の受け入れにも限界があることを考えると、2019年の年間3,188万人を大きく超える、例えば「4,000万人」「5,000万人」に到達するかというと、そこまで大幅な増加はしないのではないかとみています。
中国の最新動向は?
コロナ前のインバウンド最大市場であった中国。その今後の動向には、多くのインバウンド事業者が注目しているのではないでしょうか。
中国はインバウンドの戻りが遅いとはいうものの、すでに2023年7月の時点で、国・地域別の訪日外客数では韓国、台湾に次いで3位というところまで来ています。
これは中国から日本への入国ハードルが徐々に下がってきたことに起因します。例えば入国時検査は、4月末から有症状者のみ対象となっています。
また、入国ビザについては、これまで年収制限があると噂される"5年ビザ"しか発行されていませんでしたが(※就労ビザなどを除く)、6月19日には観光ビザが解禁となりました。
訪日中国人客数は5月に約13万人であったのが、6月は約20万人、7月は約31万人と大きく回復しており、特に7月は観光ビザ解禁の影響も回復の一因にあるとみられます。
一方で8月以降の回復を大きく左右するのが、やはり航空便の動向。日中間の国際線は、武漢~成田間の復便、上海~成田間の増便、上海~関西間の新規就航などが続いているものの、未だ回復途上にある状態です。訪日ラボでは徐々に回復ペースが収まると予想し、9月以降は月に+5万人前後で試算していますが、団体旅行解禁など需要増加が見込まれる状況に対し、航空各社がどう動くかで今後のトレンドは変わってきます。
2023年インバウンド市場の注目ポイント:消費単価が高くなる傾向に
2023年のインバウンド全体のトレンドとして、一人当たりの消費額が高くなっています。
2023年4〜6月期の国・地域別消費額1位は台湾。買い物への支出が多く、お菓子や薬といった商品を購入しているようです。
関連記事:インバウンド消費額1位は「台湾」。何に消費している?
一方で中国は、2023年4〜6月期の消費単価が33万8,238円(観光・レジャー目的に絞ると35万1,462円)で国別2位となっており、コロナ前(2019年)の値を約12万5,000円上回っています。
前述した”5年ビザ”の影響で現在富裕層が多く訪日していることが主な理由と考えられ、円安がそれを後押ししている形です。
では、一般客が増える今後は、消費単価はどのように推移していくのでしょうか。
これについては、コロナ禍を経て変化した中国人のマインドに注目すべきでしょう。例えば、いわゆる「ゼロコロナ政策」により、2022年に上海で都市封鎖が起きたことで、「お金をため込むのではなく、楽しめる時に楽しんでおこう」と考える中国人が増えています。それを受けて旅行トレンドも、質の高い宿泊施設に泊まる、贅沢な食事をするなど、より消費単価が上がる方向に移り変わっていっているようです。
また、「コロナ禍で使えなかったお金をこのタイミングで使いたい」「これまで旅行できなかった分、これからは思い切り楽しみたい」という「リベンジ消費」の需要も世界的に存在しており、今後もある程度消費単価の高水準が続く可能性はあります。
一方で、中国の景気悪化を示す報道が相次いでいるほか、中国の若者の間では、「特殊兵式旅行」と呼ばれる"節約"を重視した旅行が流行っています。これらのトレンドが消費単価の数値にどう反映されてくるのか、引き続き注視していくべきでしょう。
中国団体旅行も解禁!インバウンド対策はどう行うべき?
訪日中国人の個人旅行(FIT)がじわじわと戻ってきている中、団体旅行も解禁となり、本格的にインバウンド対策を始める企業が増えています。
ただし、団体ツアーの印象が強い中国ですが、個人での訪日客へのプロモーションも引き続き行っていく必要があります。実はコロナ前(2019年)のデータでは、中国人客のうち団体旅行で訪日した人の割合は27.1%と3割ほどにとどまっており、個人旅行のほうが66.0%と多数派になっているのです。2023年もコロナ前と同様、団体旅行が多数派にはならない可能性が高いといえます。
個人旅行の広がりを背景にニーズは多様化しており、とりわけ旅マエや旅ナカのプロモーションが重要になってきます。
では中国向けのプロモーションに使えるツールは何かというと、他の国・地域と大きく異なるのが特徴的です。例えばソーシャルECアプリ・SNS「RED(小紅書)」、訪日中国人の半数以上に使われている中国最大級の口コミ投稿サイト「大衆点評」、メッセージング・決済などを含む"スーパーアプリ"「WeChat」などがあります。
これらを活用して、多様化するニーズに合わせた戦略的なプロモーションを行っていきましょう。
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<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023年7月推計値)
観光庁:訪日外国人消費動向調査「2023年4~6月期」※1次速報
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