万博に向けた各社のインバウンド戦略とは?【中国市場向け「万博+観光」商談会取材・前編】

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いよいよ開催が来月に迫る大阪・関西万博。「万博期間に、どのような情報や旅行商品が求められているのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

こうした状況を受け、日本政府観光局JNTO)は2025年2月、大阪で中国市場向けの訪日旅行商談会を開催。日本の観光事業者と中国旅行会社が一堂に会し、万博をきっかけとした地方への誘客促進について意見を交わしました。

訪日ラボは商談会の参加企業へ取材。前編では、万博を契機としてインバウンド向けにどのようなコンテンツを打ち出すのかなどの戦略について、日本企業側に伺った内容をお届けします。

中国市場向け 大阪・関西万博を契機とした訪日旅行商談会
▲中国市場向け 大阪・関西万博を契機とした訪日旅行商談会の様子:訪日ラボ撮影

後編はこちら:中国旅行会社、大阪・関西万博のプロモーションは「上海万博より遅い印象」今求められる情報発信とは


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JNTO、中国市場を対象に大阪・関西万博を契機とした訪日旅行商談会を開催

JNTOが今回開催した商談会は、中国市場を対象に、大阪・関西万博を契機とした訪日旅行を促進するものです。2025年2月17日(月)14:00~18:00にスイスホテル南海大阪にて開催されました。

日本側からはランドオペレーター宿泊施設観光施設など 約30社、中国側からは訪日旅行商品の造成・送客実績のある旅行会社 約30社が参加しました。

開催の目的

本商談会は、大阪・関西万博をフックに、中国人旅行者を都市部だけでなく、地方にも誘致することを目的としています。

万博開催に伴い、大阪を訪れる中国人旅行者の増加が見込まれる中で、日本側の観光事業者が各地域の魅力を直接伝え、中国旅行会社と協力して実際の旅行商品に落とし込む機会を提供しました。

JNTO 伊与田理事「万博そのものだけでなく、周辺の自然や観光資源をより深く知ってもらいたい」

JNTOの伊与田美歴理事に本商談会の狙いについて伺いました。

「商談会に先立ち、中国旅行会社に向けて瀬戸内・関西の視察ツアーを実施しました。金毘羅(金刀比羅宮)参りや、小豆島での素麺作り体験を取り入れたところ、参加者から好反応を得ました。

こうした取り組みを通じて、万博そのものだけでなく、周辺の自然観光資源をより深く知ってもらうことに重きを置いています。今後、各地の観光資源が旅行商品に採用されることを期待しています」

商談会取材レポート:万博を契機としたインバウンド戦略を日本企業に聞く

今回の商談会では、訪日ラボ編集部が日本側の事業者4社と中国側の事業者1社に取材を実施。各事業者が大阪・関西万博を契機にどのような戦略を描いているのかを伺いました。

まずは日本企業への「万博を契機としたインバウンド戦略」についての取材レポートをお届けします。

1. 和歌山マリーナシティ株式会社

近年、中国人観光客を含め、外国人旅行者のFIT(海外個人旅行)が増加しています。こうした流れを踏まえ、和歌山マリーナシティは大阪万博を訪れる旅行者に和歌山への導線を強化することを目的に本商談会へ参加したといいます。

同社は、テーマパーク「ポルトヨーロッパ」や「黒潮市場」などを運営しており、特に黒潮市場では新鮮な海産物やマグロの解体ショーが人気を集めています。

── 今回の商談会にどのような目的で参加しましたか?

今回の商談では、和歌山への導線を含めた基礎情報を伝えることがメインの目的です。

万博をフックに開催された商談会ですが、和歌山マリーナシティは大阪から車で約1時間の距離にあります。中国人旅行者の多くはまだFIT個人旅行)に不慣れですが、関西空港を起点にすれば、車で約45分とアクセスしやすいことを知ってもらいたいです。

── 大阪万博に向けて、どのようなコンテンツを打ち出していこうと考えていますか?

さまざまなコンテンツがありますが、黒潮市場がメインの集客スポットの一つです。黒潮市場では毎日マグロの解体ショーを実施しており、旅行会社向けに団体専用のスケジュール調整や、その場で食事を提供するプランなども用意しています。

2. 東急ホテルズ&リゾーツ株式会社

東急ホテルズ&リゾーツ株式会社は、日本全国で約50のホテルを運営するホテルチェーン。ザ・キャピトルホテル東急やエクセルホテル東急、東急REIホテルなどを展開し、都市部だけでなく地方でもリゾート施設などを運営しています。

同社大阪営業所の取り組みとして、地方のホテルへの宿泊者を増やすことを目的に本商談会への参加を決めており、特に「あえて手のかかることをやる」という方針で、一般的な宿泊プランだけでなく高付加価値富裕層向けプランの提供にも力を入れているといいます。

── 今回の商談会にどのような目的で参加しましたか?

東京などの主要観光エリアは賑わっていますが、ローカルエリアはまだ十分に伸びていません。大阪万博をきっかけに、地方のホテルへの宿泊者を増やしたいと考えています。

── 大阪万博に向けて、どのようなコンテンツを打ち出していこうと考えていますか?

丁寧に各旅行会社の要望をヒアリングし、カスタマイズしながら対応する考えです。例えば、金沢はすでに「小京都」としての魅力を確立しており、中国語対応のスタッフを配置することで中国語圏観光客の受け入れを強化しています。

また、文化庁認定の日本遺産との連携では、ホテル会社で唯一オフィシャルパートナーシップを締結し、「日が沈む聖地出雲」など各地の日本遺産をテーマにした宿泊プランの提案も進めています。

標準化されたツアーパッケージよりも手間がかかるものの、DXが進む時代にあえてそうしたプランを提供することで、他社との差別化を図っております。例えば、1泊2日で30万円程度の高付加価値体験を含めた富裕層向けの宿泊コースも展開しています。

3. 三菱地所・株式会社

三菱地所・株式会社は、「大阪りんくうプレミアム・アウトレット」や「神戸三田プレミアム・アウトレット」など、日本各地10か所のプレミアム・アウトレット施設を運営する企業です。

円安の追い風を受けて訪日旅行者のショッピング需要が高まる中、アウトレットでのショッピングも人気を集めています。

── 今回の商談会にどのような目的で参加しましたか?

「大阪りんくうプレミアム・アウトレット」と「神戸三田プレミアム・アウトレット」の商談がメインの目的です。コロナ後は団体旅行よりもFIT個人旅行)の回復が早く、車をチャーターして自力でアウトレットに足を運ぶ旅行者もいました。

さらに、近隣には有馬温泉などの観光地もあり、ショッピングと観光を組み合わせた旅行商品の可能性を広げたいと考えています。

── 大阪万博に向けて、どのようなコンテンツを打ち出していこうと考えていますか?

訪日観光客向けに、クーポンの提案やインセンティブの提供を進めています。また、VIP対応にも力を入れており、特別な体験を求める富裕層向けのサービスも準備中です。

── どんな話ができることを期待していますか?

現状では、やはり「ゴールデンルート」(東京~名古屋~大阪)が強いですが、大阪万博をフックに神戸をはじめとする地方誘客にも注力する方針です。

4. 株式会社南海国際旅行 医療ツーリズム&AI事業推進担当

株式会社南海国際旅行は、旅行事業を展開する中で、医療ツーリズムメディカルツーリズム)にも注力している企業です。 医療ツーリズムとは、高度な医療技術を求めて海外へ渡航し、治療や健康診断を受ける旅行形態を指します。

近年、日本の医療ツーリズムは中東やアジア圏からの訪日旅行の新たな動機として注目を集めています。

── 今回の商談会にどのような目的で参加しましたか?

私たちは医療ツーリズムを提供しており、海外からの旅行者に治療や健康診断のサービスを案内しています。今回の商談会では、中国旅行会社に私たちの強みを紹介し、より多くの人に認知してもらうことを目的としています。

── 商談を通じて得られた成果はありましたか?

すでに成都、北京、南京の旅行会社と商談を行いました。これまで、中国では健康診断を希望する旅行者が一定数いるものの、信頼できる受け入れ先の医療機関が見つからないという課題がありました。

今回の商談を通じて、私たちのサービスに関心を持ってもらい、具体的な話を進められそうです。今後は、健康診断センターの見学を通じて、さらに連携を深めていきたいと考えています。

── 大阪万博の開催によって、中国人旅行者の医療ツーリズムにおける需要にはどのような変化があると感じますか?

これまで、中国人旅行者の訪日先は東京が中心でしたが、大阪万博の開催によって、大阪を訪れる人も増えるでしょう。観光や万博を楽しんだ後、時間があれば健康診断センターで検診を受けるといった需要も見込まれます。

── 医療ツーリズムでは、医療だけでなく、旅行関連のサービスも提供していますか?

はい、私たちは医療ツーリズムを展開していますが、顧客の要望に応じて、近隣の観光プランなども提案可能です。例えば、ゴルフを楽しみたい方など、医療以外のニーズにも対応し、幅広いサービスを提供できるよう努めています。


ーーー

以上、万博を契機としたインバウンド戦略についての取材レポートをお届けしました。

後編では、中国企業に中国人観光客のニーズや、万博の認知度などについて伺った内容をお届けします。

後編はこちらからご覧ください:中国旅行会社、大阪・関西万博のプロモーションは「上海万博より遅い印象」今求められる情報発信とは


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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