株式会社JTBは9月1日、訪日インバウンド事業戦略発表会を実施。新たな事業戦略として、「訪日インバウンドVISION2030」を発表しました。
本戦略では、同社が訪日インバウンド市場の発展に貢献するため、「3つの改革」とそれを支えるデータ基盤の構築、活用推進に取り組みます。
日本を「選ばれ続ける国」へ JTBがインバウンド事業戦略を発表
2024年、日本を訪れる外国人旅行者数は過去最高の3,687万人を記録したものの、その人口対比は29.7%と、スペイン(176.1%)など欧州の観光先進国と比べると成長の余地が大きくあります。また、宿泊需要は関東や関西に集中しており、その他の地域ではコロナ禍からの回復が遅れているという課題もあります。
JTBは、日本が選ばれ続ける国になるためには、「再び訪れたくなる体験・魅力」「旅の目的となる豊富な観光資源」「確立した訪れたい旅先のイメージ」の3つの要素が必要であると説明。
そこで、同社が掲げる「交流創造事業」にもとづき、国内47都道府県と海外36か国152拠点のネットワークを活用し、発地(海外)と着地(日本)を「つなぐ」ことで、課題解決の実現を目指します。

「ONE JTB」で3つの改革とデータ基盤構築を推進
JTBは、訪日インバウンド市場のさらなる成長と持続可能な観光立国の実現を目指し、「訪日インバウンドVISION2030」を発表しました。
グループ全体で「ONE JTB」体制を作り、訪日外国人の各シーンにおける多様な情報・商品・サービスの提供や、地方自治体などと連携し持続可能なインバウンド市場の発展に貢献するとしています。
本戦略では、「3つの改革」とそれを支える「データ基盤の構築」に取り組みます。
1. 戦略的事業領域の策定
BtoC、BtoB、BtoG(自治体・官公庁)などの6領域と、「訪日旅行者が日本を訪問する目的となるサービス・コンテンツ」の開発・開拓・投資を「+1」の新領域として設定。各領域と対応する組織を明確にすることで、適切かつ効果的な課題解決を図ります。

2. 積極的な投資による課題解決力の強化
国内の組織力と対応力を強化するため、JTBグループ全体で推進体制を整備します。
これまで訪日インバウンド事業の多くは、専門会社であるJTBグローバルマーケティング&トラベルが担ってきました。さらに、2023年には中国市場の需要を背景に、JTB Inbound Tripを立ち上げ、ランドオペレーション領域やプロモーション領域で地域と連携を進めてきました。
これらに加え、全国のJTBから北海道、仙台、名古屋、広島、福岡、沖縄の6か所に「エリア訪日インバウンド推進個所」を設置。これにより、全国47都道府県の全ての法人営業支店がインバウンド事業に取り組める体制になります。また、150名のインバウンド専門担当者を全国の拠点に配置しました。
3. 訪日旅行の目的となるサービス・コンテンツの創出
パートナー連携や積極的な投資による共同事業を通じて、日本訪問の目的となるようなサービスやコンテンツを開発します。
同社では、ニーズやインサイトを追求し、世界遺産・東寺の貸切プレミアムプランや、富裕層を対象にしたオーダーメイド型プログラム、富士山と箱根を直結する広域周遊ツアーなどのコンテンツを提供しています。
2月には、アソビシステム株式会社と戦略的パートナーシップ契約を締結。ナイトタイムエコノミーの創出や、KAWAII MONSTER CAFEのIPを活用した共同事業開発などを推進しています。
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4. データ基盤の構築
宿泊施設などの国内サプライヤーと、OTAを中心としたパートナーをスムーズにつなぐシステムを開発するため、データプラットフォーム「JTB Tourism HUB」を構築し、2026年度中の本格稼働を目指します。これにより、なかなか商品が流通しないといったサプライヤーの課題解決や、販売トラブルの抑止・防止などが期待できます。
このシステムを活用し、現地周遊ツアー(ランドクルーズ)の国内展開など、新たなサービス実現も検討されています。
また同社は、データドリブンを推進するため、JTB保有データと公的外部データを掛け合わせ、新たなターゲット・ストーリー開拓などにおいて、根拠を持った提案を行うとしています。

2030年までに取扱額2.7倍、売上総利益2.9倍目指す
こうした取り組みにより、JTBは2030年の訪日インバウンド事業目標として、取扱額を2025年度比約2.7倍、売上総利益を約2.9倍にすることを目指します。
同社は、グループでグローバル化を加速させる上で、インバウンド領域で持続的に社会貢献できていることが重要であるとしました。

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