グリーンツーリズムとは、自然豊かな地方都市に滞在し、普段、都市部では体験できないその地域の自然や文化を楽しむ旅行のことをいいます。地域活性化や移住者獲得につながるなどを理由に、すでにグリーンツーリズム施策を実施する自治体もあります。
この記事ではグリーンツーリズムについて簡単に解説するとともに、グリーンツーリズムのメリットや国内・海外における事例などを紹介します。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
1. 【簡単に解説】グリーンツーリズムとは?
グリーンツーリズムとは自然豊かな地方都市に滞在するだけでなく、普段、都市部では体験できないその地域の自然や文化を楽しむ旅行のことをいいます。単に自然を観光して見て回るだけでなく、“体験型"なのが特徴です。また、その地域ならではの食材や特産品を味わったり、地元の方々と交流を深められたりする点もグリーンツーリズムの魅力です。
長期のバカンスを満喫することが一般化しているヨーロッパ諸国でスタートした旅行の楽しみ方のひとつで、日本でもグリーンツーリズムの振興を支援するため、農林水産省が1994年に「農山漁村余暇法(略称)」を制定しました。
これまで何度か改正され、農林漁業者だけでなくホテルや旅館など、一般の宿泊施設でも農家民宿の登録ができるように緩和されるなどしています。
参照:農山漁村余暇法
「アグリツーリズム」「エコツーリズム」との違い
グリーンツーリズムと混同しやすいものに「アグリツーリズム」と「エコツーリズム」があります。アグリツーリズムはグリーンツーリズムのひとつと考えられていて、アグリツーリズムのアグリは“農業”を意味する「アグリカルチャー」が語源です。滞在型の旅行を楽しむ点はどちらも同じですが、なかでも農業体験に特化した旅行をアグリツーリズムと呼びます。
同じく観光形態のひとつであるエコツーリズムとグリーンツーリズムとでは、目的自体が異なります。エコツーリズムは自然環境の保護を目的としている一方で、グリーンツーリズムは自然や文化を通じた地方都市の活性化や、都市部にはない自然や地元の食材を味わうなどの機会を体験することを目的としています。
2. グリーンツーリズムのメリット
ここ数年、大きな盛り上がりを見せているグリーンツーリズム。どんなメリットがあるのでしょうか。地方都市と観光客のふたつの側面から紹介します。
2-1. 地方都市へのメリット
グリーンツーリズムが普及することで、農村地域の事業者だけでなく、住民にとっても大きなメリットがあります。
まずは、観光資源が乏しい農村地域においても、観光客が訪れるきっかけ作りができる点が大きなメリットです。また、訪れた観光客に対して農作業体験をしてもらったり、地元の新鮮な食材を使った食事を楽しんでもらったりすることで、地域活性化につながる効果も期待できます。なかには、その地域のファンになり都市部から移住してくれる人もいれば、文化継承の担い手になってくれる人もいるかもしれません。
グリーンツーリズムで多くの観光客を集めることで事業者にとっては経営の安定化はもちろん、所得の向上にもつながって生活が豊かになるでしょう。その資金を元手に新たな事業スタートしたり、新たな雇用を創出したりすることにもつながります。
地元の魅力を見つめ直すことで、地域住民にとっては地域の価値を再発見する機会につながることも。グリーンツーリズムはその地域の事業者はもちろん、住民にとっても大きな魅力が潜んでいます。
2-2. 観光客へのメリット
グリーンツーリズムは、旅行の楽しみ方のひとつとして新たな選択肢になりえる施策です。都市部に住む観光客にとっては非日常を味わい、心身をリフレッシュできる絶好の機会になるでしょう。
外国人観光客のなかには、都市部の観光地だけでなく地方都市に滞在する、いわゆる「国際グリーンツーリズム」を求める訪日観光客も少なくありません。都市部を訪れただけでは味わえない日本の歴史や文化などに触れられるのは、外国人観光客にとっても大きなメリットになります。
3. 【日本】グリーンツーリズムの事例5選
グリーンツーリズムに対して理解を深めるために、すでに実施している都道府県の事例を紹介します。
3-1. 群馬県の事例
首都圏から車で1時間の距離にある利点を活かし、とくに都心部の人に向けた農業・農村体験を提供する「ぐんまグリーン・ツーリズム」を実施しています。
フルーツ狩りやうどん・そば打ちはもちろん、工芸・クラフト体験などのプログラムも用意。世界遺産である「富岡製糸場」を含めたグリーンツーリズムプランを提案している点も特徴といえるでしょう。
3-2. 埼玉県の事例
埼玉県では、イチゴやブルーベリー、梨、ぶどつ、みかんなど、1年を通して楽しめるフルーツ狩りをメインにプログラムを用意しています。
また、田植えや稲刈り体験などの農業体験のほか、陶芸教室や手焼き和紙づくりなどもあり。多岐にわたる体験ができるのも埼玉県のグリーンツーリズム、通称「グリツリ埼玉」の特徴です。
3-3. 愛媛県の事例
海と山と川。自然豊かな愛媛県では、みかん狩りをはじめとしたさまざまな“田舎体験”のほか、あらかじめ12のモデルコースを用意。「西伊予の歴史とものづくりについて知る女子旅コース」や「西条わくわく親子ふれあい体験コース」など、さまざまなニーズを満たしてくれるコースがラインナップしています。
また、サイトの使いやすさも愛媛県の特徴のひとつ。「エリア」と「季節」「テーマ」「施設」の4項目に分かれていて、それぞれ希望の項目にチェックを入れると条件を満たす“田舎体験”がリストアップされます。その地域のことを知らない観光客にとっては、探しやすさも滞在先を決定する際の要素のひとつになるかもしれません。
3-4. 新潟県の事例
米どころの強みを活かした田植え体験はもちろん、豪雪地帯の特色を活かしたスノーシュー体験・スキー教室など、新潟県ならではのプログラムを多数用意しています。
InstagramやYouTubeを積極的に活用して若い層にアプローチを図っている点も新潟県のグリーンツーリズムの特徴のひとつ。SNSを活用したマーケティングは大いに参考になりそうです。
3-5. 秋田県の事例
秋田県ではきりたんぽづくり体験や曲げわっぱづくり体験などの体験メニューのほか、農家民宿をネットワーク化し、観光客を総合的にサポートする体制を構築。個人やグループはもちろん、教育旅行などといった団体も積極的に受け入れているのが特徴です。
秋田県でもFacebookやInstagram、YouTubeなどといった SNSを駆使したマーケティングを実施。グリーンツーリズムの盛り上がりを見せる地方都市とは反対に、都市部での認知度の低さが課題になっています。グリーンツーリズムを推進するうえでSNSは必要不可欠なツールとなるでしょう。
4. 【海外】グリーンツーリズムの事例2選
日本国内だけでなく、海外の事例も参考にしたいところ。ここではドイツ・バイエルンと、タイ・チェンマイの2つの事例を紹介します。
4-1. ドイツ・バイエルンの事例
長期休暇が一般的なヨーロッパ。なかでもドイツには6週間にもおよぶ夏休みや、2週間のクリスマス休暇など、1年を通してさまざまな長期があります。さらに、正規雇用の社会人には平均30日の年次有給休暇が与えられるだけでなく、1年間に3週間連続の休暇を取る必要があるなど、長期休暇が多い国としても知られています。
一度に大量の観光客が押し寄せることで、観光地が混雑するだけでなく、環境汚染の問題に直面したそうです。そこで観光地を避けて余暇を過ごすグリーンツーリズムがトレンドになりました。
なかでもドイツ南部に位置するバイエルン州では、農村の景観をキープしながら旅行を満喫できるプランを打ち出し、観光業を大いに発展させてきました。民宿はもちろん、レストラン、ヨットレンタルなどさまざまなプログラムをラインナップするなど、国内外から多くの観光客が訪れるようになったそうです。
4-2. タイ・チェンマイの事例
自然が多い地域として知られるタイのチェンマイ。政府官公庁によって推奨されるほどグリーンツーリズムが積極的に実施されています。
米やコーヒー豆の収穫体験はもちろん、ジャングルのなかを川下りしながら自然を満喫するプログラムもラインナップ。また、徒歩や自転車を活用したプログラムを用意するなど、ツアー中に出るゴミや環境汚染を極力減らすなどの対策が行われているのも特徴のひとつです。
5. まとめ
地域活性化はもちろん、都市部からの移住者獲得や文化継承の担い手不足解消にも効果を発揮するグリーンツーリズム。インバウンドを含めた観光客にとっても、普段は味わえない体験ができると好評を得ています。
観光資源が豊富にある自治体はもちろん、そうでない自治体にとっても有益な施策になるのではないでしょうか。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
【7/16開催】【Next Food Vision 2025】食の最新トレンドを発信〜大型オンラインイベント〜※好評につき再放送※
外食店舗、支援サービス、業界のトップ企業が集結!
さらに、有名飲食店や外食産業を牽引する企業による特別基調講演も開催。
成功企業のリアルな戦略や、これからの外食業界を生き抜くヒントがここに詰まっています!
最新のトレンドを知り、トップ企業の成功ノウハウを学びたい方、
業界の最前線で活躍する企業とつながり、新たなビジネスチャンスを掴みたい方にぴったりのイベントです。
今こそ、業界の未来を共に創る一歩を踏み出しませんか?
皆さまのご参加をお待ちしております!
<応募者特典>
-
イベント登壇企業の各種お役立ち資料
※口コミアカデミー内でのアーカイブ配信は予定しておりません -
本イベントのアーカイブ動画(1週間)
<本セミナーのポイント>
- 有名飲食店&業界をけん引する企業の基調講演 - 成功企業の戦略や実例を直接学べる貴重な機会!
- 外食業界の最新トレンド&成功ノウハウが手に入る - 変化の激しい市場で勝ち残るための最前線情報をキャッチ!
- 外食業界を支える最新サービス&ソリューションの紹介 - 飲食業界の課題解決につながるアイデアが満載!
- トップ経営者や専門家が語る「成長の秘訣」と「業界の未来」
- 業界をリードする企業が実践するプロモーション戦略やDX事例を公開!
- 効率化や売上向上につながる最新ツール・サービスを知るチャンス
詳しくはこちらをご覧ください。
→【Next Food Vision 2025】食の最新トレンドを発信〜大型オンラインイベント〜※好評につき再放送※【7/16開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!