2024年、日本を訪れる外国人観光客はすでにコロナ前水準を超えており、日本政府観光局(JNTO)によると、3月から6月にかけて毎月300万人以上が訪日していることが明らかとなりました。
しかし、観光客が訪れる地域は大都市圏に集中する傾向にあり、観光庁の宿泊旅行統計調査によると、三大都市圏への宿泊比率は72.1%と高い数値を示しています。観光客が特定の地域に一極集中する状況は、オーバーツーリズムや地方部での消費額減少の要因となり得るため、地方誘客による観光客の分散化が求められています。
本シリーズでは、地方誘客を達成する上で重要な訪日観光客の周遊実態を、じゃらんリサーチセンター提供のデータを基に解説します。
第2回では、埼玉県における外国人観光客の周遊実態を見ていきます。
※本記事では、2024年7月に行われたじゃらんリサーチセンター主催「じゃらん観光振興セミナー」にて公開されたデータを使用しています。
- じゃらんリサーチセンターはこちら
-
関連データ:じゃらん インバウンドターゲットアンケート調査
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
埼玉県における訪日観光客の周遊実態
首都圏内での周遊が人気
まず、埼玉県を含めた訪日観光客の周遊ルートに着目します。調査対象となった全市場において、埼玉県・千葉県・東京都の周遊ルートが最も人気となっています。

しかし、観光庁の宿泊旅行統計によると、首都圏の他の都県と比較して埼玉県の外国人延べ宿泊者数は0.3%と低くなっています。周遊ルートの中に入ってはいるものの、宿泊して滞在する観光客は比較的少ない状況にあると推察されます。
この状況に対し埼玉県内では、川越における民間の取り組みなどを中心に、訪日プロモーションや地域の観光コンテンツに磨きをかけることで訪日観光客の誘客促進を図る取り組みが進んでいます。
なお、訪問前後の周遊先には、首都圏(東京都・千葉県・神奈川県)と北関東圏(群馬県)が含まれる傾向にあります。
そのまま通過される場合が多いが、隠れ滞在拠点となっている市場も
次に、同調査のエリアルート戦略タイプ(都道府県における訪日観光客の利用状況を、市場別に9タイプへと分類したもの)から、本調査対象の10市場の訪日観光客が埼玉県をどのように利用しているかを見ていきます。
埼玉県の戦略タイプは、5市場(イギリス・フランス・オーストラリア・台湾・シンガポール)において「新幹線立ち寄り伸びしろタイプ」と分類されました。この5市場の観光客は他タイプよりも平均泊数と消費単価が低く、現状は立ち寄らず通過されてしまっている状況にあるといえます。
しかし、埼玉県は県内の新幹線駅数が全国平均よりも多く、近隣地域から誘客できるポテンシャルを秘めています。
その他の市場も見てみましょう。
まず、アメリカは「地方ゲートウェイ拠点タイプ」と分類されています。他タイプと比較して、訪問率は低めであるものの、平均泊数と消費単価がやや高くなっていることから、地方郡へ足を運ぶための滞在拠点として使われている可能性があります。
次に台湾・香港は、「周遊+消費獲得タイプ」と分類されています。平均泊数と消費単価がやや高くなっており、複数の観光スポットで周遊に繋げられていると考えられます。
韓国は、「ロングステイ+穴場立地タイプ」と分類されており、平均泊数と消費単価が高くなっています。複数の新幹線が通る隠れ好立地であり、一定数の長期滞在者が存在していると推察されます。
調査概要
- 調査主体:じゃらんリサーチセンター
- 調査対象市場:アメリカ・イギリス・フランス・オーストラリア・韓国・中国・台湾・香港・タイ・シンガポール
- 調査期間:2022年10月1日~2023年12月31日
- 調査対象メディア:各種SNS・各国のブログ・フォーラム・掲示板など
- 調査内容
- 周遊ルート:デジタル観光統計の宿泊ログをベースに、日本旅程日数3日以上20日以内、都道府県ごとの組み合わせ数3以上で県庁所在地をつないでランキング化
- 訪問前後の周遊先:デジタル観光統計より、自地域を起点に前後で宿泊している都道府県のトップ3を選出
- エリアルート戦略タイプ:調査対象市場の「空海港利用人数」「新幹線駅数」「平均泊数」「延べ宿泊者数」「消費単価」「訪問率」を指標とし、クラスター分析を行い分類
以上、埼玉県における訪日観光客の動向を解説しました。
訪日ラボでは、他にも訪日観光客・インバウンドに関する埼玉県の記事を掲載しています。
詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
<関連記事>
【首都圏編】シリーズ「観光振興計画を読む」第1弾 インバウンド分野の基本方針や具体的な取り組みとは
埼玉県で外国人に人気の観光スポット!2位は鉄道博物館、1位は?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
▼この連載の記事
- 【東京編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【埼玉編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【千葉編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【神奈川編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【群馬編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【栃木編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【茨城編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【長野編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【新潟編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
- 【山梨編】インバウンド どこから来て、どこへ行く?訪日客の周遊実態調査
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
<参照>
財務省関東財務局総務部経済調査課:【経済調査レポート】埼玉県における外国人観光客の現状と誘客促進にかかる取組について
日本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2024年6月推計値)
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
→「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!