ベジタリアンやヴィーガンは精進料理を食べられる?避けるべき食材や訪日客への注意点も

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日本食を楽しむことを目的に日本旅行に訪れる外国人観光客はたくさんいる一方で、宗教や文化、思想により食習慣が異なり、日本の常識が通用しないことも珍しくありません。そこで重要なのが「食のインバウンド対応」です。それぞれの宗教や文化に適した受け入れ環境を構築し、インバウンド需要に応えて売上を伸ばしたいところです。

たとえば仏教に起源を持つ「精進料理」は菜食を中心とした食事であるため、肉食を拒むインバウンド観光客でも楽しめる日本食として知られています。

本記事では、「精進料理」について解説するとともに、ベジタリアンヴィーガンなど他の食習慣との違いや配慮すべきポイントを紹介します。

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食のインバウンド対応の重要性

2022年10月に水際対策が緩和されて以降、インバウンド客は急激に増加中です。2024年9月までの累計訪日客数はすでに2023年年間累計値を超えており、このままいけば2019年を超えて過去最高となると予測されています。

ところが、現場でのインバウンド対応は遅れているのが現状です。飲食店向けの顧客管理システムを提供するTableCheckが実施した「飲食店インバウンド対策に関する意識調査」によれば、7割以上の飲食店インバウンド対策を「未実施」であると回答しました。また同調査によると、日本人の予約数はコロナ前の7割にとどまっている一方、訪日客の予約はコロナ禍以前の2.3倍に増加しており、飲食店においても大きな需要があることを示しています。

インバウンド需要を見越して、多様な食文化への配慮や多言語化など、受け入れ環境整備の強化が求められています。

関連記事:飲食店のインバウンド対策、7割以上が未実施 需要はコロナ前の2倍以上に

精進料理とは

昨今、ベジタリアンヴィーガンも食べられる日本食として注目を集めている「精進料理」について解説します。

精進料理=仏教の戒律にのっとった食事

精進料理とは、仏教の戒律を守る修行僧の食事として生まれた料理で、肉や魚など動物性の食材を避け、植物性の食材のみで作ります。使用するおもな食材は野菜、穀物、海藻、豆、木の実、果物などです。

「殺生(=生き物を殺すこと)」は仏教で厳しく戒められる罪のひとつで、「煩悩(=心身を乱し悩ませる心の作用)」を呼び起こすとされています。殺生をせずに植物性の材料で作られた食事を摂ることで、煩悩を避け、精神を修行するという発想から精進料理が生まれました。

精進料理で避けられる「五葷(ごくん)」とは

五葷(ごくん)とは、においの強い野菜を指します。具体的にはニラ、ニンニク、らっきょう、玉ネギ、長ネギなどネギ科の野菜が該当します。一部の仏教徒やベジタリアンに加え、台湾に多い「オリエンタルヴィーガン」と呼ばれる人々は、宗教上の理由で五葷を避ける傾向にあります。

農林水産省が発行する「飲食事業者のためのインバウンド対応ガイドブック」には、「何を五葷と定めるかは時代や地域によって異なる」と記載があり、たとえばミョウガの取り扱いを当事者の判断に委ねたエピソードも掲載されています。

精進料理では動物性の食材だけでなく、五葷に該当する野菜も使いません。五葷が持つ刺激的な風味は、「殺生」と同様、心を乱し「煩悩」へつながると考えられているからです。

関連記事:五葷(ごくん)とは?台湾に多い「オリエンタルヴィーガン」が五葷を避ける理由、対応するための3ステップを解説

精進料理でアルコールはOK?NG?

精進料理をつくるときに、酒やみりんも基本的に使用しません。仏教の教えでは、酒も煩悩を呼び起こすもののひとつとされ、仏道修行するうえで避けるべきとされてきました。なかには酒の持ち込みを禁忌とする寺院もあります。

ただし、表向きは飲酒を避けるべきものとしている一方で、精進料理を食べる場での飲酒については現状タブーとはみなされず、個人の判断に委ねられるのが主流です。精進料理をふるまう飲食店では、アルコールメニューがあり自由に注文できる場合もあります。

また「般若湯」や「御神酒(おみき)」など、例外的に酒を嗜む場合もあります。理性を保てる範囲内で節度を持って楽しむ飲酒は、厳密には禁止されていないのが実態です。

精進料理がインバウンド客から注目されている理由

動物性の食材やにおいの強い五葷を避けてつくられる精進料理は、多様な文化的背景を持つ外国人観光客に受け入れられやすい日本食のひとつといえます。

では、なぜ精進料理がインバウンド客から注目されているのでしょうか。その理由を考えていきます。

1. 日本食を楽しみに訪日しているから

観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向(2023年)」によれば、インバウンド客が「訪日前に期待していたこと」として「日本食を食べること」が最多の83.2%でした。

▲訪日前に期待していたこととして「日本食を食べること」が83.2%と1位(観光庁:訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析(https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001742979.pdf)2023年年次報告書 24頁より抜粋)

また、訪日客のニーズが「モノ消費」から「コト消費」に移り変わっていて、実際に日本を訪れて本場の日本料理を楽しむ「体験」という意味でも、多くのインバウンド客が期待しているようです。

日本旅行での食事体験を楽しみにしている外国人が多くいる一方で、宗教的・文化的な理由で食事が制限されている人も多くいます。しかし精進料理であれば、食事制限のニーズを満たしながら日本食を楽しんでもらえる可能性を秘めています。

関連記事:

2. ベジタリアンやヴィーガンでも食べられることが多いから:ただし動物性の出汁や調味料には注意

精進料理は動物性食材だけでなく、五葷に該当する代表的な野菜を使いません。ベジタリアンはもちろん、食事上の制限範囲がもっとも広いと言われているヴィーガンやオリエンタルヴィーガンであっても、ルールどおり作られた精進料理であれば楽しめる可能性が高いといえます。

ただしヴィーガンは、肉や魚、卵、乳製品だけでなく、はちみつや、動物性のものからとれた出汁、動物性の成分を含む調味料も避けます。醤油などの調味料の成分を見ると動物性の素材などが含まれている場合があり、厳密にヴィーガン対応といえるかどうかは慎重に確認が必要です。

精進料理であれば必ずヴィーガン対応であるとは言い切れない点には留意しておきましょう。

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精進料理はさまざまな食文化に対応しやすい日本食のひとつ

菜食を中心とした精進料理は、食事に関するさまざまな禁忌に対しても、比較的配慮しやすい料理です。使用する調味料などを再度確認した上で、多様な食習慣に対応した料理であることを掲げられれば、インバウンド客にも魅力を訴求できるでしょう。

精進料理を通して、日本文化に根ざした仏道について学んでもらうことも、訪日客の満足度を高める貴重な体験になります。精進料理という食文化を活かしたインバウンド対応を検討してみるのもいいかもしれません。

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<参照>
農林水産省:飲食事業者のための インバウンド対応ガイドブック
観光庁:ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド
観光庁:観光立国推進基本計画
一般社団法人 ハラル・ジャパン協会:ハラル(ハラール)基礎知識

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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