日中韓の交流人口「2030年までに4,000万人」めざす 4年半ぶり開催の日中韓サミットで宣言

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5月27日、第9回日中韓サミットが韓国・ソウルで開催され、岸田文雄首相ら日中韓の首脳が一堂に介しました。2019年12月以来となる3か国会談では、教育、文化、観光、スポーツ、貿易など各分野における連携強化を改めて確認。2025年〜2026年の2年間を「日中韓文化交流年」と設定し、2030年までに3か国間の人的交流人数を4,000万人に増やす目標を定めました。

さまざまな分野で結びつきが深い一方、歴史問題や領土問題など、政治的課題も多い日中韓関係。連携強化により、東アジア全体の活性化が期待されています。本記事では、日中韓のインバウンド状況を踏まえ、日中韓サミットの内容をまとめていきます。

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第9回日中韓サミットの概要

日中韓サミットは、東アジアの三大経済大国である日本、中国、韓国の首脳が一堂に会し、地域の協力と発展について議論する重要な会議です。三か国間の経済協力、文化交流、安全保障など多岐にわたる分野での協力を促進することが目的で、2008年の第1回以降、定期的に開催されています。

2019年12月に開催された第8回以降は、新型コロナウイルスのパンデミックや、処理水問題、徴用工問題などの政治問題により開催が延期。第9回目となる今回のサミットは約4年半ぶりの開催となりました。

2024年5月27日に韓国のソウルで開かれた同サミットには、日本の岸田文雄首相、中国の李強(り・きょう)国務院総理(首相)、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が出席。文化交流の促進のほか、経済協力の深化、知的財産分野での協力強化など、地域の安定と経済成長に向けたさまざまな分野で意見交換が行われました。

2030年までに3か国間の交流人口を4,000万人へ

第9回日中韓サミットでは、文化交流と観光の分野についても多くの議論が交わされました。

特に「人的交流」を重要な柱のひとつとして捉え、2025年〜2026年の2年間を「日中韓文化交流年」と位置づけることで一致。「日中韓の未来に向けた相互理解と信頼を育む礎」として、若者を中心とした人的交流を促進し、相互理解と信頼を深めることを目的としています​。

観光に関しては、日中韓3か国間の交流人口を2030年までに4,000万人に増やす目標が掲げられました。観光業を通じた経済的なつながりを強化し、東アジア地域全体の発展を目指していきます。

また、大阪・関西万博(2025年開催)も議題に上がり、3か国の協力による成功に向けた取り組みを強調。デジタルコンテンツ分野における協力も推進され、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などの文化コンテンツの共同発展を目指す計画も示されました。

これらの取り組みは、文化交流と観光を通じた深い協力関係の構築を目指したもので、日中韓の相互理解と経済発展に大きく寄与することが期待されています。

<参照>

外務省:第9回日中韓サミット
第 9 回日中韓サミット共同宣言

日中韓のインバウンド・アウトバウンド需要状況

次に日本と中国、韓国のインバウンド需要の状況についてまとめます。

インバウンド・アウトバウンドの現状:韓国

韓国からの訪日旅行者の現状

2024年4月の訪日韓国人の数は66万1,200人でした。 国・地域別で最も多く、前年同月比41.6%増と高い伸び率を記録しています。2019年と比較しても16.7%増の伸び率となっており、コロナ禍で落ち込んだ需要は完全に復活したと言えるでしょう。

旅行消費額については、2024年1Q(1〜3月)における訪日韓国人の総額は2,379億円。これは外国人旅行消費額全体の13.6%を占めており、中国、台湾に次いで3番目に多い数字です。

訪日韓国人の旅行スタイルとして、他国からの旅行者と比べ滞在日数が短い傾向にあります。平均滞在日数は2.9日(2019年)で、リピーターが多い点も特徴のひとつです。韓国から日本への航空便増便も需要回復の後押しになっていて、2024年夏ダイヤ(2024年3月31日〜10月26日)では、コロナ禍前と比べて56%増と高い伸び率を記録しています。

日本からの訪韓旅行者の現状

韓国観光公社によると、2024年4月に日本から韓国を訪れた旅行者は約22万9,000人。中国の41万1,000人に次いで2番目に多く、2019年同月比で約8割まで回復しています。また、1〜4月の累計では日本からの旅行者は約90万人でした。

インバウンド・アウトバウンドの現状:中国

中国からの訪日旅行者の現状

2024年4月の訪日中国人の数は53万3,600人を記録。前年同月比で392.7%増と高い伸び率を記録し、韓国に次いで2番目に多い数字となっています。2019年比では26.5%減と完全復活とは言えないまでも、遅れていた需要回復がようやく2024年から始まった様子です。

観光消費額については、2024年1Qの訪日中国人の観光消費額は3,526億円。これは全体の20.1%を占め、国・地域別で最も多い金額です。訪日客数では韓国に首位を譲りましたが、消費額では1位に返り咲いた中国。現在日本を訪れる中国人観光客は、比較的、富裕層が多いと見られ、今後の需要回復に期待が高まっています。

中国と日本間の航空便数については、2024年夏ダイヤは2019年比で62%にとどまっています。増便傾向ではあるものの完全回復にはまだ時間がかかりそうです。

日本からの訪中旅行者の現状

日本からの訪中旅行者は、2019年年間で267万6,334人を記録したもののコロナ禍以降は需要が激減。2020年以降、日本人のビザ取得が義務化された影響もあり、個人旅行者は伸び悩み、日本の大手旅行会社は中国のパッケージツアーを中止したままです。

国際線の便数は増便傾向にはあるものの、便数の完全回復には至っていないこともあり、日本からの訪中需要回復はまだ先と言えます。

<参照>

訪日旅行誘致ハンドブック 2022 JNTO 訪日旅行誘致ハンドブック 2022
訪日ラボ:国際線就航状況、コロナ前比「93%」に回復:国別1位は「韓国」【航空便動向まとめ】

交流促進においては課題も

日中韓サミットでは「人的交流の促進」が3か国間協力の重要な柱とされました。需要回復の速度にはばらつきはあるものの、中国・韓国からのインバウンド需要は、概ね回復傾向にあります。

しかし今後は、政治的問題などが旅行需要に大きな影響をおよぼす可能性もあります。実際、2019年には日韓関係の悪化から訪日旅行者が半減した「コリア・ショック」も起こりました。今も日韓の間では「徴用工問題」「竹島問題」などの問題がありますが、尹大統領が比較的親日的であることや、日本ではK-POPや韓国コスメ、韓国では日本のアニメやポップカルチャーが人気であることなどを背景に、比較的両国間の関係は改善してきているとされています。

一方日中関係は、2022年12月末に日本側が対中国の水際措置を強化したことに対抗し、中国側が日本人向けのビザ発給を停止したり、2023年8月に東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出が発表となった際、中国側が「無責任な行為」と猛反発したりと、度々悪化する状況もみられます。また、台湾との関係をめぐっては、圧力を強める中国側に対し、独立を主張する台湾は対日関係を重視する姿勢をみせており、引き続き緊張関係が続いています。

このほかにも、歴史や領土をめぐる問題など、三国間にはさまざまな外交問題が山積しています。文化、経済面はもちろん、安全保障の分野においても相互に重要な存在であることから、人的交流をひとつのきっかけに、国家間の信頼関係構築を進めていくことが目指されています。

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<参照>

外務省:竹島

訪日ラボ:韓国と日本の関係は?インバウンドデータや貿易・文化交流、両国関係の改善傾向までわかりやすく解説

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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