正確には「中秋節」の祝日と合体してできた連休で、中秋節は9月29日、国慶節が10月1日です。連休自体は9月29日から10月6日までの8連休と、かなり長い期間になっています。
例年国慶節の時期は、中国の旧正月である春節と並び、中国からの訪日旅行のハイシーズン。当初はインバウンドへの影響が心配された福島第一原発の処理水問題も、最初の海洋放出から1か月が経ち、落ち着いてきた様相です。
今回は、中国国内の旅行予約動向や処理水問題、航空便の運航状況などを踏まえ、国慶節の中国インバウンド動向を予想していきます。
関連記事:中国大型連休「国慶節・中秋節」はいつ?
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
中国の中秋節・国慶節連休スタート:海外旅行は前年同期比20倍近く増加
今日から中国の中秋節・国慶節連休がスタートしました。2023年の中秋節は9月29日、国慶節が10月1日で、連休自体は9月29日〜10月6日の8連休です。
国慶節は春節と並んで最大の旅行シーズンの一つであり、今年の国慶節も大きな盛り上がりが予想されています。中国では、期間内に2,100万人あまりが飛行機を利用するという見立てもあり、これはオーストラリア国民全員にも匹敵する数となっています(Bloomberg)。中国旅行需要の規模の大きさを実感する数字です。
さらに中国国内では、期間中の国有鉄道のチケットの販売が累計2億枚を突破したほか、中国南部の地域を管轄する「中国鉄路南昌局集団(南鉄)」では、前年同期比89.7%増の延べ1280万人を輸送する見込みだということです(中国国際放送局)。
また中国の大手旅行予約サイト「Ctrip(携程)」によると、2023年の国慶節連休期間は、中国発の海外旅行の受注が前年同期比20倍近くに増加したといいます(Ctrip参照)。海外旅行が原則自由化されて最初の大型連休となり、需要が爆発的に高まっていることがわかります。
訪日需要の見込みは?人気旅行先1位に「日本」も、航空便はコロナ前比13%にとどまる
中国の検索エンジン「百度」の地図サービス「百度地図」は、26日に「2023年国慶節休暇旅行予測レポート」を発表しました(百度地図参照)。これによると、国慶節連休期間の人気海外旅行先1位は日本となっています。続いてタイ、韓国、マレーシア、シンガポールという結果です。
ただし、このデータの算出方法は「ビッグデータマイニング」と書かれており、明確にはなっていません。旅行商品の提供会社によるデータも使われてはいるようですが、「百度地図」が地図検索サービスであることを踏まえると、日本の旅行予約が増えたというよりは「訪日旅行について検索した数が増えた」と認識しておいたほうがよいかもしれません。
処理水問題もあることから、良い意味でも悪い意味でも検索需要は高まっているものと考えられます。
一方、前出のCtripの発表は、実際の旅行商品予約をもとに算出しているデータですが、人気海外旅行先としてタイ、韓国、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、イギリスが挙げられており、日本は入っていません。
調査元によって訪日需要の見立てが異なるようですが、実際はどうなるのでしょうか。
訪日外客統計によると、8月の訪日中国人は36万4,100人で、前月に比べ5万人増加。8月のデータでは処理水問題の影響がすべて見えているわけではないとはいえ、順調に回復してきています。
一方、仮に国慶節期間中に訪日需要が大きく高まったとしても、実は中国=日本間の航空便が、まだ回復途上なのです。2023年夏ダイヤの中国=日本間の航空便数は、コロナ前の2019年同期比で約13%にとどまっています(※国土交通省の航空便データをもとに訪日ラボ算出)。これは4月時点のデータであり、今は多少増えてはいるものの、未だコロナ前の便数には届いていないと思われます。
そのため、日本に行きたくても航空券が高く、予約も取れないという中国人旅行者は多いのではないかと推測できます。
ここまでをまとめます。百度地図のデータを見ると、訪日旅行への注目度が上がっているのは確かです。しかし国慶節期間の段階では、航空便がほとんど戻っていないこともあり、コロナ前水準(月間約70万人)のような大幅な増加には至らない、と考えられます。
中国人観光客にはタイが人気
では、中国人旅行者が日本に大挙して押し寄せるわけではないとすれば、どの国に流れるのでしょうか。
まず今年の国慶節における中国人の旅行は、そもそも国内が主流との報道があります(ロイター)。確かに中国国有鉄道や中国鉄路南昌局集団(南鉄)の輸送予想が好調であり、海外旅行よりもまずは国内から、という人も多いのかもしれません。
また、先述した調査で上位にランクインしたタイは、9月13日に中国人観光客に対するビザ無料化措置を発表しています。Ctripのデータによると、この発表の後、タイ関連の検索数が800%急増したということです。
さらにタイでは今年の目標を2,500万人としていますが、目標に対しては未達ペースとのことで、プロモーションを強化している段階と考えられます。これらを踏まえると、今年の国慶節連休中の海外旅行では、タイに流れる中国人客も多そうです。
関連記事:
処理水問題の影響は?
訪日需要に話を戻すと、処理水問題による中国インバウンドへの影響については、当初心配されていたほどではなさそうです。
中国版X(Twitter)と言われる「Weibo」では、8月当時ニュースの人気ランキングに処理水関連の話題が入っていましたが、現在は入らなくなっています。この話題への関心度合いは、ある程度落ち着きを見せているといってよいでしょう。また、観光庁長官が9月27日に行った記者会見では、「現時点では(処理水による)影響は限定的とみている」としています。
訪日を避ける人も一定数いると想定されるものの、中国人観光客が全く来なくなるわけではないと考えられます。
ただし、国慶節期間中に2回目の処理水放出を控えていることには注意が必要です。28日には、2回目の放出の日程が10月5日に決定したことが発表されました。これを受け中国国内で再び反発が大きくなる可能性が考えられ、連休中の訪日需要に影響することも一部懸念されます。今後の動向は引き続き注視しておくべきでしょう。
関連記事:処理水問題、「訪日観光」今後の見通しは?
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
<参照>
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023年8月推計値)
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!