グリーンツーリズムとは、自然豊かな地方都市に滞在し、普段、都市部では体験できないその地域の自然や文化を楽しむ旅行のことをいいます。地域活性化や移住者獲得につながるなどを理由に、すでにグリーンツーリズム施策を実施する自治体もあります。
この記事ではグリーンツーリズムについて簡単に解説するとともに、グリーンツーリズムのメリットや国内・海外における事例などを紹介します。
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1. 【簡単に解説】グリーンツーリズムとは?
グリーンツーリズムとは自然豊かな地方都市に滞在するだけでなく、普段、都市部では体験できないその地域の自然や文化を楽しむ旅行のことをいいます。単に自然を観光して見て回るだけでなく、“体験型"なのが特徴です。また、その地域ならではの食材や特産品を味わったり、地元の方々と交流を深められたりする点もグリーンツーリズムの魅力です。
長期のバカンスを満喫することが一般化しているヨーロッパ諸国でスタートした旅行の楽しみ方のひとつで、日本でもグリーンツーリズムの振興を支援するため、農林水産省が1994年に「農山漁村余暇法(略称)」を制定しました。
これまで何度か改正され、農林漁業者だけでなくホテルや旅館など、一般の宿泊施設でも農家民宿の登録ができるように緩和されるなどしています。
参照:農山漁村余暇法
「アグリツーリズム」「エコツーリズム」との違い
グリーンツーリズムと混同しやすいものに「アグリツーリズム」と「エコツーリズム」があります。アグリツーリズムはグリーンツーリズムのひとつと考えられていて、アグリツーリズムのアグリは“農業”を意味する「アグリカルチャー」が語源です。滞在型の旅行を楽しむ点はどちらも同じですが、なかでも農業体験に特化した旅行をアグリツーリズムと呼びます。
同じく観光形態のひとつであるエコツーリズムとグリーンツーリズムとでは、目的自体が異なります。エコツーリズムは自然環境の保護を目的としている一方で、グリーンツーリズムは自然や文化を通じた地方都市の活性化や、都市部にはない自然や地元の食材を味わうなどの機会を体験することを目的としています。
2. グリーンツーリズムのメリット
ここ数年、大きな盛り上がりを見せているグリーンツーリズム。どんなメリットがあるのでしょうか。地方都市と観光客のふたつの側面から紹介します。
2-1. 地方都市へのメリット
グリーンツーリズムが普及することで、農村地域の事業者だけでなく、住民にとっても大きなメリットがあります。
まずは、観光資源が乏しい農村地域においても、観光客が訪れるきっかけ作りができる点が大きなメリットです。また、訪れた観光客に対して農作業体験をしてもらったり、地元の新鮮な食材を使った食事を楽しんでもらったりすることで、地域活性化につながる効果も期待できます。なかには、その地域のファンになり都市部から移住してくれる人もいれば、文化継承の担い手になってくれる人もいるかもしれません。
グリーンツーリズムで多くの観光客を集めることで事業者にとっては経営の安定化はもちろん、所得の向上にもつながって生活が豊かになるでしょう。その資金を元手に新たな事業スタートしたり、新たな雇用を創出したりすることにもつながります。
地元の魅力を見つめ直すことで、地域住民にとっては地域の価値を再発見する機会につながることも。グリーンツーリズムはその地域の事業者はもちろん、住民にとっても大きな魅力が潜んでいます。
2-2. 観光客へのメリット
グリーンツーリズムは、旅行の楽しみ方のひとつとして新たな選択肢になりえる施策です。都市部に住む観光客にとっては非日常を味わい、心身をリフレッシュできる絶好の機会になるでしょう。
外国人観光客のなかには、都市部の観光地だけでなく地方都市に滞在する、いわゆる「国際グリーンツーリズム」を求める訪日観光客も少なくありません。都市部を訪れただけでは味わえない日本の歴史や文化などに触れられるのは、外国人観光客にとっても大きなメリットになります。
3. 【日本】グリーンツーリズムの事例5選
グリーンツーリズムに対して理解を深めるために、すでに実施している都道府県の事例を紹介します。
3-1. 群馬県の事例
首都圏から車で1時間の距離にある利点を活かし、とくに都心部の人に向けた農業・農村体験を提供する「ぐんまグリーン・ツーリズム」を実施しています。
フルーツ狩りやうどん・そば打ちはもちろん、工芸・クラフト体験などのプログラムも用意。世界遺産である「富岡製糸場」を含めたグリーンツーリズムプランを提案している点も特徴といえるでしょう。
3-2. 埼玉県の事例
埼玉県では、イチゴやブルーベリー、梨、ぶどつ、みかんなど、1年を通して楽しめるフルーツ狩りをメインにプログラムを用意しています。
また、田植えや稲刈り体験などの農業体験のほか、陶芸教室や手焼き和紙づくりなどもあり。多岐にわたる体験ができるのも埼玉県のグリーンツーリズム、通称「グリツリ埼玉」の特徴です。
3-3. 愛媛県の事例
海と山と川。自然豊かな愛媛県では、みかん狩りをはじめとしたさまざまな“田舎体験”のほか、あらかじめ12のモデルコースを用意。「西伊予の歴史とものづくりについて知る女子旅コース」や「西条わくわく親子ふれあい体験コース」など、さまざまなニーズを満たしてくれるコースがラインナップしています。
また、サイトの使いやすさも愛媛県の特徴のひとつ。「エリア」と「季節」「テーマ」「施設」の4項目に分かれていて、それぞれ希望の項目にチェックを入れると条件を満たす“田舎体験”がリストアップされます。その地域のことを知らない観光客にとっては、探しやすさも滞在先を決定する際の要素のひとつになるかもしれません。
3-4. 新潟県の事例
米どころの強みを活かした田植え体験はもちろん、豪雪地帯の特色を活かしたスノーシュー体験・スキー教室など、新潟県ならではのプログラムを多数用意しています。
InstagramやYouTubeを積極的に活用して若い層にアプローチを図っている点も新潟県のグリーンツーリズムの特徴のひとつ。SNSを活用したマーケティングは大いに参考になりそうです。
3-5. 秋田県の事例
秋田県ではきりたんぽづくり体験や曲げわっぱづくり体験などの体験メニューのほか、農家民宿をネットワーク化し、観光客を総合的にサポートする体制を構築。個人やグループはもちろん、教育旅行などといった団体も積極的に受け入れているのが特徴です。
秋田県でもFacebookやInstagram、YouTubeなどといった SNSを駆使したマーケティングを実施。グリーンツーリズムの盛り上がりを見せる地方都市とは反対に、都市部での認知度の低さが課題になっています。グリーンツーリズムを推進するうえでSNSは必要不可欠なツールとなるでしょう。
4. 【海外】グリーンツーリズムの事例2選
日本国内だけでなく、海外の事例も参考にしたいところ。ここではドイツ・バイエルンと、タイ・チェンマイの2つの事例を紹介します。
4-1. ドイツ・バイエルンの事例
長期休暇が一般的なヨーロッパ。なかでもドイツには6週間にもおよぶ夏休みや、2週間のクリスマス休暇など、1年を通してさまざまな長期があります。さらに、正規雇用の社会人には平均30日の年次有給休暇が与えられるだけでなく、1年間に3週間連続の休暇を取る必要があるなど、長期休暇が多い国としても知られています。
一度に大量の観光客が押し寄せることで、観光地が混雑するだけでなく、環境汚染の問題に直面したそうです。そこで観光地を避けて余暇を過ごすグリーンツーリズムがトレンドになりました。
なかでもドイツ南部に位置するバイエルン州では、農村の景観をキープしながら旅行を満喫できるプランを打ち出し、観光業を大いに発展させてきました。民宿はもちろん、レストラン、ヨットレンタルなどさまざまなプログラムをラインナップするなど、国内外から多くの観光客が訪れるようになったそうです。
4-2. タイ・チェンマイの事例
自然が多い地域として知られるタイのチェンマイ。政府官公庁によって推奨されるほどグリーンツーリズムが積極的に実施されています。
米やコーヒー豆の収穫体験はもちろん、ジャングルのなかを川下りしながら自然を満喫するプログラムもラインナップ。また、徒歩や自転車を活用したプログラムを用意するなど、ツアー中に出るゴミや環境汚染を極力減らすなどの対策が行われているのも特徴のひとつです。
5. まとめ
地域活性化はもちろん、都市部からの移住者獲得や文化継承の担い手不足解消にも効果を発揮するグリーンツーリズム。インバウンドを含めた観光客にとっても、普段は味わえない体験ができると好評を得ています。
観光資源が豊富にある自治体はもちろん、そうでない自治体にとっても有益な施策になるのではないでしょうか。
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