着地型観光が今以上に盛り上がる? 「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」に見るこれからの旅行業界

平成28年(2016年)11月25日に開催された第2回「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の中間取りまとめ案が発表されました。

少々堅苦しい名称で何を目的にしているのがいまいち分かりにくい検討会ですが、訪日外国人観光客の受け入れ環境整備、地域独自の魅力を生かした着地型観光の促進などを狙いとしており、背景にはいわゆる「モノからコトへ」「観光客の趣味趣向に合ったディープな旅行体験」といったテーマがあります。

あくまでも「中間取りまとめ案」であるため「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」は引き続き行なわれますが、次回開催は、法案の制定作業が進展した後になる予定です。テーマのひとつである「ランドオペレーターに関する規制の導入」に関しては平成28年度中に法案提出される方針です。「中間取りまとめ」という名称のわりには影響力が大きいとみるべきでしょう。

今回は「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の中間取りまとめ案から、今後の旅行業界で起こる変化について見ていきましょう。

 

「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」が開催されている背景

平成28年(2016年)3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」では、訪日外国人観光客を2020年に4000万人、2030年に6000万人に増加させることに加え、国際競争力を高めるよう観光産業を革新すること、全国津々浦々に訪日外国人旅行者や国内の旅行者が訪れ、交流が促進されるようにすることといった目標が掲げられました。

「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」に見るインバウンドビジネスの動向:2016~2020年

平成28年3月30日、第2回となる「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」が行われました。訪日外国人旅行者2000万人という目標が達成できる見通しであることを踏まえ、内閣の面々が有識者とともに新たな目標、必要な対応の検討を行うものです。まだ案の段階ではあるものの、ここで発表されている資料には2016~2020年までの展望が示されており、インバウンドビジネスに取り組むうえでの参考になります。今回は「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を要点に絞って解説していきます。目次目標は大幅に前倒...

これにより注目を集めているのが、「エコツーリズム」「ロケツーリズム」「酒蔵ツーリズム」といったニューツーリズム。従来は観光資源として見なされていなかったスポットを、地域の人々の活動によって魅力が高め、観光資源として活用しているのが特徴です。

エコツーリズム、ロケツーリズム……無数の「○○ツーリズム」が現れた理由とは

エコツーリズム、グリーンツーリズム、ロケツーリズム、ヘルスツーリズム……など、特殊な観光のありかたを表す「○○ツーリズム」は無数に存在します。このような表現が濫発する背景には、観光のあり方の変化があると言われています。従来、観光資源として認知されていなかった地域や建造物、サービスなどが、観光資源として利用されるようになったのです。「○○ツーリズム」にはいったいどれくらいの種類、特徴があるのでしょうか。 目次ニューツーリズムの台頭で、大量に現れた○○ツーリズムニューツーリズムの特徴とは旅行者...

ニューツーリズムは地域の人々との交流、その地域ならではの体験を前面に打ち出しているものが多く、「着地型観光」とも呼ばれることもあります。

着地型観光とは? 最近インバウンドでも話題 地方誘致の促進なるか

目次着地型観光とは?着地型観光の特徴・メリットは?なぜ今インバウンドで着地型観光なのか?着地型観光とは?着地型観光(着地型観光商品/着地型インバウンド)とは、旅行者の受入地域で開発される観光プログラムのことです。旅行者は、訪問先現地で集合、参加し、解散するような観光形態がとられます。特にインバウンドにおいては、観光立国のための重要課題である地方誘致促進に効果があるとして、注目を集めています。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの...

しかし、旅行業に関連した法制度は古くなっており、ニューツーリズム着地型観光にとって障害となっているのが現状。このような理由から、新たな制度の見直しの方向性を模索するために実施されているのが、「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」です。

 

「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」で観光、旅行業はどう変わる?

それでは、「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の中間取りまとめ案ではどのような提案がなされているのでしょうか。事業者に影響が大きいと思われる「旅行業務取扱管理者試験」「ランドオペレーターにかかわる制度の創設」にしぼってご紹介します。

旅行業務取扱管理者試験:地域に特化した旅行事業者向けの試験を創設

現行の旅行業務取扱管理者試験では「旅行業法」「約款」「旅行実務」が試験科目となっていますが、このうち、「旅行実務」の試験では全国の地理、歴史といった問題が出題されます。これは各地域に特化し、着地型観光の商品を提供する旅行事業者にとって不可欠なものではありません。

そこで「地域限定旅行業者」向けの試験を新たに創設すべきと提案されています。また、既存の旅行業務取扱管理者試験は旅行者の安全確保、法令順守などを重要視した内容に変更すべきとされています。これは平成28年1月15日に発生した軽井沢スキーバス事故などを受けた動きと思われます。

ランドオペレーターにかかわる制度の創設

ランドオペレーターツアーオペレーター)とは旅行会社の委託を受け、旅行の現地手配を行う企業のこと。観光客が快適に旅行を楽しむためには不可欠な存在である一方、近年は利益優先による質の低い旅行商品の提供、ダンピング契約による安全性の低下などが問題化しています。観光庁の調査によれば、ランドオペレーターのうち旅行業者の登録を行っているのは約2割で、そのほとんどは旅行業法で管理できない状態になっています。

そこで「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の中間取りまとめでは、ランドオペレーターツアーオペレーター)に対して的確な指導ができるような規制を設けるべきだとしています。また、実効性を高めるために、無登録のランドオペレーターツアーオペレーター)と取引した事業者を処分できる体制を作るべきという提案も見られます。

ただし、前述のとおり、ランドオペレーターツアーオペレーター)の登録率は約20%しかありません。無理を強いると、せっかく作った制度が機能しない……という展開が予想されるため、旅行者の安全確保を最優先とした最低限の規制を行うことなどが検討されています。

 

まとめ:未来の旅行業界の基礎づくり

平成28年(2016年)11月25日に開催された第2回「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」の中間取りまとめ案が発表されました。ここでは旅行業務取扱管理者試験制度の見直し、ランドオペレーターツアーオペレーター)にかかわる制度の創設などについて検討されています。

近年、必要視されているニューツーリズム着地型観光の促進や観光客の安全対策などを目的としており、旅行業界に関連した法制度を時代に合ったものに改めることが狙いです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!